「冥、なんだこれは」
「なっ、なによ突然…」
「これは何かと聞いている」
午後の検事室、御剣が席を外したほんの数分の間に事件は起きた。
詰め寄る御剣の手に握られたそれは、先ほどくずかごから拾われたものだ。
楽しみにとっておいたトノサマンジュウの、最後のひとつの包み紙。
「君にしてはわざとらしさにも程があるが…」
「そうよ。何故私があなたのまんじゅうごときに手を出さなくてはならないの?」
そう言いながらも眼を泳がせる彼女を見ながら、御剣は呆れてため息をつく。
「なによそのため息は!私が食べたという証拠でもあるの?
まさか指紋鑑定をするだなどと言う気じゃないでしょうね?」
ハッ、と嘲るように吐き捨てる。いつにも増して高飛車な態度に、御剣はついに心を決めた。
「だいたい検事たるものまんじゅうのひとつやふたつでムキになるなんて、
貴方は本当に昔から細かい男よね、レイジ。そんなことだからあのトゲトゲ頭に負けるのよ。
まったく狩魔の名にこれ以上傷をつけないで欲しいわ。いい?これは貴方のため
なのよ?トノサマンだかなんだかいうモノにいつまでも気を取られていちゃ…レイジ…?」
がちゃり、と御剣は扉の鍵をかけた。そして振り返り、ゆっくりと冥に近づく。
異様な迫力と明らかな怒気を身にまとい、じりじりと彼女を壁ぎわへ追い詰めた。
「やはり、君が食べたのだな?」
「…だ、だから何!?言ったでしょ、貴方のため…」
言い掛けた冥の顎を掴み、御剣はぐっと引き上げて自らの顔を寄せる。
予想外の事態に怯えた表情の冥。だが御剣は冷酷なまでにこう言い放った。
「お仕置きだ、狩魔冥」

「なにをっ…」
顎を押さえられ、鋭い目に突き通されたように動けないまま、冥は抵抗の言葉を口にした。
御剣の顔が近づき、冥の口元に唇が押し当てられる。
「…!」
生暖かい濡れたものが唇を舐める。
びくりと体を震わせた冥に、あざ笑うような御剣の声。
「甘いな」
冥が両手を突っ張って御剣を押し返そうとする。
「なんのつもり、レイジ!レイジのくせに…!」
たった今、冥の唇をなぞった舌で自分の唇を舐めながら、御剣は壁に両手を付いて冥を囲う。
「なぜ、君の唇に餡の味がするのだろう。トノサマンジュウも食べていないのに」
「そ、それは」
「これくらいのこと、指紋鑑定になど頼るまでもない」
再び寄せられた御剣の顔を避けようと、冥が首を振った。
「そして、これくらいのこと、法廷で罪を定めて罰するまでもない」
「レ、レイジ…」
御剣の指が、冥の胸元のリボンを解いた。
「狩魔の方法で、お仕置きをしよう」
その言葉に、冥はぞっとした。
幼い頃の、父の英才教育を思い出す。
期待に応えることができないとき、父は冥の手から鞭を取り上げ、それをふるった。
柔らかな白い肌に、幾筋も刻まれた赤い糸。
生まれたままの姿で獣のように這いつくばり、背に脚に父の振り下ろす鞭が与える苦痛を耐えているとき、
それを冷ややかに見ていた少年が、成長して目の前にいる。
「ち、違うわ、私は貴方の」
「食べたのだろう」
くっくっと笑う御剣。
恐怖に怯え、思うように体も動かせない冥の服をすっかり脱がせ、ブラジャーのホックをはずす。
ぷるんと胸がこぼれだした。
「…悪くはないな」
片手で形のいい乳房を包み込んで、御剣が満足そうに言った。
御剣の前で屈辱のお仕置きを受けていたころは、まだふくらんでもいなかった胸。
「下を脱げ」
言われて、冥は催眠術にかかったようにショーツを下ろした。
唇が震えて、許しを乞う言葉が出てこない。
かちゃりという小さな音に屈んだまま顔を上げると、そこに屹立した肉棒がある。
「…ひっ」
喉の奥で、吸い込んだ空気が高い音を立てた。
「咥えろ」
冥が涙ぐんだ目で御剣を見上げる。
「ねえ、こんなこと、やめましょう…」
言い終わらないうちに、頬が熱くなる。
思わず片手で押さえて、そのまま床に座り込む。
「言ったはずだよ、冥。これは、狩魔の方式に基づいたお仕置きだ。君は狩魔のおきてに抗うのか。
その名を汚すのか」
冥は打たれた頬を押さえたまま、のろのろと膝で立つ。
顔の高さにあるその脈打つモノに、恐る恐る唇を近づける。
震える唇を開いて先端を咥えようとしたとたん、後頭部に手を回した御剣がぐいっと冥の顔を引き寄せた。

「…んっ!」
苦しさに咳き込みそうになったものの、御剣は抑えた頭を離してくれない。
口の中いっぱいになったモノの大きさと匂いに、冥はぼろぼろと涙をこぼす。
そのまま、目の頭を両側から挟むようにして、何度も前後に動かす。
涙と唾液でぐちゃぐちゃになった冥がようやく開放されたのは、どのくらい時間がたってからだったか。
喉の奥に吐き出された精液をすべて飲み込まされ、床に倒れこんで激しく咳き込む冥を御剣は黙って見下ろしていた。
止まらない涙をぬぐううちに、咳はしゃくりあげるような嗚咽に変わった。
打たれて赤くなった冥の頬を、そっと暖かいものが撫で上げ、冥は泣きじゃくりながら顔を上げた。
床に膝を付いた御剣が、冥の顔を覗き込んでいた。
「苦しかったか?」
優しい声でそう言うと、御剣は冥の裸の背中を抱いて引き寄せた。
「君がいけないのだ。君がいけないのだよ、狩魔冥」
広くて暖かい胸に抱きしめられ、何度も髪をなでられるうち、冥はようやくしゃくりあげるのを収めた。
お仕置きは終わったのだ。
その安堵感を、耳もとでささやく御剣の声が奈落の底に落とした。
「いけない子には、もっとお仕置きをしなくてはな」
御剣は、腕の中でもがく冥をぎゅうっと抱きしめて動きを封じる。
「君が、食べたのではないのだな」
反射的に、冥は首を横に振った。
「ちが」
「頑固な子だ」
冥の両肩をつかんで、御剣は勢い良く床に突き倒した。
軽々と仰向けに転がった冥の上に御剣がまたがり、ズボンを下ろす。
みっともなく広がった脚を閉じようとするより早く、御剣が押さえた。
太ももをつかんでぐいっと冥の体を二つ折りにする。
「や、やめて、おねが」
開かれて上向きになったその場所を見られている。
自分の格好と、その上に乗りかかってくる御剣に、冥は思わず目を閉じた。
指が、その部分に触れる。
ひだを開き、縦になぞり上げた。
「あっ…」
下から上にすくい上げるように動いた指が、止まった。
「や、あっ」
思わず声を上げて目を開けると、大きく広げた脚の間から自分を見る御剣と目が合った。
御剣の唇がゆっくりと動いて、にやりと笑う。
「ここは、相変わらず好きなようだな」
指先でつままれて、冥は声にならない悲鳴を上げた。
そのまましごき上げられる。
「いや、ああっ」
冥の意思に反して腰が上がり、肉芽をしごかれながら別の指が入ってくる。
「ひぃっ!」
膣内を激しくかき回される。
「…いけない子だ、冥。お仕置きなのに、濡れてきている」
「ひぁっ、あああっ!」
「どうしたんだ。叱られているのに気持ちよくなってよがっているのか」
「あ、あ、あ、ち、ちがっ」
御剣は膣から引き抜いた指を冥の顔の前にかざした。
「今回は、証拠があるようだな、狩魔冥」
ふるふると首を横に振る冥。
そして、御剣は次のお仕置きにとりかかった。

「あああああっ」
ずぶりと肉棒をつきたてられて、冥は白い喉を反り返らせた。
「んああっ」
「どうした、こんなに恥ずかしい格好をさせられて、無理矢理突っ込まれてるのに、どんどんあふれてくるじゃないか」
ずぶずぶと抜き挿ししながら、御剣が言う。
「反省が足りないようだな。お仕置きされて喜ぶなんて」
「あひっ、あっ、や、ああっ、いやああっ」
上から覆いかぶさりながらどんどん激しく突かれ、御剣の動きが早くなる。
ぐちょぐちょという音がたち、いやらしい牝の匂いが広がる。
「いい光景だ、冥」
ひい、ひい、と泣き叫ぶ冥を乱暴に犯しながら、御剣はくっくっと笑った。
「う、あ、ああっ、やあ、もう、だ、だめ、あっ、あっ、ああっ!」
「どうした、イクのか、こんなふうにされて、それでもイクのか、冥!」
「あ、い、いっ…!いぃぃっ!!!!」

ぐっちょりと汚れた下半身を投げ出し、まだひくひくと痙攣するその場所から粘液を垂れ流したまま
ぐったりしている冥を、身支度をした御剣が優しく抱き起こした。
そのまま、ほっそりした体を抱きしめる。
「つらかったか、冥」
まだ朦朧としたようすで、冥がうっすらと目を開ける。
涙で濡れた頬を、御剣の指がなでる。
「お仕置きは、終わりだ」
冥がゆっくり頭を下げて、御剣の胸に預ける。
「…ごめんなさ…」
全部を言わせず、御剣は冥の唇を自分のそれでふさいだ。
涙の味がする唇だった。
「…食べたいときは、そう言えばいいのだ」
ささやかれながら、冥はそれでも、次もまたきっと盗み食いをしてしまうのだろうと思った。


最終更新:2020年06月09日 17:22