クーリンガンという人物にはどこの国も酷い目にあっていて、FVBはその中でも酷い方だったと思います。だって、一時は国民の99.9%が殺されてゾンビ化してるんですから。
  そんなクーリンガン騒動も、ヴィクトリーさんや蛇神さまをはじめとする神さまたちのおかげで解決し、それ以来、FVB国内ではとんと噂を聞かなくなりました。もちろん、まったく警戒しないわけではありませんでしたが、被災した国民の救済やら経済の立て直し、海賊や船乗りなど市民の生活安定と権利救済にとみんな大わらわで、「これ以上の災厄が起こらないなら、それにこしたことはない」とあまり気にすることもなくなっていました。
  ところがいつの頃からか、「最近FVBで事件が起きないのは、誰かがFVBのクーリンガンを封じたからだ」という噂が囁かれるようになっていました。
 
 「その封印者というのは本当に存在するのかしらね」
 「どうでしょうか。あのあらゆる世界に出没する策士の行動に制限をかけられる人なんているんでしょうか」
 「でも、もし本当にそうなら、是非ともその人を捜し出して御礼くらいは言うべきです」
  FVB国内ではそんな話もかわされるようになっていましたが、本腰を入れて捜そうとしなかったのは、もしそんな人がいて見つけてしまったら、逆に注目を集めることで敵に狙われるのではないかと心配だった……というのも理由の1つです。
  ところが、ひょんなことから封印者の実在と正体が明らかにされました。
 
 「封印者の正体が分かりましたー!」
 「だ、誰!?」
 「封印者の名前はまなせというんだそうです」
 「まな……って、うっそだー!
 「だって、暁の神社の神さまだかそのお使いのお言葉でっせ?」
 「なるほど……って、いやさ、でもさ、わたし、なんにもしてないよ?」
 「確かにたいしたことはしてませんなあ。内政もミスが多いし」
 「いやあ、それほどでも……って、ちょっとは誉めろよ!」
 「けど、摂政さん、しばらく休暇とってたじゃないっすか」
 「摂政の代理でシグレさんとか天手古舞いで、確実にオーバーワークっすよ?」
 「……それはごめん」
 「まあ、せいぜい“封印の神社”の建立くらいでしょ。やった仕事というと」
 
 「「「それだーーーーっ!!」」」
 
  そんなわけで、ただいま暗殺者を警戒して逃げ回っているところなのです。なむなむ。

(959字)

 

曲直瀬りま(天戸文族)

 

最終更新:2010年05月18日 15:54