※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

正直旋盤の技能はまだまだヘッポコレベルですが回りの状況を見るに旋盤の技能とねじ切りの歯車の選択方法の知識と言うのは全く別物であるという事に最近気付きました。
驚いたのは旋盤加工で何十年も活躍してきた職人ですらインチねじは何となく近いピッチの物をガタを多めに取って切った、なんていう言う話を聞いた時でした。
よくよく考えれば仕事でインチのねじを切る事が無ければそのあたりを突き詰める事も無いでしょうし既に戦前からギアボックスによる歯車自動選択が普通ですからねじ切り歯車をマニュアルで交換するような旋盤を使って無ければ知らなくて当然です。
またこの辺りを解説した書籍が現代では技能ブックス「ねじ切りのメイジン」位しかないのもイタイです。しかも1ページで簡単に解説しているだけなので解りにくい所もあります。
最近私と同型の旋盤を所有している知人からもこの辺りの質問を受けましたし近況で宣言した通りそろそろ真面目に書いてみたいと思います。
但しあくまで任意のインチねぢを切るときの歯車の選択方法の解説なのでねじの切り方等の話は割愛します、と言うか語るほど習熟出来てません。
あくまで旋盤のねぢ切りは出来るけど歯車の選び方が解らねぇという方向けでその他の部分は解っている事を前提で書いています。
つまりいつも通りある程度分かっている人以外は置いてけぼりなお話です。当サイトは今回も平常運転w



ー旋盤ねぢ切りに必要な歯車の基礎知識ー
一対の歯車を例にします。動力側つまり回す方の歯車を動車、回される方の歯車を被動車と呼び、ギア比率は「動車/被動車」という計算式で割り出します。
例えば動車50、被動車100の歯車があったとします。
この場合式に当てはめると50/100、それが約分されて1/2となります。
つまり動車の回転数の半分で被動車が回り、動車が2回転すると被動車が1回転します。このように入力された回転数よりも出力される回転数が低い場合を減速と呼び逆に高い場合は増速と呼びます。

次は1対の歯車の間に一個全く関係ない歯車を入れて歯車を3個にしてみます。
例えば動車50、中間80、被動車100という歯車があったとしましょう。さて歯車比は幾つになるでしょうか?
答えは上と全く同じ2:1の減速となります。
動車と被動車の間に入っている歯車はアイドラー歯車と呼ばれ歯数が幾つであっても歯車比率の計算式は「動車/被動車」になります。
またアイドラー歯車は幾つ入っても動車と被同車の歯車比率は同じです。
動車50、中間80、中間40、被動車100と言うような組み合わせでも当然そのまま2:1の減速です。
(※中間ギアの順番が変わりましたが気にしないように。脳内変換してください)
その他、アイドラー歯車を入れると回転方向が逆になるのも特徴です。
1対の場合は動車と被動車の回転方向は逆になるのですが1つアイドラー歯車が入ると動車と被動車の回転方向は同じになります。2つ入れば再び逆回転に戻ります。
つまりアイドラーが奇数の場合は動車と被動車は同方向に回転し偶数であれば逆回転に戻る訳です。
旋盤ではこの性質を使って主軸とねじ切り用主軸歯車の間にタンブラー歯車と言うものを入れて主軸を逆回転させ逆ねぢを切ります。
このような特徴を生かしてアイドラー歯車は単純に離れた軸同士をつなぐだけではなく回転方向を変える為にも使います。

今度は先ほどの4つの歯車の中間歯車2つを一つの軸にまとめて連結してみます。動車50、中間80←同じ軸に連結→中間40、被動車100です。
さあどうでしょうか?
同じ歯車を使ってもアイドラーとは違い中間が連結された場合は動車、被動車、動車、被動車と言う形に変化します。計算式は「(動車1×動車2)/(被動車1×被動車2)」です。
具体的に計算してみます。
50×40/80×100
約分して
5×4/8×10
更に約分
1×1/2×2
つまり答えは1/4。
中間がまっすぐ繋がっているだけのアイドラー歯車だと歯車比は50と100が一対で繋がっているのと同じ2:1の減速ですが同じ歯車を使っても中間をひとまとめにして繋ぐと4:1に変わります。
こういった現象を歯車列の矢張り連鎖と呼び大きな減速若しくは増速を無理なく得たいときに使います。

自分でねぢ切り歯車を懸け換える旋盤の多くは多段方式です。
旋盤では4つの歯車を列にして組み合わせる方法を4段掛け、中間歯車を1つだけ入れて中間を単にアイドラー歯車として使う場合は2段掛けと呼びます。
主に繋がっている順番通りに主軸歯車(A)第一中間歯車(B)第二中間歯車(C)親ねぢ歯車(D)と言う呼び方が一般的です。
更に細かいねぢを切る為に4段掛けにもう一列入れた6段掛けなんていうのもあります。

ー旋盤ねぢ切りに必要な歯車ー
基本は5刻みで歯数20から120までの20枚の歯車にどれかと同じ端数の歯車(40である事が多いようです)をプラスした21枚が基本のセットです。
インチのねぢを切りたければそれにプラスして127の歯車も必要となります。
なぜ5の倍数なのかはこの後の具体例を見れば解りますが5と言う数字には何を掛けても5の倍数になる性質があるので歯車を管理しやすいからです。
また20から120と言う数字の理由は最小歯車と最大歯車の比率が6倍を超えないようにするためです。歯車の比率は6倍以内に収めるのが一般機械設計の基本となります。
インチを切るときだけは少し超えてしまいますがこれだけは仕方ありません。

ー具体例① 親ねぢピッチ3の旋盤でピッチ1のねぢを切る場合の歯車選択式ー
公式→(切りたいねぢのピッチ/親ねぢのピッチ)
細かい事は省略で上記の公式に数字を当てはめれば必要な歯車が割り出せます。
親ねぢピッチは3で切りたいのはピッチは1なので1/3となります。
この公式でも分子側は動車歯車を表し分母側は被動車歯車を表します。
よって主軸に1、親ねぢに3の歯車を入れればいいのですがこんな歯数の歯車はありません。
と言う事で5の倍数を分母と分子にかけて歯数の調整をします。分母分子に同じ数をかければ歯数は変化しますが比率は変化しません。
歯車セット20~120の中に収まる数は20をかけて20/60、25をかけて25/75、30をかけて30/90、35をかけて35/105、40をかけて40/120の5通りがあります。
どれが正解と言う事は無くどれも約分すれば当然1/3になりますからどの組み合わせでもピッチ1のねぢが切れます。
更に細かく解説すれば普通の旋盤は主軸側が動力となって親ねぢを回します。上記の歯車の組み合わせだと主軸が3回転で親ねぢが1回転しますので親ねぢピッチが3ならば1/3のピッチ1のねぢが切れると言うわけです。
また実際に多段方式の旋盤の歯車列に取り付ける場合は1対だけでは取り付けられないのでAかCつまり動車側のどちらかに2つある歯車の1つを、BかDつまり被動車側のどちらかに2つある歯車のもう1つを入れます。
若しくは主軸側に取り付けられるような小さな歯車であれば中間に適当なサイズの歯車を一つ入れて親ねぢ歯車と繋いでも良いです。
ちなみにWHNのねぢ歯車表には主軸30、第一中間無記入、第二中間無記入、親ねぢ90と書かれていますがピッチ1以外にもある歯数無記入の所には同じ歯数を入れるか中間に適当なサイズの歯車を1つ入れて比率が変化しないように繋げ、と言う事になります。

ー具体例② 親ねぢピッチ3の旋盤でピッチ0.75のねぢを切る場合の歯車選択方法ー
今度はピッチ0.75とかなり半端なピッチを切ってみます。
公式に当てはめると
0.75/3
このままだと計算できないので分母分子に100をかけて整数にします。よって
75/300
75の歯車はあっても300なんていう歯車はないので今度は分母分子を因数分解します。
3×5×5/2×2×3×5×5
これを歯車セット20~120内に収めるのを意識しつつ整理します。
3×25/6×50
解りやすいように変形してみると
(3/6)×(25/50)
3/6の分母分子に5の倍数をかけます。今回は適当に10をかけてみると
(30/60)×(25/50)
動車同士、被動車同士は入れ替えても比率は同じなのですが基本的に最小歯車を主軸に最大歯車を親ねぢ側に入れるのが基本になるのでその基本にのっとると選択する歯車は主軸25、第一中間50、第二中間30、親ねぢ60となります。
勿論分母分子にかける数を変えれば他の組み合わせも考えられるでしょう。

ー具体例③ 親ねぢピッチ3の旋盤でインチねぢTPI26山を切る場合の歯車選択方法ー
公式→(127/5×親ねぢのピッチ×切りたいねぢのTPI)
今度はインチのねぢを切る方法です。
127とは1インチ25.4ミリの5倍の数字です。本来1インチを親ねぢのピッチで割って切りたいねぢのTPIをかければ良いのですが1インチは25.4ミリなのでそんな数字の歯車は存在しません。歯車である以上必ず整数である必要があります。
そこで1インチ=25.4ミリに一旦5をかけて整数にし、計算上で再び5で割れば歯車比率としては辻褄が完全に合います。
こういった理由で127の歯車がメトリック親ねぢでインチねぢを切るときに必要になるのです。1インチが25.3ミリじゃなくて本当に良かった。
まあそんな理屈はおいて英国車にありがちな26山を上記公式に当てはめると
127/3×5×26
例によって因数分解して最小単位にします
127/2×3×5×13
4段掛けに都合のよい様に変換します
127×1/6×65
更に解りやすいように変換します
(127/65)×(1/6)
1/6の分母分子に20をかけます
(127/65)×(20/120)
よって選択する歯車は主軸20、第一中間65、第二中間127、親ねぢ120となります。
ただしWHNの場合だと第二中間127と親ねぢ120の組み合わせは構造的につかないので主軸20、第一中間120、第二中間127、親ねぢ65で接続します。
以上のように計算すれば自由自在(と言ってもある程度の制約はありますが)にピッチやTPIを割り出す事が出来ます。
実際に26山を切る組み合わせ。
中央上の穴のあいた軸が主軸、その下の2個並んだ歯車がタンブラ-歯車、その下が掛け変え式のねぢ切り用主軸歯車です。
主軸が20、隠れてますがそこに120が繋がって手前側連結された127、そして親ねぢの65と繋がります。

最後に

メトリック親ねぢを持つ旋盤でインチねじを切る場合はハーフナットは絶対に外してはいけません。
127と言う大きな素数が入る為に数百回転から数千回転主軸を回さないと主軸、親ねぢの同調が取れません。
これはねぢ切りギアボックスを持つ旋盤でも同様です。主軸逆回転で戻すべし

手持ちに無いギアは既製品を加工したり特注したりしないといけない訳ですが個人ユーザーも多い長谷川のWHNの場合歯車モジュールピッチは1.25です。
既製品のモジュールピッチ1.25の127歯は既にないので欲しい人は特注になります。
←リンクの白田工機がこの辺り非常に得意としているので特注歯車の欲しい方は白田工機にどうぞ。

WHNユーザー向けに自作のインチねぢ切り表+インバーターの速度表も置いておきます。
WHNメイツはご自由にご活用ください。
ねぢ歯車表.pdf

参考文献及びサイト
書籍
  • 実地旋盤用 ねぢ切り作業法
  • 技能ブックス ねじ切りのメイジン
サイト


名前:
コメント: