SDは部品の上がり待ちの為停滞中。
代わりと言う訳ではありませんがちょっと変わり種の依頼を頂きその準備をしてました。スペシャルフレームに積んだTriumph750ccの車検を取る為のセッティングです。
この車両には現代生産のAmal concentric Mk2キャブレターが装着されています。コレがまたセッティングが出ません。

Amal社の歴史は1920年代後半数多く存在した英国内のキャブレター製造メーカーが合併し統合された所から始まります。
まず最初に各メーカーが持っていたノウハウを集結し、別体キャブとかプレモノブロック等と呼ばれる200番台の番号を与えられたキャブレターを1920年代後半から製造します。
このキャブレターは細かく口径を調整できるように真鍮製のジェットブロックと呼ばれるキャブの中心部分と本体と切り離す方式を採用し、低開度用のパイロット経路と混合比調整用のジェットニードルが付きます。現代に通ずる作りの優れたオートマチックキャブレターです。
戦後は300番台の番号を与えられた別体だったフロートを一体式に改めたモノブロックキャブレターをリリース。
更に60年代には600、900、1000番台を与えられたガソリンフロートとスロットルスライドを同心円上に配置したコンセントリックキャブレターMk1をリリースし、70年代後半には並みいる日本車勢に対抗する為に更に高効率なキャブレター、コンセントリックMk2が登場します。

その後英国2輪車の終焉と同じくしてAmal社は倒産しますが買収→再生産を幾つか繰り返し現在ではバーレン社と言う英国のキャブレター専門メーカーが200番台から900番台まで再生産しています。
しかし残念ながら現在生産されているAmalキャブレターの品質は最低と言わざるおえない状況です。
別体キャブは妙に力が入っているようでかなりマシなようですが300番台のモノブロック、600,900番台のコンセントリック等は最初から各部ガタガタでセッティングが出ない等のトラブルが多発します。
特に300番台はジェットブロックの出来が酷くジェットブロックがガタガタの物が新品と称して普通に来日します。本体とジェットブロックがガタガタだと分割されているパイロット経路などに隙間が出来てまともに作動しません。
ちょっと前も新品の376キャブレターのジェットブロックが自然落下でキャブレター本体のあるべき位置に落ちていく様を垣間見ましたが流石に笑うほかありません。
今回のコンセントリックMk2も様々な対策をするも良くなる気配が無く混合気が濃いままです。恐らくはどっかしらからガスが入り込んでいるのだと思いますが思いつく対策を施しても変わらない、と言うか酷くなっていきます。
結局このキャブレターは私の手に負えず今回の車検は見送る事になりましたが色々考えさせられました。
何より原因が判らず白旗を上げた自分の無能ぶりにちょっとへこみます。

しかしなぜこうも英国車を取り巻くモノは曖昧なのが多いのでしょうか?
英国車と同類と思われていたハーレー等は実は各部に国産車ばりの高精度を要求し、その通りに組み上げるとしっかり言う事を聞いてくれるようです。
今回の事で実は英国車って実は特殊な機械なのかも、と思う事しきりです。
最終更新:2010年12月18日 02:14