御剣×真宵③

「御剣検事、お待たせ」
あたしは、バスルームの脱衣所で借りたワイシャツ一枚を
身につけ、ぴょこんと居間に顔をのぞかせた。
ソファに座っていた御剣検事が振り向き、優しく微笑む。

ここは彼のマンション。そして、今夜は初めてのお泊り。
あたし達がおつきあいを始めたのは三ヶ月前。
だめもとで告白したら、あっさりOKをもらえてしまった。
それ以来、あたし達は楽しくも清らかな交際を続けている。
彼は検事だから、本当はあたしの雇い主であるなるほどくんとは
職業上対立する立場にあるんだけど、プライベートでは
そんなこと関係ない。なるほどくんと彼は小学校の頃からの
友達で、時々三人で食事をしたりもしているし。

今日は、遊びに来て遅くなってしまったから、
「帰るのめんどくさい。泊まっていってもいい?」
と聞いてみたら、「ああ。構わないが」と彼は言ってくれた。
さっきも言ったけど、まだ清い関係のままの私達。
今夜あたり、あげちゃってもいいかな、というあたしなりの
シグナルなんだけど、御剣検事気づいているのかな?
多分、ダメだろうな。この人、仕事はすごくできるのに、
それ以外ではからきし鈍くて天然だから。
まあ、そこがカワイくて大好きなんだけど。


あたしは、ソファに近づき彼の膝の間に滑り込んだ。
彼の腕が後ろからあたしの体を包み込む。
こうして、多少雑談を交えながら二人してテレビを観た。
今日はトノサマンのDVDじゃないんだ。珍しいな。
さっきから、彼はあたしの長い髪をずうっと優しく撫でてくれている。
いつか、彼はあたしのこの長い綺麗な黒髪が好きだと言ってくれた。
だから、あたしは今、彼のためだけにこの髪を伸ばし続けている。
御剣検事に、撫でてもらうために。
ちょっと首を後ろに回すと、彼の切れ長の目とばっちり出会ってしまった。
彼の手が止まった。あたしは目をそらさない。
部屋にはテレビの音だけが響き、あたし達は無言で見つめ合った。
どちらからかはわからない。いつ目を閉じたのかも覚えていない。
いつの間にか、二人吸い寄せられるように唇を重ねていた。
お揃いの白く薄いワイシャツ越しに互いの鼓動を感じ、相手の背に手を回す。
御剣検事の舌があたしの唇を割って侵入してきた。
あたしは慌てて舌を伸ばし、応戦する。抱き合う腕にきゅっと力を込め、
舌を必死で動かし、どの位の時間が過ぎただろうか。
彼が唇を離した。唾液が糸を引いてあたしの顎に垂れた。

「・・・抱きたい」
掠れるような声で、御剣検事は言った。
法廷での、張りがあってよく通るあの声とは全然違う声。
よほど緊張しているのか、その薄い唇は震えていた。
あの天才検事を緊張させるなんて。
あんなにいつも冷静な人が、自分を押さえられなくなるなんて。
もしかして、あたしってすごいんじゃないんだろうか。
高鳴る胸を押さえ、あたしはわざとおどけた。
「優しくしてくれる?」
彼は真剣な顔で頷いた。
あたしは下を向き、小さな声で答えた。
「いいよ。連れてって」


御剣検事は、軽々とあたしを抱き上げ、大股で寝室のドアに向かった。
うわ。お姫様抱っこだ。これって‥‥これって、女の子の憧れだよね。
嬉しさと恥ずかしさで火照った顔を彼の広い肩に押し当てたまま
ベッドに運ばれ、まるで羽毛のようにふわりとベッドの上に横たえられた。

御剣検事の顔が近づいてきて、唇と唇で軽くキス。
彼の手があたしの胸元のシャツのボタンにのびる。
ボタンが一つ外れ、彼はあたしの首筋に口づけ、少しずつ唇を下の方に這わせた。
彼のさらさらの髪があたしの肌を撫でていくのを感じ、
頭のてっぺんからつま先にぞくっとするものが走る。
やばい。本格的にドキドキしてきた。
もう一つボタンが外れ、あたしの裸の胸がスタンドの光に晒される。
「や・・・!」
慌てて隠そうとした。でも、その腕は押さえつけられてしまった。
恥ずかしい。こんなにちっちゃい胸。彼はがっかりしただろうか。
せめて、お姉ちゃんの半分の大きさでもあればなあ。
御剣検事は、そんなあたしの様子を見てくすっと笑うと、
あたしの胸を両手で包みこんだ。なんか、情けないなあ。
御剣検事の大きな掌に全然足りてないよ、体積が。
でも、彼は優しく、時に強弱をつけ、無い胸を一生懸命揉んでくれた。
「あっ、はぁ・・ん」
あたしの口から思わず声が漏れる。
こんなに小さいのに、感じちゃうもんなんだ。意外。
彼の手が足の付け根に伸びてきた。
ピチャッ。微かに響く水音。
やだ、もうこんなに濡れてるなんて。思わず顔をそむける。
御剣検事の細く長い指があたしのあそこを丁寧に愛撫する。
や、何これ、どうしよう、すごく気持ちいい。
自分でするのと全然違う・・。
おまけに、あたしの液で濡れそぼった指で、一番敏感なところを
いじられるのだからたまらない。あたしは思わず高い声を出す。

彼が身をかがめ、今いじっていた場所に顔を寄せた。
ちょっと、恥ずかしいよ、見ないで。
駄目だよ、そんなとこ、汚い・・。
御剣検事の舌があたしの一番大事なところに触れた。
「いやあああんっ!」
わざとではないだろうけど、卑猥な音を立てながら御剣検事はそこを舐った。
あたしは押し寄せてくる快感にどうにかなりそうで、
お尻の穴までビチョビチョになっているのを感じながらひたすら声をあげた。
彼の逞しい体があたしの上に被さる。
十分すぎるほど潤ったそこには、大きくて堅いものがあてがわれている。
「・・・いいか?」
耳元で囁かれる、大好きな人の声。
いいよ。早く来て。あたしは頬擦るように頷いた。

「いっっ・・たぁ!」
あたしの、ムードをぶち壊しかねない程はしたない声が寝室に響いた。
「す、すまない!」
あ、御剣検事すごくすまなそうにしてる。
だってほんとに、すごく痛いんだもの。
痛い以前に、物理的に無理でしょこれは!?
「ゆっくり、する、から・・」
彼は馴染ませるようにそれを入り口に擦り付け、
先っぽを入れては出しを繰り返した。
あ、なんか、だんだんいい感じ。
あれ、さっきよりも深く入ったみたい。あ、また・・。
痛みとともに徐々に徐々に快感も増してゆき、
あたしのため息が掠れ声に変わり、だんだん大きくなってゆく。
自分も小さく腰を動かしているのに気づいたときは、
もう彼のものは全部あたしの中に入ってしまっていた。

汗ばむ彼の体に必死でしがみつく。
「みつるぎ、検事、気持ちいいよぉ‥」
「クッ‥真宵、くん‥」
あたしの顔のすぐ上で、御剣検事の整った顔が
快感に歪んでいる。よかった。検事もすごく気持ちよさそう。
もう気を使わないで、思い切り好きなように動いて。
お尻の穴にキュッと力を入れると、彼が低く呻いた。
締めると、男の人は更に気持ちがいいって、本当みたい。

「真宵くん、もう‥」
「いいよ。いって」
あたしももう限界が近づいてきた。
体の奥から大きな波が打ち寄せて、これ以上されると
その波に体中バラバラに打ち砕かれそうだった。
「うっ‥‥‥!」
彼の体が震えて動きが止まるのと同時に、あたしの頭は
ショートしたように真っ白になり、体中から全ての力が抜けてしまった。

彼のものが抜き去られると、あたしのそこから何かがあふれ出てきた。
ちらりと腿に目を向けると、白かったり、赤かったり、透明だったり
するものが股間から流れ伝っている。
恥ずかしさとオーガズムで動けないあたしの額に、御剣検事は愛しげに
そっと口づけ、ティッシュを持ってきて優しく後処理をしてくれた。
「スミマセン」と小声で謝り布団に包まるあたしの背に彼の体が滑り込んでくる。
太い腕が後ろからあたしの体を抱き、熱い息をうなじに感じる。
「真宵くん‥‥」
「な、なぁに?」
好きだよとか、愛してるよという言葉を期待した。でも、彼の口から出た言葉は。
「プライベートでは、『御剣検事』という呼び方はやめてもらえないだろうか」
「へ?」
「いや、私達は、こ、恋人同士なのだし‥不自然だと思うのだよ」
遠慮がちな、すっごくたどたどしい声。法廷では、絶対に彼のこんな声は聞けない。

あたしは大笑いしてしまった。すごい。あたしって、やっぱりすごい。
「ま、真宵くん!?」
「だーめっ!」
「何故?」
「つき合ってもう何ヶ月経つと思ってるの!?
もう今さら『御剣検事』以外では呼べませんよーっだ」
「そんな‥」
「だめ。そっちも『真宵』って呼んでくれなきゃ、絶対にだめ!」
長い黒髪にうずめた彼の顔が真っ赤になっているであろうことは想像に難くない。
あたしはくすくす笑ったまま、自分の小さな胸に回されている
大きな手を取り、かぷっと甘く噛み付いた。
最終更新:2006年12月13日 08:32