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*front mission 3 【ふろんとみっしょん さーど】 |ジャンル|ドラマチックシミュレーションRPG|&amazon(B00005UBOC)| |対応機種|プレイステーション|~| |メディア|CD-ROM 1枚|~| |発売・開発元|スクウェア|~| |発売日|1999年9月2日|~| |価格|6,800円(税抜)|~| |レーティング|CERO:B(12歳以上対象)&br※アルティメットヒッツ版で付与されたレーティングを記載|~| |廉価版|スクウェアミレニアムコレクション:2000年9月28日/3,800円&br;PS one Books:2002年1月17日/2,500円&brアルティメットヒッツ:2006年10月5日/1,500円&br※表示価格は全て税抜|~| |データ配信|ゲームアーカイブス:2009年3月25日/600円|~| |分類|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |>|>|CENTER:''[[フロントミッションシリーズ関連作品リンク>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/1074.html]]''| ---- #contents(fromhere) ---- &br&br #expand(700){{{ #center(){{ &font(i,140%){欲望の果てに 狂気がうごめき}~ &font(i,140%){        狂気の果てには 終焉が横たわる} &font(i,160%){   人類は何も学ばない} }} }}} &br&br //タイトル画面のテキスト配置を再現するためにあえてずらしています。 ---- *ストーリー 西暦2034年、[[アフリカ紛争>フロントミッション オルタナティヴ]]。 2090年、[[第二次ハフマン紛争>フロントミッション]]。 2102年、[[アロルデシュ・クーデター>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/645.html]]。~ そして、西暦2112年。OCU日本にて――~ &br 霧島重工のテストパイロットを務めながら横須賀高専に通う19歳の青年「武村和輝」は、親友であり同僚の「草間亮五」と共に新型ヴァンツァーを納品する為、日防軍横須賀基地を訪れる。~ だが、2人がヘリから積荷を降ろした瞬間、基地の地下で謎の爆発がおこった。その爆発を機に、2人は全世界的な陰謀の渦中へと引き込まれていく。~ 帝北大学から特例的に横須賀基地へ出向していた、和輝の同い年の義妹「武村アリサ」。~ 敵国USNから密入国してきた若き女性科学者「エミール・クラムスコイ(エマ)」。~ 物語は2の二人の女性を中心に、二つの展開へ分岐していく。 MIDASとは? イマジナリーナンバーとは? アリサとエマ、全く接点のない筈の2人の過去に秘められたものとは?~ 紆余曲折を経て国外に飛び出し、愛する者のためにアジア圏を転戦することとなった和輝は、戦地で出会った仲間達に支えられ、策略に陥りながらも徐々に謎の真相を知り、黒幕へと近づいていく。~ &br ---- *概要 近未来、パーツの換装が可能なロボット兵器「ヴァンツァー」の活躍と、その搭乗員たちが繰り広げる人間ドラマを描いた、スクウェアの鉄と硝煙が漂うシミュレーションRPG『''フロントミッション''(FM)』シリーズ。本作『3』はナンバリングタイトル3作目として、またPSで展開された最後の作品として世に出ることとなった。~ ちなみに本作は『オルタナティヴ』を含むナンバリングタイトル中では、最も未来の時間軸に位置する物語である。 キャッチコピーの「''さらに深く、速く、リアルに。完成された第三のドラマ''。」の通り、本作は前作『2nd』で酷評されたロード問題を完全解決し、システムの一新によって前前作から続いていた問題点の大半に解答を出すと共にやり込み要素を向上させた。~ ストーリー面では、エマ編・アリサ編の2つにシナリオが分岐し、日本を始めとした東・東南アジア全域を舞台とするスケールの大きい物語が展開する。~ 一方、アクの強い主人公や「フロミらしくない」壮大・かつライトな物語には、特に過去作のファンから賛否両論の声が上がっていることも事実である。 シリーズ随一の衝撃的なストーリーが光る『1ST』、シリーズ集大成の『5』とまではいかないものの、本作を「シリーズ最高傑作」に挙げるユーザーは決して少なくない。 &br&br ---- *ゲームシステム 本作のシステムは戦闘・成長面いずれも、前2作から大幅な変更・簡略化が行われた。~ 堅実にまとまり、ストレスを感じさせないシステムは、本作の評価を大きく押し上げている。 **バトル -''部隊規模と準フリーパーティ'' --今作の最終的な部隊メンバーは8人。『2nd』の12人・『1ST』の最大18人から大幅に減少し、メンバーが絞られたことで育成が行いやすく、シナリオ面で影が薄いキャラクターも少なくなっている。 --また、''1ミッションでの出撃数は最大4機''までとやはり大幅に少なくなり、必ず主人公を出す必要もない。後述の調整と合わせ、戦術性を高め戦闘テンポをよくしている。 -''AP(アクションポイント)制限の緩和'' --『2nd』で導入されたAPシステムだったが、幾分難易度を上昇させ過ぎていたきらいがあった。今作では制限が大幅に緩和され、初心者でもすぐゲームに馴染める。 ---決して形骸化しているということはなく、無理な行動をすればあっという間に無くなるし、成長はするが回復量は固定なのでインフレも控えめ。 -''移動'' --デモシーンでしか見られなかった''ローラーダッシュ''が通常移動に取り入れられた。脚部の改造を行う事で、一直線状かつ段差がなければ通常移動より遠くまで移動できる。設定をうまくシステムに取り込み、ゲーム性の向上にも成功している。 --歴作では脚部によって移動力が制限される地形があったが、今作ではそうした面倒な制限が無くなった。ちなみに過去作と比べると脚部・胴体部のスラスター描写も大幅に増えている。 -''武器の調整'' --射程距離設定が大きく変更され、戦略性が大幅に向上。 ---近距離射撃武器は周囲1~数スクエア(武器ごとに異なる)の範囲のユニットを狙えるようになり、ミサイルは周囲3~10スクエア前後と大幅に拡大。それぞれの武器の性質も見直され、より武器ごとの使い分けを楽しめるようになった。 --格闘武器もロッド・ナックル・パイルバンカーと明確なカテゴリ分けが行われた。シールドも格段に使いやすくなっている。 --『2nd』で導入された「属性システム」は健在。一方で対空武器カテゴリと手持ち武器の弾装は廃止され、操作の簡略化と難易度の引き下げが図られている。 -''バトルフィールドの一新'' --ユニットが位置するスクエアの地形が命中率に影響する「地形効果」が廃止された。代わりに「高低差による命中率変化」が取りいれられている。 ---これに伴い、立体オブジェクトがヴァンツァーと同縮尺で描かれるようになり現実感が増した。高低差を表現して「高台に登る」アクションが重要になったことを解りやすくしている。 --オブジェクトが巨大化・立体化したことで、遮蔽物に射撃を遮られる「射線妨害」の要素も加わった。他にもオブジェクトを破壊する、地形が変化するといったギミックも登場。物資コンテナを破壊するとアイテムが出てくることも。 -''戦意喪失・投降'' --『2nd』の反省を踏まえ、投降システムが大幅に改善。''比較的簡単に敵パイロットの戦意を奪える''ようになった。更に敵ユニットを沈黙させた場合、そのユニットがヴァンツァーであったならば''戦闘終了後にそのヴァンツァーを獲得することが出来る''((ただし武装は手に入らない。なお、敵のみが使用する機体もある))。獲得したパーツはそのまま使用するもよし、売り飛ばすもよし。本作ではこの敵機の鹵獲が重要な資金源となる。 ---降伏後のユニットはその後もバトルフィールドに放置される。完全破壊して経験値を稼ぐのもよいし、後述のDBSに従って乗り換えることも出来る。 &br 以上が前作からの主な変更点となる。次に、今作から加わった新システムを挙げる。 -''人間のユニット化'' --本作では生身の人間がユニットとして登場する。基本的には対装甲ライフルで武装した兵士であるが、機体を降りたパイロットや民間人が登場することも。 ---ちなみに本作の歩兵ユニットは([[ガンハザード>フロントミッションシリーズ ガンハザード]]ほどではないが)かなり強く設定されている。攻撃力こそ貧弱だが、ハンドガン・ライフルの強制排出(後述)発生率が高いので運が悪いとヴァンツァーがあっさり無力化される。勿論、歩兵同士の戦闘が発生するミッションもある。 ---回避率は当然高いのに加えてダメージ量に補正がかかるため、ヴァンツァーの本気の攻撃にも1回くらいなら耐えてしまうことが多い。 --搭乗中のパイロットにもHPが設定されており、稀にダメージが発生するのに加え、「機体ダメージとは別にパイロットに直接ダメージを与えるスキル」も登場した。搭乗中にパイロットのHPがゼロになった場合、その機体は無人(降伏済み)扱いとなる。 -''DBS(ディスチャージ・バトル・システム)'' --戦闘中にユニットを乗り換え、より有利に戦闘を進めるシステム。''自由にヴァンツァーを降りる事が出来、無人状態となっているユニットに乗り換える事が出来る''。 ---無人状態のユニットとは、時々最初からフィールドに配置されている物と、投降済みのユニットが該当する。しかし今作では、「''強制排出''」という要素が加わった。攻撃命中時に稀に、あるいは特定のスキルにより発生し、パイロットが強制的に機体から下ろされてしまうのだ。味方の場合はもちろん、敵も当然急いで再搭乗しようとするが、そのパイロットを''葬って''しまえば永遠に無人のままとなる((「放り出されたパイロットをヴァンツァーの火器でミンチにする」という凄惨極まりない光景はファンの間でよくネタにされる。前述の通り歩兵はなかなかしぶといため、そう簡単にはいかないが。))。 --基本的にどんなユニットにも乗り換えが可能。このDBSを駆使すれば、これまでにない戦術をとることが可能になった(大破寸前の機体を捨てて生身で高回避率を生かした囮となる、そのまま代替機を「現地調達」する、ヘリを奪ってシリーズ初の空中戦を行う…などなど)。 &br **育成 本作のユニット強化は「ヴァンツァーパーツの改造」・「スキルの獲得」・「パイロットの熟練度アップ」という三つの要素から成り立っている。 -''改造――マルチ・アセンブリー・システム'' --ヴァンツァーのパーツを改造して能力値を向上させることが可能となっている。これによってパーツの完全上位・下位互換の関係が消滅し、用途別の純粋な相互互換の関係となった(内部格差はある程度存在するが)。''初期機体を最後まで使う事も何ら問題なく可能''である。パーツ毎に各種数値の伸び率も設定されている。 ---格闘・近距離・遠距離戦のそれぞれの戦闘スタイルごとに、大まかなパラメータの差がつけられている。用途に合わせてパーツを選ぶ形となり、これまで頻発していた「カッコいいのにパラメータが悪くて使いづらい」ケースが少なくなった。 -''スキル'' --戦闘中に発動し、様々な効果で戦況を優位にする「スキル」。本作では''ヴァンツァーのパーツごとにスキルが設定されており、条件が合うと発動し習得する''形に改められた。 ---改造によってパーツの性能差が小さくなる本作では「どのようなスキルが発動・習得できるか」という観点からパーツを選ぶことが重要になっている。 --一度発動したスキルはヴァンツァーのコンピュータパーツに登録が可能。コンピュータには「容量」パラメータが設定されており、この容量内でスキルを割り振っていく。もちろん自在に取り外し・組み換えが可能。 ---これまで同様、複数のスキルが発動条件を満たした場合には連続発動する。容量消費の大きい強力スキルを仕込むか、弱いが容量の小さいスキルを大量に組み込んで発動&連鎖確率を高めるか。『2nd』よりも格段に自由度が増加した。 --スキルの形態も一新されている。一方、『2nd』で大量追加された使いにくいor分かりにくいスキルは消滅した。 ---複数の味方が敵を包囲していると発動できる「射(格)援護要請」「包囲射撃(格闘)」は、後のリンクシステムの原型と呼べるかもしれない。発動時にキャラ同士の掛け合いも見られるのだが、少々発動条件が厳しく使いにくいのが残念である。 -''熟練度'' --隠しパラメータとしてある程度の補正はあるが、パイロットごとのステータス傾向がほぼ消滅し、無個性となったことでキャラメイクの自由度は大幅に拡大した。 --代わりに登場したのが、マシンガンやミサイルなどの武器カテゴリ毎に設定されている熟練度。該当武器を使い込むと上昇していき、そのカテゴリの攻撃力が上昇する。 ---ある程度は武器の攻撃力に依存するため、低くても極端に不利になるわけではない。ただし、高すぎると戦績評価にマイナス修正がかかるのでプラチナ評価を狙う場合は抑えることが求められる。時々機体を乗り換えて出撃し、成長を分散させるというのもアリ。 -''その他'' --カラーリングのバリエーションに関しては『2nd』にあったネタ色が強いものが削除され、シンプルなもののみとなった。 --FMシリーズでは機体ごとのコールサインを独自に設定可能であるが、本作では初めて漢字が使えるようになっている。 &br 育成の自由度が向上したことにより「自分の思い描いたキャラクター像を作る」「最強キャラを育成する」など、やり込み要素が強くなっている。~ また、''獲得したスキルは全て次の周回への持ち越しが可能''であり、周回プレイのストレスを緩和している。ただし両方のシナリオで使えるキャラが二人だけなのでシナリオを変えての2周目だと少々恩恵が薄く、機体や資金は引き継ぐ事が出来ない。また、登場する機体の都合で、片方のシナリオにしか登場しないキャラは一部習得できないスキルがある。 &br ---- *グラフィック・BGM ''グラフィック''は前作と比べ、格段の進歩をとげた。 -スクウェアのお家芸である美麗なプリレンダムービーは本作でも健在。近未来都市の描写、シャトル打ち上げのシーンなどは現在でも通用する出来。 --特に「MIDAS」炸裂シーンの描写と「水」の表現は素晴らしいの一言。是非一度は観賞されたい。 -前作まではごく一部のイベントシーンをのぞき、ミッションでのシナリオ進行は2Dのドット絵ヴァンツァーと台詞を組み合わせた「紙芝居」方式が取られていたが、本作ではほぼ全てのシーンが、ポリゴンフィールドでポリゴンヴァンツァーが生き生きと動きまわる3D方式に変更されている。 --ローラーダッシュで颯爽登場、相方を小突く、着地に失敗してこける、等々。 キャラクターごとに異なる敵機撃破時の勝利モーションも面白い。''より進化した「ヴァンツァーの動き」''という表現方法によって、キャラクターの個性がより分かりやすく描写されるようになった。 --コクピット内の「パイロットの視点」という演出も可能となった。 臨場感が高まり、表現方法の拡大に成功している。 ---実はヴァンツァーのポリゴン数は前作よりも減少しているのだが、向上したテクスチャ技術によりその差を感じさせない、むしろ滑らかになっているのは流石。 --ポリゴン一辺倒ではなく、視点や場所によっては従来の2D表現も用いて違和感を解消に努めている。「無理な3Dの使用」は無い。 -システム変更に従って、建造物や障害物が増加するなど、バトルフィールドの描写レベルも向上している。 &br ''BGM''はこれまでのナンバリングタイトルを担当していた松枝賀子が降板。『超兄貴』や『ラストハルマゲドン』で知られる''葉山宏治''と、様々なジャンルで編曲・楽曲提供を行っている''松尾早人''が連名で担当している。また、''Shigeki''が「政府」を作曲している。 -これまでの楽曲と比べると重厚さが抑えられ、従来よりも近未来的なイメージの強い作風と合致した、ライトでスピード感のある楽曲が多数を占めている。『オルタナティヴ』のテクノ路線も少なからず影響しているのか、環境音楽的な曲も多い。 --特に人気なのは、落ち着いた日本国内のインターミッション曲「街(日本)」、疾走感あふれる戦闘BGM「進攻」「速攻」、オープニングと最終決戦時に使用された「決戦」といったところだろうか。とりわけ「決戦」は本作の中では突出した壮大さと、本作特有の疾走感が絶妙に絡みあった名曲である。通常戦闘時BGM「侵略」は後のシリーズでもアレンジが加えられ使用される、息の長い曲となった。 &br&br ---- *ゲームの流れ 前述の育成もそうであるが、詰将棋・クリアランク・ネットワーク・シミュレーションなど、本作では''やり込み要素の拡充''が図られている。 **ミッション シミュレーション戦闘を行うミッションパートでは、歴作と同じく「マス目状マップでのターン制戦闘」が行われる。 -遅すぎた『2nd』から一転し、シナリオデモに入るとき以外''戦闘中のロード時間はほぼ無い''。戦闘のテンポも格段に良くなった。 --各ユニットと戦闘デモの簡略化や、通常画面と戦闘デモ画面を共有することで大幅な短縮を実現している。『4』以降の戦闘デモも本作に準じている。 ---戦闘デモは『2nd』のオーバーな動きを排したコンパクトなものとなった。だがカメラカットやモーションを工夫することで迫力を維持しており、『2nd』とはまた違った良さを獲得している。 -バトルフィールドは前作までの「広大さ」を抑え、「密度」を重視したような構成となった。カメラ位置が変更され、よりメカに近い視点から描かれている。 --これまでは施設の全てとその周辺を一つにまとめて描いていたものが、施設の一角をクローズアップした小さなマップが多数描かれるようになり、''小規模なミッションが連続''する形になった。 ---最大4機の味方に合わせて敵の出現数も抑えられ、フィールドが小さくなったことも合わさって''1ミッションあたりの所要時間が大幅に短縮''され、ダレることが無くなった。後述のランク査定と合わせ、いかに効率よく戦闘を進めるかという''詰将棋的な楽しみ方''へのシフトが行われている。 --前述したように周囲の建造物とヴァンツァーのサイズが等倍に近くなり、現実感が増した。また、これまでと違い「1ユニットにはその大きさ分のスクエア」が与えられ、大型ユニットの大きさが強調されている。 ---今作の大型メカにはこれまでになかったタイプのキワモノが多い。水陸両用の四脚や、通常の二倍強はある大型ヴァンツァーなど。遂にビーム兵器搭載機も登場した。 -前述の詰将棋的な楽しみ方の一環として、ミッションのクリア時には成績に応じ、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの''四段階評価''が行われるようになった。 --高評価を収めると特定ミッションで隠し機体が登場したり、シミュレーターの敵が特別仕様に変化するというフィーチャーも存在する。とはいえ、基本的には自己満足の為の指標であり、獲得ランクによってシナリオ進行の上での有利不利が発生することはない。純粋なやり込み要素である。 --ちなみに制作者インタビューによると「クリアだけなら簡単だが、プラチナ評価の条件はかなり難しくしている」とのこと。 ---ターン数やレベルはもちろん、「総戦闘回数(そのミッション内で行われた戦闘の回数)」「平均ダメージ(戦闘1回あたりの自軍の被ダメージ)」といった特殊な要素まで参照される。ガンガン反撃していけば戦闘回数は減るが平均ダメージは増え、シールドなどで守りを固めれば平均ダメージは減るが戦闘回数は増える……と二律背反的な関係で、バランス取りがなかなか難しい。 -1戦闘の小規模化に伴って、シナリオの進行方式も変化している。 --歴作では1ミッションごとにシナリオが区切られる、小説の章立てのような展開方式が取られていた。今作では細かい戦闘が連続することで徐々にシナリオが進行していく形となったため、シナリオの切れ目があいまいとなり、TVドラマの様なスピーディーな展開が楽しめる。部隊を4機づつの2組に分け、異なる場所でそれぞれが活動するザッピングシナリオも本格的に取り入れられた。 --''総ミッション数はエマ編・アリサ編合わせて約120''という驚愕のボリューム。1ミッションあたりの戦闘時間は約15分だが、それでも遊び応えは非常に大きい。 &br **インターミッション ミッションが終了するごとに挟まれるインターミッションではセーブ・ロードと、ネットワークに接続して各種情報のやり取りや、ネットワークショップを使ったヴァンツァーのセットアップを行う。~ この「''天網''」と名付けられた疑似ネットワークは非常によく出来ており、本作を語る上では外せない要素の一つに数えられている。 -『2nd』では「パソコン通信」風だったネットワークは、今作では「一昔前のWWW」に近づいた形となった。 --各フォーラムの作りは妙に凝っており、実際のwebページにアクセスしているような雰囲気を味わえる。時代が時代だけに「ホームページビルダー製」感が漂っているのは御愛嬌(何せ「ISDN基地」が登場するくらいなので…)。 ---質問・雑談掲示板が供えられたフォーラムもあり、一般市民の他愛ない書き込みが世界観の演出に一役買っている。 ---パスワードがかけられたコンテンツもあるが、これは劇中でも示される通り、ある一定の規則に従ってパスワードが設定されている。この規則を見つける楽しみも生まれた。ゲームを進めるにあたって必ず解かなければならないパスワードは存在しないため、面倒なら放置してもかまわない。 ---情報や、ファイル解析に使うツールをダウンロード購入することも可能。 -当時はまだインターネットのハードルが高かったこともあり、よく作りこまれたこの「疑似ネット」は、多くのユーザーから好評を得ることになった。パスワードを探す論理問題も「作中のスペンダー(所謂ハッカー)気分を味わえる」と評判だった。 -今作のネットワークには''メールソフトやデスクトップ機能''が追加されている。 --物語が進むごとに特定のタイミングでメールが送られてくる。一部のメールには返信が可能で、これによって軽いサブストーリーを追う事が出来る。 --デスクトップでは、ネットワークでダウンロードしたり、メールに添付されたファイルの閲覧・分析が可能。背景画像の設定も出来る。 ---分析には前述のネットワークで入手したツールを使用する。解析することで裏データを入手することができ、これによってストーリーの裏事情や、フォーラムのパスワードを知ることが出来る。 -''ネットワークショップ''は『2nd』のものよりだいぶ使いやすくなった。パーツの改造も可能である。 -歴作の「闘技場」は消滅し、代わりに模擬戦闘が行える「''シミュレーター''」がインターミッション中にプレイできるようになった。失敗時のペナルティも消滅。 --経験値・スキルの入手といったキャラの育成や小金稼ぎがいつでも行えるため、ゲームが詰んでしまう状況は起こらなくなった。 &br インターミッションを抜けると殆どの場合、FMシリーズではお馴染みの次の舞台となる地区・場所へ移動する''ロードマップ演出''が挿入される。 -ワールドマップでは国から国へ、国内マップでは地域から地域へと移り変わる。マップは現実の地名に即した分かりやすいものとなっており、現実感を煽っている。 --巨大建造物の内部を移動する際にはその建造物の内部マップが表示される。巨大建造物と合わせて、これはシリーズ初の試み。 -このマップ演出がより詳しく・丁寧になったことで、世界各国を転戦するシチュエーションを強調することになり、壮大なシナリオを彩る1要素として定着している。 歴作のインターミッションの慣例である''都市''の描写も変わらず存在する。 -今作では一戦ごとに都市に移動するとは限らないために幾分影が薄くなっているが、重要度は変わっていない。これまで通りに「拠点・ショップ・酒場」の三大要素が揃っており、シナリオを進めるための場として機能する。 &br **シナリオ 本作はシリーズ唯一の、''ダブル・フィーチャー・シナリオ''なるシステムを採用している。 -…要するに冒頭の些細な選択肢で「''エマ編''」と「''アリサ編''」に物語が分岐するという、よくあるシステム。~ だが、この"DFS"は大まかなルート・目的自体は共通しているものの、内容自体は単なるザッピングシナリオではなく、全く異なる物語が繰り広げられる。 --一方のシナリオで深く関わり、仲間として共に戦った人物が、もう一方では単なる敵として登場するドライな、しかしその人物の事情を知っているだけに複雑な心境となる状況も。勿論逆のパターンとして「ただの敵」であった人物の深い人物像を知ることで得られる楽しみもある。 --立場や視点を変えることで分かってくる「''人物の二面性''」を意識したキャラクターの描き分けが行われており、特に主人公の和輝と、それぞれのシナリオのキーパーソンとなるエマ、アリサにはそれが顕著に表れている。 ---設定資料集によると、エマ編の和輝は『優しさや清らかさを表す「白」』、アリサ編の和輝は『強さや熱情を表す「赤」』というイメージで描かれているとのこと。エマ編では不器用なりにエマを気遣い、アリサ編では何としてもアリサを守るため、荒々しい手段もいとわない。プレイしているとその辺の違いが分かってくる。 作品の主題として、本記事冒頭でもタイトル画面から引用した『''人類は何も学ばない''』というテーマがある。 -FMシリーズを通して描かれてきた人の業。時間軸上では最も未来に位置する本作においても、他人を顧みず、自らの弱さに向き合わない狭い心から争いが始まる。 --DFSによって分かれる2つのシナリオはいずれもハッピーエンドを迎えるが、歴作と同じく、それは単純なハッピーエンドと言い切ることはできない。~ 国家の利害関係から生まれる陰謀、生命倫理の軽視、いたずらに国を疲弊させたクーデターと、歴作で描かれた負の系譜は本作にも根付いている。 --現在からおおよそ100年余り先の未来が舞台ではあるが、多少の技術発展はあるとはいえ、そこで描写される社会は現在のそれと何ら変わらず、技術レベルも目新しいほど進歩しているわけではない。~ 非人道的な政治的駆け引きや富の偏り、前時代的な一党主義国家等々。また、99年当時から問題となっていた「遺伝子操作の問題」が物語の重要な位置を占めており、歪んだ研究から生まれた存在と主人公たちは対峙することになる。こうした現代社会との共通点を随所にちりばめることで、人類の負の普遍性と、人類の存在価値への疑問が暗に示されている。 &br と、このように深く重苦しいテーマが込められている本作だが、実際にプレイするにあたっては、そこまで気負うことなく、さくさくと遊ぶ事が出来る。 -世界をあちこち転戦するという今までのFMシリーズではなかったヒーロー作品調のストーリーライン。次はどの国へ、どの地方へ向かうのか。そこでどんなドラマが待っているのかと期待させてくれる。展開上、日本と大漢中人民共和国(現在の中国)の比率が高いのはやむなしか。 -主人公と親友が学生であることもあいまってか、コミカルな描写が増えている。ベタではあるが燃える、笑える、ほろりと来る部分も多く、安心してプレイできる。 --前述したような3D演出によってテキストのみに頼らない作劇が出来るようになり、なおかつテキスト部分もネットワークシステムの進化によって更に多彩な描写が出来るようになったことを最大限に生かしている。 ---『100年後のスクウェア』『劇場版フロントミッション』『[[100年くらい前のゲーム>ゼノギアス]]のコスプレ写真』などの笑える内輪ネタも多い。 &br ---- *難点 -''パーツカテゴリ再編と改造システム導入による弊害'' --「1つのパーツを長く使う」事になる以上、余りに大量のパーツを出しては捌ききれなくなってしまう。このため、歴作に比べて機体パーツの種類が少なくなっている。武器腕や戦車型・車両型脚部パーツに至っては全削除され((後者に関しては「高低差に弱い」という設定があり、走破性の問題がない以上本作のゲームシステムに合わないため、登場が見送られたと考えられる。))、キャノンやバズーカといった一部の武器カテゴリも廃止されている。 ---「使用する意義が無くグラフィックもほぼコンパチ」の有象無象パーツを一掃し、簡略化したとも言えなくもないが、やはりどこか寂しい。敵のみが使用するカテゴリもあるのは不公平感がある。 -''スキル関連'' --小型スキルには幾つか容量パフォーマンスのよすぎるものがあり、大型スキルの不遇に拍車をかけている。あと一歩の調整が欲しかったところ。 --特定条件下限定のスキルでもパーツ説明には曖昧な発動条件しか書いていないため、発動条件が解りづらく習得に時間がかかるスキルがある。 --前述の通りバトルスキルの引き継ぎが可能な本作だが、スキルの設定は最序盤のミッションを幾つかクリアした後に行えるようになるため、しばらくは初期状態のまま頑張らねばならない。初期機体のスキルを覚えきっている場合はより苦戦することになる。 ---機体と資金が引き継げない事に不満を呈すユーザーも。引き継げたらゲームバランスがおかしくなることは間違いないが。 -''その他'' --この時期のスクウェア作品に共通する欠点として、チュートリアルと一部のムービーが飛ばせない。 --フォーラムには所謂「更新履歴」機能がないため、更新されたかどうかいちいち確認して回らないといけない。一応「お気に入り機能」はあるが使いづらい。 --ユーザーが余りアクセスしないであろうマイナーフォーラムの内容は少々しょぼい。総数が多いため、重要度の高いものを優先したのだろう。 &br *賛否両論点 -''その男、武村和輝'' --本作をフルに楽しめるか否か、そこは和輝の言動を許容できるかどうかという部分が大きい。少年漫画然としていながら癖が強く、ユーザーの共感性の低い和輝は特に歴作プレイヤーからの不評を買った。どこか影があり、熱血とは程遠かった歴作の主人公達とのギャップが余りに大きかったことも原因であろう。 #region(「バ和輝」たる由縁) 彼を一言で言い表すなら「熱血シスコン石頭」といったところだろうか。 -''熱血'':仲間を信じ、弱き者を助け、悪を打ち破るため迷わず突き進む。一方で激しやすく、トラブルを起こしたり、周りが見えなくなることもしばしば。 --彼の名誉の為に補足すると決して自己中心的ではなく、仲間をフォローしたり、裏切りが疑われる仲間を信じ抜くというシーンも度々ある。…が、それがあまり印象に残らないほど普段の激しい一面が強いのも事実。 --和輝が提案する作戦の殆どが「''正面突破''」であることはよくネタにされる。一応全くのバカというわけではなく、落ち着いていればそれなりの思慮を見せるのだが、熱血ぶりが先行してしまうことが多い。 -''シスコン'':和輝はアリサ絡みの話題となると途端に冷静さを失う。特にアリサ編で顕著。 --和輝とアリサはとても仲の良い兄妹である事がしっかりと描写されている。それだけに和輝の暴走も解らない事はないのだが、それでも弁護しきれない場面も多い。 --最たるものがアリサ編開始直後の騒動だろう。「基地の爆発にアリサが巻き込まれた''かもしれない''」と、''納品に来た筈の新型ヴァンツァーで現場へ向かおうとし、制止した日防軍機を中破させ、軍警察に逮捕される''。立派な重犯罪です。 --エマ編序~中盤でも事あるごとに「アリサが!」と妹の名を連呼する。エマ編ではアリサの安否が殆どわからない状態で、心配するのも無理からぬ事なのだが。 ---挙句の果てに''シスコン癖を敵に利用される''ことも。ちなみにこの「アリサアリサ病」は中盤以降落ち着くが、今度はアリサと深く関わるある人物に伝染し、逆に和輝がその人物を諌める場面が増える。 -''石頭'':とにかく和輝は頑固であり、熱血な性格と合わせて問題となることが多い。 --顕著な例として、和輝と父の伊佐夫は大変な不和である。これは伊佐夫が妻の最後を看取りに来なかったことから始まる不和なのだが、作中ではそのことがろくに説明されず、おかげで''和輝が一方的にごねている様にしか見えない''(ただし伊佐夫も「この親にしてこの息子あり」と思わせるような態度を取ることも)。 --もっとも、事情を知った上でも、和輝の伊佐夫アレルギーは一般的な親子の不和の描写に比べ、過剰描写気味に見えるのは間違いない。 #endregion --今でも和輝はシリーズで最も好みの分かれるキャラクターとして認知されている。そして彼を容認するファンも彼の悪い意味でのはじけっぷりは否定せず、「''バ和輝''」の愛称で親しんでいる。 ---ちなみにFMシリーズの大手ファンサイト「TEN-MOU」で行われている非公式のキャラクター人気投票では、和輝は大体3位~5位辺りの順位をキープしている。 -''大幅に変わった作風'' --本作は殆ど「リニューアル」と言ってもよいほどに、これまでのシリーズとは異なるシステム・BGM・ストーリーテリングの要素を持つに至った。当然、これまでのシリーズに慣れ親しんだユーザーの一部からは戸惑い、または批判の声が上がった。 ---特に「初期機体がゼニスではない」「主人公が未成年」「ロボアニメ的な作風」「日本が舞台の一つ」といった部分は、ユーザーに強いインパクトを与えた。 ---個性的な外観の大型機動兵器やビーム兵器を装備した機体を「世界観にそぐわない」と敬遠するユーザーも。 --作風に関しては完全な個人の好みの問題である。ただ前述の「バ和輝」も相まって「好き嫌いの差はシリーズ中最大」であることもまた事実。 -''その他'' --「民間人が戦いに巻き込まれるお話」ではある意味お約束の「人殺しに向き合い、迷いを断ち切る」描写が薄い事に難色を示す人も。それまで戦争とは程遠いところにいたはずの和輝達だが、やけにすんなりと戦闘に順応する。アリサ編序盤での亮五の台詞「人殺しにはなりたくない」がその後完全にスルーされるなど、シナリオ暗部の補足が足りないと言われている。 ---これも個人の好みの範疇に入る課題ではある。また本作のゲームシステムを考えると、そうしたイベントを描いているとゲーム面での折り合いをつけるのが大変になってしまうのも事実。 --簡略化された戦闘デモは全体的に好評を得ているが、『2nd』派からは「動きのダイナミックさ・重厚さが無くなった」との声もあった。 &br ---- *総評 前作までの不満点を見事に解消すると共に、優れたゲームシステムを構築した集大成的な作品であり、シナリオの新たな方向性を模索した意欲作でもある。~ 単体のSRPGとして見れば、間違いなく名作~傑作の部類に入る作品であろう。 しかし、「硬派で渋いフロントミッション」が好きな一部古参ユーザーや、主人公の性格が受け入れられなかったユーザーから「こんなのフロミじゃない」「フロミでやる必要があるのか?」などと叩かれることも少なくない。~ FMシリーズは作品ごとの良点・欠点が分かりやすい傾向にあるが、本作はとりわけ既存作との差が激しかった事が災いしたと言える。 &br 気軽にさくさくプレイでき、なおかつ尋常でないボリュームをもったシミュレーションバトル。~ ノリこそ軽いが熱い部分が光り、クライマックスの重い展開は他のシリーズにも劣らないシナリオ。~ 90年代末期の熱気と、制作陣の熱意が伝わってくる作り込み。~ ゲームアーカイブスで手軽にプレイできるようになった今、フロントミッションの一つの終着点をぜひ体験してもらいたい。 &br&br ---- *余談:機動警察パトヴァンツァー? 日本アニメ史に燦然と輝く押井守監督の2作品『機動警察パトレイバー the Movie』(劇パト)と『機動警察パトレイバ―2 the Movie』(劇パト2)。~ 本作にはこの二作を強く意識したような点が妙に多く見受けられる。 #region(類似点・三作品のネタバレ要素を含むので注意) |CENTER:''FM3''|CENTER:''パトレイバー''| |街に日防軍兵士が1人立つタイトル画面|『劇パト2』での戒厳令の描写| |アラスカ放射線研究所のシーン&br(銃撃され倒れるヴァンツァーと、その無人のコクピット)|『劇パト』冒頭の暴走レイバー事件の結末| |本作の最重要地域・沖縄海洋都市|『劇パト』の最重要地域・「方舟」| |沖縄海洋都市の政府広報|『劇パト』のバビロンプロジェクト政府広報| |「春陽」起動シーケンスの描写|レイバーOS起動シーケンスの描写| |数年前の日防軍海外派遣部隊&br「満足な武装もないまま戦闘に参加して、全滅したってやつか」|『劇パト2』冒頭の国連軍部隊の結末| |日防軍クーデター|OVA5~6話「2課の一番長い日」、『劇パト2』の「架空の戦争」&br(首謀者の行動原理が一部共通している)| |沖縄海洋都市・内部構造データのパスワード「EHOBA」|『劇パト』の方舟解体用パスワード「E・HOBA」| |沖縄海洋都市・ブロック分離シーケンスの描写|『劇パト』での方舟解体シーケンスの描写| |警察用ヴァンツァー「MHX-12」((型番の元ネタは「To Heart」のマルチから。))|パトロール・レイバー「AV-98」| #endregion ちなみに警察がらみのネタとしては他にも、ドラマ『踊る大捜査線』のパロとして、『''もえる大捜索線''』なる映画の撮影に日本警察がヴァンツァー隊を出して協力した、という情報が日本警察機構のフォーラムで掲載される。また、本作の登場人物の一人「新条美穂」のモデルは、『踊る』の登場人物である、水野美紀氏が演じた「柏木雪乃」であることが知られている。 &br&br ---- //揚げ足取りと煽りあいの場となっていたので、容量削減もかねてコメント欄を削除
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