星の護り人+船乗り+航法士+海賊

 
 L:航法士= {
 t:名称 = 航法士(職業)
 t:要点 = 航法士、地図、天測
 t:周辺環境 = 海原

 

 

 星の海は無限の広さのはずなのだが、宇宙艦の航法スクリーンは色とりどりの無数の光沢で埋め尽くされていた。

「宇宙が黒く見えないねー」

「船が7分で黒が3分ってとこかなあ」

「どうしたんだ、プルスカット?」

 軽口をたたき合いながら、航法士たちの目はめまぐるしくデータを読み取り続け、それを入力し続ける手は休むことはない。

  今、このあたりの宙域は避難宙域に指定され、急増の輸送船やら連結されて固定位置まで運ばれていく途中の居住ユニットなどでごった返している。コスモスや開発センターの凄腕管制官たちも頑張っているが、絶対数が多いので苦戦している。それでも、なんとか回っているのは、今は少数ながら要所要所に配備されている星の護り人たち、航法士たちの技量のおかげといえるだろう。

「航路データを出しました。時間はかかるし燃料をふんだんに使うけれど安全確実なのと、燃料消費を最低限で安全係数ぎりぎりで早く入港できるのと、どちらが良いですか?」

「時間はかからず、しっかり安全で、燃料も浪費しないやつだ」

「それはB3のファイルを見てください。魔女のお嬢さんたちの艦の脇をすり抜けていくことになるんで、機関の調整も繊細になりますけど」

「本艦の操舵と機関士を信用しろ。それから宇宙美少女の艦に通信。事前にちゃんと挨拶を入れておけ!」

「了解」

 姿勢制御ノズルが作動し、艦はゆっくり回頭していく。

 まだまだ運ばないといけない物資は山ほどあるし、そちらが一息ついたら今度は旅客ユニットを組み込んで旅客船業務だ。時間はない。仕事は多い。それを何とか無事にこなしていくのが彼らの仕事なのだ。

 

 ★航法士の誕生

  遺憾なことがら、アイドレスの歴史は戦いの歴史であった。

  そして、その歴史が「航法士」という新たな職種を生み出した。ときに、ターン17終盤のことである。

  

  航法士とは、FVBにおいてに設置された船乗りの一形態であるが、この分野が開拓された最大の理由は、戦術・戦略研究が進むにつれ、航路の重要性が明らかになってきたためである。
  アイドレスの戦術において特に重要視される要素がAR、即ち機動力である点は広く知られている。更に、近年宇宙においては艦船の持つ航路が重要であることが理解され始めた。
  常に遠征の性格を持ち、地上に比べ圧倒的に広大な空間で行われる宇宙戦においては、開戦に先んじて有利な戦域を確保することが求められる。そのために、より長い距離を進む能力――航路が必要となるのである。
  さらなる激化が予測される宇宙戦に備えて、FVBではこの戦訓から航路の強化を決定した。航路を得るには艦船の持つ機関の性能はもとより、オペレートによる効率的な運用、外部から供給される航路付与燃料など様々な手法がある。
  その中でFVBが選択したのが、
星間リンクゲートの設置と、新たな船乗り--航法士の創設だった。つまり機関士の能力と機関そのものの改良で速度を上げるのではなく、バイパスの確保と天測と計算をおこなう航法士による的確な航路設定で航路そのものを短縮しようというのである。

 


  1人の新米士官が、お母さんが作ってくれたお弁当のおにぎりを持って、宇宙港に向かっている。星の護り人だって、東国人と同じようにお弁当を作るのだ。
  彼は幼い頃から計算が大の得意だった。コンピュータになど負けるつもりはない。だから「君なら優秀な航法士になれるだろう」と周囲から言われ、自分も内心そう自負して航法士に志願した。
  今ならわかる。演算能力だけでは航法士はつとまるモノじゃないと。機関士からたたき上げで航法士を務めた指導教官に死ぬほどしごかれた。FVBでは年若い 程優秀な傾向があるが、ベテラン航法士の豊富な知識と経験に基づく的確なオペレートはそうそう真似できるものではなく、やはり年長者への敬意を忘れてはい けないのは当然だと思わせられる。

  そして厳しい訓練を終え、ついに今日、正式に航法士としての任に付く。帝國の護りであるFVB艦隊の進路を示す者としての誇りと責任の重さに、自然に背筋が伸びる。帝國を、ニューワールドを守る。決意新たに彼は胸を張って進んだ。


 

 

 ★航法士の育成と普及

  人類が帆船大海原へ乗り出して以来、航法士は星と太陽を友とし、天測によって海の地図、海図を片手に大海原を航海してきたのだ。

  そのが宙となり、海図が宙域図となり、羅針盤が天球儀と電子脳に替わっても、航法士の仕事は変わらない。艦船の現在位置を確認し、航行可能な針路を測定し、必要な航法データを算出することだ。

  その性質上、第1期の航法士はベテラン機関士から選抜され、教育された。船の能力と機能について、より知っている者をという視点である。

  やがて、ルテナントの数が増え、高等知識を身につけた士官が満遍なく行き渡ったことにより、一般の乗員からの試験による選抜により航法士を養成するようになった。その試験は地球上の海洋での航法からリンクゲートや理論は知られているがまだニューワールドでは配備されていない宇宙航行機関を使った航路管制まで多岐に渡る。

  また、軍だけでなく、下野した退役軍人を中心に民間にもその有効性から航法士資格を持つ者が増え始めており、宇宙国家FVBの基幹職業となりつつある。 

 


  空に星が見えない。

  これはなかなか感動的な風景だ。

  操るディンギーは追手が続くランニング状態、怖いくらいに快調だ。ときおりジャイビングでバウの微調整をするくらいだ。

  しかし油断はできない。

  明日のゴール到達までに、どんな天候の急変があるかは分からない。もちろん気象データは入ってきているが、この定期訓練航海で、そんなものが正確だった試しはない。自分で潮の匂いをかぎ、羅針盤で位置を確認し、帆を操らねばならない。

  たとえ星の護り人としての仕事の99.9999999%までが宇宙航行だとしても、海洋の潮を忘れてはいけないというのがFVB船乗りの鉄則だ。だから、定期的に降りてきては海を往くことになる。だから無重量空間だけに適応した身体は許されない。地上世界でも通用する鍛えた身体が要求されるのだ(それはすなわちかなりの宇宙船の加速に耐えられるということを意味する)。

  これが嫌いだ、潮で肌がべとつくと文句をいう者もいるが、やらなければいけないということで意見は一致している。自分たちは星の世界における帝國とテラの盾であり剣であり、そして自分たちが護っているものの価値を知らなければ力を十分に発揮して戦うことなどできないのだ。

  この分だと夜は晴れそうだ。星がまた戻ってくるのだ。今夜はうまく天測ができると良いなと思った。


 

 ★航法士の仕事

   航法士が担当する任務・作業は、FVBにおいて従来、航法を担当する船乗りたちが担っていたものと根本的に変わることはない。使用する機材も、基本的には従来の艦船が搭載していた天球儀と電子脳そのものである(個人レベルで若干の改造を施すケースはある)。
  では、彼らをそれまでの機関士、あるいは船乗り達と一線を画すのかというと、それは「練度」である。
  前述のように、現在のFVBにおいて航法士と認められるためには、多くの知識とそれを使いこなす技量が必要である。「艦船」というハードウェアが同じでも、それを運用する人員によって大きくその力が大きく変動することは、FVBのこれまでの戦歴が証明している。FVBの武勲は、船乗りという船のスペシャリストあってのものなのだ。
  そして表面的に考えるなら艦船の能力、あるいは施設や燃料というハードウェアに依存するように思われがちな航路であっても、それは例外ではない。
  航路が人の努力によって増加出来ることは、すでに証明されていた。航法士の作業自体には、特異な点は何も無い。ただ天球儀を見、電子脳によって航路を導き出し、それに対して最適な調整を具申するだけだ。
  しかし、いかに適切な道具を選び出し、正確に使用するのか、それをなさしめる「練度」こそが、航法士最大の武器なのである。

 

 


  船殻をビームが擦過した。艦体がぐらりと揺れ、瞬間、艦橋の照明が消えた。代わって、赤い非常灯がついた。

 「被害報告?」

 「軽微。戦闘能力に支障なし」

 砲術長を務めるルテナントが吹き飛んだ帽子をかぶり直しながら笑った。

 『機関室です。出力15%低下。航行に問題ありません』

 「乗員の負傷は3名、応急手当を済ませて45秒後には復帰します」

   小型の哨戒艇でフリゲートクラスの敵を相手していることを考えれば、上々の出だしだ。

   報告の入る合間に照明が復旧した。報告にうなずき、艇長は次の行動を指示する。

 「敵を薮の中に引きずり込む!」

  そう言って指し示された宙図には暗礁宙域を表す警告が点灯している。

  宇宙空間の距離感覚は常に相対的なものだ。星系図では密集しているように見える小惑星帯も、実際にはそれぞれの距離は何百キロと隔たっている。ソル星系のアステロイドベルトに至っては、1つ1つの小惑星の間隔が100万キロから200万キロにもなる。だが、それでも宇宙基準では密集地だ。

  しかし、このエリアは少々勝手が違っていた。

  かつて大きな戦いがあり、要塞艦クラスの敵が吹き飛んだばかりだった。多くの艦や要塞の残骸や破片が回収されるか、あるいは十分に拡散するには、まだしばしの時間が必要だった。

 「航路計算は任せる。2分で済ませろ」

 「5センチ以下のデブリまでは回避の保証はできませんよ?」

 「かまわん。少なそうなところを突っ切れ。大物がかすめなければ上等だ」

  秒速5キロ、10キロで飛散することも普通なデブリは、たとえ1ミリ以下の破片であっても簡易な装甲なら突き抜けてしまう。そして、航路情報サービスがデータとして把握しているのは、5センチより大きいものだけだ。

 「やれやれ……」

  ぼやきながら航法士はヘッドセットを外すと、使い慣れた算盤を取り出し、ホログラフの天球儀を消すとからくり仕掛けの木製天球儀を引っ張り出した。まだ若い艇長は嫌がるが、手に馴染んだ道具がいちばんだ。航法データだけは最新のものを3Dモニターに表示させると、パチンと珠をはじいた。

  これからがFVB航法士の腕の見せ所だった……。


 

 ★これからの航法士

  ソフトウェアとハードウェアは表裏一体である。
  航法士が今のところ特異な存在ではないにせよ、その存在は確実にFVBに影響を与え始めていた。彼らの知見や技量は天球儀や電脳の開発に大きく寄与し、その技術進歩に寄与している。また、航法士の仕事に刺激を受けた機関士たちによる現地改修がフィードバックされ、より低負荷で高性能な機関の研究も始まった。
  艦船とは、ただそれだけで成立し得るものではない。
  それを動かす船乗りたちとの一体性こそが船であり、その航跡こそがFVBの歴史そのものなのである。航法士は常に新しい技術をみつけ、既存の技術に取り入れ、使いこなしてきた。技術の停滞は文化の衰退につながるが、進取の気性に富んだ航法士たちは、古いものを捨てるわけではなく、新しいものを拒むこともなく、常に流れを受け入れ、それを力としてきた。

  7つの世界を駆け巡る発掘した冒険艦を修復し使いこなしたかと思えば、近代以前の帆走船を建造し風力で大海原を駈け、そして今、かつてネーバルウィッチと呼ばれた海軍美少女たちを同胞として受け入れ、その中から新たな知識を取り入れつつある。

  航法士たちの未来とは、FVBの未来でもあるのだ。

 

 コスモスと航法士

  航法士が古今の様々な航行技術に習熟しているのは前述のとおりだが、現在、彼らの間で特に注視されているのがレーザー推進である。

  この技術はNWにおいては比較的新しい技術で、FVBではなく満天星国によって開発された。

  レーザー推進は現在のところそれ単独で推進を可能にするには至っていないが、照射によって既存の機関の航路を増加させる事ができる。この特性が主に長距離以遠の航海において注目されはじめているのである。

  既存の利用例からの運用研究はもとより、満天星国から公開された研究内容をもとに航法士の手によるエンジンの最適化案も検討され始めている。

  このように、自国で開発されたものだけでなく他国の技術も積極的に受け入れていく柔軟性も、航法士の強みである。

 

 航法士のファッション

  航法士には航海時代からの伝統を受け継ぎ、士官としての正装よりも頭布(髪を隠す布)好む者が多い。宇宙生活で髪を伸ばすというのであれば、無重量空間で乱れて広がる髪をまとめるには制帽をかぶったりクリームで固めるより、昔ながらの布でまとめた方が手早いからだ。

  髪を布で束ねるとなると、服も制服では見栄えが悪い。そこでスキンタイト・スーツか、帆走船時代の服を最新の素材と今風のデザインで仕立てたものが好まれる。羽織風のジャケットに膝までのズボンを組み合わせたものだ。艦剣も宇宙船規格に合わせて小ぶりだが、色鮮やかな柄糸で巻かれた艶やかな柄と豪華な塗りが施された鞘が特徴なものとなっている。

  これは服装規定に反するおそれがあったが、藩王判断で規定の方が改訂された。すべてにおいて現実対応が優先なのだ。なので問題はない。スペース・レトロはFVBのスタンダードなのだから。

  そのため、航法士が集まると、艦内のその一角は極楽鳥が舞うような光景となる。

  航法士らの肌は日に焼けて浅黒い。正確には宇宙線焼けのようなものだが、それゆえ頭布は派手な色彩が好まれ、以下それに準じた色のコーディネイトとなる。宇宙空間に放り出されたときに、見つけてもらいやすくなるから……というのが彼らの公式の言い分だが、どちらにしてもそう言う色が好きだし、似合うのだ。

 

 


 

 東国人+船乗り+機関士+海賊 (1HQ:知識+1)(2HQ:知識+1

 

 星の護り人の要点を継承。

 

 船乗り

 要点 = 髪を隠す帽子か布、艦剣、膝までのズボン

 周辺環境 = 帆船

 

 海賊

 要点 = 頭布,日焼け,鍛えた体

 周辺環境 = 海

 

機関士 ⇒ 航法士(職業)
東国人+船乗り+機関士+海賊 ⇒ 星の護り人+船乗り+航法士+海賊
藩国の要点ページURL:http://www23.atwiki.jp/fvb_sakura/pages/365.html
備考:着用アイドレス12枠より東国人+サイボーグ+理力使いと入れ替えます。

 


 

 文章・設定:アキラ・フィーリ・シグレ艦氏族,曲直瀬りま,きみこ

 図版:曲直瀬りま