概要で述べた通りエンジン自体はほぼmodel Hの物なのでエンジンパーツに関しては流用が可能。


標準で入っているピストンは鋳鉄製。
もし貴方のSDに純正の鋳鉄ピストンが入っていたならばそれはそのまま利用するべきである。
理由としてはクランクバランスがずれない事とSDのピストン設計がマニュアルオイルポンプのトータルロス方式(オイルを循環させずに使い捨てる方式)に適した設計になっているからである。
往復運動部分の重量に合わせて回転運動部分の重量配分が決まっているので往復運動部の重量を無作為に変更するのは関心しない。ただしこの頃にクランクバランスがどれだけ考慮され、調整されていたかは不明である。案外設計者も考えていなかったかも知れない。
更にトップ側2本のコンプレッションリングから大きく離れたスカート部にオイルリングが入り首振りを抑えてくれる上にコンプレッションリングとオイルリングの間に穴が開いており、オイルがしっかり溜まるようになっている。
ガジョンピン(ピストンピンの意。英国ではピストンピンの事をガジョンピンと呼ぶ。ちなみにガジョンとは怠けるの意、相当重要な仕事してるのに不憫なヤツです)はピストン側にサークリップが入らずガジョンピンの外側に真鍮製のキャップが入り完全にフリーになる方式。
この年代のピストンにはありがちな方式である。

運悪く鋳鉄のピストンの状態が悪い、怪しいアルミのピストンが入っている、などの場合は躊躇無く現在手に入るアルミ製のオーバーサイズを入れた方が良いだろう。
入手元は右のリンクにあるVeteran Triumph Spearsをおすすめする。
このショップ、1908年から28年までのヴィンテージ、ベテラントライアンフ専門店でHやSDの部品などを扱っている。
こんなに古いモーターサイクルの専門店があるって所が流石英国。
本当であればスタンダードサイズが欲しいところだが取り扱いは+020インチ(0.5ミリ)と+060インチ(1.5ミリ)のオーバーサイズしかない。
シリンダーにスリーブを入れて調整する場合、絶対に+060は使用してはならない。+060で更にスリーブを入れるとシリンダーの肉が薄くなりすぎる。スリーブを使う場合は+020が限界。
ちなみに送られてくるピストンは余り評判の良くないJP製。
敬遠する人も多いのだがそう悪い物でもない。ただしピストンリングは妙に硬い。この辺り良いのがあれば国産のものを流用するのも良いだろう。
余裕があればピストン側面にオイル溝を2から3本程入れるのも良い。潤滑方式がアレなので少しでもオイルが残る工夫も大アリ。
私自身、JPの+020ピストンを無加工でシリンダーにスリーブを入れて使っているが特に問題は無い。

バルブガイドはスプリングの受けが一体になった鋳鉄製。コレもVeteranTriumphで入手できる。
自分で作る場合、本来の鋳鉄がこの部分には一番向いている。
鋳鉄と言ってもダグタイル系とか何とか小難しい奴じゃなくてねずみ鋳鉄。FCって奴がベスト。
しかも時間が経って枯れた鋳鉄が最高との事で英国のレストアラーたちは100年とか前の窓用のオモリなどから削りだして使うらしい。
ただ他の材料だと全く駄目かというとそうでもない。最低限の磨耗性があれば何でも良い。
と言うのもこのエンジンはバルブをリフターが真直ぐ押し上げるのでバルブ周りの面をしっかり出してあげればバルブとバルブガイドが殆んど干渉しないからだ。
しかもカーボンや熱膨張の問題からバルブクリアランスは相当大きめに取る為、益々干渉しにくい。
私見のバルブクリアランスは吸気側およそ100分の10ミリ、排気側およそ100分の20ミリ。
吸気側は推奨のクリアランスがあればまず噛む事は無いだろう。
排気側は熱の問題、カーボンの付着、ごみの付着などを考えて相当ガタを取らないと熱が入ってバルブステムが広がると噛み込んで止まる可能性が高い。
ただしあくまで純正のバルブを用いる場合なのでここ最近作られた材質の良いバルブを用いる場合はもう少しクリアランスを詰めても良いだろう。
何にせよサイドバルブならばバルブが噛んでも止まるだけなので止まったら分解してリーマーでガイドをちょっと拡大、という方法でおのずとベターなクリアランスが出せる。
一般的なエンジンから見ると数倍は広いので驚くかもしれないがガイドの部分が無くても成立しちゃう位なので問題は無い。
ただし余りに広い(1ミリとか)場合はバルブが真直ぐ押されていない可能性が高いので注意。

バルブスプリングはなるべく弱い物を用いる。
たかが4000回転程度のエンジンに硬いスプリングを入れるのは磨耗を早める以外の効果が無い。
VeteranTriumphが出しているスプリング位がちょうど良いと思うのだがなぜか外径が0.5ミリ標準より大きいので純正のバルブガイドやスプリングリテーナーを使うと入らない。
私はリンクにある荒井スプリングでVeteranTriumphで買ったスプリングを持ち込んで同じ硬さで外径33mmで巻いてもらった。
巻いてもらうに当たってエンジンのバルブスプリングに使う事をしっかり伝え、弁ばね用のオイルテンパー線で、と指定する。
ちなみに余りがあるので欲しい方には譲ります。
コレに関してはいずればねの強さを簡易的に測って推奨値みたいなものを出そうと思います。

バルブコッターも痛みが見られるようなら交換したほうが良い。
結構普通に折れます。
コレもVeteranTriumphに売っているがやや高さが大きく、スプリングが縮みすぎるので使うときは真ん中を削って凹型にして使うと良い。外れ防止にもなる。ただし焼きが入っているので硬い。
自作する場合、SCM415を凹型に加工し焼き入れして表面の強度のみを上げたものを用いるのが一番良いだろう。コレならば相当持つと思う。
次におすすめするのがヤスリの柄を使う方法。
小さなヤスリの柄が厚み、高さともちょうど良いので焼きの入っていない部分をカナノコで切って使う。
それなりの硬度と粘りがあるので通常ならばコレでも十分だろう。

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SDエンジン。通称タコツボと呼ばれるヘッドが外れないタイプのシリンダー。ボーリング屋が嫌がります。

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シリンダーを外した所。アルミのテキトウなピストンが入ってました。ハズレです。


そのほか追加情報は随時更新します。


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最終更新:2010年12月04日 01:01