・ロリ冥×御剣
・逆転検事4話後の話
・ゴムネタ
・御剣ちょいプレイボーイ



「アナタってほんと細かい性格してるわよね、こんなゴミくずだって事件の手がかりにしちゃうんだから」
9月某日。
狩魔邸内・御剣の部屋に押しかけた冥は、ベッドに腰掛けて御剣と(一方的に)話をしていた。
「人の部屋で、何をしているのだキミは」
「パパは仕事行っちゃって、ヒマなんだもの」
デスクでノートパソコンをいじる御剣が、ぶつくさ漏らす冥の方を振り返ると、彼女の手の中になにか小さなものが見えた。
ピンク色の、びよびよしたものである。
「どんな些細なことも見落とさないのが、操作の基本だろう。というか、まだそんなものを持っていたのかキミは?」
冥が持っていたのは、先日事件が起こった裁判所で拾った、割れた風船だった。
ゴミ同然であるが、これも事件の立派な手がかりになるのだから、世の中何が起こるかわからないものである。
「もういらないだろうから、捨てたまえ」
御剣に言われ、億劫そうに生返事をし、ベッド脇のくずかごを覗き込む冥。
しかし、その途端、訝しげに眉を寄せた。
「……レイジ」
「なんだ」
「あなたも、風船遊びしたの?」
わけのわからない彼女の言葉に、御剣は構わずパソコンのキーを叩き続けた。
………。
「!!」
が、次の瞬間いきなり立ち上がり、冥の前からくずかごを奪い取った。
「なによ?」
「いや、な、なんでも、ない」
冥の問いに、うわずった声で返す。
御剣は抱えたくずかごを、こっそり覗き込んだ。
昨日のゴミを処分し忘れていた。
誰にも、特に冥には決して見られてはいけないものが、この中に入っているのに。



昨日、冥が父親である豪に連れられて出かけている間、御剣の女友達が訪ねてきた。
どこかに遊びに出かけようと誘われたが、その日中に目を通しておきたい資料があったため、あっさり断った。
すると「じゃあ、合間に構って」と、部屋に居座られた。
よくあることだった。女友達たちが訪ねてくることも、部屋に二人きりになることも。
流れで、そのまま抱いてしまうことも。
御剣は彼女達のことが好きというわけではない。だが、優秀な検事になる以前に、優良な健康男児だ。溜まるものは溜まる。
ゆえに、彼女たちが迫ってくるから、それに応じるだけだ。
万が一の事が起こらないように気配りはカンペキだったし、御剣の部屋で事に及ぶのは、家主の狩魔豪が留守の時だけだ。
だから、このように痕跡を残さなければ、別に問題ないと思っていた。

「何だか、ねばねばするけど、水風船みたいね」
「!!!」
いつの間にか冥が、くずかごに手を突っ込んで、『ソレ』をつまみ上げている。
「わーっ!!」
御剣は光の速さでそれを奪い返し、くずかごに捨て直した。
「ティッシュもやたら捨ててあったけど、鼻風邪でもひいたの?水遊びなんかするからよ」
「いいいいやそそその、うううむむむむ」
冥の追求に、御剣は明らかに取り乱していた。他人の発言にビクビクしながら、頭の中で必死に言い訳を考えるなど、若手とはいえ検事である身で、あってはならないことである。
御剣は性格上ハッタリが苦手なため、こんな時の切り抜け方がわからなかった。
「………」
先ほどから向けられている冥のジト目が痛い。
その場から逃れるため、また証拠を隠滅するために、御剣はくずかごを持ったまま、部屋を出ようとした。
しかし、運命は無情だった。
「レイジ……それ、風船じゃないわね?」
びくう!
思わず塵をまき散らしそうになった。
「そそ、そのようなことはない、コレは風船だ」
「ゼッタイ違うわ。ウソがヘタね」
御剣の反論もキッパリ突っぱね、冥は不信感を露わにしている。こんな時の冥は、いつも厄介だ。
「なんなの?ソレ」
改めて、冥が訊ねた。
頭の中で、必死にどう弁解すべきかをはじき出そうとする。
だが、答えは……出ない。
「……風船だ……」
力無く、御剣はもう一度答えた。
しばらく、御剣と冥の視線がかち合う。逸らしたら負けだ。そんな気がした。
「………」
やがて、すう、と、冥が無表情になった。
「わかった。もういい。『レイジの部屋のゴミ箱に、半透明の下品なピンク色したネバネバの水風船が捨ててあったけど、アレ何かしら?』ってパパに聞くから」
「メ、メイッ!」
ベッドから飛び降り、御剣を押しのけ部屋を出ようとする冥を、彼は慌てて引き止めた。
冥の『パパに言いつけてやる』は、冗談抜きで怖い。
満足そうに御剣を見上げ、冥はもう一度問いかけた。
「なあに?それ」
「……」
有無を言わさぬ冥の笑顔に、御剣は観念し、消え入りそうな声で答えた。
「……避妊具だ」
「ヒニング?」
くずかごを隠したままの御剣の言葉に、冥は首を傾げた。
「いわゆる……生殖目的以外の性行為を行う際に、必要なものだ」
言いながら御剣は、13歳の子供に何という説明をしているのだろうと、肩を落とした。

それを聞いて、冥はしばらく視線を宙にさ迷わせたあと、手をポンと打った。
「ああ、セックスの時、女性が妊娠するのを防ぐために、男性器に被せる、アレ?」
………よく知っているではないか。
あまりにもあからさまに言われ、御剣は、無言で肯定した。
彼がどんどん沈痛な面持ちになっていくのも構わず、容赦なく冥は続ける。
「で、その使用済みのコンドームがアナタの部屋のゴミ箱に入っているのは、どうしてなのかしら?」
名称もバッチリだ。
「……勘弁してくれ……」
今すぐ独りになって、メソメソ泣いてしまいたいほど、御剣の気分は落ち込んでいた。
「もういいだろうメイ……この話は終わりだ」
「………」
土気色の顔をした御剣の言葉に、冥は腕を組んで目を閉じ、しばらく考えた。
祈るような気持ちで、その様子を伺う御剣だったが、やはり運命は残酷だった。
ぱっちりと目を開けた冥は、御剣に告げた。
「……どうやって着けるのか見てみたいわ」
「!!!」
顎が外れそうになるというのは、こういうことか。御剣は愕然とした。
冥はあくまで真剣である。
「ねえ、今からやって見せてよ」
真顔でとんでもない事を言う冥に、御剣は思わず後ずさった。
「いや、メイ。その、そんなことを言っては、いけない……」
「どうして?いいじゃない。このぐらい、問題ないでしょう?」
「大アリだ!とにかくダメなものはダメだ」
なおも食い下がる冥に、御剣は少し強めに言う。すると彼女は少し驚いたあと、みるみるうちに眉間にしわを寄せ、鬼のような形相になった。
「……私達にナイショで、ウチに女の人連れ込んでたこと、パパに言ってやる!」
「ストップ、ストップ!メェェェイッ!」
大声で喚いて部屋を飛び出そうとする冥を、御剣は再び引き止めた。
彼女は本気の目をしている。このままでは冥は必ず父親にその事を告げるだろう。
豪にこのことを知られることは、冥のムチ百連発を食らってでも、避けなければいけない事態だった。
「お、おち、落ち着きたまえ」
「……アナタが落ち着きなさいよ」
「わかった。わかったから、先生に言うのだけはやめてくれ」
我ながら情けない。
このように冥に必死に懇願するなど、長い付き合いだが、今まで無かった。
冥の方はというと、完全に優位に立ったと確信したのか、笑顔に戻って、かなりご機嫌な様子だった。
「わかればいいのよ。さ、早く」
「………」

冥は足取りも軽く部屋の奥へ再び進み、スリッパを脱いでベッドの上に座りこんだ。
御剣は、ノロノロとデスクに向かい、引き出しを開けた。
奥から小さな箱を取り出すと、その中からゴムの入った袋を一つ取り出し、冥の元へ向かう。そして自分もスリッパを置き、彼女と向かい合うように、ベッドに胡座をかいた。
今から、御剣自身を冥の前に晒す。
別にやましいことはしない。避妊具の使い方を説明するだけだ。
これから冥も法曹界に身を置くことになる。今後、性犯罪の事件を受け持つことになるかもしれない。
これは、その時の為の勉強だ。レクチャーなのだ。
そう心の中で何度も言い聞かせながら、御剣はズボンのチャックを下ろした。
「……」
冥が興味津々に御剣の下半身を見つめる中、それは外気に晒された。
ここで冥が怯んで「やめよう」と言うのを期待したが、彼女は全然動じなかった。
「……」
ソレは、緊張のためか、まだうなだれている。だがそれでも構わなかった。御剣は袋を開け、中からゴムを取り出した。そして先端にくっつけ、モノを包もうとする。
固くすらなっていないため、入れにくいことこの上ない。しかし早く終わらせるために、御剣はそのまま続けようとした。
不器用と自負してはいるが、何度となく使ったことのあるそれの装着はいつもこなせていたため、今回もすぐ済む筈だった。
しかし、やはり現時点での御剣自身の状態では、入れるのは困難なようだった。
何より、妹のように可愛がってきた冥の目の前ということで、羞恥心と背徳感にモノは柔らかいままだし、指先が震えて、狙いが定まらないのである。
焦れば焦るほど、入る気がしなかった。
「何やってるの?ヘタねぇ」
「……ム……」
「おっきいから入らないの?」
自分が大きい方か、そうでないかの基準など、比べたことがないから知らない。
今まで抱いた女達の『御剣くんの、おっきい』というセリフから推し量るしかなかった。
それもお世辞かもしれないが。
「…………」
なかなか入ってくれないゴムに悪戦苦闘しているうちに、冥が焦れたらしい。頬を膨らませてそわそわしだした。
そして。
「ちょっと貸しなさいよ」
いきなり身を乗り出したかと思うと、御剣の手からゴムを奪い取った。
「っ、メイっ?」
突然のことに戸惑った御剣は、一瞬反応が遅れてしまった。
だから、冥がしばらくゴムの口を確認してから、御剣自身を片手で握った時も、とっさに対処できなかった。

「!!」
ピリッとした感覚が体を駆け巡り、御剣は我に返った。
「こうやって……こう、すればどうかしら」
今まで大人しく見ていたかと思えば、冥は自分でも着けられそうだと考えていたようだった。
根元を指で支え持ち上げ、先端にゴムを被せられる。
「メイ……!」
御剣は、予想外の展開に、明らかに動揺していた。
自分の一物を、冥のしなやかな指が握っている。その触れ方は、強すぎも弱すぎもせず絶妙な感触で、ピリピリとした感覚が、全身を震わせる。
人に着けられるのは初めてだった。自分で着けるのとは違い、何やら妙に気分が高まってくる。
それは、人に着けさせているからなのか。
それとも、その相手が冥だからなのか。
「やだ、なんだかベトベトして……思ったより難しいわ」
冥が顔をしかめながら、それでも真剣な表情で、ゴムの装着を続けた。徐々に硬さが増してきた御剣自身をじっと見つめ、指を這わせ、摘むようにしながらクルクルとゴムを被せてゆく。
「メイ……っ、もう、やめ……」
「んもう、邪魔しないでっ」
震える御剣の手は、あっさり冥に振り払われる。そのまま真ん中くらいまで何とか着せることができるが、先端に空気が入ってしまっていた。
「なんだか……このままじゃすぐ抜けそう。これって失敗?」
「く……メイ、もう充分だから……」
顔を見上げて訊ねるも、曖昧な返事を返され、冥はカチンときた。狩魔の人間はカンペキ主義だ。妥協は許さない。
冥は一旦ゴムを元に戻すと、屈んで御剣の股間に顔を埋めた。
「メ……イ……っ!?」
ゴムの先端を口でくわえ、両手でゴムの入り口を広げ、そのまま唇ごとモノに被せ直す。唇を使うことで両手が使えるようになり、スムーズに入れることができた。
そのままモゴモゴと舌や唇を一物に押し付け空気を押し出しながら被せてゆく。
「………!」
下半身に一気に血が集まり、声にならない声で呻いて息を漏らす御剣。
思わず腰が浮いてしまいそうだった。
「……んっ……」
唇で押さえながら、クルクルクル、とゴムの輪っかを下ろしてゆくと、今度はうまく着けることができた。冥は満足そうに目で笑うと、唇を離す。
そして手櫛で髪を整え、口元を拭うと、御剣の顔を覗き込んだ。
「ちゃんと、できてる?」
まるで、子供が親の手伝いをし、誉めてもらいたいような、期待を含めた表情で。

「………」
御剣は、肩で息をしながら、自分自身を見下ろした。
ゴムは隙間なくぴったりと一物を被っている。
……カンペキだった。
先ほどとは打って変わって、重力に逆らってそそり勃っている御剣自身。
また、大きさも増し、時折ビクビクと脈打っていた。
「……ああ……」
何とか息と共に返事をすると、冥は嬉しそうに微笑んだ。
「ふうん、これでセックスをしても、子供ができなくなるのね……」
出来がいいのが嬉しいのか、冥は再びソレに視線を移し、指先で突っついたりしてみた。
御剣には、もうそれを咎める気力は残っていなかった。とにかく、早く冥が満足なり飽きるなりして、この場から立ち去ってくれるのを望むばかりだった。
「…………」
しかし冥は、一向に自分を解放してくれる気配を見せない。それどころか、しばらくそれを弄り回したあと、おもむろにベッドの上に膝立ちになった。
そして、御剣の肩に手を置き、それを跨ぐ。
「………」
不安がよぎる。
そして、その予感は的中した。
冥は、自分の白いズボンとショーツを一度に下ろし、御剣の一物目掛けて、腰を落としてきたのだ。
「!……メイ……っ!」
声を上げる御剣。しかし冥は構わず、位置を調節しながら割れ目に御剣の先端を押し付けた。
「ん……と……」
何とか窪みを探り当て、体重をかけてくる。
入り口は狭いが、ゴムのゼリーで挿入は不可能では無いだろう。
冥は狙いを定めて、腰をグッと下ろした。

「………っ!!」

小さな蕾が押し広げられようとする寸前の所で。
御剣は冥の両脇を抱え、挿入を妨げた。
「………」
冥は、ぱっちりとした瞳で御剣の顔を見つめている。
「……ダメだ」
そのままの体勢で、御剣は低く呟いた。
「……どうして?」
冥は、不思議そうに訊ねる。
「……それだけは、ダメだ」
御剣も視線を上げ、冥を見つめ返した。
冥は、初めはきょとんとした表情だったが、やがて眉を釣り上げて、同じ言葉を繰り返した。
「………どうして………っ?」
先ほどよりも口調が荒くなっている。そして何とか腰を下ろそうと体を上下に揺らすが、御剣の腕はビクともしない。
御剣は、そんな冥から視線を外さず、はっきり告げた。
「……傷つけたくないからだ」
その言葉を聞いた冥は、顔を真っ赤にして、口元を歪めて、言い放った。
「……他の女はいいのに、私はダメなの……!?」

非難してくる冥の声は、どこか悲痛に聞こえた。しかしその抗議の言葉にも御剣は折れず、
「…………ダメだ」
静かに、諭すように冥に告げた。
「………」
それを聞いた冥は、無表情になり、俯いた。黙り込んだまま、体を震わせている。
冥の顔は見えなかったが、御剣は彼女の脇を抱え、落ち着くまでその体勢のまま見守った。
「………っ」
パチン。
やがて、ムチではなく手のひらで、冥は御剣の頬を一度叩いた。
そして服と下着を自ら上げ、冥は御剣から離れた。膝立ちで、のそのそとベッドから降りると、背を向けたまま軽く身支度をする。
そして。
「……パパには言わないから」
ぽつりとそれだけ呟いて、御剣の方を見る事なく部屋を出て行った。
「………ハァ………」
バタンと閉まるドアの音と共に、御剣は深いため息をついた。先ほどまで異様な空間のようだった部屋は、いつもの静けさを取り戻している。
一物をさらけ出したまま、御剣はしばらくその場から動けなかった。
その時だった。
「……」
尻ポケットに入った携帯電話が、着信音を鳴らした。取り出して、サブディスプレイを確認する。
発信者は、女友達の中の一人だった。
『あ、御剣くん?』
電話に出ると、キンキンと高い声がした。甘えるような、媚びるような口調で。
冥は絶対、こんな声音で話さない。
『ねぇ、今から遊びに行ってもいい?今日もおうちの人、ルスなんでしょ~?』
事前に、冥がバカンスから戻ってくるから訪問は控えるようにお願いしていた筈だが、彼女たちはお構いなしらしい。
御剣は内心、その無神経ぶりに呆れた。
………しかし、ちょうど今御剣の真下には、まだ硬さを保ったまま、高ぶりの治まらないモノが勃ち上がっている。
「………」
ボソボソと御剣は返事をした。
『え、なあに?聞こえない~』
「………もう来ないでくれ」
『え』
ちょっと、やだ、まって、なによぉ、とまだ喚いていたが、構わず御剣は電話を耳から離し、切った。
電源も落としてしまい、枕元へ放り出すと、自分も仰向けにベッドに倒れ込んだ。
冥に打たれた右頬は、まだジンジン痺れている。
下半身でビクビク脈打つそれも、まだ治まる気配はない。
今までの、誰に触られるよりも。
口に含まれたり、ナカに押し込んで擦りつけた時よりも。
冥の白く細い指で握られた時に、背筋に走った快楽の方が、凄まじかった。

『……他の女はいいのに、私はダメなの……!?』
あの言葉をぶつけられた瞬間、冷水を浴びせられた気分になった。
まさに、その通りだったのだ。
他の女の事など、どうでも良かった。
冥だけは、例えムチで何遍打たれても、父親に告げ口されても、
傷つけるわけにはいかなかった。
結果、拒まれた冥はもっと傷ついただろうに。
「……何をやっていたんだ、私は」
結局、自己満足の為にしか行動出来ていない。
冥のことを、子供だとバカにできる資格などない。
自分が滑稽で、腹立たしくて仕方がなかった。
熱をもったままの自身をさらけ出したまま、御剣は片手で顔を覆い、肩を震わせ笑い続けた。
息とともに漏れそうになる嗚咽と、胸の奥を引っ掻くような痛みには、気づかない振りをして。

最終更新:2020年06月09日 17:22