神乃木×千尋


「はい、その様にお伝えします。-お大事に」

堅苦しい口調の事務員とのやり取りを終え神乃木は受話器を置いた。
そのままベッドに倒れ込む・・・気だるさが体中を支配していた。

本来、体の丈夫さには自信があるつもりだったが
最近の激務に疲れがたまっていたらしい。
風邪気味なのは自覚していたが、今朝目を覚ますと
起きあがるのが辛いほどの状態に陥っていた。

幸い手持ちの事件の全てに片が付いた所だったので
休暇を取るのには問題はない。
ただ明日からの週末は、最近交際を始めたばかりの
コネコちゃん-千尋と過ごそうと考えていたのだが
この調子では寝ている間に休日は過ぎていってしまいそうだ。

(クッ・・・ザマァねぇぜ・・・)
自嘲の言葉をつぶやきながら、いつの間にか眠りに落ちていった。



-遠くで何か鳴っている・・・眠りの底で微かに聞いた。
ピンポーン
今度はハッキリ聞こえる。玄関のチャイムの音だ。。
日中に訪ねて来る者の心当たりなどなく
このまま無視を決め込もうとした神乃木だったが
その思案に逆らうように続くチャイムの音・・・
舌打ちしてベッドから重い体を引きはがすように起きあがる。
一瞬目眩を感じたが、構わずそのまま玄関まで歩いていった。

ピンポーン…また鳴った…
クッ…しつこい野郎だぜ…
苦々しく思って乱暴に音を立ててドアを開ける。
来訪者を睨み付けてやろうとした神乃木の眼は思わず丸くなった。

「センパイ!」
心配そうな千尋が玄関に駆け込んできた。
「大丈夫ですか?何度か電話しても出られないので来てみたんです」
一気にまくし立てる千尋に
「コネコちゃん…」こんな時間に…と発しようとした神乃木は
辺りが既に薄暗い事に始めて気がついた。

「大丈夫ですか?」再び問いかける千尋に
「ああ…よく眠ったんで生き返ったぜ…」
軽い調子で答えたが、さほど体調は変わっていない。

「でも、酷い顔色…」
言いながら千尋は神乃木の額に手を伸ばした。
外気に触れていたせいかヒンヤリとした手が心地よく感じられる。

「熱がありますよ!早く中に入らないと!」
慌てたように千尋は神乃木を押しやるように室内に入った。

薬も飲んでないと聞き、千尋は持参した紙袋から食材を出して軽めの料理を手際よく作った。
「こんな事だと思って用意してきたんですよ。
 薬の前に無理してでも食べてくださいね」
「そいつはいいが、薬なんてないぜ?
 コーヒーなら売るほどあるがな…」
「ご心配なく。それも持ってきました」
 袋から薬を取り出し千尋はにっこりと笑った。

食欲はなかったがどうにか少し食べた後薬を飲まされ強制的にベッドに寝かされながら
「コネコちゃん…まるでママだぜ?」苦笑しながら言った。

千尋が居る間は眠るつもりはなかったが薬のせいか強い眠気に襲われて神乃木は再び眠った。

次に目覚めたとき部屋は闇に包まれていた。枕元の時計を見ると、もう真夜中に近い時刻だ。
喉の渇きを覚えてベッドから出ると若干だるさは残っているものの体の方は遥かに楽になっている。
(…コネコちゃんのお陰だな…)

しかし、余程深く眠っていたのだろうか千尋が帰ったことも全く気づかなかったようだ。
リビングを横切ってキッチンへ向かおうとした神乃木の足が止まる。
ソファにもたれて千尋が眠っていたのである。

とっさに声をかけようとしたが、もう電車もない時間だ。
何よりぐっすりと眠っている千尋を起こすには忍びなくて寝室にとって返した神乃木は毛布を取ってくると千尋にかけてやった。
そしてキッチンで喉を潤すと寝室に戻り
「おやすみ…だぜ、コネコちゃん」
そう言いながらドアを静かに閉めた。

がクッ…
ソファから頭がずり落ちそうになって千尋は目を覚ました。
(-嫌だわ…眠ってしまったのね)
窓の外を見ると暗い空の向こうが微かに白んでいる。
多忙な神乃木の補佐ということで、神乃木に劣らず疲れていた。
自分にかけられた毛布を見て
(-病人に気を遣わせて…)千尋は苦笑した。
毛布をたたんで神乃木の寝室に向かう。
起こさないようにドアをそっと開けてベッドの傍らに立つと
呼吸も静かになり顔色も良くなっているようだ。
(もう大丈夫そうね…)
そう思い、足音を立てずに寝室を出ようとすると

「帰っちゃうのかい?」背後から声がした。
「センパイ…起きてらしたんですか?」ビックリして千尋が言うと。
「帰るのか?」遮るように神乃木が聞いた。
「ええ、そろそろ電車が出る時間だし…
 センパイもだいぶ良くなったみたいだから」
千尋がそう答えると
「コネコちゃんが帰っちまったら、また悪化しちゃうぜ?」
普段の神乃木に似合わない甘えるような言葉に戸惑いながら
「そうですね…じゃあ一旦着替えてから 戻ってきますね?」
そう千尋が提案すると
「だめだ…いてくれ…」
聞き分けのない駄々っ子と化した神乃木に
「シャワーと着替えお借りしますからね!」
諦めたように千尋がため息をついた。


シャワーを浴び終えた千尋は困っていた。
「何でも使っていいぜ…」そうは言われたものの…
パジャマの上は問題ないとして下は…ダメだわ…
ウエストが合わずどうしてもずり落ちてしまう。
だが、大柄な神乃木なのでパジャマの上でも
ミニのワンピースの丈ほどはある。
もうこれでいいわ…千尋は諦めて洗面所を出た。

リビングには神乃木の姿はなかった。
(…また眠ってしまったのかしら)

神乃木が起きた後軽く摂れる者でも作っておこうかと
思いながらキッチンに向かった。
ガスの火を付けようとしたとき、寝室のドアが開いた。

「センパイ、お鍋お借りしますね」
台所に向かったまま千尋が言ったが返答がない。
思わず振り返ると、突っ立ったままの神乃木が
黙ったまま千尋を凝視していた。

「センパイ?」
不審気に訪ねると突然後ろから抱きすくめられた。
「セ、センパイ!」
驚いた千尋が声を上げると
「コネコちゃん…この格好は反則だぜ…」
耳元で神乃木が囁いた。

思わず反論しようとした千尋の唇をまだ少し熱っぽい温度の神乃木のそれが窒ぐ。
神乃木の舌が千尋の口内を激しく犯していく。
「あっ…」
舌と舌が絡み合い吐息が漏れてしまう。
ようやく離れた唇が今度は千尋の首筋に移動した。
その熱い感触に身震いしながら
「…センパイ…何を…」
絞り出すような声で問う千尋に
「もう我慢できねぇぜ…病人を挑発するコネコちゃんが悪いんだぜ?」
千尋の目を熱い眼差しで見つめながら神乃木が答えた。

首筋にねっとりと舌を這わせられながら両手で胸を揉みしだかれ
「んっ…」思わず甘い声が漏れる。
「そんなに可愛く鳴かれるとたまらなくなっちゃうぜ?」
言いながらパジャマ越しにでも判るくらいに固くなり始めた乳首を神乃木は強く摘んだ。
「やぁ…ん…」まだ残る戸惑いと快感の中で千尋の思考は揺れ動く。
「お願い…やめて…ください」そう言うのが精一杯だった。
「可愛いぜ…千尋…」千尋の懇願を無視するように神乃木の右手は千尋の太腿を撫で上げる。
逃れるように千尋は身を捩ったが強い力でショーツ越しに割れ目をなぞられた。
「あっ!」
そして執拗に指が秘部を上下しはじめ神乃木の指が千尋の一番敏感な突起をとらえると
「あぁん!」千尋の全身に電気が走り膝がガクガクと震え、その場にへたり込んだ。

抱き起こそうと手を伸ばす神乃木にイヤイヤと子供のように首を振る。
次の瞬間千尋の体は突然強い力で宙に浮いた。
神乃木は無言で千尋を抱き上げて大股で寝室に向かう。
蹴るようにドアを開け、ベッドに千尋を横たえた。

反射的に起きあがろうとした千尋を押さえつけ口づける。
そのままパジャマのボタンを一つずつ外していった。
千尋の豊満な乳房が現れると
(…綺麗だぜ)口の中でつぶやきながら指で乳首を挟んで軽く揉んだ。
「は…ぁん…」堪らず千尋が喘ぎだすと徐々に強さを増しても揉み続ける。
次第に固く張りつめる乳首を口に含みゆっくりと転がす。
「…あ…あ…」舌が動く度に千尋の体も悶え始めた。
その様子を見ながら神乃木は突然乳首を強く吸った。
「あーっ!…」高い叫び声を上げながら千尋の体が波打つ様に跳ねる。
千尋の顔を覗き込むと瞳が潤んで酷く扇情的な表情だ。

(クッ…メチャクチャにいたぶってやりてぇ…)
神乃木に残虐な心が芽生える。そんな気持ちを抑えつけながら
千尋の体を抱き起こし強く抱きしめる。
「んっ…」切なく声を上げる千尋の胸に顔を埋め激しく乳首を舐め上げる。
「あぁん…」神乃木の腕の中で千尋は身悶えた。
神乃木はその格好のまま片手をショーツの中に滑り込ませる。
「いやぁ…ん…」
ぬるっとした感触が伝わってきた。既に充分潤っているそこを指で丹念に愛撫する。
中心を指でくちゅくちゅと弄ると千尋の体に震えが走り、嬌声が漏れた。
とろとろと熱い密が神乃木の指を濡らしていく。
「センパイ…おかしく…なっちゃ…」
熱に浮かされたように千尋が言った。

指を上に滑らせ蕾のような突起を指の腹で捏ねる。
「くぅ…ん…!」悲鳴のような声を上げ千尋が体を仰けぞらせると
今度は円を描くように擦り続けた。
ぷっくりと固くなった突起を摘んで指で擦り合わせると痙攣するように
千尋の腰が上下しぐったりと神乃木の肩に倒れ込んだ。

「もうイッちゃったのかい?」神乃木がニヤリと笑いながら千尋の目を見る。
「…センパイ…いつも以上にイジワルですね」恥ずかしそうに千尋が答えた。
「可愛いコネコを苛めるの…嫌いじゃないぜ…」
言うなり神乃木はシーツの中に頭を滑り込ませた。

「きゃっ!」声を上げる千尋に構わずショーツを剥ぎ取る。
「ん…だめです…いやぁ…」
千尋は身を捩ろうとしたが、がっちりと腰を抑えられ身動きがとれない。
亀裂にいきなり舌を這わせられ
「あっ…くぅ…」堪らず千尋がベッドに倒れ込むと足の間に体を割り入れる。
ぷくんと顔を出している突起を舌で押しつぶすように舐め回す。
「ん…うぁ…」そのまま千尋の中に指を差し入れ内部を掻き回す。
「いやらしい音がしてるぜ…?」
煽るように耳元で囁きながらざらざらとした壁を擦り上げる。
ちゅぷちゅぷと音を立てながら密が溢れ出す。
どうにか閉じようとする千尋の脚を反対に大きく開かせて舌先を固く尖らせて千尋の中に差し入れた。
「いやあぁぁっ…!」強い刺激に叫ぶ千尋の声を聞きながら内部を丹念に舐めると
熱く潤った中はうねうねと蠢動するように神乃木の舌を締め付けた。

「あん…ふっ…あぁぁ…」いよいよ悩ましい千尋が喘ぎに神乃木の興奮も高まる。
いきり立った自分自身を千尋の蕩けそうな中心にあてがった。
しかし、直ぐには挿れようとせずに割れ目に添って上下に滑らせ始める。
神乃木の先端が千尋の突起をっくりゅくりゅと擦ると
「や…」トロンとした表情でか細く千尋が声を漏らした。

「クッ…たまらねぇぜ…」そういってゆっくりと亀裂を割りながら千尋の中に入っていった。
ぐちゅぐちゅという湿った音と千尋の喘ぎ声が交錯する中で腰を最奥まで進める。
濡れた内部が神乃木自身に纏わりつく。
ゆっくり抽出を繰り返すと一層ねっとりと絡みついてきた。
乳房に手を伸ばし押しつぶすように揉みしだいて先端を強く吸う。
連動するように締まる中を円を描くように掻き回すと結合した部分から千尋の密が垂れ落ちた。
腰の動きを速めながら抉るように掻き回す度にびくんと千尋の体が反応する。
「ふぅ…ん…あ…」
艶っぽい喘ぎ声に刺激されより激しく腰を打ち付けた。
先ほどより固さを増したペニスが壁を削り取るように擦ると千尋の体が弓なりにしなった。
「…センパイ、もう…」
「荘龍だ…」
「もうだめぇ…荘龍ぅ…」
名前を呼ばれた瞬間、背中に快感が走り激しく思い切り突き上げる。
「あっ!…あ…あん…あっ…くぅ…!」
艶かしく乱れた千尋が達して直ぐに神乃木は千尋の中に欲望を注ぎ込んだ。

荒い息で横たわる千尋を抱きしめ唇を窒ぐ。
千尋がたまらなく愛おしく感じた。
口づけた後、千尋の隣に横たわる。
心地よい疲労感はあるものの風邪はどこかに吹き飛んでしまっていた。
(特効薬…この場合コネコちゃんだろうな…)
我ながら現金なものだと苦笑した。

千尋に目をやると神乃木に背を向けていた。
背中に口づけるとビクッと反応したもののそのままじっとしている。
「どうしたんだい?」
声をかけると首を横に振るだけで答えようとしない。
体を起こして顔を覗き込むと恥じらうように目を背けた。
神乃木はクッ…と笑いながら
「可愛かったぜ…コネコちゃん?」
いつもの調子で言うと千尋は神乃木の顔を睨みながら
「センパイって本当にイジワルですね!」
すねた口調で言った。

神乃木は千尋の腕を掴んで仰向けに寝かせた。
そして再び千尋に覆い被さると
「イジワルはこれからが本番だぜ?コネコちゃん…」
ニヤニヤ笑いながらそう言った。
「なっ…!」
「おあつらえ向きに明日も休日だぜ?今迄おあずけ喰った分たっぷりとかわいがらせてもらおうか」
何か叫ぼうとした千尋の口をを強引に唇で窒ぎながら、神乃木は愛撫の手を伸ばし始めていた。
(クッ…最高の週末だぜ…)

-その日神乃木の部屋に灯りがともったのは随分と夜も更けてからだった…




                                     おしまい
最終更新:2006年12月13日 08:12