なぜ鉄ピストンが良いのか?
隠れた所のおしゃれです。以上。
とまあ理由はこれだけでも十分ちゃあ十分なのですがそれだけでは有りません。一応理由があるので今回はその辺りを掘り下げまする。

ピストンを本来は入るモノに交換して得られる最大の利点は何と言ってもクランクバランスが正しくなるという点でしょう。
ピストンと言う物体は往復運動と言う宿命から必ず振動を発生します。それを緩和する為に回されるクランクにはクランクバランスという名の加工が施されています。
クランク(フライホイール)は回転運動を維持する為のはずみ車ですから基本的に新円でビックエンドを考えなければどの位置でも重量の釣り合う新円で有るのが好ましくなります。
しかし実際はビックエンドと言う名の重量物でクランク左右は連結され、ピストンと言う名のオモリが激しく上下に往復します。
その為、ただクランク(フライホイール)単体で新円の物を回すと当然重量や形状が釣り合っていない部分も同時に運動するのでそれに伴って振動が発生する事になります。
それを解消する為にクランクのビックエンド部の反対側に釣り合わない分相当の重さをあらかじめ付けておきます。しかし当然形状も異なる上に往復運動と回転運動の組み合わせなので振動はピストンが上死点、下死点の位置以外でも発生します。
その為、往復運動部分と同じ重量(100%)をビックエンドの反対側に付けてもそれなりの振動が出てしまいます。
振動を完全に打ち消す事は不可能なので少しでも振動が少なくするために往復運動部分とは異なる重量を調整して付けます。つまりコレがクランクバランス(静バランス)って奴です。
英国車に良くある直立単気筒および直立2気筒等は80%、ハーレーなどのVツインは60%がおおよその黄金値となります。
こう云ったクランクバランスは実際に20年代の車輌を計測した方の話からも1920年代には少なくとも存在し、推察ですが恐らく内燃機関とこの辺りのメカニズムがほぼ同じな蒸気機関が盛んだった英国では相当古くから存在していると思われます。
上記の理由から本来ピストン(エンジンの往復運動部分)の重量を簡単に変えてはいけないのです。
まあ、純正のモノが手に入らないので致し方が無く変更されてしまうのが常なのですが流石に鉄からアルミだとその変更ぶりもかなり大きくなります。それが本来入るべき重量に戻るので振動の出方もかなり変わるのではと思います。
しかし納得できないのが一般的な英国車の社外ピストン。どのメーカーも重量が違います。ナメてます。純正に合わせろと言いたい。
まあ数%変わっても判らない位の違いなのでこのような状況でも良いんでしょうがやっぱり納得いきません。ピストン作っている奴ら本当にテキトウです。
兎に角、本来の設計で入るべき重量に戻す事は非常に意義のある事なのです。

しかも往復の運動部分の重量が上がる訳ですから当然クランクの回り方も変わる筈です。
重くなるので高回転や応答性には不利になりますが元々4000回転も回るのか疑わしい程度のエンジンなのでよりその性格に有ったエンジンフィーリングになるのでは?
予想では今迄より回転が落ちると回転が上がりにくいが一度勢いが付くと今までより回転が下がりにくいフィーリングになると思います。

さらにその他の利点としてこれはVintageTriumphに採用された鉄ピストンの特徴なのですが3本あるピストンリングの3本目が離れたピストンスカート部に有るので首振りし難い構造になっています。
それなりの重量のあるピストンなのでやはりピストンが振れやすい筈です。それが抑えられるのでそれだけでもエンジンフィーリングに影響すると思います。
更にセカンドリングとサードリングの隙間にオイルが溜まりやすく、潤滑面でも利点が有ります。

と、こんな感じで良い事が満載なのです。
ボーリングから帰ってきたら組みつけ前に純正の重量を測って参考値を残し、社外品を入れた場合の理想重量に合わせる良い方法も考察したいと思います。

、、、しかしまあこれだけ純正ピストン絶賛しておいてあまりアルミピストンと変わらなかったら相当寒いなぁ。

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最終更新:2010年12月05日 00:16