成歩堂×真宵(2-4その後)


数日振りに無事に真宵が帰ってきた。
監禁中に十分な食事を取らされていなかった所為だろうか、いつもよりも小柄な
身体が更に小さく見えて胸が痛んだが、祝賀と食事を兼ねたホテル・バンドーの
広間では色とりどりの料理が真宵を出迎えて彼女を喜ばせ、元気よくご飯を
食べる姿はいつも通りで、成歩堂は誰が支払いをするんだと思いながらも
ほっと胸を撫で下ろした。

事件に関わった皆が真宵の無事を祝福してくれる度に真宵は慌てて会釈を返している。
「ほあいあほう、ほらいまふ!」
食べ物を頬張ったままのほっぺたは大きく膨らみ、まるで小リスのようである。
というか、それ以前に何語を喋っているのか判別不明だ。
挨拶をしている御剣や糸鋸がほほえましさと苦笑を交えた絶妙な表情をしているのを、
ビールのグラスを傾けながら見つめる。
真宵の隣では春美が涙で真っ赤になった目を潤ませながら、真宵の次なる食べ物を
わんこそばの如く小皿に盛っている。
騒がしく、慌しい。いつも通りの光景。
それが今日はいつもよりも愛おしく感じる。
「何はともあれ、無事で良かったッス。」
大きく笑う糸鋸の声に成歩堂は心から同意した。
無事でよかった。ほんとうに。
「ふあい!」
大きく頷く真宵の笑顔が酒を益々美味しいものにしてくれた。


数日振りの安堵で酒が進むのも、そして数日間の不眠の所為で酒が回るのも
いつもよりも早いようである。
手洗いの洗面台でみた自分の顔は思っていたよりずっと赤かった。
「まあいいか。こんなに飲めるのも久しぶりだし。」
上機嫌な千鳥足でホテル・バンドーの会場に戻る。
相変わらずにぎやかなその部屋は夏美が人一倍騒いでいる所為だろう。
大きな声が入り口にまで届いている。
真宵ちゃん、変なインタビューとか受けてないだろうな…。
そんな事を考えて喧騒の中心に目をやると――――
主役の姿が消えていた。


さっと成歩堂の血が冷めて急激に引いていくのを感じた。
あのときの光景がフラッシュバックしていく。
あのときも、この部屋から真宵ちゃんは連れ出されて――――
酔いも手伝いぐらぐらと頭が、脳内が揺れる。
近づく人影を認識し、ようやく成歩堂は声を絞り出した。
「み…つるぎ…」
「どうした、成歩堂。飲み過ぎで気分でも悪いのか。」
「ま…真宵ちゃんは…真宵ちゃんはどこだ!」
「…ああ。心配するな。」
「え…」
「春美くんが眠りそうだったからホテルに部屋を取って連れて行ったのだ。
真宵くんから離れたがらないものでな、彼女が連れて行った。」
「そ…そうか…。」
息をひとつ吐き出すと少し落ち着いたが、動悸はまだ治まらない。
不安になって御剣に再び声を掛ける。
「ちゃんと誰か…」
「糸鋸刑事が付き添っている。大丈夫だ。」
成歩堂の質問を判っていたかのように、御剣は言葉を継いだ。
「そうか…ありがとう。」
漸く安堵し、近くの椅子にどさりと落ちる。御剣が冷たい水をグラスに注いで
くれたので、成歩堂は一気にそれを流し込んだ。
嚥下すると同時に頭の中も冷えて落ち着いていく。
「我々がいる前で二度とあんな事は起こらせるものか。」
水差しを置きながら御剣がつぶやくように言った。
そういえば、警察で総力を挙げて真宵の捜索をしてくれたのは、全てこの男の
的確な指示と素早い状況判断によるものだった。裁判中もそうだったが、御剣が
力を合わせて真実へと向かってくれたからこそ真宵の今の姿はあるのだろう。
「御剣、ありがとうな。」
改めて礼を口にする。御剣はいつものキザな笑顔とは少しばかり違う、
あまり見たことのない表情で軽く笑い、
「君も休んだらどうだ。事情聴取は明日にしたし、真宵くん同様疲れているだろう。」
と成歩堂を促した。
「うん。そうするよ。」


帰ってきたイトノコ刑事の手には部屋のキーが握られていた。
「多分先に寝ちゃうから預けてくれ、とあの子からの伝言ス。」
「ああ、すみません。」
「お、鍵を渡されるなんてイミシンやなー。コドモみたいな顔してあの子
なかなかやりよるな。」
チャラリ、と部屋番号の入った鍵を受け取ると同時に、近くに居た夏美に声を掛けられる。
「へ?」
予想もしていなかった言葉だったので、成歩堂は一瞬ぽかん、と間抜けな返答を
してしまった。ホテルの鍵を渡される事と真宵ちゃんが「なかなかやる」事を
結びつけるのに成歩堂の脳内はやたらと時間が掛かってしまったのだ。
「え!そ、そうなんスか!アンタ…まさか!」
同じく多少意味を図りかねていたイトノコ刑事が、気付いた途端に犯罪者を見る目で弁護士を睨む。
もう彼女は18歳なのだから犯罪者扱いされるのもおかしな話なのだが。
いやいや、それ以前の問題だ。
「ち、違いますよ!真宵ちゃんはそういうつもりじゃ…」
真宵は18歳という世間的には妙齢の年頃だが、先ほどの食事振りでも判る通り、
色気よりも食い気の方がまだまだ先行している娘だ。
同じ部屋に招き入れるのも二部屋取るのは経済的な打撃が激しいだろうとか、
ベッドがふかふかだから自分にも味あわせてあげたい、だとか事務所のソファで
ひとり眠るのは(今から自宅に帰る元気はないのは見通されている)虚しいだろう、
だとかそういった話だろう。
「どーも最近の女子高生は進んでるらしいで。」
「ミ、ミダラっス!不潔っス!」
イトノコ刑事と夏美がやいのやいのと囃し立てるが、成歩堂はきっぱりと言い放つ。
「とにかく、真宵ちゃんにはそーいうのはないです!」
「では、キミがしっかりと自重するのだな。」
ワイングラスを傾けながら、御剣がいつものイヤミな顔でフッと笑っていた。


ホテルのキーをちゃらちゃらと回しながら、成歩堂は真宵たちの部屋に向かう。
「くそ…御剣のヤツ…。」
余計な弁解は益々外部に突っ込まれると思い控えたが、自重も何も成歩堂は
真宵にそんな気を起こしたことなどない。
本人の幼さは勿論のこと、大事な師匠の妹という事もあり、真宵に深い愛情を
抱いてはいるものの、妹を見るような目でしか見ていないつもりだ。
半年前に彼女が里に戻った時は大きな喪失感に襲われて、なかなか仕事が
手付かずになった事があったが、それでも決して恋愛感情ではないと思っている。

(…まァ、いい足してるとは思うけど。)

短い装束の中からすらりと伸びた白い素足、細い足首と肌理の細かなすべすべした太腿は、
実は結構気に入っているし、ちょっとだけ疚しい気持ちを抱いたことも正直無くはない。
ついでに言うと自分に呼びかけてくるあの可愛らしい声も。
…いやいやいやいや。何考えてるんだ僕。
そういえば酒は一向に抜けてないのだと思い出した。
御剣の言うとおりにするのは癪ではあるが…
自重しよう。
っていうか春美ちゃんもいるんだし。
ないない。大丈夫。
そう思いながら成歩堂は鍵を扉に差し込んだ。

部屋の中は暗かった。
二人とも、もう眠っているのだろう。
成歩堂はネクタイを緩め、二つのベッドの寝顔を確認しにいく。
きっと真宵と春美はひとつのベッドで猫の姉妹のように丸くなってかわいらしく
眠っている事だろう。
平和極まりない寝顔を見れば疚しい気持ちなど消えて失せるというものだ。

部屋の奥のふくらみのある布団に近づいたとき、ふと気付く。
なんだか随分ふくらみが小さい。
枕元に近づくと、布団で小さな寝息を立てているのは春美ひとりだけだった。

「…真宵ちゃん?」
あたりを見回す。もうひとつのベッドの布団を捲くってみるが、もぬけの殻だ。
どくん、と心臓が大きく脈を打つ。
寝室を出て客間のテレビのあたりに目をやるが、真っ黒なテレビは何も映しておらず、
人影も無い。
鼓動が早まる。
もう一度寝室に駆け寄るが、やはりベッドの中には小さな春美の姿だけだった。
「嘘だろ…」


早鐘のように打つ心臓は痛いほど成歩堂を急かす。
いやな汗が額から頬を伝う。
どこだ。
落ち着け。
居ないわけがない。
成歩堂はゆっくりと息を吐いて瞳を瞑る。
奥のほうから水音が聞こえた気がした。
成歩堂は音のする方向―――洗面所へと駆け寄る。
扉を開けるとトイレの置くにアコーディオン型の扉があり、水音はその中からだった。
取っ手に手を掛け勢いよく横へと引く。
ザア、と開くアコーディオンカーテンの音と共にザア、というシャワーの音と
湯気が成歩堂の顔に飛び込む。
湯音と共に驚いて振り返ったのは、真宵の顔だった。
「わ!きゃわあああ!」
シャワー途中の全裸の真宵が慌てて体を隠そうとする。
「な、な、なるほどくん!?ちょっと、出てっ…!!」
真宵の言葉はそこで遮られた。
成歩堂が彼女を思い切り抱きしめたからだった。


シャワーの激しい水音が、狭い室内に反響している。
真宵は戸惑い、どう声を掛けていいのか判らなく途方に暮れているが、成歩堂の
汗とお酒の匂い、そして彼の心臓がめちゃくちゃに早い事だけは感じ取った。
「あー…えっと…なるほどくん?」
真宵は次の言葉を考える。
えーと、あたし、裸なんだけど。
見物料とっちゃうよ。
あたしなんかの裸にお金払うのもったいないでしょ、ほらじゃあさっさと出る。
ん?なるほどくん、お酒臭い。
結構よっぱらってる?
あれ?
っていうか、ないてる?
うええ?ほ、ホントに泣いてない?シャワーのせい?
「…よかった…。」
「え?」
「また…居なくなったのかと思った…。」
涙ぐんで震え、水音にかき消されていく声が、真宵にはわずかに聞こえた。
「なるほどくん…」
抱きしめられたままの姿勢で、真宵は自分の両腕をスーツのままの成歩堂の
背中にそっと回して抱き返してやる。
「だいじょうぶだよ。もう居なくならないから。」


「うん…。」
泣きそうな七つも年上の男の子の声。その声が真宵の心のうちに温かく広がっていく。
姉を亡くした時から自分を何度も救ってくれた、逞しいヒーローの横顔。
不安で、心細くて、怖くてどうしようもなかった数日間の孤独の中で、真宵は
頼りがいのある法廷での横顔を思い出して描いたこともあった。
そのヒーローは今、結構酔ってて、そしてちょっとだけ泣いている。

だが、その弱さは真宵にとって幻滅する事でも、イヤでもなんでもない。
温かく降りしきるシャワーのように、真宵の中にも自分を思ってくれた幸せの雨が
降り注ぎ、心を潤わせてゆく。
「あたし、ここにいるよ。なるほどくんのそばに。」
「…うん。」
「ごめんね、捕まってる間、お風呂入ってなかったから。」
「…うん。」
「汗くさいのはずかしくて、なるほどくんに抱きつけなかったし。」
「気にすることないのに。」
「そうだね…。なるほどくんも汗くさい。」
「お風呂、入ってなかったから。」
「ずっと?」
「うん。」
「そっか…」
真宵の瞳にも、いつの間にか涙がこみ上げてきている。シャワーで濡れていく成歩堂の
青いスーツに、真宵の涙も少しだけ染み込んで色を濃くしていった。
「なるほどくん、いっちょーらがびしょ濡れだよ。」
「いいよ、そんなの。」
その言葉に真宵は何だか赤面する。考えてみれば、自分は一糸纏わぬあられもない姿なのだ。
「えと、あの、あと…」
あたし、裸なんだけど…とは言えずに、真宵は
「ちょっとくるしいよ…。」
とだけつぶやいた。
「ごめん…もうちょっとだけ…。」
少しだけ力を緩めたが、成歩堂は真宵から離れなかった。
「い、いいけど…うう…。」
恥ずかしいよう…。
「なるほどくん、さては酔ってるな?」
「…うん、ちょっと酔ってる…かも。」
「もー。これだからオトナは。」
「うん、ごめん。」
子供のように素直に謝る大人に、真宵はふふっ、と笑う。
漸く真宵を開放した成歩堂は、改めて彼女の姿を認識した。
湯と強い抱擁で色づいた頬。
白い肌も桜色に染まり、黒い絹糸のような美しく長い髪が肩に、胸に、
そして腰にも纏わり付いており、ぞっとするほどなまめかしい。
真宵の裸を見たのも初めてだが、髪を結っていない彼女を見るのも初めてだった。
いつもの幼い彼女とはまるで印象が違う。
はっとするほど綺麗で、女だった。


「……たい…。」
「え?」
抱きたい。
素肌の肩に両手を掛け、再び自分のほうに抱き寄せて真宵を見つめる。
見つめ返す瞳は大きく、睫がしっとりと濡れている。小さな鼻と愛らしい唇。
成歩堂はその顔に誘われるままに、彼女の唇に口付けた。
シャワーで濡れた唇がしっとりと熱く、やわらかく、溶けていくような錯覚が起こる。
「ん…っ」
いつの間にか成歩堂は舌を絡めて深くキスをしていた。真宵はどうしていいかわからずに、
ひたすら彼の熱い舌を受け入れ、為すがままになっている。
「ふ…ぁ…」
止められていた息が、唇を離した際にはっと吐かれる。
その吐息が、声が甘い。
その声をもっと聞きたい。
その声で、もっと名前を呼んで欲しい。
「真宵ちゃん…。」
彼女の耳元に唇を重ねながら、スーツとワイシャツを脱ぎ捨ててカーテンの
向こうへと投げ捨てる。中に着ていた白いシャツは汗とシャワーであっという間に
半透明になり、成歩堂の身体の陰影を浮き彫りにする。
成歩堂は纏わり付くそれも脱ぎ去り、裸の半身を熱い雨に晒した。
身体に細い水滴が打ちつけられていく。
真宵は彼を直視できずに、顔を背けている。
きっとはじめてなのだろう。あさっての方向を向いたまま、真宵が
自分に戸惑いの声を掛ける。
「あ…な、なるほどくん…」
自分に向けるか細い声に、不覚にも下半身が反応した。
「真宵ちゃん…こっち向いて。」


言われるままに真宵がおずおずと正面を向く。
白い素肌、ふくらみに沿って滴り落ちる水滴に早くも力を持った成歩堂の分身は、
既に半分ほど首をもたげてきた。
半裸の男の身体を伝って、下へ下へと流れていくひとつの雫を真宵の視線が追う。
だが、その途中で彼の下半身の不自然な膨らみに気が付いてしまった。
「うわ…。」
「…怖い?」
「う、ううん、だいじょぶ…だけど…。」
浴槽の縁に小さなお尻を預けさせ、成歩堂はその手前のタイルに跪く。
真宵の白い胸が正面に置かれ、そのまま自然にそこに口付けた。
「ふぁ…!」
バランスを崩して湯船に落ちないように、片手で彼女の背中を支えながら
抱き寄せて舌を這わせる。
洗い立ての肌の匂いが鼻孔を掠める。いつもの真宵の香りが、こんなにも
欲情を掻き立てるなんて思いもよらなかった。
やや小ぶりながらも形のよい白い胸には桃色の突起が水に濡れて光り、
成歩堂を誘惑する。誘われるままにそこに吸い付き、舌と唇で丁寧に頂点から
側面まで舐る。
「う…んん…っ、はぁっ…あぁ!」
小さく震えるひざ小僧を割って上半身を割り入れながら、成歩堂の舌は胸から
下方へと線を描いていく。
「あ…!だめ、その下は…!」
だが成歩堂にはそんな静止の言葉は届かない。
いや、届いているが聞き入れる気がないのだろう。成歩堂の身体が入り込んだままの
両足は、当然閉じることが叶わず、あっさりと真宵の大切な部分は侵略されてしまった。


「っ…!ああ!」
成歩堂の熱い舌が真宵の花弁と絡み、敏感な小さな肉芽を舌に弄られて、真宵は
たまらずに声を漏らす。花を咲かせるように、彼女の柔襞を丹念に解して成歩堂は舌を出し入れる。
「あ…は…っあっ…!」
とぷ、と真宵の中から熱いものが染み出し、成歩堂の舌に熱い海を感じさせる。
あふれ出たそれは座している浴槽に垂れて行き、縁にいくつかの滑りの雫を作っていく。
「あ…だめ…なるほどく…っあっ…あっ!」
舌を出し入れする感覚にぴったりとしたメロディで、真宵が短く嬌声をあげる。
その上気した顔が、涙がこぼれている瞳が、自分の名を呼ぶその声が、舌に残る
真宵の味が、成歩堂の男を切なく逞しくさせていく。
手を伸ばして胸を掴み、乳首を指先でもて遊ぶと、真宵の中から一層溢れていく。
ぷちゅ、くちゅ、といやらしい水音が浴槽の縁と肌の間で奏でられていく。
「いっ…あっ!あっ…ああ…!」
「真宵ちゃん…」
ようやく舌を剥がした成歩堂は、真宵を抱えあげるようにして膝の上に乗せる。
「いくよ…」
「ん…あ…、なるほどくん…。」
真宵が喘ぎながら成歩堂の胸を押さえ、顔を近づけた。
「もっかい…ちゅー、して…。」
「…うん。」
言われるままにキスをする。優しく、深く。
真宵が腕を成歩堂の首に回し、抱え込むようにして身を預けた。


たっぷりと粘り気のある水気を孕んだ成歩堂の肉棒が、真宵の果肉に突きつけられる。
そしてそれは、ゆっくり、ゆっくりと真宵の華奢な身体の中に埋め込まれていった。
「ん…っ!」
「うっ…!」
舌で十分に判っていたが、やはりそこは狭く、そして熱い。成歩堂のそこはすさまじい勢いで
絞り上げられる。眩暈のするような快感に、成歩堂はこのまま果てるんじゃないかと必死に
己を押さえつける。
成歩堂を抱きしめる細い腕が強く引きつっている。
彼女の小さな背中に腕を回し抱きしめた。
「真宵ちゃん、力抜いて…。大丈夫だから。」
「…ん。う、うん。」
ゆっくりと落ち着くように息を吐き、真宵が少しだけ緩む。
成歩堂はそのスキを縫うように、少しずつ、少しずつ彼女に己を沈めて行く。
自分の果肉が広がり、成歩堂の硬いものを受け入れていくことに、真宵は興奮と驚きを感じていた。
「なるほどくん…すごい…はいって…くね…。なるほどくんの…。」
「痛い?」
「いたい…けど…へいき…」
「凄い…気持ちいいよ…。真宵ちゃんの中…。」
自分の中を確かめるように、真宵が小声でつぶやく。
「なるほどくんの…すごい…熱くて…かたくて…おっきい…。」
耳元でささやくその声が、どんなに男を狂わせるか。彼女は知りもしないのだ。
濡れすべる座椅子の上で、成歩堂が動き始める。真宵の背中を抱きしめたまま、
彼女の内側を抉っていく。
「んっ!あっ!あ…!…んう…っ!」
シャワーの音で誤魔化しているが、きっと風呂場の外にも声は漏れているだろう。
だが、互いの動きは止まらなかった。


汗も真宵の中の熱い液体も破瓜の血も全てシャワーの音と共に流れていく。
突き上げられる真宵の身体が成歩堂の動きに過敏に反応している。
痛みを我慢している表情が、益々興奮を煽り、細い指は背中に力を込めて耐えている。
細い背中を掻き抱いていた手を下へ滑らせ柔らかく丸いお尻を両手で鷲掴んでやると、
真宵がんんっ、と声を漏らした。
縦線を指でこじ開け、後ろからも指で刺激をする。
「うあっ!だ…だめ、なるほどく…!や、やらし…よ…ぉ!」
プロレスのギブアップのように成歩堂の背中を力なくぺちぺちと叩く真宵が溜まらなく可愛らしい。
成歩堂は手も腰も動きを止めず、更に唇で真宵の首筋を刺激する。
「あぁ…っ!」
首へのキスは真宵を絡めとり、彼女は背中への攻撃すらもできずに熱い雨粒に打たれながら
声を漏らすだけとなる。
腰の動きはいつしか早まり、振動に呼応するように真宵の喘ぎが短く高くなっていく。
搾り取られるようなキツイ快感が成歩堂を絶頂へと導いていった。

真宵の奥がきゅう、と成歩堂を締め付け続ける。激しい快楽に脳が痺れ、
成歩堂の奥から欲望が形となってこみ上げていく。
「真宵ちゃん…もう…!」
「っ…!ぁ!―――!!」
引き抜かれる瞬間の快感に真宵の身体がぞくぞくと震える。
成歩堂の先端から迸ったそれは、真宵の太腿へ熱く飛び散り、熱い湯に溶けて流れていった。


脱衣所に干したスーツは絞りが甘かったのだろう。ぴちゃぴちゃと水滴を垂らしたまま
扉にぶら下がってしなだれている。
一張羅をぞんざいに扱った後悔はあまりしていないが、明日の朝には乾かないのは少し困る。
事務所には衣服は今置いてないしシャツを買いに行こうにも買いに行く為に着る服もないのだった。

着慣れないバスローブに身をつつんだまま、成歩堂はちょっぴり途方に暮れる。
「あした、あたしが買ってきてあげるよ。」
「ああ、お願いするよ。ありがと。」
「ねえねえ、みてみて。みつるぎ検事のまねー。」
成歩堂と揃いの白いバスローブ姿でソファにどっかと座り、洒落たグラスに
グレープジュースを揺らして真宵がフッとニヒルに笑う。
「ははは。似てる似てる。自宅でバスローブ着てそうだよな、あいつ。」
「うん、みたことないけど絶対着てるよね。」
見たことあったら問題だぞ、と突っ込みつつ、いつも通りの真宵の笑顔が成歩堂を安心させる。
ぐっすりと眠る春美の隣のベッドに真宵は潜り込み、
「はい、こっち。」
と成歩堂を手招いた。
シングルベッドに二人は少し狭いが、小柄な真宵を抱きかかえるようにすると、
丁度よい狭さと心地よさだった。
布から露になった肌が触れる感触が気持ちいい。


真宵が顔を上げ、成歩堂の顎のあたりにくん、とちいさな鼻を寄せる。まるで子犬か子猫のようだ。
「酔い、さめた?」
「ああ…まあ。」
「なら良かった。えっと、今日のことは…忘れてあげたほうがいいのかな。」
「え。」
どうやら酔いの上の不埒と思われているようである。
なんだかちょっと心外だ。
いや、そりゃあ酔いの上の不埒ではあったんだけど。
「ま、真宵ちゃんあのさ…」
成歩堂の弁解は真宵の言葉によって遮られる。
「寝よ、なるほどくん。はみちゃんより早起きしないと大変だよ。また誤解されちゃうよ。」
「ああ…」
そうじゃなくて…。どう言えばいいのか、この彼女に対する気持ちを。
成歩堂は少し考えてから
「別にいいんじゃない?もう誤解じゃないんだし。」
と真宵の耳元にそっと囁いた。
言葉の意味を一瞬測りかねたようで、真宵は一瞬きょとん、とした表情だったが、
すぐに気付いたようだ。
みるみる耳まで赤くなってうう、ともうん、とも取れる微妙な頷きで答える。
「…いや、でもまだちょっと…教育上宜しくないと思う、です。
は、はみちゃんのおねえちゃんとしては。」
赤くなったままゴニョゴニョと反論する。
たまにはしおらしい彼女というのも良いものだな、などと成歩堂は思う。
これからもっと、たくさんの色々な彼女の表情を見ることが出来るのだろう。
相棒として、友人として、可愛い妹として、そして愛しい恋人として。

「そうだね。じゃあ、頑張って早起きしようか。」
「うん。えと、おやすみなさい、なるほどくん。」
「おやすみ、真宵ちゃん。」
確かめるように暗闇で軽いキスを数回交わし、瞳を閉じた。
ほんとうは布団の中でもういちど、とか不謹慎なコトを少しばかり思っていたのだが。
まあ、今度でいいか。そんな事を思いながら眠りに付く。
腕の中の真宵があまりにも柔らかくて心地良くて、成歩堂はいともすんなりと眠ってしまった。

しかし疲労と安心の積み重なった睡眠欲というのは凄まじいもので。
翌朝、二人が目覚めたのは春美の歓喜の奇声によるものだったようである。


最終更新:2020年06月09日 17:20