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2日目

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2日目 - 隠し口座を探せ!


 「この帳簿も、どこまで本当やら」

 どさりと言う音と一緒に、先輩のひとりごとが聞こえた。
 声の聞こえた方を見ると、昨日持って帰ったみなとホールの帳簿を机の上に広げた先輩が手招きしている。
 僕はあわてて机のそばまで駆け寄ると、立ったままで帳簿をのぞき込んだ。

 先輩は帳簿をめくりながら、あいた方の手でねぐせを触っている。
 気になるなら朝ちゃんと直してくればいいのに。

 「えーっと、取引銀行を調べるんでしたよね…」

 言いながら僕は、ページをぱらぱらとめくる先輩の指を見ていた。
 適当にめくっているようにも、目的とするページがどこなのかが既にわかっているようにも見える。

 その指がぴたり、と止まった。
 数ページをまとめてつまんで、めくったりもどったり。
 何回か見比べた後、ぽんと帳簿を叩いた。

 「東洋銀行ね。 でもメインバンクにしては取引額が少ないわ」

 そう言って僕の方を見て、やっぱりね、と言わんばかりに大きなため息をつく。
 僕もつられてため息をつく。
 それはつまり、隠し口座を探す必要がある、ということでもあるから。

 先輩は僕の方に軽く肩をすくめてみせると、立ち上がって室長の所へ行った。

 「借りてきた帳簿を調べたのですが、メインバンクの他にも取引している銀行があるみたいなんです。
  とりあえず家族の名前は聞いてありますが」

 「そうか、家族の名前で取引しているかもしれんしな。
  このあたりの銀行を調べてみたらどうだい?」

 報告を受けた露口室長は、的確に指示を出してくれる。
 ああ、そうか。
 家族の名前って、そのために聞いたんだな。

 県外の銀行ということも考えられなくはないけど、とりあえずは室長の言うとおり近場から調べてみよう。
 パソコンを使って、港町内にある銀行を調べてみる。

 東洋銀行
 すばる銀行
 東亜信用金庫

 東洋銀行に口座があるのはわかってるから、まずは残る2つの銀行を調べることにしよう。

 「吉野くん、ちょっといい?」


 先輩が呼んだ吉野さんという人は、僕の前に先輩の助手をしていた人だ。
 今は簡単な案件などは1人で担当するようになって、席にいないことも多い。
 僕にとっては吉野さんもまあ先輩なんだけど、年も近いし、こう言っちゃ失礼だけどあんまり頼りがいがないというか…。
 とにかく、先輩って感じがしないんだよなぁ。
 先輩だったら、こう、びしっと指示したりとかしてほしいよな。

 「すばる銀行へ行って預金口座を調べてちょうだい。 名前は、工藤義昭、登志子、昭一。 隠し預金があるかもしれないから」

 …まあ、先輩はちょっと、人使い荒いけど…

 「わかりました。 僕はすばる銀行へ行きます。 先輩達は東亜信金をお願いします」

 そんな先輩の指示に慣れているのか、吉野さんはイヤな顔ひとつせずに準備を進める。
 むむ、僕もぼけっとしてたらいかんな、行動行動。

 東亜信用金庫の住所は、っと…

 赤山 1-28-4

 あ、ここみなとホールのすぐ近くだ。
 怪しい…のか、逆に怪しくないのか。

 「悩むのは後。 どっちにしても調べなきゃ何も出てこないわ」

 声と共にぽんと肩を叩かれ、僕はあわてて外出の準備をする。
 ぼーっとしてたら置いて行きかねないもんな、この先輩は。


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 東亜信用金庫は、みなとホールから1ブロックほどしか離れていなかった。
 やっぱり怪しい気がする。


 店員を呼んで用件を告げると応接室で待つように言われたので、移動してそこで待つことにした。


 応接室か…。
 いいよなあ、うちの署にもほしいよな。
 執務室の中に直接ソファが置いてあるから、来客から仕事してるのモロ見えだもんな。

 キョロキョロしていると、メガネをかけた男が室内に入ってきた。


 「わたしが取引課長の橋詰ですが」

 「港町税務署の板倉と申します。 早速ですが、預金者の調査をしたいのですけど」

 「調査と言われましてもね。 銀行には何万という数の預金口座があるんですよ?」

 そんなこともわからないのか、と言わんばかりの小馬鹿にしたしゃべり方。
 カチンときたけど、先輩はとりあうことなく淡々と言い切った。

 「構いません。 預金者の登録してあるコンピューターを使わせていただきます」

 「そうですか。 ではそのパソコンをお使いください」

 見ると、一台のパソコンが置いてある。
 なんとなく先輩と目を合わせると、先輩が目だけで無言の圧力をかけてくる。

 お前がやれ。
 …って言われてる。
 明らかに。

 …先輩、仕事はできるけど新しいものについて行けないタイプでしょ、絶対。

 仕方なくパソコンの前に座る。
 先輩は立ったまま。
 何となく悪い気がするけど、まあ、仕方ない。

 「工藤、工藤と…」

 僕が操作するパソコンの画面を、先輩は後ろからのぞき込んでいる。
 先輩は目がそんなによくないのに、メガネもコンタクトもしてない。
 だから、画面に顔を近づけるようにしないと見えにくいみたいだ。
 …近いです、先輩。

 「工藤という名前ってたくさんあるのね。 工藤義昭は…」

 2人で画面上の文字を追っていく。
 やっぱり一覧は、紙に印刷した方が見やすいや。
 次の画面を表示したり、怒られて戻したりしながら一覧を見ていると、ふいに画面をなぞっていた先輩の指が止まった。

 「あっ!あったわ! 住所は港町東町3-12。 工藤の住所と同じだし…」

 「本人で間違いなさそうですね」

 言いながら先輩の方を見ると、また眉間にしわをよせて画面を見ている。
 僕もあわてて画面に向き直る。

 「工藤登志子が奥さんの名前だったわね。 工藤登志子はないわね…」

 がっかりしたようにつぶやいた。
 まあ、全員同じ銀行に口座があるとも限らないし、まして隠し口座ならなおのこと。
 そっちは吉野さんに期待しよう。

 「工藤昭一、息子の名前はどうかしら… 工藤昭一、昭一と… あっ!あったわ!」

 これも住所が一致する。
 間違いなさそうだ。

 「橋詰さん、この工藤昭一さんと工藤義昭さんの取引明細を見せてください」

 「ちょっと待ってください…」

 僕は橋詰さんに席を譲ると、先輩の少し後ろ辺りに立って、橋詰さんがパソコンを操作するのを見守った。
 印刷された取引明細を受け取ると、すぐに2人でのぞき込む。

 「あったわ! 工藤義昭名義で1500万円、工藤昭一名義で1200万円もあるじゃない!」

 あきれたように言う先輩に、僕も相づちをうった。

 「言い逃れができる金額じゃないですね」

 今の段階でできる調査はひとまずここまでかな。
 橋詰さんにお礼を言い、今日の所はいったん税務署に戻ることにした。


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 「申告されている東洋銀行の他に、東亜信金から本人名義で1500万円、息子の名義で1200万円隠し預金がありました」

 「家族の名義で裏銀行に隠し預金をするなんて、ずいぶん古い方法だな…」

 署に戻って報告すると、露口室長も首をかしげた。
 そう、家族名義の隠し口座なんか、絶対にすぐバレる古くさい手口なのだ。
 それをなんで今さら堂々と…

 考え込む僕に向かって、先輩は帳簿類を整理しながら言った。 

 「明日の吉野くんの報告を待って、そのままみなとホールへ行くわよ。 準備だけはしておいて」

 「わ、わかりました」

 僕らが調べた範囲だけでも脱税はあきらか。
 それを指摘しに行くってコトだよな…
 初めての税務調査で真っ黒とは…
 先が思いやられるなぁ。



今日のパスワード





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  隠し口座の証拠を掴み、いよいよ工藤社長との直接対決。
  脅してなだめてひっかけて…巧みな話術で追い詰めろ!
  そして裏マニュアルの存在が浮かび上がってくる!





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