逆転検事5話後。少々ネタバレ。


「終わったな。」
共に追い続けていた事件に終止符に終止符が打たれた。その晩、狼が冥のホテルへ訪ねてきてそう言った。
「ええ、終わったわ。」
頷いて冥はソファに足を組んで座り、狼を見上げる。
「それで。あなたがここに来た用向きは?」
冥が問いかけると狼が肩にかけていた鞄を床に置いた。その中1本の瓶を取り出してテーブルの上に置き、続いて部屋に備えられたグラスを三脚並べる。
何のことかわからず冥が首をかしげていると、続いて写真立てをその横に並べた。
「あいつ、好きだったんだよな。これ。」
ようやく意味を理解した冥は少し切なそうに写真に視線を投げた。
「志半ばにして倒れたのは、本当に無念だったでしょうね。」
「そうだな…だがヤツの死をムダにしたわけじゃねえ。あいつも納得してくれるはずさ。」
狼がワイングラスにジュースを注ぎ、冥にグラスを手渡した。
「だから今日は、3人で乾杯しようと思って来たんだ。」
アクビーの写真の前にもうひとつのグラスを置き、最後のひとつを持ってアクビーの写真の前に置いたグラスに軽く重ねた後、冥の横に座った。
「そうね…」
冥も同じようにアクビーのグラスに触れた後、狼にグラスを差し出す。お互いのグラスを重ね、一口飲んでグラスを置き、冥は狼をまじまじと見た。
この男は検事を憎み、まったく信用しないでいた。だがそんな彼が冥には協力的だった理由を冥はずっと疑問に思っていた。それを聞くなら今このタイミングしかない、そう思い、問いかけた。

「前から聞きたいと思っていたのだけど、検事を毛嫌いしていたあなたが、なぜ私にだけは協力的だったの?」
「最初からあんたを信用していたわけじゃないさ。だが追う事件が一緒だと顔を合わせる機会も増える。そのうち思うようになったんだ。あんたの目は真っ直ぐに真実だけを追っているってな。オレ好みの強い目だ。だから協力してみようと思ったんだ。」
「当然ね。狩魔は完璧をもってよしとする。完璧な真実のみを求めるのよ。」
冥が言い切ると、狼がククッと笑った。
「そうだな。やはりオレの目は間違ってなかったってことだ。完璧な狩魔のロジック、見事だったぜ。あんたも、あの男もな。」
「当然の結果だわ―――と言いたいところだけど、あなたと御剣怜侍のお手柄ね、今回は。結果に免じて私を犯人扱いしたことは許してあげる。」
「そりゃどうも。でも、あんたがいなけりゃオレの一か八かの賭けは成立しなかったぜ。」
狼がソファに背中を預けて腕を組んだ。
「御剣怜侍、か。面白い男だな。―っと、アネさん、オレも聞きたいことあるんだが。」
「何よ。」
「あの男とは恋人同士なのかい?」
唐突にして思いがけない問いかけに、冥は一瞬驚いて固まった。ぱちぱちと数回目を瞬かせた後、フッといつもの表情に戻る。
「そう見えるかしら。」
「ちょっとだけな。違うのか?」
「違うわ。ただの兄弟弟子よ。そして私にとっては最大のライバル。それ以上でもそれ以下でもないわ。」
「そうか、じゃあ遠慮しなくていいな。」
ぼそりと呟いた狼の言葉が聞き取れず聞き返したが、狼はそれに答えずに右手を伸ばして冥の頬に触れた。思わず冥が身体を引く。
「何するのよ、突然!」
そう言って素早くムチを握り、その手を振ろうとして、だが冥は手を止めた。真っ直ぐに見つめてくるどこか熱っぽい狼の瞳に怯んだのだ。

「アネさん…」
熱を帯びた狼の視線。冥は金縛りにかかったかのように動けないでいる。頬を触れていた手が顎を捉えゆっくりと持ち上げる。狼が切なげに目を細めた。
「アネさん、好きだ。好きすぎてやばいぐらいに抑えられねぇ。」
「は?あなた正気なの?」
「もちろん正気だ。」
「何を…」
怯む冥の隙を突いて狼は冥を両腕で抱き寄せた。華奢な冥の身体はあっさりと狼の腕の中に納まる。腕の中の冥の感触に、狼はさらに愛しさを募らせ、ぎゅっと強く抱きしめた。
「何考えてるの、やめなさい!やめないとただですまないわよ!」
冥が威勢を張って全力で抵抗するが、男の力で束縛されては適うはずがない。
「好きだ、アネさん。」
肩口に顔を埋め耳元に囁くと、冥の身体がびくりと揺れた。
「オレのこと嫌いか?」
「そういうわけじゃ…」
「じゃあ、キスしてもいいか?」
「はぁ?何でそうなるのよ!」
冥にとっては突拍子もない申し出に、思わず身体を押し返す。恥かしさに顔を歪める彼女を、狼が縋るような目で見つめる。
「なあ、頼む。1回だけでいいんだ。」
そんな目で見られては、どうにも断れなかった。
「仕方ないわね。でも、一度だけよ。」
諦めて溜息と共に吐き出すと、間髪入れず狼が冥の唇に自らの唇を押し当てた。突然過ぎて呆気に取られる冥の隙を突き、狼の舌が歯列を割り入って冥の口内に侵入する。
舌を絡めとり、冥の漏らす呼吸を少しも逃さないような勢いで狼は彼女を熱烈に味わいつくした。
「はぁっ…」
冥は唇を開放されると同時に思い切り酸素を吸い込み、少々咽てしまう。呼吸を整え少し落ち着くと狼をキッと睨んだ。
「ちょっ…あんなのとは聞いてない…んっ!」
声を荒げる冥の言葉を遮り、今度は軽くついばむように口づけた。
「こういう方が好みだったか?」
「なっ…」
一瞬にして冥の顔が真っ赤に染まる。そんな冥がかわいくてどうしようもなく、狼は再び冥を抱きしめた。
「アネさん、すげえカワイイ。オレ、今最高に幸せだ。」
「ちょ…やめなさい!」
「嫌だね、離したくない。ほら、伝わらねえか?オレ今柄にもなくすげえドキドキしてんだぜ。」
言われて冥は身体を通して伝わってくる狼の鼓動に初めて気がついた。
こんな調子だからわからなかったが、もしかして彼も緊張しているのではないか、そう思えてくる。
それに軽い印象はあるが、常に本音で生きている男だ。その言葉も嘘ではないだろう。それに好きだと言われて悪い気がするわけではない。
そう考えていると冥はどうしても彼を意識してしまう。急に彼の腕の中にいることに気恥ずかしくなり、無意識に鼓動が早くなる。
流されてはいけないと思いながらも彼の体温が無性に心地よく感じられた。そんな冥の胸中を見透かしたように狼がさらに強く冥を抱きしめる。
「なぁアネさん。今だけオレのために普通の女の子になってくれねえかな。」
「なっ、なぜ私が…それにあなたなんかの言うことを聞かなきゃいけないのよ。」
身体を捩って逃げようとする冥。彼女の身体を少しだけ離して、狼は真っ直ぐに冥を見つめた。その熱い視線は冥怯ませる。
冥が反論できず沈黙していると、狼が続けた。

「オレがあんたを犯人扱いしたとき、あの男はあんたのことを無実と信じていた。それにあんたもあの男のことを…そんな、絶対的な絆を見せ付けられて、実はちょっとショックだったんだぜ。」
「別に私は…」
「わかってる。付き合いの長いあんたたちの間に割り入る隙なんてあると思っちゃいない。だが、今あんたはこうしてオレの腕の中にいる。だから…今だけでいいんだ。オレに夢を見せてくれねえかな。」
切なそうな視線をぶつけてくる狼を冥は拒むことができなかった。信じていた部下に裏切られたこの男が以前の自分とだぶって見えてしまう。
信じていた父、身内同然の御剣、ふたりを同時に失った時の喪失感と、そこから這い上がらなければ、狩魔を背負っていかなければという義務感。
この男もまた、一人で背負うべき重圧を抱えてきたのだ。それを支えてきた彼の右腕とも言える部下の裏切り。
それでも心が折れない彼は強いと冥は思った。だが、それは表面だけで本当のところは彼もまた心に傷を負っていたのだ。
そう感じた瞬間、冥は狼を拒めなくなっていた。傷の舐めあいのようなことは、冥は望んではいない。これが一時の突発的な感情だけならば、簡単に拒否しただろう。
だが、彼の瞳は冥が思っていた以上に純粋で。常に自分の心を偽ることなく生きてきた男の真っ直ぐな想いを拒むことは冥にはできなかった。
「わかったわ。でもひとつだけ約束して。今日のことはすべて忘れること、今後一切口にしないこと。誓えるならあなたにつきあってやらないでもないわ。」
「それは厳しい条件だな。思い出にもしちゃいけないのか…嫌だといったら?」
「今すぐ荷物をまとめて帰ってもらうわ。」
「そりゃないぜ。わかった、その条件でいい。」
言うと同時に冥の身体をひょいと持ち上げてベッドに寝かせて組み敷いた。
「…気が早いわね。さすがは狼男といったとことかしら。」
少し余裕を見せながら、冥が狼の鼻先をちょんとつつくと狼が苦々しく笑った。
「いきなり押し倒されて怖くないのかよ。」
「そうね、怖くはないわ。覚悟ならさっきしたし。それにあなたがただ私の身体だけを求めてるわけじゃないってわかったから。」
「アネさん…すまねえ。」
「これは私自身が決めたこと。あなたが謝る必要はないわ。」
冥の思いがけない妖艶な微笑みに狼はくらりと眩暈のような感覚を感じた。堪えきれず冥の唇に吸い付き、舌を絡めると今度は冥の方からも応えてきた。
口中を貪りながら胸元のリボンを解いて肌蹴させると白磁の肌が露わになる。そこから手を差し入れて下着の下へ滑り込ませて突起を指で挟むと冥の吐息が荒くなった。
胸への愛撫と口付けを続けながら、下着を剥ぎ取ると形のいい乳房が現れる。唇を開放して今度は胸へ舌を這わせてゆく。ざらり、と突起を舐め上げると冥の身体がぴくりと跳ねた。
「あっ…」
思わず漏らす冥の声がかわいくて、一方の乳首を口で愛撫しながら、もう一方を指で摘んだり転がしたりして刺激する。冥が声を殺して耐えていると、今度は手を下半身へと這わせた。
スカートの中へ手を滑り込ませ、ストッキングの上から腿を擦る。そのままスカートを捲り上げて片足を大きく曲げさせ、その中央をゆっくりと指でなぞった。
「やっ…」
反射的に閉じようとする冥の足をがっちりと固定して、両足の間に身体を滑り込ませる。覆いかぶさり両手で両足を抱え込み、冥を上から真っ直ぐに見下ろした。
「なあ、アネさん。あんたが魅力的すぎるからかな。オレ、何にもされてないのにもうこんなになってんだ。」
ズボンの上からでもはっきりとわかるほど膨れ上がったそれを冥の秘所に押し付け、擦り付ける。服越しでもその感触は冥の神経を刺激し、冥の腰がぴくりと揺れた。
下着を手早く剥ぎ取り、足を開かせると冥の秘所は少し湿り気を帯びていた。愛液を指で絡めとり、中央の突起を滑らせる。
「あっ…んっ!」
思わず身体を引く狼にしっかりと掴まれて逃げることはかなわない。与えられる刺激に身を捩っていると狼の指がズブズブと埋め込まれた。
中をかき回しながら、狼の舌は冥の突起をぴちゃぴちゃと音を立てて舐め上げる。その音に羞恥心を刺激されながらも、与えられる快感には逆らえず、冥がシーツを強く握った。
「どうだい、アネさん。気持ちいいか?」
「いやっ…」
首を振る冥の中に、狼は指を増やして突き立てる。
「どうせ終わったら全部忘れなきゃいけないんだ。素直になってくれよ。」
「だめ…」
散々かき回しても「イヤ」と「ダメ」しか言わない冥。狼は諦めて一旦その手を引いた。

冥を抱き起こして中途半端に乱れた服をすべて剥ぎ取り、頬を撫でながら愛しそうにまっすぐに見つめる。
「アネさん、綺麗だぜ。さすがは狩魔の完璧主義だ。非の打ち所のねえ身体だな。」
満足そうに冥を見下ろしながら、狼は自分の服も脱ぎ去ってゆく。
露わになった彼の逞しい上半身に冥は思いがけず目を奪われた。
無駄のない筋肉を適度につけた腕。筋肉質すぎず、だが厚みのある胸板。
この身体に抱かれるのか、とそう考えると冥の神経がざわりと鳥肌を立てた。
そして狼の身体を覆う服が全て取り払われるとすでに立ち上がった剛直が勢いよくそそり立っている。
思わず冥の視線はそれに釘付けになってしまった。今まで日本人としか経験がない冥にとってその大きさは今までに目にしたことがなかったんのだ。
「どうした、まじまじと。そんなに立派か、オレのは。」
「し、知らないわよ、そんなこと。」
狼がにやりと笑うと冥はふいと顔を背けた。面白がった狼が膝立ちになり、冥の目の前に剛直を突きつける。
「ちょ…何のマネ?」
「なあ、アネさん。ちょっと可愛がってくれよ。」
「はぁ?調子に乗るのもいい加減に…」
威勢良く吐き捨てようとするが、その言葉は狼によって飲み込まれた。唇を離し、狼が親指でつ、と冥の唇をなぞる。
「包まれたいんだ。このカワイイお口に。なぁ頼むよ、アネさん…」
言われて冥の顔が火を噴いたように真っ赤に染まる。
「なっ…そんなはずかしいことをよく言えたものね!」
「あんたのためならどんなセリフだって言えるさ。」
狼が反論する冥の手を掴み、膨れ上がった自身へ添える。冥の頭に手を添えて鼻先に自身を突きつけると、冥が恐る恐る口付けた。
亀頭をチロチロと舐めあげられ、ゆっくりと口に含まれると狼の腰がビクリと震えた。
「うぁ…アネさん、最高。」
思わず声を漏らすと上目遣いで見上げる冥と視線が合った。与えられる刺激だけでも気持ちいいのに、自分のものを咥えている冥の表情がなんとも言えず妖艶で狼の欲望はさらに掻き立てられる。
舐められ、吸い上げられ、手で刺激されるうち、絶頂近くなってきて狼は冥をゆっくりと離した。
「どうしたの、もういいの?」
「ああ。口の中もいいが、やっぱりあんたの中に入りたい。」
冥の身体を押し倒して両足を開かせる。すでに愛に濡れた秘所に剛直を押し当てると冥が息を呑んだ。
狼が己を埋め込むと冥の中はスムーズに彼を招き入れた。彼女の中が狼を包み込む刺激が強くて思わず眉を顰めると、その表情を見て冥がふふ、と笑を漏らした。
「あなたでもそんな余裕のない顔するのね。」
「あんたの身体があんまりよすぎるんだ。最高だぜ、アネさんよぉ…」
冥の顔にかかった髪を払いのけて頬を撫でて口付ける。舌を絡めながらゆっくりと腰を動かすと冥は喘ぎ声と共に熱い吐息を漏らした。
その吐息を飲み込みながら、少しずつスピードをあげて冥を突き上げる。奥まで貫かれて思わず冥が嬌声を上げた。
「ああん…んっ…!」
眉根を寄せて堪えようとする冥の耳元に口を寄せて狼が低く囁いた。
「我慢することはねえ。どうせ終わったら忘れなきゃなんねえんだからな。思いっきり乱れて見せてくれよ。」
耳元に熱い吐息を感じて冥はぞくりと身体を奮わせた。今まで経験したことのない大きさで最奥を何度も突かれては乱れるなという方が無理だ。
「あんたの中は最高だ。アネさん、愛してるぜ。」
耳朶を甘噛みされ、そう囁かれるとギリギリのところで保っていた冥の理性が音を立てて崩れた。

「ああっ…いい、もっと!」
豹変したように乱れだす冥を狼がさらに突き上げた。結合部から漏れる淫猥な音が官能をいっそう煽り、冥の欲望を掻き立てる。
徐々に締め付けがきつくなってきたところで狼は一旦動きを止めて、自身をずるりと引き抜いた。
「え…」
絶頂寸前まで高められていたのに、突然出て行かれて冥はどうしようもなく疼く体を奮わせる。潤んだ瞳で狼を睨みつけた。
やめるつもりで抜いたわけではないが、そんな目で見られては―――狼の悪戯心に火がついてしまった。
「アネさん、気持ちよかったか?」
「…バカはバカなことを聞きたがるものね。バカバカしい―――あっ…」
非難めいたことを言う冥の中に指をぐっと突き刺すと冥の言葉が遮られた。狼の指を冥の中がきゅうきゅうと締め付けてくる。
「強がるのはやめようぜ。あんたのここはオレを欲しがってるんじゃないか。」
「そんなバカな、こと…!!」
狼が指を抜くと冥の秘所が名残惜しそうに震える。狼が剛直を押し当てて擦り付けるように動かすと冥の体の奥がぞくりと疼いた。

「本当は欲しいんだろ。」
再び狼が問いかけると冥が顔を背けて小さく頷いた。狼の口角がつり上がる。
「だったらちゃんとお願いしてみてくれねえか。」
「なんで…」
「嫌ならやめるか?」
狼が身体を離しかけると冥の腕が彼の背中を強く抱いた。
「イヤ…」
「じゃあ、ちゃんと聞かせてくれよ。そのカワイイ口から。」
狼が冥の唇を指でなぞると、すでに理性を失ってしまった冥は不本意ながら、だが満たされたい欲望に勝てず、小さく口を開いた。
「やめないで…あなたが欲しいの。」
潤んだ瞳で見上げられ、狼の理性も一気に吹き飛んだ。冥の身体を抱きしめて口付け、熱烈に冥の中を貪りつくす。
「アネさん、好きだ。好きすぎておかしくなりそうだ。」
耳元に囁いて、一旦身体を離して胡坐をかいて座る。冥を抱き寄せ、腰を掴んでその中に自身を埋め込んだ。
冥が狼の胸に自らの胸を押し当てるように掻き抱くと、狼の低い声が吐息と共に漏れる。
「ああ…」
狼がゆっくり突き上げる。冥のふくよかな胸が狼の胸を擦る感触が狼には何とも心地よく感じる。
冥の身体を支えて激しく突き上げると冥の身体が狼の動きに合わせて揺れる。
狼を深く咥え込んで冥も自らの腰を押し付けて絡ませた。狼がさらに冥を突き上げると冥の口から嬌声が漏れる。
「ああん、いい、いきそう…」
狼を凄い勢いで締め付けたと思うと、冥が狼にしがみついてきた。狼をくわえ込んだまま冥の中がびくびくと痙攣している。少し落ち着くのを待って狼が自身を引き抜いた。
「アネさん、気持ちよかったか?」
顔を覗きこんで視線をぶつけると冥が恥かしそうに無言で顔を背ける。
「じゃあ次はオレの番だな。」
仰向けに冥を寝かせて足首を掴んで高く持ち上げると、冥がハッと我に返った。
「ちょっと、まだやる気なの?」
「そりゃ、オレはまだいってないんだぜ。ここでやめるなんて生殺しだ。」
冥の足を肩に担ぎ上げ、真上に組み敷いて剛直を宛がった。最早冥の様子を伺っている程の余裕もなく、体重を乗せて冥の最奥まで思いきり突き立てた。

「やぁっ…」
一度達したにも関わらず、その刺激は冥の官能を再び生み出すのに十分すぎた。
奥で一旦止め、ぐりぐりと腰を押し付けながら中をかき回すと冥が苦しそうに喘ぐ。
「早く、して。焦らさないで…」
理性が完全に吹き飛んでしまった冥は最早何が何だか自分でもわかっていない様子で、狼を求めてくる。そんな冥の姿に触発され、狼の欲望はますます高まってゆく。
「アネさん、カワイイぜ。やっぱあんたが最高だ。」
何度かゆっくりと奥を突いていると、冥がシーツをぎゅっと握り眉を顰めた。
「お願い、早く…もう我慢できない…」
そんな冥が可愛くて狼は胸を鷲掴みにされる。普段威勢を張っている彼女の乱れる顔がどうにも愛しくて仕方がない。
もう少し苛めたいとも思うが、これ以上焦らすと後が恐ろしいので狼は彼女の言葉に従うことにした。
彼女を突き上げるスピードを速め、真上から何度も何度も腰を打ち付ける。
ぐちゅぐちゅと淫猥な音を立てる結合部からは愛液が白い泡となって溢れ出している。
「ああっ…気持ち、いいっ…おかしくなりそう!」
嬌声を上げる冥をさらに追い詰めるべく何度も貫く。よがり狂って息も絶え絶えになった冥の足を離してその身体に覆いかぶさった。
ついばむように口付け、その身体を強く抱きしめながら最奥を貫くと冥の手が狼の背中を強く掴んだ。
背に痛みが走り、血が滲むがそんなことなどお構いなしに狼が冥を激しく突き上げた。
「アネさん、どうだい?気持ちいいか?」
「ん…はぁっ、すごい…お願い、もっと…」
「頼まれなくてもイヤというほどやってやるさ。」
言って狼はさらに激しく冥を貫いた。己にしがみつき、涙交じりの嬌声を上げる冥を容赦なく何度も何度も貫く。
やがて、冥が絶頂へと押し上げられ、狼の肩に噛み付いた。
「クッ…!」
肩に鈍い痛みが走ったが、それを堪えて突き立てると凄い締め付けに襲われた。
「ああっ…もうダメっ!」
噛み付くような刺激が狼自身を包む。限界を感じて狼は自身を引き抜くと冥の腹の上に欲望の全てををぶちまけた。
そのまま冥の上に倒れこみ、乱れた息を整えながら冥の頬を撫でた。
「アネさん…大好きだ。最高によかったぜ…」
「バカが何を…」
愛しそうに、しかし切なげな瞳で見つめられ、冥は口にしかかった言葉を止めた。
「私も、こんなの初めてかもしれないわ。」
「それは光栄だ。ありがとうよ、最高の夢、見せてもらったぜ。」
そう言って寂しげに微笑む狼の頭を冥がギュッと引き寄せた。
「バカはバカなりの結論を出したがるのね。バカみたいな真っ直ぐな想いが伝わることもあるかもしれないわよ。」
狼がハッ顔を上げて冥を見ると、冥は真っ赤な顔をふいと逸らした。
「狼子曰く、『夢と現実は紙一重』そう思っていいのか?」
「そんなことは自分で考えなさい、バカ。」
「わかった。」
狼が冥に口づけて強く抱きしめ、耳元に囁いた。
「愛してるぜ―――冥。」
冥の目が一瞬見開かれる。やがて狼に見られないように唇をふっと弛めた。
「バカ…」
冥は言葉で威勢を張りながら、だが狼の背中に優しく手を回し、彼の身体を引き寄せた。

最終更新:2020年06月09日 17:38