真宵×成歩堂⑤

 仕事が終わった後の入浴は極楽だ。
例えそれが自宅の狭い風呂であっても、丁度良い湯加減が疲れた体を芯から温め癒す。
「でも狭い…」
「そうだねぇ」
 湯船に脚を縮めて浸かっているぼくの上に、半分乗っかるように向き合っている真宵ちゃん。
風呂に入ろうとした時、一緒に乗り込んできたのである。
浮力のせいで重くはないが、うぅ、身動きが取れない。
「二人で入るには浴槽が狭すぎるんだよ…」
「でも一緒に入るのは楽しいよ」
「…ぼくはもう出るから真宵ちゃんは温まってなよ」
「あ、だめ!なるほどくんが出ると、お風呂のお湯が少なくなっちゃうんだもん」
「お湯ぐらい足せばいいだろ、もう体洗うから」
立ち上がり風呂の縁を跨ぐと、腕を掴まれた。
「じゃあ、あたしが洗ってあげる」「ええぇ~?」
「何そのイヤそうな顔は」
 真宵ちゃんも続いて湯船から上がる。不満げな顔に仕方なく、ぼくは小さな風呂椅子に腰を下ろした。
「フフフ、覚悟を決めたようねなるほどくん…」
「な、何の覚悟だよ…」
「やだな、冗談だよ。髪洗うでしょ」
 そう云うと、豪快にぼくの頭にシャワーを掛けだしたので、慌てて目を瞑った。

「トノサマンシャンプーハットないの?」
「(あるわけ)ないよ…」
 なんだそうなんだ~と云いながら、シャンプーを手のひらで泡立てて、髪をしゃかしゃかと洗い出す。
「かゆいところはありませんか~」
「右のこめかみの辺りが少し…」
「はい、ぽりぽりぽり…。なるほどくんの髪、硬いね~針金だよー。自分の手に刺さらないの?」
 …失礼な…と思ったが、真宵ちゃんの洗髪は意外にもなかなかなのでぼくは黙っていた。
そうして、つつがなく真宵ちゃんはぼくの髪を洗い終えた。ふぅ、さっぱりした。
「じゃ、次はなるほどくん。あたしの髪お願いね」
「うえ、ぼくもやるの?」
 顔を洗ったついでに髭剃りを始めていたぼくは、危うく手元が滑りかけた。
「当たり前だよ。やられたらやり返す、鉄則でしょ!目には目!」
「それはちょっと違う…」
 ぼくのツッコミを完璧にスルーして、真宵ちゃんは頭のてっぺんにひとつに纏めていた髪を解いて、
ぼくの腰掛けていた風呂椅子を横取る。腰というよりお尻くらいまではある、艶やかで黒いなっがい髪だ。
「これをぼくに洗えと…?」
「思ったほど長くないでしょ」
「いやいやいやいや…」
 どうしたものかと思いつつ、とりあえずシャワーをかけて髪を湿らせる。
指を差し込み梳かしてみると、しっとりしているがコシのある髪だ。
「カラスみたいだなあ」
「そういうのは濡れ羽色って云うんだよお…」
 先程真宵ちゃんがやったのと同じように髪を洗おうとするが、他人の、しかもこんな長い髪なんか
洗ったことがないのでどうも要領を得ない。そのうち、真宵ちゃんは自分でも手を入れて洗い出した。

「どうせ不器用だよ…」
「…お姉ちゃんがねえ」
「?」
「生きてた頃は、こうやって髪の毛洗ってくれてたりしたんだよ」
「…そうなんだ」
「でもなるほどくん、ほんとヘタだねぇ」
「ほっといてくれ」
 ようやく洗い終わると、真宵ちゃんは湿った髪を再び頭の上に結わき、ぼくは湯冷えしないように
お風呂のお湯を掛けてやった。
「じゃあ、次はなるほどくんの体を洗います」「……」
 そう云いつつも、真宵ちゃんは石鹸で自分の腕やら胸やらを洗い出した。
「ぼくを洗ってくれるんじゃなかったの」
「だから、こう洗うんだってば」
 真宵ちゃんはぼくの背後にまわってぺっったりと抱きついた。
泡だらけの温かい二つの小さな膨らみが、ぼくの背中にすりすり上下に擦りつけられる。
「…こ、こんなことどこで覚えたの?」
「え??」
「…なんでもない」
 …しかし、おっぱいで洗ってくれているというよりは、胸と腹全部を押し付けているといった方が
正確な気がする。まあそれはそうとしても、真宵ちゃんの柔らかい体が気持ち良いことに変わりはない。
シチェーションも手伝って、ぼく少しずつ善い気分になってきてしまった。
「男の子は洗いっことかしないの?」
「えッ?」
「あたしはみちゃんと背中洗いっことかするけど…。あ、でもこういうのはなるほどくんが初めてだよ!」
…なんだ、気色悪い想像をしてしまった…うぇ。
「うーん、素潜り競争とかは小学生の時したけど…そういえば、修学旅行かなんかで矢張に風呂に突き落とされた事もあったような…」
「あはは、楽しそうだね。あたしはお姉ちゃんのおっぱい揉んで怒られたことあるよ」
「…揉…それ昔の話?」
「そうでもないかなー。なるほどくん、お姉ちゃんのおっぱい触ったことある?」
「ななな何を訊くんだよ!」
おっぱいを使いながら、そういう生臭い話はしないでくれ…。
「すんごいぽよんぽよんして柔らかいんだよ」
「……」
「…あたしはこんなぺたんこなのに」
「まあ、ぼくは好き嫌いしないタイプだから…」
選り好みするような奴は、男とは思えない。
「そうなんだ…。でも…こっちのなるほどくんの背中は大きいから洗うのちょっと大変」
「手ぇ使ってもいいよ」
「だって…」
「ああ、それじゃ真宵ちゃんが気持ち良くならないもんね」
 さっきから真宵ちゃんは、胸の先端だけが当たるように何度か擦りつけているのがわかったから。
「…っ、そういうわけじゃないよっ」
「そう?」
 ぼくが思いっきりいぶかしんだ顔をして振り返ってやると、真宵ちゃんはぼくの肩に顎を乗せて、
ぼくの胸の先端を泡のついた指先で摘まみはじめた。あ…ちょっと、いいかもしれない…。
「…こういうのが出来なくなっちゃうでしょ」
「ふうん」
「なによぅ」
「別にぃ。背中の動きが止まってるよ」
「む…」ぼくは、伸ばされている真宵ちゃんの腕を掴んで云った。
「こっちの手を動かしたまま背中を洗ってくれよ」
「それじゃあやりにくいよぉ」
「いいから」
 背中に張り付いて動けない真宵ちゃんは、じたばたと胸と腰を捩るので、押し付いている乳首が
強く擦られて、尖りきっていくのがわかった。その陰毛もぼくの腰に当たるのがこそばゆい。
「んもう、なるほどくぅん…っ!」
「はいはい」
 これ以上怒られる前に、真宵ちゃんの腕を自由にしてあげる。
「いじわるするんならもう洗わないっ」
「もうしない、しないから」
 後ろを振り向いて、膨れっ面の真宵ちゃんを、今度はぼくが洗ってやることにした。
その頬から首筋、丸い肩、そして腕、指先。うなじから脇の下、つつましく膨らむ乳房のほのかに
色付いた先端のみ避けてみぞおちに、舐め様にに手を這わす。僕の膝の上に片脚ずつ乗せさせて、
足指から太腿を洗い、体の後ろに手をまわして、背中から腰、腰から尻への滑らかなラインに手を伸ばす。

 ぼくはその細く小さい少女の体とそれへの自分の行為に、非常に猥褻なものを感じた。
…何かいけないことをしている大人のようで…いやいや、法律的には問題ないわけなんだしさ…
などと自分にフォロー入れつつ、今さら悶々としてみたりして…。
 真宵ちゃんは体を捩じらせながら呟いた。
「あたしね…なるほどくんの大きい手…だいすき。すごく、体がぞくぞくする…」
 …やっぱりそんなことを云われて、いきり立たない男はどうかとぼくは思う…そうじゃないのか?
「はぁ…」ささやかに膨らんだ乳房を両手で軽く包み込むように触れると、肩を竦めて溜息を逃がす。
片手で尻を掴むように撫で、もう片方の手で淡い薄紅色の胸の先端のまわりを優しく撫でると、
真宵ちゃんは目を瞑ってふるふると震えながら口走る。
「もっとちくびぎゅってして…」
 …その言葉通りぼくは、固くすぼまった乳首をこりこり摘み上げたり、痛くない程度にきゅっと
引っ張ったりすると、真宵ちゃんは俯き身を縮こませてながらぼくに抱きつき、再び深く熱い吐息を洩らす。
「すごく…感じちゃう…」
真宵ちゃんは少し笑うと、僕の腕を自分の乳房に擦りつけ洗いだす。
「もう、先っぽがびんびんしすぎて痛い…。それに…ぁ、やっぱりすごい濡れちゃってる…」
 自分の股間に手を伸ばし泡だらけにすると、今度はその股に僕の脚を挟んで前後に擦りだした。
「んっ…ン、…んぅッ…ぁ、はぁ…」
真宵ちゃんの陰毛やひだの感触をぼくの太腿に感じる。
自分で気持ちがいいんだろう、その童顔に似合わない腰使いは見ているだけで充分いやらしい。
 するりと伸ばした小さな手がぼくの肋骨の辺りに触れると、ぞくりと堪え難い感覚を与えらえ、
むくむくとぼくは催してくる。
「…なるほどくん」
 勃ち上がったそれを、真宵ちゃんはぼくらの腹の間に挟み込むようにしてぼくの膝に跨った。
「いじめちゃうよ…」
ぼくの肩を掴みながら、自分の乳頭をぼくの胸先に突付く様にくにゅんくにゅんと押し付ける。
「んン…ムズムズする…。なるほどくんも…おっぱい感じてる?」
「うん…」
…今は擦れてるペニスの快感の方が大きいんだけどね…。
「じゃ、ちょっと待ってね」
 真宵ちゃんはぼくの胸についた泡をお湯で軽く流すと、ぼくの乳首に自分の唾液を塗して吸い付いた。
舌で転がされたり、ちゅうちゅうと吸われたりすると、次第にくすぐったさが下腹部への快感に変わる。
ぼくも真宵ちゃんに開発されつつあるのだろうか…末恐ろしいことに…。
 そして、それに加えて、ぼくのペニスは左右に捻る様に軽く握られだす。
「うぁ…」
「気持ちいい?」
「ン…、でも、先っちょの方はあんまり石鹸で擦らないようにして」
「何で?」
「後でおしっこする時凍みるんだよ」
「ふぅん…」
真宵ちゃんはぼくの根本とその下の袋、尻から肛門にかけてまでも手を伸ばしてきた。
「ちゃんときれいにしてあげるからね」その指は余すとこなく丹念に
ぼくの下腹部を這い回る。…うぅぅ…ぅ…、ぁー…恥ずかしさと快感で、ぼくはいい加減参ってきた。
 お湯で全体の泡を掛け流されると、今度はペニスの先端を優しくお湯で洗われる。
「あたし、なるほどくんのおちんちん可愛がるの結構好きかも…」
亀頭の窪みに沿って擦られると、びくびくとペニスは震える。
「…っ」思わず滲み出る先走りはぺろりと舐め取られた。
「ねえ、一回出しちゃおうか」
「え?」
「その方が楽だよね」
「いや、そんな後でいいよ」
「だってこんなに大きいよ?」
「う…」
否定出来ないまま、真宵ちゃんは今度は泡をつけてぼくの根本をこしこしこしと素早く扱き出す。
「痛くない?」
「う…ん、…く、…ぁ、ぅ…ぅ…」
続け様にぼくを襲う快感に、言葉を失った。
手の動きをそのままに、真宵ちゃんは首を伸ばしぼくの乳首までも舐め出す。
「……うぅ~…ッ」
 さすがに上下同時に責められては厳しいもので、ぼくはとうとう根を上げてしまう。
「真宵ちゃん…もう、出るからっ」
せき止められていたぼくの精は、数度かけて勢い良く噴き出でると、
真宵ちゃんは手に受け取められ、浴室に特有の匂いが広がった。
「…ご、ごめんね、真宵ちゃん…」
 息を整えると、顔を伏している真宵ちゃんに謝った。
「ぅぇっ、ニガっ…」
「え、口に入っちゃった?」
「…ううん、さっき泡舐めちゃったみたい~」
「何やってるんだよ…」
「ぅ~」顔を歪めて唾液を
吐く姿に少し苦笑したが、まぁケナゲと云えなくもないので、ぼくはシャワーからお湯を出して、
真宵ちゃんにうがいをさせ、汚してしまったその手をきれいに洗い流してやった。
「いっぱい出たね」
「…う…」
改めて云われると、恥ずかしいのでやめてくれ…そうなんだけど。
 …遅れを取り戻す様に、ぼくは真宵ちゃんの局部に触れて、粘液の糸を引く。先程洗った髪よりも、
太めで少しウェーブがかった陰毛を指で梳かし、それがひだのまわりや肛門の手前までうっすらと
生えているのを確認して優しく洗いだす。
「そんなじっくり見ないでよ…」
真宵ちゃんは目を伏せた。
石鹸でない液体で滑って少し洗いにくいひだの隙間と、その上部に位置する突起の包皮もきゅっと捲り、
刺激を与え過ぎないよう、しかし丁寧に滑る指でマッサージする。その時には真宵ちゃんの顔は真っ赤で、
目まで潤んでいるのがなんだか可愛いらしく、ぼくはその唇にちゅっとキスをした。
「べろも入れてぇ…」
その半分困ったようなとろんとした瞳は、なかなかそそるものがあり、
ぼくは一度下腹部の泡をシャワー流してから、口内に舌を差し込むと同時に、
滑りのいいそのひだの合わせの中へ、ぬるりと中指を挿し込んだ。
「…ンっ、…ぅ…ぁ、ぁあ…んんンぅ…」
唾液と喘ぎ声が溢れ出す。
「…この辺りだっけ?」
唇を離して様子を伺ってみる。
「もう、ちょっと手前かも…、ん、ンン、ぁ、…そ、そこそこっ!」
「ここだ…じゃあ、こうするのと…こうするの、どっちがいい?」
「…ぅ、んッ…あとの方っ」
「…こう…?」
熱く狭い真宵ちゃんの中を、探るように小刻みに擦りつける。
「そう…ン、ぁ…あ、あ…ぁァ、あ、来ちゃうっ!だ…ダメダメ!や、ややっぱりダメぇッ…!」
丁度いいところに当たるのか、真宵ちゃんは悶え仰け反って危ない。仕方ないので一旦膝から下ろし、
浴室の壁に寄り掛かるように立たせてから脚を少し開かせ、再度指を進入させる。
残りの手で、会陰から桃色づいたアヌスを軽く洗った。ついでにそこに軽く挿す様に触れてみると、
「そ、そんなところは洗わなくっていいよ!」と怒鳴られた。そうか…。
改めて、先程のところだけを執拗に責め始めると、真宵ちゃんの脚はがくがくと震えてきたので、
ぼくの頭にしがみ付かせ、壁に押し付けるように片脚を持ち上げて、さらに入り口を大きく開かせた。
「…ぁ、あぁ…ァ、あ、…ああ、アぁ…ッ!」
指の動きをさらに素早くしていき、同時にクリトリスやみぞおち、乳首をぺろぺろと舐めると、善がり声は高くなる。
「ちょ、ちょっと待って…!なるほどくん…ッ」
何かを必死に堪えながら、真宵ちゃんは叫んだ。
「…?」
「な…なんか、おしっこ…かな、ぁ…、出ちゃいそうなの…」
「ん…そういえば、そんな感じが…」
「やッ…そこ突付かないでっ」
「いいよ、別にここで出しちゃっても…」
「んンンぅ…や、やぁッ、
そんなのぉッ…汚いよぉっ」
「真宵ちゃんさっきトイレ行ってたし、多分違うと思うんだけど…。まあ、おしっこでもいいけど」
暴れ出す真宵ちゃんを、ぼくはがっちり壁に押し付ける。
「何云って…、ンぅ、あ…やだッ…で、出ちゃう…ッてばぁッ…あ、そんなに…動かしちゃ…!」
 真宵ちゃんは力の抜けた体でなんとかぼくを引き離そうとするが、ぼくはそんな非力ではない。
指を動かすごとに、ちゅくちゅくくちゅくちゅと水気を含んだ音が響き渡る。
「あ、ぁ…やあぁぁ…もう、やだぁあぁ~…」
 諦めたらしい真宵ちゃんがびくっと震えると、ぷしゅっと中から温かいさらさらした液体が溢れ出る。
指が与える刺激に合わせて、それはぼくの腕を伝って流れ出た。やっぱりそうだ…。
しかし、やっぱり何とも云えないな光景だなぁ…しかも、結構ムリヤリだったし…。
それらを全て掻き出すと、真宵ちゃんはベソをかきながらぼくを睨みつけてきたので、何か云われる前にと、平然とした顔をして云った。
「真宵ちゃん、これ、おしっことは違うんだよ」
「…え?そうなの…?」
「うん、出るところは同じみたいだけど、これは黄色くないし無味無臭だろ」
ぼくが指をぺろっと舐めると、真宵ちゃんは恐る恐る僕を伺い見た。
「女の人は感じてると生理現象としてこういうこともあるんだって」
「ええぇ…変なの…、そんなのあるんだ…」
「だから、出るものを我慢させる事は無いかなあと思って」
「…でも、そうだとしても、すっごく恥ずかしかったんだよ!そういうのはちゃんと先に云ってよ!」
「あーハハ、ごめんね」
真宵ちゃんはぶつぶつ云いながらシャワーでぼくらとそのまわりを洗い流しだした。
しかし、 潮吹きまでさせてしまうとは、ぼくはやっぱり悪い大人なのか?キチクか?
 …そうしてぼくは今、脚だけ湯船に浸けて浴槽のへりに座っている。
真宵ちゃんはお湯に浸り、当然のようにぼく脚の間のものを咥えながら扱いている。
「…うぅ、そんなにごしごしやったら…湯船に出しちゃうよ…」
「そうしたら曲げるから」
…曲…真宵ちゃんは本気だ、絶対に本気だ…。
「んー、なるほどくんのタマタマびくっとしたねーフフフ。それじゃあ、お風呂から出てからにしようかと思ってたけど、ここでえっちしちゃおうかな」
「え」
 問答無用でぼくを湯船に引きずり込むと、真宵ちゃんはその上に股がる。
「ちょっと…、ゥっ」
ぼくの勃ち上がっているペニスを、真宵ちゃんはお尻でぐりぐりと踏みつけた。
「ひ、ひどい…」
「やられたらやり返す…それが綾里家の鋼の掟なの」
「……」ぐうの音も出ない。
「だから動かないでね…」
真宵ちゃんは待ち焦がれているぼく自身を掴むと、それを自分自身に
あてがい、息を吐き出しながら、おっかなびっくり腰を下ろしだす。
「ゆっくり挿れなよ」
「うん…」
ようやく先端だけ収まった。
「痛くない…?」
「大丈夫…だけどまだちょっと怖いから」
 深呼吸をして、再び真宵ちゃんはぼくに体を沈め出す。
「…入った」
真宵ちゃんの中は狭い。
「動いてもいい?」
「ちょっと待って…」
真宵ちゃんは僕に胸に顔と体を預けて云った。
「ごめんね、我慢させて…。あたし、なるほどくんを中に居れたままこうしたかったの」
 なんだか急にしおらしく微笑む真宵ちゃんだが、やっぱり、いじらしいんだよなと思う。
乙女心というのは多分ぼくより複雑なのだ。そのまま、ぼくは下半身を踏ん張らせつつも、
真宵ちゃんの頭を撫でてあげていると、「もう、動いていいよ」とお許しが出た。
 そして、ぼくが真宵ちゃんの腰を掴み、下から突き上げると、風呂場に嬌声が響きだす。
水中なので真宵ちゃんの重力がかからない分、ぼくは楽だが、やっぱり風呂は狭いものは狭い。
その動きにお湯は波立ち、真宵ちゃんの結い上げた長い髪はばらりと落ちて、水に浮かび広がった黒はぼくの胸をくすぐった。
「…最後は口で出す?」
切なげな表情のまま真宵ちゃんはぼくを見つめる。
「さっき苦い思いしたんだからいいよ」
ぼくは遠慮した。
「真宵ちゃんも…自分で動いてみる?」
「ん…」
少し緊張した趣で、自分の中を探るようにゆっくりと腰を動かし始める。 
微妙にぎこちない動作が初々しく新鮮で、ぼくは噛み締めるようにそれを味わう。
「龍一…」
真宵ちゃんはか細い声で呟いた。…確かにそれはぼくの名前だが、こういう状況で
改まってそう呼ばれると、どうも恥ずかしい。それを覆えそうと、自分も「真宵」と耳元で囁いてみた。
真宵ちゃんは俯く。……。かえってぼくの方がものすごく恥ずかしい結果になってしまった…。
 それを誤魔化すように「真宵ちゃんも感じる?」などと訊くと、やはり目を瞑ってこくりと頷いた。
あああ、云わなきゃよかった。でも、真宵ちゃんは嫌がってないしさ…と勝手に火が点いてくる。
 …こうなったら男は早いもので、ぼくは一端自分を引き抜くと、真宵ちゃんを浴槽の縁に肘を
つかせるように立たせて、腰を後ろからがっちりと掴む。そして、突き出たトマトの様なお尻の真ん中に、
改めてぼくを奥まで突き挿した。真宵ちゃんは体を弓なりにして、声にならない声を上げる。
その中は、ぼくを歓迎したいのか追い払いたいのか、ぼく自身をぎゅうぎゅうと締めつけた。
もう少し力を抜いて欲しいとは思うが、多分真宵ちゃんもそれどころではないのだろう…。
 ぼくは腰を打ち突けながらも、真宵ちゃんに覆い被さるように顔を近づけ、振り向き様にキスをする。
喘ぎながらも、お互いの唾液を交換し合っていると、真宵ちゃんは腰の力が抜けたようで、必死に縁にしがみ付いている。
「…す、すっごい…おッ、奥まで当たるよぉ…っ、あっ、ぁッ」
 それでも容赦なく、半泣きの真宵ちゃんを抱えるようにして、いけるとこまで一心不乱に腰を打つ。
「は…あッ、な、なるほどくぅんッ…あたしおかしくなるッ、おかしくなっちゃうよお…ッ」
 ぜぇぜぇと息をつきながら、そろそろこっちも限界を感じ、ようやくペニスを引き抜こうとすると、
予期せぬところで、思いっきり中を締め付けられたので、手元(いや手ではないが)が狂い、
排水溝近くに出そうと思っていた精液を、思いっきり浴槽のお湯の中にぶちまけてしまった。

 …やってしまった…。

「…ハァハァはァ…ぁ、お、おかしくなった…。……あ…、なるほどくん…やっちゃった…?」
湯船だけでなく、ぼく自身や腰崩しになっている真宵ちゃんの髪や体、
浴室にまで点々と白いものが飛んでいる。…どうやったらこんな風になるんだ。
ああああ、いい歳してまたコドモのようなことをしてしまった…。
「あーあ…、まぁでも、どっちにしろ体は洗い直さなきゃいけなかったし…」
フォローが余計痛い…。
「なるほどくん、すごくよかったよ。って云うか何が起きてるのかわかんないくらいあたしとんでた…。
で、そのお陰であたし今、全然力が入んないからなるほどくんおんぶして」
「……」
…うう、真宵ちゃんだってさぁ、既に脱力してたくせに変なところで力入れるから…。
いや、しかしそれは真宵ちゃんを操縦出来てないぼくがいけないわけで…ああああ。
「…でもさあ…、中に出しちゃわなくって良かったね」
ぼくは顔を上げて真宵ちゃんを見る。
「あたし、赤ちゃんは可愛いと思うけど、まだお母さんになる自信ないもん…」
 …その言葉に、ぼくは腹の奥底から自分が情けなくなった。
ご、ごめん、ごめんよ真宵ちゃん…。謝って済めば、刑事も検事も弁護士は要らないよね…。
ぼくはぶくぶくと風呂に沈み込んだ。
「…なるほどくん、何もそんな自分の精液が浮いたお湯に潜り込むことないのに…」
 …忘れてたんだよ、うううううう…。

「…それでその翌日、なるほどくんは風邪をひいて寝込んだって話!体は資本だよ!
あたし…?あたしは風邪なんかひかないから当弁護士御用達の風邪薬を買いに行ってあげました」

おわり。
最終更新:2006年12月12日 21:26