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ネジの基本知識はモーターサイクルを弄るにあたって必須の知識である。
しかしインチネジ、とりわけイギリスインチはメトリック圏の日本人にはなじみが薄く、既に本国でも本道の規格から外れており、最低限の知識ですら正しく喧伝されていないように思う。

私自身人に教えられるほどの知識は無いと言って良いが最低限の知識位はあると思っている。
この項では英国車を弄るにあたって最低限必要なネジの話をしてみたい。
しかしながら素人ゆえの間違いも多々あろうかと思いますので間違いの指摘などありましたらガンガンお願いします。

1 ネジはなぜ締まるのか?
この問いに一言で明快に答えられる人は案外少ないのではないでしょうか。
一言で言えば「ネジ座面に摩擦力が働くから」で間違っていないと思います。
(ネジ座面:ネジの締め付け対象物と当たる面の事)
ネジが締められてネジ頭が対象物にぶつかると対象物にははじき返す力である反発力が発生し、ネジ頭にはネジ螺旋によって引っ張る力である張力が発生します。
その結果ネジ座面と締め付け対象物のネジ当たり面に摩擦力が発生して簡単に外れなくなる訳です。
こういった状態の事を「締結」と呼びます。もっと簡単に言えばネジが締まってる、という状態です。
ネジの螺旋部が重要である事は殆んどの人が見るだけで判るかと思いますがネジがしっかり締まるためには座面の確保が非常に重要になります。わざわざワッシャーを入れるのは座面の確保と保護が目的な訳です。

2 インチネジの見方
1インチは25.4mmなので最小単位としては大きすぎます。なのでインチネジを呼ぶ時は1インチを16分割した分数で呼び、そして分数ですから約分出来る場合は約分して呼びます。
具体的には1/16、1/8(2/16),3/16,1/4(4/16),5/16,3/8(6/16)....と言った具合。
さらに細かく32分割や64分割した1/32ネジや1/64ネジなんていうのもあります。
そして1インチを超えた場合は1と1/16と言う呼び方になります。
ちなみに古くから工業系の仕事に携わっている人などが使う日本独自のインチネジの呼び方として分と厘があります。
1/16が5厘で1/8が1分になり、例えば1/4インチネジの場合は2分ネジ、5/16ならば2分5厘ネジと言うように呼びます。

ネジの太さ以外にねじ山の山数も規格で分類されています。
メトリックネジの場合はピッチと言ってねじ山とねじ山の間が何ミリあるか、という分け方になりますがインチネジの場合TPIと言う分け方をします。
TPIとはThread Per Inchの略で読んで字の如く1インチ当たりにねじ山が幾つあるか?と言う事です。
28TPIであればそのネジは1インチ当たり28のネジ山があると言う事になります。
メトリックネジはねじ山間の長さを表記するやり方ですのでピッチ1はTPIに変換すると25.4になります。
初心者がたまにやってしまう間違いとして1/4 26TPIのネジ穴に6mm ピッチ1のネジを入れてネジをダメにしてしまう、という事があります。
1/4は6.3mm、ピッチ1は25.4TPIです。ちょっとガタがありますがこれだけ寸法が近いとなんとなく入って回ってしまいます。
しかし最終締め付けの段になって寸法違いからネジをダメにしてしまうのです。
こういった間違いもネジの見方をしっかり理解すれば防げます。
ネジの径に関してはネジをノギスやマイクロメーターといった計測機器に挟んで計測します。
ネジのピッチに関してはピッチゲージを使います。
ピッチゲージには各サイズのねじ山が切ってありその山と計りたいネジの山を合わせてぴったり合わさるサイズを探せばネジのピッチが判明します。
先ほどの26TPIとピッチ1(25.4TPI)の違いであれば十分ピッチゲージで見分ける事が可能です。
英国車を弄る場合はピッチゲージは必須となりますので必ず用意します。

以上のようにネジはネジの径とネジ山の数が判ればどの規格のネジであるかが判ります。

3 インチネジ規格
インチネジの規格は大別すると英国インチと米国インチの2つに分けられます。
細かく掘り下げると業界専門のネジ、例えばミシン用ネジなどがあり、きりが無いのでモーターサイクルに出てくるネジ規格のみをピックアップして解説します。
 3-1 アメリカインチ
米国の一般的なインチネジはUnified(ユニファイ)と言う規格。
ねじ山の粗いUNC(Unified National Coares)とより細かいUNF(Unified National Fine)。
あとはコックやオイルラインに登場するNPT(National Pipe Thread)。
モーターサイクルに登場するのは概ねこの3種類です。
 3-2 イギリスインチ
日本においてイギリスインチというと皆口を揃えてウィットと呼んでいるがウィットネジはむしろ少数しか使われない。
最も多いのがBSC(British Standard Cycle)、次にBSF(British Standard Fine)、たまにBSW(British Standard Whitworth)が登場、所謂ウィットネジ。
あとは小さな部品の取り付けやメクラの部分に出てくる小ネジ規格BA(British Association)、コック、オイルライン用のBSP(British Standard Pipe)、スポークや限定的な部分に使われる自転車用規格のCEI(Cycle Engineers Institute)。
この辺りが英国車に登場するネジになります。
逆に最低限これだけの規格がある事をしっかり把握しておかないと正しい整備は出来ない。
以下簡単な各規格の解説
  • BSC(British Standard Cycle)
名前の通り基本的には自転車のネジ規格。通称26山とも呼ばれ、7/32以上のネジは全てTPI26となる。
エンジン、車体周りなど至る所に出てくる。
  • BSF(British Standard Fine)
BSCと同じ位、要所要所で出てくるネジ規格。
BSCとBSWの中間的なネジ山数。
こちらもエンジン、車体周りに良く使われる。
  • BSW(British Standard Whitworth)
イギリスインチというと出てくる名前だが実際は余り多くは登場しない。
ねじ山が荒い(=ネジの山数が少ない)のでエンジン周りでは殆んど使われず、車体周りたまに出てくる程度。
サドルをとめる通称ヤグラのネジ、マッドガードの取り付けネジ、アセチレンランプのステーのネジなど。
  • BA(British Association)
小さなネジの規格、この規格だけはねじの径で呼ばず1BAとか2BAと言ったように数字で呼ぶ。
数字が大きくなるほどネジ径が細くなり少なくとも23BAまでは存在する。
またネジ山はTPIで割り切れずピッチで表記すると言うインチネジでも相当特殊な規格。
英国車に出てくるのは概ね1BA、2BA、4BA辺り。
プライマリーカバーや小さなカバーのボルト、スロットルホルダー取り付けネジ、ブレーキスイッチ取り付けネジなど英車には結構使われる。
  • BSP(British Standard Pipe)
パイプ用のネジ規格。日本の管用ネジは英国から入ってきているので日本のガスネジと同一規格。
細かく言うとネジにテーパーが付いて締め込むとロックが掛かるBSPTと一般的なストレート形状のBSPSがある。日本では単にPTとPSと言う表記になる。
呼ばれるサイズは決してネジの外径では無いので注意。
アメリカのNPTとは似ているがネジ山の数が微妙に違うので特にハーレー用ガソリンコックを使う場合は注意が必要。(良くコックに出てくる1/4BSPと1/4NPTは外径こそ同一だがTPIはBSP19山、NPTは18山)
オイルラインやガソリンコックに使われる。
  • CEI(Cycle Engineers Institute)
自転車の各部専用ネジ規格。
一応スポークのねじはCEIに分類されるらしい。
元々BSCから派生した規格で普通の26山であることも多く、各部分の専用ネジとなるためにCEIであるかの見極めは非常に難しい。
余り多くは出てこないのでこんな規格もたまに出てくるんだなぁ、程度でいいと思う。
スポーク、トラ2気筒のタペットアジャストスクリューなど。

4 ねじの頭、ねじ回し
此処まではネジ自体の話でしたが此処でそのネジを締めたり緩めたりする為のネジの頭の形状やねじ回しに付いて。
先ず最も一般的な6角形頭の6角ボルト、マイナスボルト、プラスボルト、6角の穴が頭に付いたキャップスクリューなどが英国モーターサイクルに主に登場する形状だろう。更に戦前のサンビームなどでは4角形の頭のネジなども使われる。

6角ボルトを回す場合、ある1面とその反対側の面との間の距離(これを対辺と呼ぶ)で使うねじ回しを選ぶ。
ネジの径によって標準の6角頭の対辺は決まっており例えば6mmネジであれば標準10mm対辺の6角頭、1/4Unifideであれば7/16対辺が標準である。
よってmmのスパナで10mmと書いてあれば対辺10mmの6角頭を回す工具、アメリカインチで7/16と書いてあるスパナであれば対辺7/16インチの6角頭を回す工具、と言う事になる。
しかし何故かイギリスインチの対辺はきれいに割り切れる数字で切られておらず中途半端な数字になっていて、スパナやメガネレンチの方にBSで書いてある分数が回したい6角頭のネジ径となる事を標準としている。ちなみにWWの方に書かれているのは旧規格のサイズなので無視してよい。単純に1/16インチ小さいだけだが。
基準にしている物が違うだけの表記法だがイギリスインチとアメリカインチが混在する70年付近のトライアンフなどは非常にややこしくなる。

マイナス頭に関しては特に言う事も無いが敢えて言うとしたらマイナスドライバーの先がちょっとでも痛んでいたら新しい物を買え、と言う事位。
マイナスネジが潰れる原因の殆んどは先の荒れたドライバーの所為。
テキトウに削っても新品のドライバーの掛かりを再現するのは難しい。
よって余り高いドライバーは買わずにそこそこ手ごろでしっかりしたものを消耗品感覚で使った方が良い。

プラス頭には実は規格がフィリップス(Ph)とポジドライブ(PzまたはPzd)の2種類あると言う事に注意。英国車の場合まず間違いなくポジドライブが付いている。
基本的にはほぼ同じ形状なのだがポジドライブの方がより深くプラス溝に入るのでしっかり抑えられなめ難い。
当然お互いのねじ回しに互換性は無く日本で普通に売っているフィリップスのプラスドライバーで英国車のポジドライブを回すと高確率でネジ頭が痛む。
はっきり言って価値無しなフィリップスだが元々締め過ぎが起きないよう、むしろなめ易いように作っているのだから仕方が無い。
所有している英国車にプラスがあるのならば必ずポジドライブの1番~3番までは用意する。

キャップスクリューに関しても書く事は余り無い。
ちなみに英国ではキャップスクリュー回しの事を発明者の名前からアレンキーと呼ぶのだが日本で一般的な6角棒よりカッコ良いのでアレンキーと呼ぼう。

基本的にはネジ頭にしっかり対応した工具で回すのが正しいが古い英国車ではネジが痛んでいる事も少なくない。その場合正規の工具では上手く回らない事もある。
そういう時は基本にとらわれずアメリカインチでもメトリックでも何でもいいので一番ガタ無く回せるものを使う。
基本を知らないのは良くないが融通や機転が利かないのも同じ位良く無い、という事を肝に銘じておきたい。

最期の辺りは若干投げやりに締めましたが昔、仕事をサボってどっかから丸パクリで作ったネジ表を置いておきます。
自由にご活用ください。

イギリスインチねじ表.pdf
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