ナルマヨ
今朝のテレビでは、今日の自分の運勢は下から3,4番目の位置だった。別に信じているとかそんなわけではないが、なんとなく毎日見てしまう。
そこではニュースキャスターというか占いキャスターというか、そんなお姉さんが、何が嬉しいのかにこやかにこう告げていた。
『○○座のあなたの今日の運勢でーす。身近な存在だと思っていた人から突然思いもつかない一言を言われてびっくりしちゃう?
それが良いことにせよ、悪いことにせよ、とにかく大変な1日になりそうです。ラッキーアイテムはお花!』
少し気にかかる内容ではあったが、こういう占いが当たったためしなどほとんどない。
これを見て思ったことといえば、そういえば近くに新しく花屋が開店したらしいから今度行ってみるかといったことぐらいだった。
「ねえ、なるほどくん」
「ん?なに、真宵ちゃん」
ここは成歩堂法律事務所。今年で開業してから3年が過ぎ、苦労の甲斐あってか最近はそれなりに繁盛している。・・・・・・今は何の事件も取り扱っていないが。
そして、その事務所にて棚から何かを取り出そうと取っ手に手をかけている男がいた。
彼の名は成歩堂龍一。26歳。一応ここの所長である。・・・・・・威厳は無いに等しいが。
彼は今、この間ゴドー・・・・・・いや神乃木検事を面会しに行った時に新しいメニューを思いついたとかで
(どうやって留置場の中でそういうのが思いつけるのかがどうしてもわからないが)教えてもらった『特製ゴドーブレンド144号』を早速作ろうとしているのだった。
あの日彼と共にコーヒーを飲んでから、最近少しマイブームなのだ。
仕事着である青いスーツに、一見地味な顔かたちの中で唯一自分の存在を主張している見事に後ろに尖がった髪型。
これらが彼のトレードマークである。
別に髪は固めているわけではなく単に子供の頃からずーっとこれのまま変わらないだけなのだが、
おかげで他のヘアスタイルにしようと思ってもできやしない。
もしかするとこの髪型のせいで、どうせ何を着ても似合わないだろうと思ってお洒落に無頓着になり、結果彼に地味という印象がついたのかもしれない。
ともあれその成歩堂がコーヒー豆を取り出しているところを、ある女の子に声をかけられたのだった。
その少女の名前は綾里真宵。19歳。この事務所の(自称)副所長だ。さらに言えば強力な霊媒師の家の将来の家元でもある。
彼女は成歩堂とは違って、普段から着物にちょんまげという非常に個性的な格好をしている。
正直に言うと変なだけだが。しかし少なくとも地味ではない。
さっきまでソファーの上にねっころがって何やらティーンズ雑誌らしき本(ようやく興味を持ち始めたらしい)を読んでいたのだが、
今はその本は机の上に置かれていて、本人はなんとなくかしこまった風にソファーに座ってこちらを見ている。 なんというか、じーっと。
「あのさ」
真宵は何か言いかけたが、そこで急に視線をぱっとこちらから逸らし、また黙ってしまった。
「?」
とりあえずお湯を沸かそうとやかんの中に水を入れる。じゃー・・・と、静かな部屋の中に水の音だけが響く。
「あのね」
真宵はなんだか言いにくそうにもじもじとしている。
大抵こんな時は、何か悪さをしでかしてそれを黙っていたが、良心からか、あるいは弁護士相手に黙っていてもいずればれると思ってか、
その罪を告白しようとしている時だ。
またはお小遣いを上げてくれと要求しようとしている時。どちらにせよ、成歩堂にとってあまりいい話になったためしはない。
水と共にやかんの重さがどんどん増していく。もうそろそろ止めるかと蛇口に手を伸ばしたその時。
「あのね、なるほどくん。せっくすって、何歳の時に初めてした?」
がらがっしゃん!
落としたやかんから水が飛び出してくる。
幸い流し台の中だったので床が水浸しになることはなかったが、中にあったコップが1つ割れてしまった(どうせ安物だが)。
「な、な、な、な、な、な」
何をいきなり。
そう言おうとして振り返ると、真宵の顔は俯いたまま真っ赤になっていてぼしゅうーっと蒸気まで出ているのが目に入った。
「い、いや、あのね?ほら、この本」
そう言って慌てて真宵はさっきの本を取ってぱらぱらと捲り、特定のページでその捲る手を止めた。そしてそれをこちらに見せてくる。
成歩堂もひとまず蛇口を締めて(やかんとコップはその状態にしておいたまま)真宵の隣に座り、本の中身を見た。
見るとそこには何かのコーナーでNさんやらYさんやらといった数人の女性が匿名で写っていた。そのコーナーとは・・・・・・。
「『君タチの初体験は何歳(いつ)から?』、だあ?」
よく見てみると、これはティーンズ雑誌というよりは少し大人向けの本だ。
まさか真宵がいきなりこんな本を買うはずもない。
「真宵ちゃん、どこでこんなものを?」
落ち着いて聞いたつもりだった。声が裏返ったような気がしないでもないが。
すると真宵は、何故か半笑いを浮かべながら
「あ、これ?ナツミさんが」
「ナツミさん?」
あの頭がボンバーな関西弁カメラマンを思い起こす。ここ最近会っていないが、自分の知らない内にこの2人はどこかで交流でもあったのだろうか。
「うん。なんかね、色々話してたら突然、
『アンタ勉強不足やわ!よっしゃ!ケチなウチやけど特別にプレゼントしたるからコレ見てしっかり勉強しい! お代はまた今度会った時でええわ!』
とか言って渡されたの」
口真似だけでなく顔まで真似て真宵はその場の光景を再現している。
それプレゼントじゃないじゃん、と突っ込もうかと思ったがやめておいた。
まあ真宵のそういった努力とはまったく関係なしに、なんとなくその場の光景は想像できる。
きっと猥談でもしかけたが真宵があまり理解しきれていないので業を煮やしたのだろう。
これが本格的にどぎつい本でないのは、彼女の、まだ辛うじて水滴1粒ほど、ぎりっぎりで残った良心からだろうか。
「そ、それでさ。なんかこのヒトたち見てみると、なんかみんな初体験は15歳とか、18歳とか、そんな娘ばっかりでさ」
こちらと視線は合わさずに、真宵は雑誌の女性群を指さした。
たしかに、成歩堂からしてもこれは早すぎるんじゃないかと思うくらいに若い時から経験している娘もいる。
そこで、大体彼にも真宵がなんでこんな質問をしたのかという理由がわかってきた。
貞操観念の強そうな倉院の人間にとって、こういった都会の子たちを見るのはいわばカルチャーショックみたいなものなんだろう。
それで自分・・・成歩堂龍一もこんな感じなのか、と疑問に思った。そんなところだろう。
とりあえずこれも彼女の倫理観を養う教育の1つとして、質問には答えてやるべきだ。
そう思い、成歩堂が口を開きかけたその時。
「それでね?この中の1人に、
『男でも女でも、ハタチまでに済ませてなきゃやばいでしょ』
ってコメントがあって」
「・・・・・・・・・・・・ッ!!」
どぐしゅうっ!
続けられた真宵のその言葉が成歩堂の胸に深々と突き刺さった。
ある種、トラウマを抉られたかのような気分になる。
実際にはいくら性の乱れとかいって初体験時の子たちの年齢が低下しつつあるこの日本社会といえ、
それでも20代まで経験していない人なんて山ほどいて、むしろそっちのほうが普通であるということは頭ではわかっている。
わかってはいるのだが、やはりこんな言葉を聞くと敗北感を感じずにはいられない。
かくいう彼もまた、大学に入ってちいちゃん(実際はあやめだったのだが)と出会うまでは童貞だったのだ。
「なるほどくん、何歳だったの?」
これは試練か。
そんなことを思いつつ、試練ならば逃げてはいけないとも思う。
改めて、この質問には真面目に答えるべきだ。彼女の将来のためにも。
「僕は・・・・・・」
21歳の時だよ。
「19歳だったね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
(あれ?)
頭で考えていたせりふと、口に出たせりふがまったく違う。
本当は21歳だったという真実は告げられない。されど15歳とか言うには抵抗がある。
ならばぎりぎり10代である19歳という年齢が、告げるには最もちょうどいい年齢である。
そんな思考が反射的に瞬時に頭の中で行われたのだ。法廷中でも滅多にない頭の回転の早さで。何事だこれは。
しかも『だったね』なんて微妙に格好つけちゃったりもしている。
「そうかあ、19歳かあ」
真宵は頷くと、何やら考え込むように黙ってしまった。
違う、違うんだ。本当は21歳なんだ。僕が19歳の時なんて、付き合うどころか女の子と話したことすらあまりなかったんだ。
そんなことを言えばすむ話なのに、どうしても喉のところで何かがつっかえて口に出すことができない。
そのつっかえているものとはつまり、見栄といったものなのだろう。
口で言えないのならばと身振り手振りで伝えようとする。
「?何それ。呪術の踊り?」
「いや・・・・・・」
当然伝わるはずもない。
「い、いやでもね?真宵ちゃん。世の中には10代で経験してる人もそりゃいるけど、それ以外にもそうでない人たちがたくさん・・・・・・」
「なるほどくんは19歳だったんでしょ?」
そう言われ、ぐっと詰まる。
ここで嘘だったと言えばいいのに。
そんなことを思えば思うほど、何故か口に出し難くなる。
と。
「わたしも19歳」
真宵は右手の人差し指だけを立てて、ゆっくりと自分の顔の方に向けた。
「・・・・・・・・・・・・」
「そいで、再来月には20歳」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
突っ込み候補その1
そう言えば、真宵ちゃんももうそろそろ選挙権を得る年頃なんだね。
突っ込み候補その2
まさかまた誕生日プレゼントは等身大トノサマン人形がいいとか言うんじゃないだろうな。
突っ込み候補その3
じゃなくて、その言葉は一体何を意味しているのかな。
「だからなるほどくん、お願いします」
突っ込みを入れる前に結論を言われてしまった。
真宵の表情は確認できない。
何故なら彼女はちょこんとソファーの上に正座して、そして深々とこちらに向かって頭を下げてきたからである。
あたかもこれから初夜を迎える新妻のごとく。
『○○座のあなたの今日の運勢でーす。身近な存在だと思っていた人から突然思いもつかないことを言われてびっくりしちゃう?
それが良いことにせよ、悪いことにせよ、とにかく大変な1日になりそうです。ラッキーアイテムはお花!』
一瞬、そんなお姉さんの言葉が頭をよぎった。
例の花屋に行っておけば今頃違った運命だったのかなあ、などと成歩堂は思っていた。
ホテルバンドー。
元はただのビジネスホテルだったのだが、とある元ボーイの手腕によりいまや日本で知らないものはいないという超一流豪華ホテルになっている。
ちなみに現在レジャーランドを建設中である。もうすぐ完成予定らしい。
普通なら何日も前から予約していなければとても入れないようなところなのだが、たまたま部屋が空いたらしい。簡単に部屋を取ることができた。
・・・・・・取られるものはきっちり取られたが。これで今月は質素な生活を送らねばならなくなった。
部屋の第一印象は、きれいとか豪華とか、そういうことよりもまず広いと思った。
予想はしていたが少なくともウチのアパートの部屋よりはよっぽど広い。
1人で寝るには広すぎるくらいに大きなベッド。バスルームは完備されていてテレビもでかい。よく見ると有料でゲームもできるらしい。
さらにはベッドの傍にボタンが設置されていて、それを押せばすぐに執事がやってくる仕組みになっている。
さきほど何の用もないのに真宵が面白半分でそれを押してしまい、向こうに迷惑をかけてしまった。
お詫びとして成歩堂がチップを払ったことで丸くおさまったが。いいかげん財布の底も尽きてくるというものだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
なんというか、落ち着かない。あらためて自分が庶民であることを思い知らされた気分になる。
年代ものの高級ワインがずらーっと並んでいるところに1つだけぽつんと存在する缶ビールのような。
何故自分たちがこんなところにいるのかというと、さすがに事務所内や汚い自分のアパートではアレなので
せめて最初の時くらいはそれなりにムードがあるところで、という理由でここを選んだのだが・・・・・・。
(じゃなく、なんで僕がこれから普通に真宵ちゃんと寝るなんて状況に陥っているんだ!?)
「なるほどくん。えと、シャワー浴びてくるね」
真宵は着替えのいつもの紫色のやつではなく白い着物(よく知らないが、小袖とかいうやつだろう。つまりは下着のようなものだ)を抱えて、
そそくさとバスルームの中へと入っていった。
「・・・・・・・・・・」
青いスーツを側の椅子に掛けて、大きなベッドの上にどさっと腰を下ろす。
窓の方を見やるともう夕暮れであることがわかった。太陽が沈みかけている。最近は暗くなるのが早いので、すぐに夜中と同じくらいの暗さになるだろう。
ここは25階と聞いているがさすがに高い。吊り橋から冷たい川の中へダイブした身としては、あまり窓には近寄りたくはない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
微かにシャワーのお湯のはねる音が聞こえる。
今のうちに逃げ出してしまおうかとも一瞬考えたが、後に残された彼女の気持ちを考えるととてもそんなことはできない。
しかし考える。このままでいいのか、と。
もう残された時間は少ない。
今までなんとなく流されに流されてここまできたが、真宵がシャワーから出てくるまでのこの時間が冷静に判断をすることができる最後のチャンスだ。
(なんでこんなことになったんだ)
事の発端は何であったか。
ナツミさんが真宵に渡した(本人とて、まさかこんなことになるなんて予想だにしていなかっただろう)あの本のせいだろうか。
あの本を読んでこんなことをしようとか思いつく、そんな真宵の思考がぶっ飛んでいるせいだろうか。
いや。
「僕のせいだ」
あの時つまらない見栄で本当のことを言えずに嘘をついてしまった自分のせいだ。
嘘というものは後になればなるほど真実を告白しにくい、ということは子供の時からいやでもわかっていたことなのに。
ましてやこんな職業ならばなおさらだ。
今さらになって、自分のしでかした悪さを告白しようとする時の真宵の気持ちがよくわかってしまう。
(19歳、か)
たしかに自分も19歳の頃は真宵のように、女の子とそういう関係を結びたいと焦っていた時期があった。
でも口ベタだったので、女の子とろくに話す機会もなく、かといって矢張に誰かを紹介してもらおうという気にもなれず、
結局特に何も起こらずに20歳を迎えたのだった。
大学で芸術学部を志したのは、高校時代にそんな口ベタだった自分を変えようと決心したということも理由の1つだった。
そんなことを考えているとふと、矢張のことなどを思い出す。
奴はその頃から色んな女の子と付き合っては振られ、付き合っては振られを繰り返していた。
決して自分から振ったことはないと豪語しているが。
それはつまり、2人の仲が破局する原因は常に奴のほうにあるということなのだろうが、まあそれはわかりきっていることではある。
御剣とはその頃はまだ連絡すら取り合っていない状態だったのでよくわからないが、奴のことだ。きっと何人もの女性を泣かせていたのだろう。
―
「私はそんな風に見えるのか?」
「い、いきなりそんな怖い顔して何を言い出すッスか御剣検事」
―
ともあれ、たしかに劣等感を感じていたことは否定はできない。だから真宵の気持ちもわからないことはない。
しかし、大学でちいちゃん・・・・・・あやめさんと出会って。初めてセックスをして。お互いに初めて同士だったので、最初はどうもうまくいかなくて。
けれど、たしかに気持ちは通じ合った。
だからその時はセックスの内容そのものは問題ではなく、お互いの気持ちが通じ合えたという満足感で満たされたのだ。
しかし、今は違う。
自分にとって真宵は妹のようなものだし、また彼女にとっても自分は兄・・・・・・
・・・・・・いやたしか以前に『わたしはなるほどくんやはみちゃんのおねえさんなんだから!』とかなんとか言っていたが・・・・・・
まあとにかくそんな感じに思っているのだろう。
年齢は関係ない。気持ちが通じ合っているのなら、自分で責任を取れる覚悟さえあるのなら、10代からだろうがすればいい。
だが気持ちが通じ合わないのなら、セックスには何の意味もない。
周りからすれば非常に青臭い考え方なのかもしれないが、これが自分の主張だ。
やっぱり・・・・・・
(やっぱり、本当のことを真宵ちゃんに言って帰るべきだ)
そう結論に至る。
恥をかいてもいいじゃないか。軽蔑されてもいいじゃないか。それが彼女のためなのだから。
「なるほどくん?」
「うわああああ!!」
いきなり肩越しに話しかけられ、成歩堂は飛び上がって叫び声をあげた。
「ど、どうしたの?」
「あ、い、いや。なんでもないんだ」
バクバクと跳ねる心臓を押さえる。落ち着け、落ち着けと心中に念じる。そして真宵を見る。
「・・・・・・何それ」
「じゃっじゃーん。なんかお風呂場にあったから着てみたんだー」
何故か得意そうな顔で身に纏ったバスローブを見せつける真宵。クルクルと回ったりさえもしている。
ただサイズが大きめなので、なんとなく子供が背伸びをしようとして母親の服を着てみたとかそんな印象を受けざるをえない。
例のちょんまげは解いていた。これだけでなんだか別人に見えてしまう。
「どう?どう?似合う?」
「あえて似合うか似合わないかのグループに分けるのでありますならば、どちらかと言うと似合わない方に近いかと申し上げますコレ」
「・・・・・・誰のモノマネ?」
(おかげで動悸も静まったし)
これでもしまかり間違って似合っていたりしたら、心臓はますます跳ね続けたことだろう。
「ちえっ、いいもん。似合わないことなんて最初っからわかってたし」
そう言って真宵はいきなりそのバスローブの前の紐を解くと、なんとそれを脱いでバサッとその場の床に落としてきた。
「んな!?ま、真宵ちゃ・・・」
慌てて目を伏せようとするが・・・・・・。
「ふっふっふ。ふぇいんとだよなるほどくん」
その下には、先ほどの着替えに持っていった小袖を着ていた。これはさすがにサイズもぴったりだし和服ということで似合わないということはない。
さっき見たところでは確認できなかったが、どうやら微妙に現代風にアレンジされているらしく下の丈が少し短めになっている。
「あはは、びっくりした?」
「・・・・・・まあね」
「なるほどくんもシャワー浴びる?」
「いや、僕は・・・・・・」
「そっか。じゃあ、その・・・・・・し、しよ?」
こちらの目は見ずに、真宵はやけに素早い動きで広いベッドの中に潜り込んでこちらとは逆に顔を向けて寝転んだ。
恥ずかしくてこちらを見れないということか。やはり彼女も相当無理をしている。
こんな形で、周りから後れるのが嫌だからとかそんなつまらない理由で、セックスするべきではない。
もう1度、これから彼女に伝えなければならないことを反芻する。
緊張して頭が少し混乱気味だが、それでもなるべく冷静に考えた。
『男女の間に気持ちがないのなら、するべきじゃないんだ』
成歩堂は意を決して口を開いた。
「真宵ちゃ・・・・・・」
「好きだよ」
また遮られた。なんだか今日は自分が何か言う前を見計らったかのように真宵が喋りだしているような気がする。
だけど今回ばかりは、遮られようが自分の言葉を伝えなければ・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ん?」
最終更新:2006年12月15日 07:39