御剣×冥③

『あっ…はぁ…レイッ…』

頭の中で断続的に繰り返される喘ぎ声。
プライドが高く決して人に媚びることのない彼女を、馬鹿げた妄想の中で思うままに私が汚す。
既に形を変えた手の中の自身が熱を増し、欲望に任せてそれを強く扱き上げた。

……もう何度この虚しい行為を繰り返しただろう。
―――メイを抱きたい。
それは病のように取り憑いて、決して消えることの無い欲望。
妹のように思い続けていた少女に、何故今になってこんな浅はかな想いを抱いてしまったのか。
それに捕われてからというもの、日に日に自分が腐っていくのが解る。
そう、このままでは私は駄目になってしまう…。
光が一切遮断された暗い部屋の中、今日も一人ソファーに身を沈めた。

……呼び鈴が鳴ってる。
しばらく無視をしていたが、それでもベルはしつこく鳴らされる。
「煩い…」
諦めて玄関に向かい扉を開くと、そこにはメイが立っていた。
「……」
今しがた思い浮かべていた人物が突然現れ、かける言葉が見つからない。
「何よ、その顔。私が来ちゃ悪いとでも言うの?」
「いや・・・ただ、珍しいな、キミが私の家を訪ねてくるなんて」
「別に…ちょっと話したいことがあっただけよ」
「…そうか」
何を言われるか、大体の察しは付いていようものだが。
「はっきり言うけど、貴方、最近変だわ。…あの弁護士に負けた事、まだ引きずっているのかしら」
…本当の理由など知る由もない彼女。
原因が自分だと知ったら、キミは一体どんな顔をするだろう。
「別に、心配してるわけじゃないわ!ただ私は貴方に復讐するためこの国に来たんだから、
私のいないところで勝手に腐ってもらっては困るのよっ」
「メイ…」
「…言ってみなさいよ。何も無いとは言わせないんだから」
何も知らないメイは、真っ直ぐに私を見た。
「それは…言えない」
「…!何よ…私じゃ話してもしょうがないって言うの!?貴方はいつだって私を子供扱いして…」
「違う!…そうじゃない。そうじゃないんだ」
「言ってよ…私にできることなら、何でも力になるから…」
―何でも力になる―
その言葉を聞いた瞬間、ギリギリの所で保っていた私の理性が音を立てて崩れていくのが分かった。
メイの腕を掴み部屋に引き入れ、重い扉が閉まると同時に施錠する。
やけに重々しく鍵の閉まる音が響いた。
「え…レイ…!?」
メイの瞳が驚きと戸惑いに見開かれた。
その眼差しは気付かない振りでやり過ごし、細い両の手首をまとめ上げて壁に押し付ける。
そして空いた片方の手でフリルの付いたシャツの胸元を力任せに引き裂いた。
「なっ……?!」
服地は悲鳴を上げながらあっさりと裂け、メイの白い肌が目の前に現れる。
薄暗い空間で、目に焼き付いたその白が行為を止められなくした。
露になった首筋に口唇を寄せ、まだ少女らしいとも言える胸を包んだ下着へと手を掛けると、
ようやく我に返ったメイは身を捩り抵抗を始めた。
「レイッ…一体何のマネよ!?じょ、冗談にも、程がっ…」
恐怖のためだろう。気丈に振舞ってはいるが、上擦ってうまく喋れることのできないメイ。
流石に何をされるか解っているらしい。
「…キミはさっき、力になると言ったな」
「言っ…たわっ。それとこれと、どういう関係が…」
「十分に、キミに出来ることだ。他の誰でもなく…。私の力になりたいのだろう?」
胸を隠していた下着を無理矢理に剥ぐと、外気に晒された滑らかなそこに舌を滑らせた。

相変わらず何か非難めいたことを喚いているメイの口唇を自らのそれで塞ぐ。
「んぅっ・・・ん、ンっ…!」
ずっと味わいたかったその感触を確かめるように唇を舐め、角度を変えながら、何度でも愉しむ。
きつく閉じようとする歯列を割り舌を進入させようとして…止めた。
負けん気の強い彼女に噛み切られてしまってはかなわない。
とりあえず今は先に進もうとメイのズボンのベルトに手を掛けると、メイは悲痛な叫びを上げた。
「イヤぁっ!!お願…やめてッ…!」
最後の砦を守ろうと必死なのだろう。暴れるメイの指が頬を掻いた。
ピリリとした痛みと、僅かな熱さが頬に残る。
体格的に押さえ込むことなどわけないが、それでも必死に抵抗されると思うように事が進まない。
強引に肩を捕らえると力任せに床に押し倒した。
「アっ…!!」
急なことに受け身の取れなかったメイはしたたかに背中を打ち付け、衝撃に息を詰まらせて大人しくなった。
その隙にベルトを外し、腰を浮かせてズボンを抜き取る。
「ッ……やぁ……」
羞恥に顔を赤く染めながら力なく伸ばされた手が、私の腕を掴もうとしている。
その手を冷たく払い退けると、あくまでも抵抗しようとするメイに苛立ちを感じた私は思わず頬を張ってしまった。
「ッッ…!!」
メイが口端に血を滲ませる。
とたんに静かになったが、私に殴られたことの衝撃が余程大きかったのだろう。その顔に表情は無い。
いい加減諦めればいいものを、しつこく逃げようとなどするからだ…

ようやく望んだ姿にする事ができ、ゆっくりとメイの裸体に視線を滑らせた。
白く細長い手足が力なく放り出され、無駄な肉一つ無い滑らかな肢体はまるで作り物のようにも見える。
メイは私からすれば、それくらい完璧に整った美しい容姿の持ち主だった。
今、こうして何度も妄想の中で抱いた身体が目の前にあると思うと、それだけで達してしまいそうな眩暈を覚えた。
例えようもない程の甘美な誘惑に、己の中の獣のような衝動が沸き上がる。
それは明らかに愛しさからくるものだったが、それをメイに理解できるはずもなく。

膝裏に手を回し脚の間に身体を滑り込ませると、脚を閉じられなくなったメイの秘部が無防備に晒された。
そこには薄い栗毛が申し訳程度に生えているだけで、明らかに男を知らないだろうピンク色のソコが見え隠れしている。
私は止めようのない欲望に素早くズボンの前を開け、すっかり勃ちあがっている自身を迷うことなくそれに捩じ込んだ。
「ひっっ!!あ、ああああぁッッ!!…………!」
しなやかに背をのけ反らせ、メイが悲鳴を上げた。
「ッ…!!」
やはり相当にきつい。
強烈なまでの内部の圧迫。だが狭い道を無理矢理に押し広げつつ、最奥を目指す。
そんな事をしたら経験の無いメイが傷つく事は解っていたが、今はそれすら構わずに腰を突き動かした。
「ッ…!ッ…!うっ…やぁぁ…!!」
メイは少しでも逃げようと無意識に腰を引こうとするが、私がしっかりと掴んでいるため無駄な動作に終わる。
苦痛に顔を歪めたメイの目縁をぼろぼろと涙が伝っていった。
気がつくとメイは力をなくし、突き上げられるままに身体を揺らしていた。
うつろな瞳は何も映してはいないようで、意識はあるがメイ自身は何処かに飛んでるらしい。
ただ、微かな嗚咽を開かれた口唇から絶えず漏らしている。
構わず動き続けていたら、やがてメイの身体から完全に力が抜け、意識を失ったようだ。
一旦自身を引き抜いて身体を放し、メイを抱え上げる。
そのまま寝室に運びベッドに降ろすと、シーツを引き裂いてその手首をパイプ部分に括り付けた。

微かな呼吸を繰り返す口唇に自分のものを重ねると、反応の無いそこからは血の味がした。
頬を張られた時に切ったものだろう、口腔の出血はまだ続いているらしい。
そんなメイを横目に見て無責任に憐れだと思いながら、再び下肢を穿ち突き上げる。
ひくリ、と喉を鳴らしメイが意識を取り戻した。

ボンヤリとした視線が私の姿を捉えると、うつろだった眼差しに再び恐怖の色が走る。
手首を縛られている事に気がつき、逃げ出そうと無駄にもがく。
「う……ぁっ……イヤ………!」
自由にならない手の代りに足をばたつかせていたが、それがかえって私への刺激になることに気がつかないらしい。
暴れるメイの両足を抱え上げ、肩へ乗せる。
奥の奥まで犯せるよう体重を掛け、真上から突き刺すような形で腰を進めると、不意にメイが掠れた嬌声を上げた。
「……メイ?」
うかがうように何度も責立てると、メイの表情に苦痛以外の色が浮かび始める。
長い睫毛を雫で濡らし頬を上気させ、切ない喘ぎを漏らし始めた。
「…あっ、あっ、あぁ、ンっ、はぁッ…!」
結合した秘部からはグチュグチュと淫らな音が漏れ、明らかに動きもスムーズになってきている。
どうやら感じているらしい。
あれ程嫌がっていたのに、今はイイ表情で内の私をヒクつきながら柔らかく、けれどキツク締め上げて来る。
メイのヨがるソコに突き立てながら、耳元に口を寄せた。
「メイ、感じているな…?」
「ッ…誰、がっ…!」
メイは赤い顔で激しく首を振り、私の言葉を否定する。
「フっ…これでもか?」
突き上げる度に揺さぶられるメイの両胸に手を這わせ、硬く勃ち上がった状態を思い知らせるよう中心を愛撫した。
「あぁっ!!さわらっ・・ないでっ…!」
メイは涙の滲んだ瞳で私を睨みつけるが、それは何の意味も成さなかった。
「今更だな、メイ。私が今キミの一番深い所に触れているのが解らないか?」
「うっ・・ッ…許さないっ・・私に・・こんな真似っ…!」
「脚を開いて言う台詞ではないな」
「あ、ああぁんッ…!!」
口では否定していても、敏感な部分を刺激してやる度にメイは甘い声を上げた。
苦痛と快楽が混在したその表情は想い描いていた通りのもので、何もかもを忘れる程に私を興奮させた。

「あぅ、あぁ、あっ、はぁ、もぅっ・・、ヤメ、テェェッ!」
やがて抱えていたメイの脚がビクッビクッと痙攣の体を見せた。
おそらく限界が近いのだろう。
ラストパートをかけるように、私はメイの最も感じる箇所を何度も何度も擦り上げ追い込んで行く。
「あああぁぁんッ・・レイっ・・レイぃっ…!!」
耐えられない、と言う様に首を振り、メイの両足が私の身体を強く挟み込む。
「クっ…・!」
メイの内部が信じがたい程の熱を持って内の自身を締め付け、その収縮する快感に思わず私も声を漏らした。
これ以上無いと言うほど奥まで突き入れられ、敏感な箇所を幾度と無く擦られるメイ。
ここまでだな、と当たりを付け、その深々と貫かれた身体から先端が抜ける位まで一旦引き抜く。
そしてこれまでに無い強さで、一気にその最奥へと突き立てた。
「ひっ…!!イ、ヤぁ・・・っあああああぁんっ!!!」
メイは身体を弓なりに反らし、悲鳴とも嬌声ともつかない叫びを張り上げ絶頂に達した。
「ッ・・メイッ…!!」
内の私を噛み千切らんとする程の狂おしい締めつけに、私は堪えていた欲望の全てを熱い内部に吐き出した。
ドク、ドク、とそれは激流のように注ぎ込まれ、メイの身体を内側から犯していく。
気が遠くなりそうな快感…・
「あっ…・はぁ……」
メイはぐったりとして、消え入りそうな呼吸を繰り返していた。
開かれた瞳は、何も無い中空を漂っている。
荒い息を付きながらズル…っとメイの中から自身を引き抜くと、収まりきれなかった中のモノが溢れ出した。
忘れかけていた、メイの手首を戒めているシーツを解き解放してやる。
私に抱かれて、メイは確かにイった。
その事実に満足感を得て、まだ茫然としているメイの顔を両手で包み、そっと口唇を重ねた。
歯列を割り、今度こそ口腔に入り込むとそのまま舌を絡め取る。
「ンっ…・」
メイは噛みつく代りに、甘い吐息を漏らした。

透き通るような銀の髪に手指を絡ませ、耳朶を甘噛みしてから耳元にそっと囁いてやる。
「メイ、愛してる。キミはもう私のものだ…そうだろう?」

メイが小さく頷いた。

心地よい眠りを妨げる光。
今日もまた、いつも通りの朝が訪れたのだろう。
今朝はやけに気分が良い…久しぶりにぐっすりと眠れた。
そうだ、確か昨夜はずいぶんと都合の良い夢を見た気がする。
あのメイを、この手で好きなように抱く夢…ずっと思っていた、妄想通りの出来事。
思春期の子供じゃあるまいし、そんな夢などで満足していれば世話はない。
しかし今はこの心地よさの中もう少しこのままでいたいと、腕の中のぬくもりに無意識に力を込めた。

「う…ん」

「……!!?」
不意に上がった自分以外の声に吃驚して目を開ける。
なんとはなしに抱いていたそれは、素肌にシーツ一枚を巻きつけて眠っている…メイだった。
メイはしばらくもぞもぞと身じろぎした後、私が見ているのに気が付いたのかいきなりハネ起きた
「………」
目を合わせ、気まずい沈黙。
「………あの。ひとつ、いいだろうか」
「な、何よ」
「……………・キミは、こんな所で何をしてるんだ?」
瞬間、メイの顔にピシっと亀裂が入ったかに見えた。
そして俯き唇をワナワナと震わせ…何やら怒っているらしい。
「あっ・・貴方って人はッ…!!まさか昨日、この私に何をしたか覚えてないなんて言うんじゃないでしょうねッ!!?」
「うおおッ!!な、何を怒っているんだメイ!?」
どこからか取り出したムチを勢いよくしばかせるメイ。
こちとら生肌にそんなものを当てられては敵わないので、ベッドの上を端から端という程に逃げ回る。
・・・もちろん、大事なところは隠しつつ。
「許さない…許さないっ御剣怜侍!!」
「メ、メ、メイ、落ち着くんだっ。そんな格好で暴れては」
シーツが、と言おうとしたその時、案の定巻きついていたそれがメイの身体からはらりと滑り落ちた。
「きゃあッ!!」
メイが自分の身を隠すようにしゃがみこむ。
私は突如として目の前に現れたメイの白い裸体と、その所々に施されたあるモノに目を奪われた。
首筋に、胸元に、あまつにさえ脚の付け根の辺りまでも、クッキリと残る鬱血の跡…いわゆる、キスマークと呼ばれるソレ。
只でさえ白い肌にその色は酷く目立ち、少女であるはずの身体を異様なまでに艶めかしく彩っている。
羞恥に顔を赤らめて震えるその姿は、まるで昨日見た夢をそのまま再現しているかのようで…。
と、いうか。

夢なわけが、ないではないかッ……!!

私は頭を抱え、自分の馬鹿さ加減に激しく項垂れた。
あまりの都合の良さに思わず現実ではないと思い込んでしまっていたが、
そもそもメイがここに居ること自体オカシイのだ。それも、あんなあられも無い格好で…。
何より昨日までとはうって変わって、酷くその…爽快とも言える下半身が、全てを物語っているではないか。
な、なんということだ…・。

「メイ…・あの、だな」
「何よ変態」
「うっ…・」
これは、かなり怒っている…。
私の記憶が確かならば、昨日は心配してわざわざやって来てくれたメイを有無を言わさず引きずり込み、
服を引きちぎった上に腕を拘束して無理矢理コトに及び…ってそれではまるで婦女暴行罪ではないか!!
いや、まるでも何も、そのままだな…。
一瞬検事という身でありながらという葛藤が心に沸いたが、寧ろ今はそんなことはどうでも良い。
メイを傷つけてしまったこの多大なる責任を、一体どう償えばいいというのだろう。
「その…昨日は、キミに乱暴なことをしてすまなかった。言い訳にしかならないが…どうかしていた。
許されることではないのは解っているんだが…それでも、謝りたい」
「…それはつまり、昨日のことは全て不本意だった。・・・そういう意味かしら?」
「ム…全て、と言われると…。正直なところ、キミにそういう願望がなかったと言ったら嘘になる。
軽蔑してくれても構わないが、ずっと私は、キミとその…こういう関係になるのを望んでいた」
「フンっ!馬鹿が馬鹿らしく馬鹿なことで悩んだあげく最も馬鹿馬鹿しい行為に及んだというワケね」
「うっ…ム。すまない」
返す言葉もない私に容赦なくメイの言葉が突き刺さる。
「まさか本当に謝って済むなんて思っていないでしょうね?いいわ、大人しくそこに座って目を閉じなさい!」
ピシィッと鋭いムチの音が響き渡る。
…きっと私は、このまま打ち殺されてしまうのだろう。
だが悪いのは自分なのだと、思い切って覚悟を決め言う通りに目を閉じた。
が、一向にムチが飛んでくる気配はない。
「…・・?」
不審に思い瞼を開けようとした瞬間、口唇に柔らかな感触が押し当てられた。
驚いて目を開けると、目の前にはゆっくりと私から口唇を離し、バツの悪そうな顔をしたメイがいた。
「メイ…?」
「…貴方、本当に馬鹿だわ。そんな素振りなんか全然見せなかったくせに…そうよ、私のことなんて子供扱いで」
「い、いや、それはだな。キミに私の気持ちを気付かれてはいけないと思い、ワザと…」
「そうよ。アナタがそんなだから、私だって必死に隠してきたのに!何よ今更こんな…っ」
………何?メイは今、何を必死に隠してきたと?
ええと、それは、つまり…。
「もしや、キミも私に好意を持ってくれていると…そう取ってもいいだろうのか」
「馬鹿っ、ニブすぎるわ全く…」
照れ隠しをするようにメイが勢いよく首に抱きつき、その反動で二人してベッドに倒れ込む形となった。
胸に飛び込んできたメイが愛しくて、ギュッと抱き締め首筋に顔をうずめていると、そのままクルリと体制を入れ替えた。
私の下になり顔を赤く染めているメイの、髪をそっと撫でてやる。

「…どうやら私たちは、ずいぶんと遠回りをしたらしい」
ふ、と微笑みかけると、メイが綺麗に微笑んだ。
最終更新:2006年12月13日 08:28