第13ターン

 年次経済財政報告
-新たなステージに挑戦するFVB経済-

曲直瀬りま (法官2級,摂政)

 

はじめに


 L:FVB経済白書 = {
 t:名称 = FVB経済白書(政策)
 t:要点 = 均衡歳出,経済の戦時と平時への切替の円滑化,港湾インフラへの投資
 t:周辺環境 = 港湾,中央駅,マスドライバー
 t:内容 = {
 *歳出のバランスを考えた健全な予算を前提に、港湾インフラへの投資と税の優遇措置でFVBの国際物流拠点化を目ざす。
 *国内農業を振興し、国際競争力を強化する。
 *戦時経済への迅速な移行、戦時経済からの円滑な移行ができる経済システムを構築する。
 }
 }

 

1.NW経済の変動とFVB経済

  ニューワールド(以下NW)経済の特徴は、戦時経済と平時経済が定期的に転換し続けることにある。
  決して誰かが望んだ結果ではないが、国際情勢の悪化、世界の危機に対応するための戦争経済(民需の抑制と非生産財の増加)に移行したかと思うと平均して半ターンもしくは半月で平時体制(民需の拡大)へと転換する。そして、この平時の経済は最短で半ターン、最長でも2ターン程度続き、また戦争経済に移行することになる。
  こうしたサイクルにあっては、経済の先行きに見通しなど立たないが、見方を変えれば最長2ターンの周期での戦時経済と平時経済との転換が保証されていることを意味するのであるから、対応の方法がないわけではない。
  FVBとしては、こうした定期的な経済構造の転換を想定して、国内の体制を整備する必要がある。すなわち、戦時にも平時にも共通して経済活動の基幹となるエネルギー、資源、運輸の各分野の強化と、フレキシブルなライン変更が可能な多品種少量生産の生産システムである。

 

2.NW貿易の拡大とレムーリア進出の影響

  帝國諸国では、レムーリアへの進出を目的とした経済グループが発足し、さらなる経済発展をもたらそうとしているが、残念ながらFVBはこの経済グループには未加入である。
  それは経済的に大きな不利益をもたらすことが予想されるが、あくまで宇宙特化国として発展し、これからも宇宙特化国を歩むであろうFVBにとっては当然の結論であった。低物理域を苦手とするFVBは、グループ加盟によってレムーリアに経済的にも政治的にも軍事的にも縛りつけられることは許されないのである。
  しかし、帝國全体の傾向がレムーリアへの政治・経済的進出にあることは認めなくてはいけないし、それによる国際経済の変化にも対応していかなくてはならない。
  つまり、順風満帆に諸国がレムーリアに経済的足がかりを築くことができようと、逆に新たな戦争の火種を抱え込むことになろうと、レムーリアとNW間の物資移動が激しくなり、貿易は拡大するということである。
  だが、リンクゲートを使った長距離移動システムは、いまだ緊急時の軍隊の輸送にその能力の大半を費やしている。ゆえに、NWではいまだ水運が主力であり、各港を商業コンテナ船が行き来しているが、これがさらに加速されるであろうことは自明の起結である。

 

3.FVB経済の発展と国際物流

  最初に述べた経済活動の基幹分野のうち、エネルギーと資源については既に宇宙開発や国内事業の展開により体制を整えている。それは閉鎖型リサイクル社会から生まれたFVBが、常に他者に依存しない社会システムを指向しているためであるが、これからはそれだけでは発展が望めないことを理解した上で新たなブレイクスルーを求めなければならない。
  そのキーとなるのが港湾ロジスティクスハブの形成である。
  港湾ロジスティクスハブ、つまり国際物流の拠点となる港湾施設群を形成するのに、FVBは「帆走にも熟知した船乗りの国」「海と宙へ道が続く国」という特性を十分に活用しなくてはならない。
  今後の物流のポイントの1つはレムーリアとなることは間違いないが、一方でレムーリアは低物理域である。帆走能力を持たない動力船では到達できないし、宇宙への物資輸送もますます盛んになるであろう。
武装帆船を持つFVBなら、レムーリアと行き来し交易や鈍重な輸送船を警備することもできるし、幾ら高性能のコンテナ船があろうと、どこかで貨物を積み替えるハブが必要なのである。
FVBは宇宙とレムーリアへの玄関口となりうるのだ。

 

4.港湾ロジスティクスハブの形成

  設置した港湾ロジスティクスハブが、本当にハブとして利用されるためには2つの要素を充実させねばならない。
  1つは、輸送の安定性と定時性、つまり原材料の産出ポイントから最終消費者に届くまで止まることなく正確に物が移動する輸送サービスを確保することである。倉庫機能もハブの機能であり大きな収入源ではあるが、輸送サービスの水準が低下すれば、累積的に輸送コストが膨らみ、需要と供給のタイムラグが顧客サイドの経営判断の大きな障害となるためである。
  もう1つは、在庫保管や途中加工から配送まで含めた付加価値である。輸入した材料を消費地に送り出す前に加工したり梱包するための工場や保管倉庫等を建設したりする土地や貸し工場等を提供できるような資本投下が必要なのである。また、こうしたハブエリアにおいて関税の免除等の措置をとることで各種産業を誘致し、地域の産業を育成し雇用を促進することができる。
  開発のための基本方針は以下の通りである。

  • 通関手続きを簡略化し、輸出入貨物を非課税扱いとする。
  • 埠頭機能の24時間利用を可能とする。
  • 土地やオフィス等を安価に販売・リースする。

 

5.ロジスティクス改革による一次産業強化

  自給自足を前提にしたFVBは農業国であり、昨今は余剰の生産物を輸出するだけの余力を持つに至っている。それゆえに「農産物貿易」というテーマも無視することはできない。これもまたレムーリアとの交流が盛んになることによって大きな影響を受けるからである。
  FVBは自由貿易を否定するものではないが、国家の安全保障として国内農業の振興による食糧自給率維持も堅持しなくてはならない。国民が飢えに苦しむなどあってはならないのだ。

  そのためには、単純な保護貿易ではなく、一次生産品への付加価値付与による国際競争力の強化が必要なのだが、ここで利用すべきは港湾ロジスティクスハブである。
  鮮度向上のため経路短縮を図るにも、数を作れない生産物に付加価値を付けて送り出すにも、流通システムの効率化による生産品ロスの低下等にも港湾ロジスティクスハブは有効である。

 

おわりに

  今ターンの政策目標は、本格的ロジスティクスセンターの設立である。

  このシステムは、単に経済振興のツールではなく、戦時には兵站システムとして機能する一方で、戦時と平時を通じて最低限の市民生活の水準維持を保証する安全弁として機能することが期待される。

 

 

 ★本格的ロジスティクスセンターの開設

 海運が藩国間貿易の主流となっているNWにおいて、FVBをその物流ターミナルとすべく、藩国資本の投入でロジスティクスセンター(物流拠点施設)を設立。徹底した管理体制のもと、藩国間を行き来する商品の入庫・保管・管理・出庫業務を行っていく。

 

 ★戦時経済と平時経済

  昨今のNW情勢を考えれば、戦時経済への完全移行による戦力強化と戦争準備が望ましい。
  しかし、長期に及ぶ戦時経済は国家の体力をも弱めてしまう。幾ら立派な角を持っていても、それを支える肉体が病に冒されては意味がない。
  戦争は何も生み出さないという経済の原則はNWにおいても同じである。
  たとえばトラックを生産すれば、それは物流に一役買って経済発展に貢献するが、戦車を生産しても何かの付加価値を生み出すことはない。確かに、トラックでも戦車でも製造する工場は潤う。だが、トラックは経済システムの一部となり、製造に費やした時間や資金や資源は循環して税金として国庫を潤すが、戦車は政府に税金をもたらしはしない。戦車の製造に費やした時間も資金も資源もそのまま消えてしまうのである。
  戦争に多額の資金や資源が必要な時代では、掠奪が戦争による国家経済の損失を穴埋めすることは不可能だ。戦争のために作られた道具は、消費のために用いられるだけで、何かの生産に貢献することがないということを忘れて経済プランを立てることはできないのだ。

 

(2008.12/19 政策提出)

最終更新:2008年12月19日 20:51