思い付きミツマヨ

御剣が珍しく非番の休日を満喫していた。
明け方に目が覚め、ドライブがてら港を訪れた際に獲れたてのサザエが入手出来た。
御剣はサザエの壷焼きが大好物であった。
今夜は壷焼きに、冷蔵庫で眠ったままだった大吟醸で一杯…と想像すると、
不意に唾液が出て来た。

帰宅してサザエを冷蔵庫のチルド室に入れ、一息着いた所でインターフォンが鳴った。
数日前に特注で頼んでいた抱き枕二つが宅配で届いた。
一つはトノサマン柄、もう一つはそれより一回り大きなヒメサマン柄であった。
無論トノサマン柄は真宵にプレゼントする予定で、その旨も伝えてある。
御剣は真宵の携帯に連絡を取った。

「はい、もしもし。」
「真宵くんか?例のアレが届いた。多少大きい品物故、届けようと思うのだが…。」
「いえいえ、夕方にでもみつるぎ検事のお宅に伺います。久し振りにコレクションも見たいし。」
「うム。今日は一日自宅にいる。新しいトレカもフルコンプした。来たまえ。」
「わあ、楽しみです!」
「それでは待っている。」
御剣はそう言うと携帯を切った。

真宵が単身で御剣の自宅を訪問するのはこれが初めてではない。
御剣が世間話が苦手とは言え、二人共トノサマンマニアである。
コレクションについて熱弁を振えるのは現時点で真宵しかいない。
今夜は抱き枕について楽しく会話出来る。御剣はそれだけでも幸福であった。

真宵に対する感情が恋愛感情と既に御剣は気付いていた。
だが彼女はライバルである成歩堂の助手で、未だ子供らしさを残している。
御剣自身も女性の肌を知らない。仕事人間で女性に興味らしい興味ももてなかったせいもある。
そのような自分が積極的に真宵にアプローチをかけられる筈もない事にももどかしさを感じつつ
これでも良いのだと自身を無理矢理納得させていた。

だが御剣とて健康な男性である。疲労している時等は特に強い性欲を持て余して困惑する事がしばしば有った。
潔癖な御剣に自慰は抵抗が多少有った。行為の最中は強い快感を得るが、
射精後の罪悪感と虚しさに自己嫌悪に陥る。
自慰の最中に真宵の事を無意識に想像してしまう事も要因の一つであった。
あの穢れを知らぬ肢体を抱き締め、口付ける―それだけの想像で御剣は
全身に快感を覚える。
自慰の際律動させる己が手が真宵のものだと想像した途端、全身が痺れ、
声を上げて欲を吐き出した事を思い出して御剣は赤面した。

夕刻に差し掛かり、御剣はサザエの壷焼きを調理する事にした。
幾ら不器用な御剣とは言え、この程度の調理は可能である。
サザエをキッチンのガスコンロに置いた網に乗せ、醤油を垂らして焼く。
その間に日本酒を取り出し、焼き上がるまでの間に食前酒としてちびちびと
呑んでいた。

丁度サザエが焼き上がった頃、不意にチャイムが鳴った。
モニターを見ると、にこやかに微笑む真宵が映っていた。
インターフォンを取り、御剣は真宵に
「今ドアを開ける。上がって来たまえ。」
と告げると、マンション入り口の自動ドアを開いた。
急いで玄関の鍵も開き、真宵の到着を待ちつつ焼き上がったサザエを器に盛った。
程無くして真宵が御剣の自宅のインターフォンを鳴らした。
玄関のドアを開け、御剣は
「入りたまえ。」
と真宵を自宅に招き入れた。
真宵は
「うわあ、何か良い匂い!お醤油と磯の匂いがしますね!」
と感嘆の声を上げた。

真宵は山育ちで、サザエの壷焼きは食べた事がない。だが香りが食欲をそそる。
「良かったら食べるか?サザエの壷焼きなのだが…。」
「はい!遠慮なく頂きます!あたしサザエなんて食べるの初めてです!」
真宵は瞳をキラキラさせて頷いた。
焼き立てのサザエは食欲を誘う香りで真宵を刺激していた。

二人はダイニングキッチンのテーブルに着き、焼き立てのサザエを剥き始めた。
真宵ははじめてのおぼつかなさ、御剣は不器用な手付きでサザエ相手に悪戦苦闘していた。
鉄の串で何とかサザエの身を出し、口に運ぶ。
「味の方はどうかね?」
「うーん…緑色の部分が苦いです。でも香ばしくて美味しいです!」
「そう言えば君は二十歳になっていたな。旨い酒で苦味が爽やかになる。呑んでみたまえ。」
御剣は小さなグラスを出し、注いで真宵に勧めてみた。

真宵は恐る恐るグラスの日本酒に口をつけてみた。
初めて口にする酒は思いの外味わい深く、口内の苦味を消していく。
「サザエのわたは存外癖があるが、良い酒が有れば旨い。」
御剣は二つ目のサザエを口にしながら、自らも酒を口にする。
「あのあの、もう少しお酒を頂いても良いですか?」
どうやら真宵はいける口であったらしい。辛口ながらもフルーティな味わいの日本酒の方が
サザエよりも口にあった様子であった。
御剣は多少の酔いも手伝ってか上機嫌で酒を真宵のグラスに注いだ。
真宵はにこやかにグラスの酒を呑んでいたが、御剣は突然抱き枕の事を思い出し、
「少し待っていてくれたまえ。」
と今やコレクションの収納場所になっている部屋に向かった。

程無くして御剣が両脇に抱き枕を抱えて真宵の元に戻って来た。
だが今まで真宵がいた筈のキッチンに姿が見えない。
代わりにリビングの床に酔い潰れた真宵が横たわっていた。
「真宵く…!!」
御剣は真宵の寝姿に驚愕した。
短い装束の裾がすらりとした脚で開かれ、薄桃色のショーツが僅かとは言え
隙間から覗いていた。
いくら普段冷静な御剣とて動揺を隠せなかった。初めて目の当たりにする
エロティックな思い人の寝姿に、反応せざるを得なかった。

酔いが、御剣の理性を麻痺させていた。

御剣は真宵の傍に横たわり、幼さが残る肢体に顔を近付けた。
甘いミルクの様な体臭に混ざり成歩堂の煙草の移り香が感じられ、
御剣は強烈な嫉妬を覚えた。

御剣は無意識に真宵を抱き締めていた。
「ん…みつるぎ…検事…」
真宵は抵抗しなかった。酔いのせいではなかった。真宵も御剣の身体に触れたかったのだ。

二人はどちらからともなく口付け合った。
まるで思春期の男女が行う様な、唇だけのキスだった。
触れ合う毎に愛しさが湧き上がる。御剣は真宵の頭を撫で、真宵は御剣の
背に腕を回し、互いにぎこちないながらも想いを伝えていた。

やがて御剣の舌が真宵の唇を割り、深い口付けを行って来た。
それと同時に真宵の両脚の間に片脚を割り込ませ、太腿に自らの欲求を押し付けた。
御剣は真宵の装束の胸元から掌を滑り込ませ、肌理の細かく柔らかな乳房を
優しく擦る。真宵は恥ずかしさから僅かに身動きを取ろうとしたが、御剣が
その都度抱き締めて離さなかった。

乱れた装束を御剣が脱がせるまでに、時間は掛からなかった。
御剣も着衣を脱ぎ、素肌で真宵を抱き締めた。
体温が直に伝わり合い、それだけで興奮の度合いが先程とは比べ物にならない。
互いに羞恥の為、肌が染まる。だがもう後には引けない。
抱いて抱かれて、ひとつになる。

御剣は真宵の秘所に指を這わせた。そこは瞳と同じく、いやそれ以上に潤っていた。
御剣も同様に自身の先端を粘液で濡らしていた。
「あ…あの…。あたし、こんな事初めてなんです…。」
真宵が羞恥を抑えつつ御剣に訴えた。破瓜の痛みに多少恐怖感がある様だった。
御剣は真宵の訴えに少し困惑した表情を一瞬浮かべたが、すぐに真宵を安心させる為に
「…私もだ。だが出来得る限り優しく勤める。安心したまえ。」
と微かな笑みを浮かべた。

御剣は真宵の身体に不器用な愛撫を始めた。
首筋、乳首、脇腹に指先や唇を使ってぎこちなく動く。
未開発の真宵の身体が愛撫が進む毎に艶かしく震え、御剣の興奮を盛り上げる。
御剣の顔が秘所に差し掛かった時、真宵は余りの恥ずかしさに
「そ、そこだけは止めて…!恥ずかし過ぎる!」
と悲鳴に近い声を上げた。しかし御剣が指で愛撫すると、先程よりも潤いが増していた。

ぬかるみを深めた真宵の秘所は、もう既に受け入れが可能な程であった。
御剣も愛撫するだけにはいかない程、限界が近付いていた。
御剣は桃色に染まった真宵の太腿に腰を割り込ませ、上体を重ね合わせながら
未開の地へと侵入しようとした。
自身を握り、上下に動かしながら興奮で開き掛けの真宵の秘所の入り口を探る。
多少時間は掛かったが、御剣はようやく侵入口に辿り着いた。
このまま一気に貫きたかったが、真宵がこれから感じるであろう苦痛を考慮し、
先端だけを軽く挿入してみた。
「い、痛い、です…!」
真宵が苦痛に呻く。だが御剣の背に回している腕が、止めないでと力を込めていた。
御剣は徐々に真宵のぬかるみに侵入しつつ、苦痛を訴えられる度に腰を引いては真宵を慣らしていく。
だが御剣も限界であった。
「…真宵くん、我慢、してくれ…!」
切ない声を上げ、御剣は真宵の中に自身を根元まで押し込んだ。
{あああっ!痛い、痛いっ!」
真宵が破瓜の痛みに耐えかねて叫んだ。全身に力が入り、御剣の背に爪を立てた。

御剣は腰を動かす度に全身が甘く痺れた。真宵が痛みで身体に力を入れると、自然に結合部も締まる。
御剣も絶頂が近付いてきた。真宵の身体を抱き締め、耳元で
「もう、いく…!」
と囁き、真宵の奥にぐっと自身を押し付け、果てた。

二人は御剣が果てた後も繋がったまま抱き締め合っていた。
このままひとつでいたい。
二人の想いは同じであった。
御剣は真宵に深く口付けした後、真宵から自身を抜き、ソファーにあったティッシュで真宵の秘所を拭った。
破瓜の血液と御剣の欲が混ざり合ったものがティッシュに付着した。
御剣は自慰では罪悪感を受けていたが、今は幸福感で一杯であった。
真宵が自分を受け入れ、抱き締めてくれた。こんな初体験を出来るとは思ってもみなかった。
真宵も同様の思いを持っていた。
想い人に抱かれ、これ程幸福感が得られた自分は世界一幸せなのだ、と感じていた。

御剣が
「シャワーを浴びないか?…一緒に。」
と真宵に問い掛けた。真宵は元気良く
「うん!」
と答え、御剣を抱き締めた。

シャワーを浴び、着衣した二人は余韻に浸りつつもトノサマンネタで盛り上がった。
御剣が真宵用に発注したトノサマン抱き枕を見せると、真宵は満面の笑みを浮かべ、
「有難う!すっごく嬉しいよ!毎晩抱いて寝るもんね!」
と御剣の頬に軽いキスをした。
御剣は照れながら
「今日はもう遅い…それに、その、真宵くんを抱き締めて眠ってみたいのだが…構わないか?」
と問い掛けた。
真宵も照れながら
「…うん、それって凄く嬉しいかも…。」
と御剣の大きな手を握り締め、二人は再び深いキスをした。

最終更新:2020年06月09日 17:52