「たまには、どうだ、その、食事でも」

できるだけ偶然を装って、できるかぎりさりげなく。
御剣怜侍が検事局の資料室で、忙しく判例を探している狩魔冥にそう言った。
「いやなんだその、今日の裁判について、話もあるしな」
「今日は約束があるの」
資料から目も上げずに、冥が答える。
朝からこの一言を言うために、何度も何度もシュミレーションして口の中をカラカラにしていた御剣は、瞬殺されてその場に座り込みたいほどがっくりした。
かろうじて矜持で身体を支え、表情を取り繕いはしたものの、疑問が口を付いて出るのは押さえられなかった。

「誰とだ?」
目指すものを見つけたのか、資料をパタンと閉じて小脇に抱えた冥がふんと鼻で笑った。
「デートよ」
今度こそ、御剣は意識が遠のく気がした。


御剣が、建物の影に身を潜めていると、仕事を終えた冥が検事局を出てくる。
コートの襟を立てて、距離を置きながら、御剣はヒールの音を響かせて歩く冥を尾行した。
タクシーを拾うこともなく、冥はいくつかの通りの角を曲がると、小さなカフェのドアを押した。
見失わなかったことに安堵して、御剣はそのカフェの前を通り過ぎて立ち止まった。
ここで、デートの相手と待ち合わせなのだろうか。
小さなカフェは中に入れば冥に気づかれるに違いなく、御剣はわずかに冥の白いコートが見える窓を探してそこが見える場所に立った。

――――なにをしているのだ、私は。
しかし、冥のデートの相手を確かめずにはいられない。
アメリカにいた冥が帰国して、数ヶ月。
まさか自分が保護者気分でグズグズしている間に、誰かが横から彼女をかっさらっていくとは。
いまいましい気持ちで、窓の向こうに見える冥の背中を見張る。
仕事を大急ぎで片付けてまで会いたい相手というのは、誰なのだ。
私の誘いを蹴ってまで一緒にお茶を飲みたいというのは、どんな男なのだ。
お茶を飲んで、それから食事に行くのだろうか。
そのあとは、どこだ。
冥のマンションか、相手の家か、それともどこかの。
そう考えると、寒さを忘れるほど、頭に血が上って湯気が上がりそうになる。
御剣がいらいらしながら冥を見張っていても、なかなか待ち合わせの相手がカフェに入っていく様子はない。
もしかして、冥は待ちぼうけを食わされているのだろうか。
席に着いた冥は動かず、そわそわしたり携帯を取り出したりする様子はない。

三十分もしたころ、御剣は決心してカフェのドアを押した。
連絡もなしに女を半時間も待たせるような男に、冥を任せるわけにはいかん。
「冥!」
彼女が座っていた席に向かって呼んで……、御剣は呆然とした。
座席の背に、冥のコートだけが、かかっていた。

撒かれた。尾行は気づかれていたのだ。

次の日から、御剣は検事局の人間に目を光らせた。

冥はこの国に知り合いが多いわけではない。
デートをするような相手は、検事局内にいると思えた。
若い検事にはたくさんの仕事を押し付けて忙しくさせ、事務方の職員にも清掃係にも難癖をつけて仕事を増やす。
いや、もしかして親ほど齢の離れた相手でも、まったく可能性がないわけではない。
冥が裁判所へ移動したり検事局内を歩いたりするのを見つけると、誰かと親しげに口をきいたりしてはいないか、意味ありげな視線を絡ませてはいないかと観察した。
冥のデートの相手は、誰なのだ。
それがわからず、御剣はいらだった。

まもなく、検事局にはふたつの噂がささやかれる。
ひとつ、御剣検事は最近、尋問の厳しさに磨きがかかり、いっそう眼光が鋭くなった。
ひとつ、狩魔検事は最近、私服が華やかになり、表情も明るく、とてもきれいになった。


「お手上げだ、成歩堂」
親友の事務所で、御剣は肩を落とした。
「なんだよ、お前らしくない」
依頼客の来ない法律事務所で、成歩堂は魚肉ソーセージをかじっている。

「ウム……、それが」
先日、御剣がむりやり週末に企画した、検事を集めての研修会も冥は首を横に振った。
「デートなの」
研修会に来なかった者が、冥のデートの相手だと御剣は勇んで出席を確認したが、研修会に欠席したのは冥一人だった。
どういうことだ、冥の相手は検事ではないのか?
今日も、残業を頼むようなふりで帰りがけの冥に近づいたが、予定があるのと断られた。
御剣は、途方にくれていたのである。

「悪いけど、ぼくはこれから出かける用があるから」
「……ああ、そうか、すまん」
慌てて腰を上げかけて、御剣は成歩堂をにらみつけた。

これから、出かける、だと。

冥の人間関係は、検事局の中だと思っていた自分に、とんだ見落としがあったのかもしれない。
御剣は上着を羽織って出かける仕度をしている成歩堂を見ながら、御剣は両手を硬く握り締めた。
かわいらしいニットのワンピースに着替えて検事局を出て行く、冥の後姿を思い出した。

冥は、成歩堂とデートを重ねていたのか。
裁判で負けたとあれほど悔しがっていたのに、憎さ余って愛しさ百倍か。
成歩堂のどこに、冥は惹かれたのだろう。
私の、なにが足りなかったのだろう。
どうすれば、成歩堂から冥を奪い返せるのか。
いや、成歩堂も大切な親友だ。
どちらも、失うわけにはいかない。
ううむ……。

「お、おい!」
襟首をつかみあげられて目を白黒させた成歩堂に、御剣は裁判所で鍛え上げられた発声で叫んだ。

「幸せにすると、誓えーーーーーーーー!!!」

「誤解……だと」

出かける時間を引き延ばして、成歩堂は事務所のソファで冷や汗をぬぐった。
「狩魔検事なら、最近は真宵ちゃんと仲良くしてるよ」
「真宵くんと?」
ここしばらく、頭の中を一杯にしていた悩み事が成歩堂の言葉で崩れ落ちる。
「真宵ちゃんも、同年代の友達ができて嬉しそうで、休みの日は一緒に買い物に行って洋服とかバッグとか買ったり、新しく出来たランチの美味しいお店がどうだとか、流行のリップがどうだとか」
休日のデートの相手、というのは、真宵だったのか。

この国に来て、仕事相手ではない友人を得て、冥は年相応の女の子らしい遊びを覚えたのだ。
賑やかな街を歩き、ジャンクフードを立ち食いし、流行りの服を買い、季節の化粧品を試す。
毎朝、買った服の中から通勤にふさわしいものを選んで、鏡で自分を確認する冥。
新しいバッグを下ろした日は、手に持つか肩に掛けるかが定まらず、それが嬉しい冥。
新色のリップを検事局の化粧室でつけなおす冥……。

「今日も、新作映画のレイトショーに行ったんだよ。帰りが遅いから迎えに行くって約束してたんだ」
近頃の冥の様子と、成歩堂の言葉を照らし合わせて、御剣はため息をつく。
「なぜ、あんな思わせぶりな言い方をしたのだ。デートなどと」
成歩堂は、不器用な友人の丸い背中にぽんと手を置いた。
「それを、狩魔検事に聞こう。一緒に迎えに行かないか」


御剣が成歩堂と一緒に現れたのを見て、冥は驚いた顔をした。
「あっれー、御剣検事もなるほどくんとデートだったんですか」
真宵が明るい声で言う。
「そ、そのようなわけはなかろうっ」
御剣が言い訳し、見たことのない明るいふわふわした服を着た冥に思わず見とれた。
「なによ」
見つめられたことで、冥が御剣に言った。
「い、いや。その、成歩堂は予定があるようだから、キミは私が送っていこうと思ったのだ」
「え、なるほどくんこんな時間からなに?」
真宵がめをくるくるさせ、成歩堂が脇に引っ張っていってシーっと指を唇に当てた。
「それは後で。さ、行こう、真宵ちゃん」
「う、うん?わ、待ってよなるほどくん。冥さん、じゃあまたねーっ」

成歩堂に真宵が拉致され、御剣は冥と二人で映画館のロビーに取り残された。
急に恥ずかしくなったかのように、冥が柔らかいスカートをバッグで押さえた。
御剣が咳払いをする。
「その、なんだ。に、似合うではないか。そういう服…も」
「……そうかしら」
「ウム。真宵くんと、買いに行ったのか」
「……そうよ」
かわいい、と思った。
駐車場に向かって、御剣はすれ違う通行人から冥を守るように歩いた。

「最近のデートは、真宵くんとだったのか」
冥の胸元を飾る小さなネックレスも、赤い縁取りのあるベージュの小さなバッグも、フリルが三段になったスカートも、
白いレース模様のストッキングも、赤いパンプスも、白いニットも、花のピアスも。
ひとつひとつを、真宵と一緒に店をめぐって選び、試着しながら買い集めたのだろう。
「……あー、そ、その服はいい生地だな。私も、そのようなのが欲しいと思っていたのだが」
冥が不審そうな顔で御剣を見上げた。
「あなたが?」
「ああ、いや、そ、それと同じではなくて、その、男のもので、そういう素材のいいものがだな」
慌てて手を振ると、冥は自分の着ている服を見下ろして首をかしげた。
「紳士ものもあったかもしれないけれど……」
「ウム、そ、そのブランドを教えてくれれば、探して行ってみる」
駐車場で車のドアを開けた御剣を見上げて、冥がぷっと頬を膨らませた。
「ひとりで?」

それは、どういう意味だろう。
御剣がごくりと喉を鳴らした。
「いや、だがしかし」
「……せっかく、仕事以外のことで誘ってくれたのかと思ったのに」
運転席で御剣は眉間に皺を寄せた。
そうだっただろうか。
「し、しかし、食事に誘っても断ったではないか」
「だって、裁判の話があるなんて言うんだもの」
……そうだっただろうか。
見ると、冥がうっすらと頬を赤くしていた。

では、仕事抜きで食事に行かないか。

そう言うと、冥は膝に乗せていたバッグを抱きかかえた。
「……デートなの?」



白いブラウスにピンク色の短いカーディガン、赤いチェック柄のミニスカートにブーツの装いの冥に、御剣は片腕を貸して歩いた。
レストランに行く前に、冥が御剣に春物の薄いセーターを選び、同じ店で御剣は冥にストールを買った。
爪を赤くした冥と手をつないだ。
まるで、デートのようではないか。
冥の手の暖かさを楽しみながら、御剣は舞い上がっているのを悟られまいと表情を引き締めた。
「どうして?」
さっそく肩に巻いたストールの縁についた飾りをもてあそびながら、冥が御剣とつないだ手をぎゅっと握った。
「む?」
「どうして、私をデートに誘ってくれたの?」
御剣は手を握り返しながら聞いた。
「どうして、来てくれたのだ?」
冥が、うふふと笑った。
「尋問に答えなさい。どうして、誘ってくれたの」
「……ふむ」
御剣が足を止め、冥が見上げる。

幼い頃から見ている顔。
生意気で、気が強くて。
七つも年上の自分を『弟』と呼んで顎で使う。
検事局では上司に当たるのに、公私混同で命令を無視する。
やっと近くにいられると思ったら、ふらっとアメリカに行ってしまい、また戻ってきたり。
その柔らかな頬に、そっと手を当てた。
あの日、あの空港で見せたあの表情を、思い出す。
キミは確かに、私と並んで歩いている。

「証言の前に、証拠を提出した方がいいだろうか」
なあに?
そう言おうとする形に開いたかわいい唇を、ふさいだ。
唇を離すと、冥が目を丸くしていた。
今度、キスをするときは目を閉じるものだと教えておこう。
何も見なかったように歩いていく通行人を気にして、冥が顔を真っ赤にしてうつむく。
「こんな証拠、違法だわ」
御剣は冥の肩を抱いて歩き出した。
「キミはもう少し、いろいろなことを勉強した方がいいな」
ついさっき、御剣のキスを受けた唇が尖る。
「ナマイキよ。怜侍のくせに」

―――これも、勉強した方がいいの?
約束どおり、レストランで食事をした後で、冥は御剣の部屋にやってきた。
ソファで正しいキスの講習をくりかえし、ぼうっとしたような熱っぽい目で冥が御剣を見た。
「キミがイヤでなければ」
冥がこの日のために選び抜いた服を、そっと解く。
待って、と恥らうように逃げる身体を抱きしめた。
「イヤか」
「そうじゃない……けど、私まだ」
白い手が襟元を押さえる。
「……私まだ、証言を聞いてないのよ」
御剣はその吐息まじりの声で、ぎゅっと血液が身体の一ヶ所に集まるのを感じた。
「その証言は、ベッドでしよう」

視線を伏せがちにする冥の背中に手を回して、下着を外した。
形のいい乳房の先に、桜色の突起が震えていた。
手の平にすっぽりと包めるそれは、柔らかさと弾力の感触を伝えてくる。
滑らかな肌とすらりとした美しい身体。
「あのね、怜侍……」
「……うむ」
御剣は桜色の突起を口に含んで、舌の先で突つく。
ずっと、こうしたかった。
もうひとつの膨らみを手で柔らかく揉みしだき、冥はうっとりとした声で言う。
「こんなこと……いいのかしら」
そう言いながら、御剣の背に手を回してくる。
「いいのではないか?少なくとも、私はキミを好きだし、こうしたい」
唇を離し、指先で勃ってきた乳首をこねる。
「……なん、ですって?」
そういえば、まだちゃんと証言していなかった。
御剣は冥のウエストを手と唇でなぞりながら、薄い茂みまで下りていった。
そこを指先でかき分け、ぴったり閉じた割れ目に差し込む。
「きゃ……」
冥が驚いたように腰を上げ、御剣は引き締まった太ももを割った。
「なに……、なにするの」
開かれた脚を閉じようとしながら、冥が身体を起こす。

もしかして初めてだろうかとは思っていたが、まさか知らないのか。
幼い頃から検事一筋だった冥は、本当に偏った勉強しかしてこなかったらしい。
冥の脚の間に腰を入れたまま、御剣は起き上がった冥をそっと抱きしめた。
「証言しよう。私は、キミが好きなので、デートに誘った。キスもした」
「……」
「もっと、したいと思う。いけないだろうか」
御剣の胸に頬を押し当てて、冥が目を潤ませる。
「でも……怖いわ」
そんなことを言われたら、たまらない。
御剣はもう一度冥を押し倒した。
「異議はあるか」
冥が小さく首を横に振った。
先ほどの愛撫で感じたのか、未知への恐怖のせいか、触れると乳首が硬くなっている。
ゆっくりとさするように揉むと、手の平に伝わってくる心臓の早い鼓動がわずかに落ち着いてきた。
手を下げて、柔らかな茂みを指に絡める。
指で閉じた部分を開くと、かすかに湿っている。
中指で上下に擦る。

「あっ……」
くぼみを探り当てて指先を押し当てると、冥が御剣の肩を手で押し返した。
「痛いか?」
「ん……だいじょうぶ……」
ぎゅっと目を閉じて横を向く。
御剣は冥の秘所を開いてそこに舌を入れた。
新しい感触にぴくっと腰が跳ね、下から上に何度も舐め上げると、少しずつ湿り気が増えてくる。

「ん……、あ」
舌を差し入れようとすると、まだそこは硬く閉じていた。
ぽつんとした肉の芽を探し出して、掘り出すように周りを舐める。
「うんっ……、あんっ、あ」
冥が艶かしい声を上げる。
じゅぶじゅぶと音を立てるほどに濡れそぼってきたそこは、指を飲み込むようになってきた。
「……力を抜いて。怖くないから」
御剣がささやくと、冥は目を開けた。
「いたくない……?」
「……む」
まあ痛いだろうな、と思いながら御剣は冥の髪をなでた。

「ね、怜侍……、もう一回、言って」
御剣の手に自分の手を重ねて、冥が甘えるように言う。
そそりたった自分のものを押し当てる。
「キミが好きだから……したい。いいか」
今にも涙がこぼれるのではないかと思えるほど潤んだ目が、御剣を見上げる。
「異議は……ないわ」

何度かそこを滑らせてから、きつい入り口を押し開く。
痛いほど締め付けてくるそこをゆっくり進む。
「やっ、あ、だめ、いやっ」
予想したより痛いのか、冥が暴れた。
御剣は進むのを中断して、冥が痛みに慣れるまでじっと髪や頬をなでた。
「どうする?」
ぽろぽろと涙をこぼしながら、冥は覗き込む御剣の首に腕を回して抱き寄せた。
「もう、いや、こんなの、いや」
無理はできまい。
すると冥は御剣を強く引き寄せた。

「怜侍がしたいっていうから、私は、怖いのに、怜侍がっ」
「……ム」
仕方なかろうと腰を引きかけると、冥が驚いたように目を見開いた。
「いやっ、やめないで」
「しかし……、辛いのだろう」
「だめ、続けなさい、いくじなしっ」
目にいっぱい涙をためて強がりを言う冥に、思わず御剣はフっと笑った。
「いいのか」
「……だって、したいんでしょう。私のこと、す、好きだから」
「……うむ」
「だったら、ちゃんとして」

その言葉に甘えることにして、御剣は時間をかけて奥まで入れた。
冥が落ち着くのを待って、ゆっくり動く。
きつきつだったそこが、心地いい締めつけを残しながら潤いを増してスムーズな動きを助ける。
これが、冥の中か。
あまりの気持ちよさに御剣は眉間に深い皺を刻む。
突くたびに揺れる乳房、痛みに耐えるようにぎゅっと目を閉じ、少し開いた桃色の唇からはかすかに喘ぐような声。
「大丈夫か、冥」
「うん……少し……変な感じ」
感じてきたらしい。
「どこが変だ?こうする時と……こう」
「あ、んっ……それ……」
「ここか」
「そ、ん、あ、あ、……ああんっ」

言われた場所を擦るように動くと、冥が声を上げ始めた。
「あん、あっ、いや、変になる……っ」
ぐちゃぐちゃと水音が立つそこに手を入れて、ふっくらと飛び出した肉の芽をつまんで擦り合わせると、冥が悲鳴のような声を上げた。
「やあっ、だめ、助けて、いやっ、あんっ、怜侍……!!」
未経験の快感は、恐怖に近いものなのか。
容赦なく攻め立てられた冥の背中が反り返り、御剣をきつく締め上げた。
こみ上げてきた欲望を冥の中に吐き出して、御剣は肩で息をした。

冥を胸に抱きながら、御剣はだだっ子をあやすように髪や背中をなでた。
「だいじょうぶか」
顔を見られないようにうつむいた冥が、ぷっくりと頬を膨らませた。
「やめてって言ったのに……」
強がりを言う冥がかわいくて、抱き寄せた。
「好きなら、してもいいと言ったではないか」
「……そうだけど」
「キミの証言を聞いていないな」
好きだと伝えたのは、御剣だけだ。

冥はうつむいたまま、御剣の脚に自分の脚を絡めた。
「証言を、拒否するわ」
ナマイキなことを言う。
御剣は冥を抱いたまま転がって、組み伏せた。

「証言するまで、尋問しよう」
いや、と言った冥の唇が御剣を迎えた。

END。

最終更新:2020年06月09日 17:22