宇宙放射線病とは

  宇宙には銀河系から来るもの、太陽活動によって放射されるものなど、ガンマ線やエックス線、中性子や重イオンなど大量の高エネルギー荷電粒子が乱れ飛んでおり、これを一般に「宇宙放射線」(以下「宇宙線」)といいます。
  地上でも放射線被曝そのものは普通に起こっていますが、大気の層によって宇宙線から守られているのでほとんど問題はありません。しかし、大気の薄い高空等特殊な環境あるいは宇宙空間においてはなんらかの対策を施さない限り、この放射線を浴びる ことで健康障害が高確率で発生します。この宇宙線による障害を「宇宙放射線病」と呼びますが、これはこのような名前の病気が存在するわけではなく、宇宙線 によってDNA等が破損することで発生する、癌、白内障、神経障害、その他疾病の総称です。
  現在、宇宙で生活・就労する人間はFVBだけでも10万人存在し、対策の充実は急務といえます。
 

 宇宙放射線病対策

 1.物理障壁
  地上は厚い大気の層によって宇宙線から人体は守られています。宇宙においても、大気の層に代わる障壁を用意できれば宇宙線を防ぐことができます。
  船殻となるアルミニウムや強化プラスチックなどの素材が障壁となりますが、現在の素材では十分に宇宙線を防ぐだけの厚みを持たせると厚みが何百メートルと膨大となり、コスト的に建造不可能となります。そのため、居住ブロックとの間に燃料タンクや水タンクを配置することで液体窒素や液体水素、水な どをシールドの補助材として利用し、能力の強化を図っていますが十分なものではありませんし、放射線を吸収しすぎた(大量に被爆した)場合、障壁の素材そのものが放射能を持つ可能性があるため、船からの廃棄物や船体の廃棄についても管理する必要があります。
  より高機能な障壁素材の開発・普及が望まれます。
 
 2.電磁障壁
  電磁波で障壁を作って宇宙線を遮断する方法もありますが、これは磁場ジェネレータを動かすのに膨大な電力を必要とすること、磁場による反発を利 用するので陽電荷の宇宙線遮断しても負電荷の宇宙線を引きつける可能性があること、そしてシールドとして利用できるほどの電磁波自体には人間の生化学に有 害な影響を与える可能性があることから、補助以上の能力を期待することは危険です。
 
 3.治療薬
  宇宙放射線病は宇宙線が遺伝子情報を保存しているDNAを破壊することによって発生しますから、投薬によりDNAの放射線被害を修理する、あるいは人体の治癒能力を強化すれば治療は可能です。
  現在、治療薬としてはレチノイド(ビタミンA、レチノイン酸およびその合成誘導体の総称)による抗発癌薬が主流です。
  これを単に治療薬としてだけではなく予防薬としても利用する一方、より効果の高い治療薬の開発も進める必要がありますが、これについては既に藩国での開発・製造・流通が始まっています。【関連質疑
 

 4.活動制限
  そもそも宇宙作業者が宇宙線を大量に浴びないように、宇宙作業時間を制限する、太陽活動が激しかったり宇宙線量の多い宙域や時間帯の活動を禁止することは、作業効率を低下させますが、最も確実な予防法となります。
  これには、地上での生涯被ばく線量を予測計算して、それに応じて作業内容や宇宙空間の滞在時間を調節することを前提に、政策による宇宙空間での労働基準の整備、組織的な宇宙環境の観測による宇宙嵐の予報などがリスク低下に有効です。

  また、レントゲン検査などを緊急必要な場合だけとして回数を減らす、温泉地帯など特に放射線量の多い可能性がある場所に長く留まらないようにするという対策も必要です。
 

 宇宙嵐対策

  宇宙嵐には、フレア(太陽面の爆発)による「電磁波放射」、フレアやコロナガス大規模噴出現象(CME)によって加速された粒子が地球に押し寄 せてくる「高エネルギー粒子嵐」などがありますが、これによって宇宙作業者の被爆量の増加が起きる他、通信システム障害、ナビゲーションシステムの混乱、 帯電や粒子の衝突による太陽電池の劣化、電力設備の機能低下などが発生します。
  そのため、宇宙嵐の発生を監視し警報を出す天気予報システムの整備も急務となります。これは宇宙観光の振興にとっても重要です。

 


 

 以上は、ごく一般的な宇宙病の基本知識であり、藩国民への啓蒙のための政策です。

 これは宇宙産業振興のバックボーンとして用意しました。市民憲章、病院憲章に類似した役割のものと理解してください。

 他国との薬品や素材の共同開発あるいは情報提供等、具体的な協同作業が発生した場合は、別途あらためて政策を用意します。あくまで国の基本方針です。

 

最終更新:2010年09月03日 14:45