SDの灯火に関しては灯火類一切無し、アセチレンランプ、エレクトリックの3種類が選択できた。
従って灯火なしとアセチレンランプ仕様はベースマウントのマグネトーのみが付きエレクトリック仕様には発電機が一体になったマグダイノが付く。

初期型SDのマグネトーは昔からの流れでドイツのボッシュ製。
ボッシュはマグネトーを一番最初に量産した会社で英国車でもVeteran,Vintage期の車両には装着率が高い。合理的かつ堅牢な作りで信頼性も高い。
しかしフロントブレーキがドラムになる頃にはルーカス製が標準で付いたようだ。

マグダイノの場合は最初からルーカス製が付いていたらしい。
この辺りは資料的なものが少ないのではっきりはしないが。
そしてこの標準で付いてきたであろうマグダイノはダイナモとマグネトーが完全に一体になって切り離せないタイプ。おまけにダイナモにはレギュレーターが付かず発電圧6V以下の時にダイナモとバッテリーを切り離すカットアウト機構しかない3極タイプのもの。

どちらの仕様にしても必ずマグネトーの状態は把握しておく。
マグネトーはこの頃のモーターサイクルにとって最重要部品であり如何に高い完成度でエンジンや車体を仕上げてもマグネトーがダメだと全てが無駄になる。
マグネトーの調子はコイルの状態、磁力、コンデンサーの状態で左右され、調子の良いマグネトーならば手でゆっくり回しても火花が出る。
基本的なメンテナンスを全て行って、手でゆっくり回して火花が上手く飛ばないならコイルが痛んでいるか磁力が大きく低下してるかのどちらかの事が多い。
手でゆっくり回して火花が上手く飛んでも実際にエンジンをかけるとアイドリングが安定しない、暖まると不調になる等の場合はコンデンサーが弱っている可能性が高い。
経歴や状態がよく判らないのなら躊躇無く信頼できるショップ等にオーバーホールに出した方がいい。

使用する点火プラグは18mmのピッチ1.5の物でNGKで云う所のAプラグである。
アダプターを入れてBプラグ化と言うのも不可能ではないが外観的にもそのままAプラグを使いたい。
NGKの場合Aプラグは通常のA6,A7,A8の各熱価のものとプラグを回すための6角面がより高い位置にあるAB6,AB7,AB8が存在する。
SDに使う場合プラグが嵌る真鍮製バルブキャップが奥まっている為にただのAプラグは利用不可。AB6を使用する。
ただしNGKのプラグは出来るだけ避けた方が良い。
これは今までの英車に関わってきた経験上、判った事だが古い英国車とNGKプラグは相性が悪い事が多い。
理由は全く判らないのだが何故かかぶりやすかったり、かぶったら復活しないなどのトラブルが出やすい。
本当であればLODGEやKLGと言ったプラグが新品で簡単に手に入れば良いのだがはっきり云ってむずかしい。
そこでおすすめするのがChanpionのプラグである。
今でもハーレーの古いナックルやパン用に18mmプラグを作っているので比較的入手しやすい。品番はD16となる。
私も現在SDに利用しているがNGKの頃にたまにあった小不調もChanpionを使ってからは一度も無い。相性は良いようだ。

灯火類に関してはアセチレンランプ、エレクトリックランプ共にある程度現在の事情に合わせた改造をしないと公道走行は難しい。

アセチレンランプならば電池+LED仕様にすると良いだろう。
アセチレンのベース内に電池を入れ、ガスホース内に配線を仕込み、バーナーにLED電球を付けるだけ。
LEDなら扱いも簡単でそれなりに明るいし電気消費量も少ないのでかなり実用的だろう。
いざとなればガス仕様に戻す事も出来るしブレーキスイッチを入れてブレーキランプを付ける事も出来る。

マグダイノの場合、前述の通りレギュレーターが無いので6V以上の電気は発電した分だけ電装システム内に流れる。
なので相当大きなバッテリーを入れるか昔ながらのヴァルカナイトボディーの鈍いバッテリーを入れるしかない。
ただ恐らくダイナモはミラー製ダイナモと同じ構造になっていて+と-をそれぞれメインで出力する2つの極とカットアウト機構を制御する-出力1極となっているようなので-側を2極束ねてレギュレーターに繋げば普通にレギュレーターが作動すると思われる。保障は出来ないが。
色々とめんどくさいのでそれなりに走るつもりが有るのなら思い切って後年の分離型マグダイノに換装することをおすすめする。
おすすめはMO1タイプのマグダイノ。
本体や消耗部品の入手性、耐久性、メンテナンス性など完全一体型よりも遥かに優れている。

マグダイノを分離型に換装した場合個別にダイナモを用意する必要があるがルーカスのE3タイプのダイナモは出力45Wと60Wの2種類が存在する。本体の径は全く同じだが出力60Wの方が幾らか長くて更に重い。
使うレギュレーターも違い45WはMCR1、60WはMCR2を使う。
しかしレギュレーターに関しては機械式の調整が面倒だったり元々付いていない箱を調整がしやすい何処かに付けなければならないと云う問題から小さなソリッドステートレギュレーターを使った方がスマートである。
これならばダミーのバッテリーケースの中に6V4AH程度の小さいバッテリーと一緒に収める事が出来るし、ついでにバッテリーケース内を各配線の集合地点にすれば外観も非常にすっきりする。
おすすめの6Vソリッドステートレギュレターはアメリカのpodtronics製の物。
比較的不良品率が低く、作りも小さく丈夫。左リンクのBritishOnly(USA)で安価に入手できる。

ただし、小さいバッテリー+ソリッドステートレギュレーター+60wダイナモの組み合わせでは発電量が大きすぎてバッテリーが沸騰気味で電解液がすぐ減る。
しかし45wの場合だと今度は発電量が少なすぎてバッテリーが上がり気味になる。
余り回転数が上がらないエンジンなのでどうしようも無い問題である。

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最終更新:2010年07月05日 11:54