ーーじゃらじゃらに優しくされた。
右手でキーボードを叩きながら、左手では超高速でかりんとうを食べる茜。
この日、茜は9袋のかりんとうを空けていた。
そんなにも茜を苛つかせたのは、もちろん、牙琉響也である。
ついさっき、警視庁に突然現れた響也は、じゃらじゃらと音を立てながら
茜に歩み寄り、コーヒーとクッキーを手渡して言った。
「お疲れ様、刑事クン。これは差し入れだよ、いつもかりんとうばかり食べているから、
たまにはちゃんとしたものを食べてもらおうと思ってね」
響也が、かりんとうを袋ごと投げつけられ、追い返されたのは言うまでもない。

「まったくさくさくさくさくなーにがさくさくさくさく差し入れよさくさくさくさく
クッキーのさくさくさくさくどこがさくさくさくさくちゃんとしてるんだっての!……ごっくん。」
ぶつぶつと文句を言いながら、貰わされてしまったクッキーの缶を眺めてみる。
菓子に詳しいわけではないが、何だかムダに高級そうだ、と茜は思った。
ばかばかしい。
空になった缶をデスクの隅に置き、
ゴミ箱にかりんとうの袋十数枚とコーヒーの空缶を投げ入れた。
出来上がったばかりの調書を抱えて、茜はデスクを立った。


検事局の、響也の部屋のドアを、茜は心なしか乱暴にノックする。
返事も待たずに中に入った。今まで何度も見てきた部屋だったが、いつ見ても呆れてしまう。
部屋には何本ものギター、機材、スピーカーが置かれ、床には楽譜が散らばっている。
本当にここは検事局なんだろうか。
「牙琉検事」
デスクに向かっている響也に声をかけると、響也はパッと振り向いて、嬉しそうに笑った。
「やあ、刑事クンか。クッキーはどうだったかい?」
「…別に。はい、これ、今回の事件の調書です。じゃあ私はこれで」
早口で言って背を向けようとすると、とっさに響也が茜の腕を掴んだ。
「ちょっと待ってくれよ、そんなに急がなくてもいいだろう?新曲、聴いてってくれないかな?」
「忙しいので、失礼します!」
茜の言葉を無視して、響也はギターを弾き始める。
茜はその凄まじい大音量に、ぎゃっと叫んで飛び上がってしまった。
「ああ、ごめんね、慣れてない人にはキツいよね」
「そういう問題じゃないです!そんなんやってないで仕事してください!
大体こんなところでギター弾いたら迷惑でしょう!」
「ボクにはこれも仕事なんだけどな……それに、防音なら完璧だよ」
響也は笑いながらギターを戻した。


次の瞬間、茜の頬に温かいものが触れた。それが響也の唇だと気付くのに数秒かかった。
「!!……なっ、な、な、」茜は響也から体を離そうとするが、
いつの間にかしっかりと抱きしめられていて、身動きが取れなくなっていた。
「何するんですか!ひ、人を呼びますよ!?」
「言っただろう?防音は完璧だ、って」
茜の耳元でそう囁いて、今度は額にと唇を落とした。
そして、つい先程まで自分が座っていたリラクゼーションチェアーに、茜を押し倒した。
何か言おうとする茜の口を塞ぐように、唇を重ねる。すこし離し、すぐにまた、深く口づける。
響也の舌が茜の口の中に入り、ゆっくりと歯列をなぞる。押し包むように舌を絡ませる。
長いキスを終えて顔を離すと、茜は顔を耳まで真っ赤にして、潤んだ目で響也を睨んだ。
「クッキーの味がするね」
しゅるり、と茜のリボンが解かれる。響也は片手で器用にボタンを外していき、
露になった鎖骨に舌を這わせ、強く吸った。
「んっ……!ぅあ……ぁ」
茜が思わず声をあげると、響也は満足そうに微笑んで、茜の小振りな胸を包む下着に手をかけた。


白いふくらみの頂点は桜色で、はち切れそうに固く尖っていた。
響也はそれを口に含み、甘噛みした。「ひ……っ、あ、やっ!」茜がビクンと体を震わせる。
もう一方の蕾も同じように、舌で転がしながら、響也は茜のベルトを外し、ズボンを脱がせた。
茜のそこは下着を湿らすほどに濡れていた。響也は下着の上から、
固く勃ちあがった芽を探り当て、引っかくように何度も刺激した。
「っあんっ…っあ…」茜の体がガクガクと震える。
響也は茜の固く閉ざされた瞼にそっとキスをして訊いた。
「もう…いいかな……?」
響也は、自分のものを取り出し、デスクの引き出しからゴムを取って着けた。
茜の下着を取り去ると、響也はゆっくりと自分自身を茜の中に沈めていく。
「やあっ……あ…!」激しい痛みが茜を襲う。茜は必死に響也の胸にすがりついて、
その痛みに耐えた。強い締めつけに、響也も呻き声を漏らす。
ふたりが、完全にひとつになると、響也は強く茜を抱きしめて言った。
「好きだよ…………茜」

まだ顔を紅潮させてうつむいている茜に、
自分のジャケットを掛けて、響也は柔らかく微笑みかけた。
「痛くなかったかい?できるだけ優しくしたつもりなんだけど…」
「…全然大丈夫です。ご心配なさらずに」
「本当?無理しなくていいよ、誰だって初めては痛い」
「っな、なんでそんなことっ…!」
わかるよ、と響也は笑って、一層顔を赤くして慌てている茜に優しくキスをする。
「クッキー食べてくれたんだね。ありがとう」
「…高そうだったので、もったいないから食べただけです!!」
頬を膨らませてぷいっと横を向く茜を見て、また、響也は幸せそうに笑った。
「何か飲み物を持ってくるよ」

パタン、とドアが閉められ、部屋には茜だけが残る。
茜は響也の笑顔を思い出して「バカ検事」と小さく呟き、寝返りをうった。

ーーじゃらじゃらに優しくされた。

動悸は未だ収まりそうにない。

最終更新:2020年06月09日 17:50