「機長がお呼びですよぉ」
若菜の言葉にいちるが表情を強張らせた。
しかしすぐに笑顔を御剣に向けると、丁寧に挨拶をしてこの場を去った。
若菜と二人で残された御剣は、今行われた会話の内容を反芻する。

機長の許可がないのに嘘をついて捜査を行った。
機長が、彼女を呼んでいる。

”これだ!!”

御剣の中でロジックが組みあがり、脳が現在起こっているであろう事象を導き出した。


現在は安定した航路を飛行中であり、自動操縦と副機長がいれば問題はないと、
機長は操縦室に向かったいちるを自身の休憩室へと連れ込んだ。
「コノミチくん。キミ、何をしたか分かってるよね?」
「・・・・・・申し訳ございません。」
機長の言葉にうつむき、小さな声で答えるいちる。
「全ての権限は機長の僕にあるんだよ。それなのに勝手な行動をとるなんて、
プロのCAとして失格だな。…お仕置きが必要だ」
いちるが顔をあげるより早く、彼女の体は後ろに押された。
バランスを崩して倒れ込んだいちるだったが、幸か不幸か、そこはベッドだった。
この状況で、次に何が起こるか分からぬはずもない。それを裏付けるかのように男の手が
いちるの胸元にのび、引きちぎるようにして制服を開いた。
無遠慮な手がいちるの胸を鷲掴む。
「イ…イヤ……」
逆光になっていてその表情は分からないが、覆い被さる男の歪んだ笑みを浮かべた口元だけが、
いちるの脳裏に絶望的に焼きついた。
「機内では僕が『絶対』なんだってことを、体で覚えさせてあげよう」
体を這い回る手、舌。
嫌悪感に涙が滲み、ぎゅっと目を閉じてやりすごす。
(ミツルギ…サマ……
捜査が貴方様のお役に立てるのであれば……わたくしはそれで……)


「…こ、ここここのようなアレはいけない!!白音さん、すぐに私を機長室に案内したまえ!!」
「急にどうしたんですか~?鼻血出てますよお」

最終更新:2020年06月09日 17:43