補給艦

 補給艦は、戦闘艦ではなく、燃料や武器弾薬の輸送が目的という点では輸送艦の一種といえるが、輸送艦があくまで港や海岸など陸上へ貨物を運び上げることが目的なのに対して、補給艦は洋上にいる味方艦に補給することが目的である。そのため、洋上で艦から艦へ貨物を移し替えるための輸送用ヘリコプターを搭載したり、貨物移送用のワイヤーを張るハイライン装置や洋上給油装置などを備えている。

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補給艦が送り届けるのは、何も燃料や食料ばかりではない。
故郷から遠く離れた洋上任務に就いている者にとって、家族や友人からの手紙はなによりの贈り物だった。
「アドルフ兵曹、手紙だ! イドルフ兵曹、小包が来てるぞ! ウドルフ兵曹、あんたは絵はがき1枚だ! エドルフ兵曹! エドルフ兵曹はどこにいる? でかい荷物が届いているぞ。取りに来てくれ」
担当士官が届いた手紙を選り分けながら配っている。配っているというより、みんな待ちかねて士官の回りに群がっているというのが正しいだろう。
家族からの手紙が来ないと判っている者は、一気に品揃えが良くなった酒保(艦内売店)に足を伸ばすか、狭い三段ベッドでふて寝をするかといったところだろうか。
「ほら、ぼくの娘だ。美人だろう!?」
「なんだよ、まだオムツも取れてねえんじゃねーか?」
「お、おとうさんと呼んで良いですか!」
ガツンッ!
「おまえにはやらん!」
妻や子供たちからの便りを読み、仲間と家族の写真を見せ合って、笑い合う乗員たち。この補給艦こそ、彼らと祖国をつなぐ命綱だ。

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一時期の補給艦は、燃料を搭載する給油艦、武器・弾薬などを搭載する給兵艦、食料を搭載する給糧艦などに用途別に特殊化することが多かった。これは専門特化することでコストを下げるという意味はあったが、一方で必要な物資をすべて補給しようと思うと船団規模となってしまい、機動力に欠けるという面もあった。
そこで脚光を浴びたのが、1隻ですべての補給をおこなうことのできる総合補給艦・戦闘支援艦である。
これらは、どちらが優れているということではなく、状況に応じて使い分けるべきツールと考えた方が良いだろう。

最終更新:2008年06月29日 13:12