今回修理のために久々シリンダーを下ろしましたがもうひとつ問題が。
1万キロ未満の走行距離にも関わらずスモールエンドに看過出来ないガタが出ているのです。
ビックエンドに関しては前回のレストア時にも合格ラインではあるが若干ガタが多めだなあ、と感じていたのでひょっとするとビックエンドはやり直さなければならないかも、、、とは思っていたのですが多めと思っていたビックエンド側に摩耗は感じられず新規できっちり作りなおしたスモールエンドブッシュがガタガタだった事はちょっと意外でした。

少なくともVintage期から70年位までスモールエンドには砲金を用いるのが普通です。
砲金とは銅をベースにした合金で強度や耐摩耗性が高く、古い英国車では金属同士が擦れる部分の軸受に良く使われます。
その特性上かなり昔から大砲の砲身に使われ、大砲に使われる金属→略して砲金、英語でもGunMetalと呼ばれます。
現在ではより強度、耐摩耗性の高い燐青銅、アルミ青銅、べリリウム青銅などに取って変わられ、軸受に使われる事はあまり無いようです。
前回のレストア時には当然SDの純正に倣い砲金でスモールエンドブッシュを作ってもらいました。

英国車のスタンダード、リトマス試験紙車輌ことトライアンフ2気筒も750ccになるまではスモールエンドに砲金を入れてあります。
しかしまたこれが減るのです。素性のわからないトラの650㏄2気筒をばらすとかなり高い確率でスモールエンドがガタガタです。
トライアンフの750cc2気筒やノートンの2気筒などはブッシュを使わずRRアロイと呼ばれる一説には2次大戦で活躍したスピットファイヤ戦闘機に積まれたロールスロイス製”マーリン”エンジン用アルミで作られたコンロッドのスモールエンドがピストンピンに直当たりする構造になります。
このアルミが直当たりするスモールエンドは減っている事が殆んど有りません。
この事実は軸受の材料について相当考えさせられます。

通常金属同士が当たる軸受部分は一方を固く、一方を柔らかくして片方は摩耗するけど片方は摩耗しないというような構造にします。
良く片方を殺す、等と言いますが必ずしも柔らかい方が死ぬわけではありません。固い方が死ぬ事も多くカムシャフトの軸受部、ギアボックスのメインシャフト軸受部などは柔らかい銅合金系ブッシュより焼きを入れて相当コチコチになっている方が減っている事が多々あります。
BMWのメカニックに聞いた話では最近のBMWのスモールエンドはめちゃくちゃ固い鉄みたいなブッシュが入っていてスモールエンド側は殆んど減らずピストンピンが減っている事が多いとの事。
BMWと言えば相当に理論的で合理的なメーカーですから摩耗した時に交換が大変なスモールエンドブッシュよりも簡単に交換できるピストンピンを摩耗させる作りにしているのでしょう。
今の国産車はどうなってるのでしょうかね?

中々答えの出ない所ですが恐らくはこすれ合う金属同士の相性、掛る力の大きさや種類、回転速度が摩耗の仕方に影響するのだと思います。
スモールエンドのようなあまり当たり面の変わらない揺動運動+ピストンを押し下げる程の高トルクでは砲金+焼き入れをした固い鉄系金属の組み合わせは実はあまり良くないのではと思っています。今回のSDやその後の2気筒が示す通り大抵は砲金製のブッシュが一方的に死にます。
この辺いづれは答えを出したいと思いますが今回交換するスモールエンドの材料にはSDが販売していた当時には存在しなかったベリリウム銅で作る事にしました。色々調べてみてこの材料がスモールエンド軸受に適しているように感じたからです。
20年代のピストンピンとモダンなベリリウム銅ブッシュの組み合わせがどれ程合うかどうかはすぐさま不具合が出るか次のオーバーホールまでは判らないと思いますが結果が判り次第報告いたします。
砲金スモールエンドのように一方的大敗にはならないと思いますがそんなことよりピストンピンがカジったりしないかビクビクしてます。
何せ純正鉄ピストンはピストンピンがクリップを使わない完全圧入方式になるのでスモールエンドのかじりが即再起不能な損傷になりかねないからです。

そんな材料で本当に大丈夫か?
一番良いのを頼む。
、、、そんな感じです。

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最終更新:2010年12月09日 13:35