全ての裏、終わりの前

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匿名ユーザー

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国葬の後、鉄クズが山となっている処分場に、トラックが止まった。
乗っていたのはSW-Mと西條、S×H。
そこには先客が居たが、三人はは躊躇わずに近づく。
先客がその姿を見て口を開く、その前にSW-Mのハリセンが一閃した。

「あだぁ!」

頭を抱える先客。叩いたハリセンはハリセンとは一線を画す物だったのだから、無理も無い。
其れはハリセンというにはあまりにも、無骨すぎた。
金属で出来た本体の一端を、ガムテープでも布でもない何かで留めている。
ハリセンとしては異様なふくらみを持つそれが、柄に当たる部分であった。
もう一端を羽状に開いた其れは、確かにハリセンの形となっている。
これこそが、ビギナーズ王国の技術力を結集して作られた、ツッコミ専用最終兵器。
高速振動装置を備え、物理法則をある程度無視してまでありとあらゆるものを斬る。
名を、斬艦ハリセンと言った。
その物騒すぎるブツを手にふぅ、と満足げに息を吐くSW-M。

「こ、殺す気か!」
「うっさい、女の子とちっさい子を泣かす輩には一発かまさなきゃ気がすまないんで」
「泣かすのは信憑性を高めるためだからしょうがないじゃないか!」
「ま、まぁまぁ、落ち着いて」

西條が仲介に入ってなだめた。SW-Mは振動きってんだからいいじゃないかーとぶーたれたままだ。
刻生がやべー、コブになってない?と心配しながら、改めて三人に向き直る。

「まぁ、ともかく悪いね」
「遅くなってすみません刻生さん」
「いや、俺のわがままをここまで聞いてもらえたんだ。感謝しかしてない」

S×Hの謝罪に、深々とした礼をしながら答える刻生。
トラックに近づいて鎮座するトモエリバーを確認すると、その横にある小さな人型に気付いた。

「これは?」
「ちゃんとトモエリバーですよ。刻印は全部消して、燃料、バッテリー、どちらもフルです」
「いや、そっちじゃなくて」
「ああ、バトルメードですよ。旧式があるって言うんで、姿を隠すには丁度いいかなって」
「へぇ」
「あとSOUさんがどこまでもメードと一緒がいいだろうって」
「あんの野郎」

余計な気使いしてくれやがって。ありがとう。チョー大事にする。
そう思って王城の方向に、SOUの方向に敬礼をする刻生。
なにかあったのかしらと首をかしげる西條に気付き、ああ、何でもないと刻生。
心の、男同士の友情は消えないぜ!と無駄に爽やかな笑みを飛ばして、トモエリバーに向き直った。

「でも、よく整備できたな」
「まぁ、刻生さんが会議で使った筆談を応用すれば、監視の目なんかあっという間に欺けます」
「いい手だろう。あれなら普通の監視は気付かないから、やつらが外れるまで使うといい。
 ……おっと、いかん急がないとな」

トラックの荷台に乗り、トモエリバーのコックピットを開放。
バトルメイドを着込み、コンソールを操作して起動。
闇の中にただ一筋、カメラアイが光り出した。

「あー、待った待った」

S×Hがあわてて刻生を止める。何?とコックピットから刻生。
バックから何かを取り出して刻生に投げた。

「SOUさんからもう一つ贈り物」
「へぇ………って、ネコミミ?」
「付け替えできるようにって」

あいつめ、本当にありがとう。マジ大事にする。ネコミミを祈るように抱える刻生。
不覚にもメードの姿なのでちょっとカワイイと思ってしまったS×H。
うわー、俺は何をー、としゃがむS×Hを何考えてんだろと見ながら、SW-Mも近づいた。

「んじゃあ私からも」
「ハリセンの一発は勘弁ですよ」
「違う。ハリセンそのものですよ」

言ってそれを放り投げる。
うおっ!あぶねっ!と言いながらキャッチする刻生。
ずしっとした重みが手に伝わった。

「護身用です。何かあったら使ってくださいね。」
「ははは……」

乾いた笑みを浮かべて、そんなことなきゃいいけどとコックピットにハリセンをしまう。
気を取り直してコックピットを閉じる刻生。
外部スピーカーから声が出る。

「ありがとう三人とも。皆によろしく言っといてくれ」
「はっ!御武運をお祈りしております!」
「死ぬなよ、親友」
「無駄にしたらただじゃおきませんからね」 

三人がが制式の敬礼をする。返礼するトモエリバー。
トラックを降り、あらかじめ確保しておいた直線路でジャンプロケットの点火シークエンスに入る。
ふと、モニターの脇にあるものが挟まっているのに気付く。
何かと思って手に取る刻生。

「これは………」

全員で取った集合写真だった。
ついこの間なのに、もう戻れなくなったと感慨深く一人一人の顔を見る。

『ロケット点火10秒前』

体制を整えるためしまおうと思って裏返すと、そこにはたくまの字が書いてあった。

「今まで私を支えてくれたことに最大の感謝を
 そして、死ぬな」

『5秒前』

ああ、どうしてうちの連中はいい奴ばっかりなんだろう。

『4秒前』

いや、これが帝國の実態だな。

『3秒前』

これなら、どこへ行っても安心だ。

『2』

「また会えたら」

『1』 

「その時はケンカだ!」

『0』


漆黒の闇にトモエリバーが飛び出して行った。
刻生・F・悠也は、こうしてジェントルラットへ飛び立った。
より美しく言うならば、こうだろう。


決意へと、羽ばたいた。





終わり

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