「レイちゃん、昨夜は楽しかったわ。またチューしようね」

狩魔冥が真顔で言ったので、御剣怜侍は飲みかけていた紅茶をひっくり返しそうになった。

「これは、なにかしら。御剣怜侍」
冥が顔の高さに掲げたのは、御剣のケータイだった。
「いや、それは、なにをしているのだ君は」
取り返そうと手を伸ばした御剣をジロリとにらみつけ、冥はメールチェックを続けた。
「今夜もレイちゃんのお胸にスリスリしちゃいたいな♪アタシのお胸にもチュッチュしてね。……御剣怜侍?」
「う、むぅ、それは違うのだ、その」
冥はパタンとケータイを閉じ、御剣に向かって放り投げた。
「つきあう女は選んだほうがいいわよ」
「ち、ちがう!これは、店の女なのだ!」
「あら、マジメそうな顔してずいぶん夜はご盛んなのね?」
「そうではない、これはつきあいの席なのだ!断りきれない上司の誘いで…!」
受け取ったケータイのメールを慌てて削除しながら言い訳する。
「いいわ、別にあなたが玄人の女とどれだけ遊ぼうと、素人の女をとっかえひっかえしようと興味はないから」

御剣の部屋である。
冥は天気の良い休日に退屈して、なにか面白いことはないの、とやってきたのだ。
御剣に届いていた、水商売の女からの営業メールはさほど『面白いこと』ではなさそうだった。

「あ、遊ぶ?とっかえひっかえ?わ、私はそのような男ではない!」
新たな『面白いこと』を探して御剣の部屋を荒らしていた冥が、手を止めた。
「なにをムキになっているのよ?」
ベッドサイドの引き出しを開ける。
きちんと整頓されたそこをかきまわして、冥は腕を組んだ。
「まさか、と思うんだけど御剣怜侍」
御剣が、危険を感じて一歩下がった。
「あなた、女を知らないんじゃないでしょうね?」
「そそそそそそそそののののののののの!!!!!」
冥が腕を組んだまま、大きなため息をつく。
「あきれた。パパったらどういう教育をしてきたのかしら」
「よよよよよよよななななななななな!!!」
「そのようなアレは、ぐらいちゃんと言いなさいよ」
引っ掻き回していた引き出しをパタンと閉める。
「普通、男ならコンドームの一箱や二箱、入ってるわよ、ここ」
「なななななななななにを言うのだ!!!」
顎をがくがくと落とす御剣を見て、冥はふふっと笑った。

面白いことを見つけたようだった。

冥が御剣の襟首をつかんで、顔を寄せた。
「め、い…」
艶々した唇が近づいてくる。
ふんわりと甘い香り。

ぷにゅ。

唇に、暖かでやわらかいものが押し付けられた。
「ふむっ」
みっともないことに、声を上げたのは御剣のほうだった。
唇を押し当てたまま、冥がクスクスと笑う。
「キスしたこと、ないの?」
「ん、むっ」
「触ったことは?」
御剣の手を取って、自分の胸に押し付ける。
「ふんむっ!!」
こらえきれないように、冥が笑い出した。
「信じられない。怜侍が、……だなんて」
未経験を意味する呼称で呼ばれて、御剣はボッと音を立てるように赤面した。
「キ、君はその、そんなに、ほ、豊富……」
冥は御剣の頬に手を置いて、目を覗き込んだ。
「どうだと思う?試してみる?」

冥が上に乗った。
御剣の首筋から胸へ、隅々までキスを落とす。
目の前にある乳房に、恐る恐る手を伸ばした御剣に、冥がささやいた。
「そっとしてね」
言われたとおり、力を入れすぎないように触れてみる。
少しずつ揉んでみる。
御剣の乳首を指先で弾いていた冥が、強くつねりあげた。
「うっ」
御剣が顔をしかめる。
「ねえ、なにかしら。私のお尻のところに、なにかが当たるんだけど」
御剣に馬乗りになったまま、手を後ろに回す。
「む、そ、それは」
「誰が、大きくしていいと言ったの?」
言葉とは裏腹に、冥は後ろ手で御剣の分身をしごきたてる。
「むぅっ!」
「どうしたのよ、手がおろそかになっているわよ」
言われて御剣がまた冥の胸を揉み、乳首をつまんだ。
「あん、いい」
声を上げて、冥が体をよじった。
そのまま後ろを向かれて、御剣は手の中から逃げた乳房を追うように腕を伸ばした。
目の前に、冥の脚が来た。
「うおっ!」
冥が御剣をくわえ込んだ。
暖かい口内で、先から根元までを舌で嘗め尽くされ、袋まで吸いたてられてあっけなく御剣は限界に達した。
「う、あ、く、うっ!」
冥が強く吸った。
頭の中が真っ白になるほどの快感に、御剣はのけぞった。
「あ、おっ!!」
たまらず、冥の口の中に放出する。
何度か痙攣しながら、御剣は全身の力を持っていかれたように背中を落とした。


射精後の気だるさが襲ってくる中で、御剣は自分の前にある冥の尻に手を伸ばした。
両手で押し開いてみる。
くちゃっという湿り気のある音がした。
片脚に手をかけて開こうとすると、すっかり飲み下した冥が御剣の横にずり落ち、そこがぱっくりと開いて目の前にさらされた。
うふ、と冥が笑った。
「情けないわね、もう出しちゃったの?」
「…む」
事実なので反論できない。
それでも目の前にあるモノから目と手を話すことが出来ない。
指でいじってみたり、ここだろうと思えるところに差し込んだりする。
「あ、あんっ!」
冥が一度萎えたものを握ったまま、脚を振るわせた。
なにかが、じゅくじゅくと出てくる。
「ああん、そこ、いいっ」
舌先でつついてみると、声が上がった。
いいといわれた場所を重点的に攻めると、ますますあふれ出てきた。
「…う」
舐めまわされながらも、冥の手は御剣をしごき、口にくわえる。
もう一度、勃ちあがるのがわかる。
場所を移動して、冥が御剣の脚の間に入った。
なにをするのかと思って頭を上げると、冥は体をうつむき加減にして、やや下垂した乳房を両手で寄せると、そこに御剣の分身を挟んだ。
「っ!」
体ごと押し付けるように動かされて、御剣はうめいた。
手とも口とも違う感触。
それに、なによりその構図がなまめかしい。
やわらかい胸で包まれて、御剣は呼吸を乱した。
とても、いい。
しばらくそうしてから、冥が体を動かして上に乗った。
いつもそんなものを持ち歩いているのか、いつの間に用意したのか、小袋の端を裂いて取り出し、御剣にかぶせた。
それから御剣の上体も起こさせ、座らせた状態で肩に手を置く。
「今度はガマンしなきゃだめよ。私もよくして」
体を沈める。
もうそれだけで暴発しそうだった。
口の中も、天国かと思うほど強い快楽があったが、膣の中はまた格別だった。
冥が動くたびに擦られ、締め付けられる。
「う、う、あっ」
知識では知っていたが、これがそうなのか。
両手を冥の腰に回して、動きを助ける。
はっ、はっ、という冥の呼吸が徐々に速くなる。
刺激がもどかしくなり、御剣は本能的に冥を押し倒し、自分が上になって激しく腰を振った。
「ん、あん、あ、いいっ、上手よ、レイジ…!!」
体を叩きつけるように打ちこみながら、両手で乳房をつかんだ。
中指の先を乳首に置いて揉みしだく。
「あ、あん、ああ、あ、あ、!」
「く、う!」
快感が駆け上り、御剣は二度目の射精を遂げた。
ぐったりと伏せると、冥は腰を引いて御剣を抜き、力尽きている御剣の代わりにコンドームの始末をした。
それから耳元に顔を寄せて、ささやく。
「どうだった?オトコになった気分は」
「…む」
気持ちよかった、と答えるのにも抵抗があって、御剣は惰性で冥の胸を探った。
冥が、御剣の下唇を自分の唇で挟んだ。
そのまま、もてあそぶようにする。
御剣が舌を出すと、それも挟んだ。
「あなたの初めての女になれて、よかった…」
顔を離して、冥がぽつりと言った。


御剣は冥の体に両手を回して、自分の上に抱き上げた。
「いや、これで終わっては困る。今度は、君を、その、良くしたい」
冥はサイドボードの上から、新しい小袋を取った。
「まあ、パパがちゃんと教育しなかったんだから、娘として私が代わりにしなきゃならないじゃない?」

しばらくは退屈しなくて済みそうだし、と言って、冥はまた御剣にまたがった。

最終更新:2020年06月09日 17:46