「ねえねえなるほどくん、ホントに捻挫だけなの?」
「ホントだよ。」
「でもでも、10メートル飛んだんでしょ。びゅーんと!」
「びゅーん、かどうかは覚えてないけど。まあ、飛んだみたいだね。10メートル。」
確かもう26歳になったはずだというのに、相変わらずその物言いは幼げで成歩堂は
思わず顔がほころびる。そんな彼の仕草に気づかずに、彼の元相棒は真面目な面持ちで
うーん、と考えこむ。
「いいなあ。あたしも10メートル空飛べて捻挫で済むなら、その車に跳ねられてみたい。」
随分と不謹慎な発言をさらりと言ってのける。
「何言ってるんだよ。家元の大事な体だろう。」
成歩堂が軽くたしなめると、まあ、そうなんだけどね。と言って彼女は軽く微笑んだ。
「でもビックリしたんだよ。ホント。」
「僕だってビックリしたよ。」
「心配してすっ飛んできちゃったし。」
「忙しいのに、ありがとうね。」
「えへへ、まあね。…でも無事でよかった。」
そう言って、真宵はベッドに横になっている成歩堂にキスをした。相変わらずの長い髪が
頬に触れて、肌理の細かいしなやかな感触が成歩堂を撫でていく。
会うのは久しぶりだ。
キスをしたのは…いつ以来だろう。
「相変わらずやわらかいね。真宵ちゃんの唇。」
「なるほどくんは、ひげがチクチクする。」
ははは、と笑って成歩堂は真宵の手を取り、指先で彼女の細い指先を撫でる。

事故に合って、真っ先に電話をしたのは彼女へだった。
お互い、何かあったらすぐに知らせる。離れていてもピンチになったら駆けつける。
特にそんな約束をした訳ではないけれど、いつの間にかそうなっていた。

彼女を撫でていた指先を広げ、細い手首を取る。華奢な白い腕は昔と全然変わらない。
真宵は軽く掴まれた手を動かして成歩堂の手の甲に唇を寄せた。とても愛おしい
もののようにやさしく口付けてくれる。成歩堂はその手でお返しのように優しく
彼女の頬を撫で、長い髪を撫でながら問うた。
「最近どう?」
「んー?けっこう忙しいよ。はみちゃんが色々手伝ってくれて何とかなってる、ってかんじかな。」
「そっか。」
「この後も予定が入っちゃってて…っていうか、抜けてきたんだけどね。ホラ、
なるほどくんの一大事だからはみちゃんが気を利かせてくれて。でも、あんまり
ゆっくり出来ないんだけどね。売れっ子霊媒師としましては。」
彼女が正式に家元となって七年。
若き家元の努力と彼女をサポートする春美の頑張りを中心に、綾里家は目を見張る
程の速さで復興を遂げた。
今や押しも押されぬ…といった風情であり、修行者の指導や後援者への挨拶、
そして上流階級との会合、と多忙な日々を送っているようだった。「けっこう忙しい」は、
「物凄く忙しい」と言い換えても良いほどだろう。
苦労を苦労と思わないのは、相変わらずの彼女の美点だ。
七年の間に少女というよりは女と呼ぶのに相応しい風貌となっているものの、本質は変わらない。
変わらず愛おしい。
「あとどれくらい?」
「時間?そうだなあ…なるほどくんの無事も確認できたし、30分くらいは大丈夫だけど。」
「そりゃ大変だ。」
そう言いながら成歩堂は髪を撫でていた手で真宵の肩を取り、
「じゃあ、すぐしなくちゃ。」
と、言って真宵をぐい、と自分に引き寄せた。


「うわ!」
思い切り抱き寄せられた真宵はベッドに横たわる成歩堂の上に覆いかぶさるような状態に
なってしまった。慌てて起きようとするが、肩に回された腕は振りほどくことを許してくれない。
「こ、こら。びょーにんの癖にナニ不謹慎なコト言ってんの!」
「病人じゃなくて怪我人だよ。それも軽症の。」
そう言いながら空いているもう一方の手で真宵の腰を取り、その下の丸みを撫で上げる。
着物の上から縦の溝に指を這わせて、丸い双丘を手できゅ、と掴んでやる。
「あ…」
以前よりも真宵の身体は肉感的になっている。太ったというよりは成熟した、
というべきであろう。曲線が女としての成長を分かりやすく表している。
「ダメだよ、なるほどくん!こら。」
真宵はぺし、とニットの帽子ごと成歩堂のおでこを軽く叩く。悪戯する子供を
諭すような振る舞いは彼女の姉譲りだ。だが、悪戯をする大人は怯まずに状態を
一瞬起こして彼女をぐい、と一層引き上げる。
「きゃわぁあ!」
ベッドに戻る反動で勢い良く引き上げられた真宵は、成歩堂の上に半身乗り上げてしまった。
「僕、ケガ人だから真宵ちゃん上ね。」
ニコニコと上機嫌で成歩堂が言う。真宵は呆れた表情で
「えろおやじ」
と膨れてみせたが、その言葉とは裏腹にベッドの上に乗り上がり、成歩堂の上に身体を跨がせた。
「重くない?」
「んん、全然。お尻が太腿に当たって気持ちいいよ。」
「ばか。」
真宵は小さくつぶやいて、成歩堂にもう一度キスをした。
成歩堂が求めていたように、真宵も彼を求めていたことが、その口付けで分かった。

病院のベッドで抱き合う二人は、体温が上昇するのも早かった。
男を跨いで長い着物のスリットから見せる白い太腿は、酷く情欲をそそる代物だ。
昔のような短い装束で無くなったのは、いつからだったろうか。
真宵が成歩堂の男の部分を指で摩りながら言う。
「やだ…なるほどくん…もうこんなにしてる…」
「真宵ちゃんが色っぽいから。」
上気した頬で照れる仕草の真宵は、本当に色っぽい。
「だ…だって、さっきから…へんなさわりかたするから…」
真宵のはだけた胸元に両手を突っ込み、やわらかい丸みを揺さぶり、指先を彼女の胸の頂きに
突きつけている。指で彼女の先端を押し込み、引っ張って、真宵に絶えず刺激を与え続けている。
彼女の胸は以前よりも成長しており、揉み応えも十分だ。
「真宵ちゃん、胸、気持ちいい?」
「ん…っ…うん…。きもちいい…」
真宵がブラのカップが1サイズ大きくなったと白昼堂々事務所で宣言したのはいつだったか。
(確か御剣が居て思い切り紅茶を吹き出してたっけ…。)
あの頃よりも更に大きくなっている。手から溢れそうなほどの、素晴らしい成長だ。
お姉ちゃんくらいになると思ったんだけどな。
そう言っていた事もあった気がする。成歩堂にとっては大きさも柔らかさも見事だし、絹のような
手触りは十二分に魅力的で、十分満足していたのだが。
葡萄の房のように重力に負けて目の前に下がっている二つの乳房を成歩堂はベッドの上で
交互に揉みしだき、そして二つを順番に味わう。果実の先端部分を舌で包み、大きく口の中に
吸い込むと、頭上で真宵の甘い声の混じった吐息が聞こえてきた。
乳首に吸い付いたまま腰を引き寄せ、両手でお尻を掴み上げる。彼女の下着の中心を
脇からずらし、開きかけた蜜の扉に手をかけて堰きとめていたものを開放する。
「あ…あっ…!だめ…」
唇を動かしてクニクニと彼女の敏感な処を刺激し、舌で突いてやると真宵の身体がひくん、
と震えてパタ、と水気のある音が成歩堂の腹のあたりに落ちてきた。熱い彼女の雫が
ずらした下着の脇からこぼれている。成歩堂の指にもそれは流れ、透明な熱いものが
指から手のひらへとつう、と流れていく。
「真宵ちゃん…挿れたい。」
「うん…。あたしも、なるほどくんの…ほしい…。」


横たわっている男の唯一いきり立っているその部位を、真宵は手にとりしゅ、しゅと
扱きながら自分に近づける。
「いれるの…うまくないけど我慢してね…」
そう言って自分の大切な部分をもう一方の手で開き、成歩堂のそれを宛がった。
成歩堂はその光景に益々昂ぶりを押さえられなくなる。
「真宵ちゃん…もっとよく見せて…。」
黒い茂みの中に隠された艶のあるそれは、成歩堂を待ちきれずに呼吸を繰り返している。
「や…」
成歩堂の視姦を避わすように、真宵は成歩堂自身を掴み、先端を己の入り口に埋め込み始めた。
「んぅ…っ!」
「っ…!」
十分に濡れていた所為だろう。うまくない、という言葉とは裏腹にスムーズに男を咥え込んでいく。
「うまいよ…真宵ちゃん…練習した?」
「そんなこと…!ん…ぅ!してな…ぁっ…!」
「すごい熱い…真宵ちゃんのここ、蕩けてる…腰の使い方が、会う度にやらしくなってるね…」
「や…変なコトいっちゃ…ん…っ!」
言葉に反応して一層彼女は締め付けてくる。昔とまるで変わらないその様子に成歩堂は微笑む。
小刻みに腰を上下に振って彼女への杭を深く打ちつけていくと、それに少しばかり遅れをとりながら、
真宵の露になった両乳がたぷん、たぷんと前後にゆさぶられている。
(いい眺めだな、これ。)
成歩堂はそう思い、時折、一際腰を強く打つ。
その度にんぅ!と大きく真宵が跳ね、ぷるん、と大きく乳房がたゆたった。
しばらくその上下運動を目で楽しみながら、成歩堂は締め付けられる自分の
分身の快楽に目を細める。
自分の上の真宵の吐息が荒い。
「真宵ちゃん、おっぱい揺れてる。」
「あ…や…やだ…」
慌てて隠そうとする両手を捕まえ、胸を挟んで強調させるように両手を組み込み、
成歩堂は更に腰を下から突き上げる。
「あっ!んっ!んぅ!」
細い両腕の間で彼女の胸が大きく揺さぶられ、真宵は下からの衝撃に我慢できずに声を漏らす。
「真宵ちゃん…声、大きいよ。」
「あっ…!ごめ…んぅっ!」
「あ、そういえば、もうすぐ看護師さんの巡回時間だ。」
「えっ!う…うそ…!」
真宵の身体がきゅ、と成歩堂を締め付ける。慌てて彼から離れようともがくが、捕まえられた
両腕は依然として成歩堂に捕らえられたままだ。
「だ、だめだよ、なるほどくん…来ちゃうんでしょ…はなして…!」
濡れた瞳は訴えるように成歩堂を見つめ、形のよい眉は悩ましく眉間に皺をよせている。
成歩堂は真宵の笑顔も怒ったような表情も好きだが、泣きそうな顔もまた愛おしい。
「嘘だよ。真宵ちゃん。」
「え…」
「冗談。ごめんごめん。…それにしても、人が来るって言われただけでこんなに締め付けて
くるなんて…ひょっとして真宵ちゃん、見られたかった?」
意地悪な笑顔を向けられ、真宵は安堵と怒りで幼子のようにふにゃ、と表情を崩す。
「もお…!ばかぁ…!もうやめるぅ…!」
拗ねたその表情はやっぱり子供みたいだ。
だが、やめることなんて出来ない大人の快楽を、彼女はもう知っている。
やめられないくせに。そう言おうとしたが、これ以上彼女の機嫌を損ねるのも悪いので
成歩堂はごめんごめん、と素直に謝る。
「可愛いよ、真宵ちゃん…。」

二人はどちらともなく動きを再開する。
唇を深く重ね、互いの胸を指先で刺激する。
成歩堂は大きく息を吐き、真宵の身体を受け止める。
肌に落ちる黒髪の感触に堪らない愛しさがこみ上げる。
愛おしい。今も、昔も。ずっとこれからも。
真宵は成歩堂の上で喘ぐ。涙に滲んだ瞳がぼやけながらも成歩堂をしっかりと見つめていた。
「真宵ちゃん…気持ちいいよ…」
「あ…あたしも…なるほどくん…気持ちいい…っ」
腰の動きが加速する。真宵の揺れるはずの両胸は、成歩堂の胸板に押しつぶされていた。
真宵の腰を、華奢な背中を掻き抱き、成歩堂は下からずんずんと真宵を突き上げ、
昇らせ、そして昇っていく。
「真宵ちゃん…もう…出る…!」
「んぅ…ぁあっ!!…っ――!」
声にならない叫びを上げて、真宵は成歩堂の汗ばんだ胸の中に落ちていった。

「じゃ、これお見舞いね。」
真宵がてきぱきと風呂敷の中から見舞い品を取り出して重ねていく。
「え。いいよ。真宵ちゃんだけで十分。」
「何言ってんの!重かったんだからね、これ。ちゃんと見て、レポート送ること!
原稿用紙で一話につき3枚以上ね。」
「いったい何話分だよ…。」
先ほどまで二人が乱れていたベッドにどかどかと特撮モノが積まれていくのは、
なんとも味気ないというか、不思議な気分である。
まあ、こういうところも含めて彼女らしいといえばそうなのだが。
「予定の時間すぎちゃった。またはみちゃんのお説教だなー。」
真宵が風呂敷をたたみ終え、ちょっと困ったようにつぶやく。
「大丈夫だよ。僕が引きとめたって言えば、春美ちゃんも納得するよ。」
「お、自信家だねー。」
まあ、ね、と成歩堂は答える。春美はまだ成歩堂と真宵は結ばれると思ってくれていた。
それは、成歩堂にとって嬉しいことでありまた、辛いことでもあるのだが。
「じゃあ、行くね。なるほどくん。」
「真宵ちゃん。」
呼び止めて振り向いた彼女にキスをする。ちょっと急いで駆け寄ったので捻挫した足が痛んだが、
彼女の唇はやっぱり柔らかかった。

「…真宵ちゃん。そろそろ結婚しようか。」
「また始まった。なるほどくんが本気になったらしてあげるよ。」
「うーん…今のは結構本気だったんだけどな。」
「あはは。ケッコンには色々大変なんだよ。片付けなきゃいけないものもあるしね。」
「片付けなきゃいけないもの…か。」
「そ。あたしもなるほどくんも、いろいろ。じゃあ、またね。」

長い髪を揺らして、あっさりと彼女は去っていってしまった。
恋人と呼べるか分からない、だが最高に愛しい彼女。
去っていった直後には、一層強く感じる。真宵をもう一度、そしてずっと抱きしめていたいと。
諸々終わらせたら、再び会いに行こう。今度は僕から。

ベッドの上に乱雑に置かれたDVDの山を見て、成歩堂は呟く。
「じゃあ…片付けるかな。そろそろ。」


最終更新:2020年06月09日 17:14