流れ完全無視ですみませんが、ノコメイ投下させてもらいます。

  • かなり長いです、たぶん13~14レスくらい使ってしまいます。
  • スマホからなんで他環境から改行とかが見辛かったらごめん
  • 特殊な性的描写、暴力的描写なし。
  • ゲーム内でいつ頃の時期の話かは想定してません
  • 完成してるんで途中で規制とか食らっても日を分けて最後まで投下します


とある夏の夜のこと。

狩魔冥はシャワーを浴び終えたあと、どのような格好で脱衣所を出るべきか迷っていた。

ここは、彼女が利用している高級ホテル最上階のスイートルーム。
検事局からほど近いため、冥は捜査や審理の最中によくここを使っている。
普段ならこの部屋に滞在するのは彼女ひとりなのだから当然そんなことで悩まないのだが、今日は少々、
いやかなり状況が異なる。

ベッドルームに、彼女の部下である糸鋸刑事がいるのだ。
先にシャワーを浴び終えた彼は今、おそらくガチガチに緊張しながら冥が出てくるのを待っている。

(私としたことが…調子に乗ってしまってこんな事態を招くなんて…)
冥は無意識に下唇を噛んだが、戸惑いと羞恥こそあれ、この状況が全くの不本意というわけでもないのだ。
(不本意ではない…それこそが不本意だわ)
冥の心中はいまだ混乱している。


……その数時間前のこと。

冥は、ある公園で行われている縁日の会場に糸鋸を引き連れて訪れていた。
事件の現場検証でもたまたま通りかかったのでもない。
その場所で縁日があることを当日の仕事中に糸鋸刑事から聞き、この国の祭りにほとんど参加したことが
ない冥は若干の好奇心を覚えたので、仕事帰りに寄ってみることにしたのだ。
そしてことのついでに、糸鋸に案内、兼、護衛役を務めさせることにしたのである。
「タダ働きとは言わないわ。お代は全部私が出すから、縁日のお店で好きなものを好きなだけ食べていいわよ」
「!!!!なんッスとおォォッ!!了解ッス!
不肖糸鋸圭介、喜んで検事にお供させて頂くッス!」
食い気に釣られて、糸鋸はあっさり冥の後に従った。

そして会場に到着し、糸鋸は目を輝かせ、冥よりはるかに浮かれていた。
「縁日は楽しいッスよ!自分、子どもの頃からお祭りが大好きッス!
焼きそば、タコ焼き、金魚すくいに射的にリンゴアメにカキ氷…魅惑の屋台のオールスターナイトッス!」
「私には全く馴染みのない単語ばかりね。金魚アメというのはどれ?」
「…検事、ホントに何も知らないんッスね…金魚すくいとリンゴアメ、ッス」

そんな会話を皮切りに、冥は好奇心の赴くまま出し物や屋台を指差しては糸鋸に問いかけ、
彼はそれを一つずつ説明してときには実際に遊んだり買ったりしてみせた。

射的で糸鋸が撃ち落とした駄菓子と正体不明の人形は冥のものになり、夕食代わりに焼きそばや
フランクフルトや焼きトウモロコシを食べ歩き、デザートにはカキ氷とリンゴアメを所望した。
「やったッスね検事!ヨーヨー、ひとつ釣れたじゃないッスか!!
金魚すくいは開始三秒で撃沈したのにぃいいたたたたた!ッスゥ!!」
「当たり前よ。狩魔は同じ過ちを二度も繰り返さない!」
「じゃあ、もっかい試しに行くッスか?金魚すくい。」
「…やめておくわ。狩魔は二度も同じ屋台で楽しまない」
「そうッスか…でも自分は、二度でも三度でも焼きそば食べたいッス!」
「ま、まだ食べる気なの…?」

会場に流れる独特な拍子の音楽、賑やかなざわめき、屋台から漂うさまざまな食べ物の匂いが混じった空気。
周りの全てが庶民的で騒々しくて、最初は冥には縁遠い世界に見えたのだが、彼女を案内するはずの糸鋸が
自身も存分に祭りを楽しんではしゃぐ様子につられ、冥もいつしかリラックスしてその雰囲気を楽しむように
なっていた。
お供に糸鋸を選んだのは正解だったようだ。

(たまには、こういうのも悪くないわ…でももしレイジあたりと来ていたら、博物館巡りみたいに
なっていたでしょうね)
そんなことを考えながら肩肘を張ることのない時間を過ごすうち、だんだんと冥の顔からはいつもの冷薄な
皮肉さが薄れていき、代わりに彼女にしては珍しい素直な笑みが浮かぶことが多くなっていた。
「ヒゲ!あの大きな袋が並んでいるお店はなにかしら?」
「あれはワタアメ屋ッスねー。あの袋には甘くてふわふわした、子ども達のユメがいっぱい詰まってるッス。
あ!トノサマンの袋もあるッスね!」
「…私には、トンマサンと読めるのだけど?」
「うう…絵は似てるけどパチモンだったッスか…ユメがないッス」
普段の冥なら「くだらない」の一言で切り捨てるようなことばかりのはずなのに、そんな会話で大いに笑った。
こんな言動は自分らしくないのは冥自身よく分かっていたが、お祭りの非日常的な空間がそうさせているのだ、と
自分に言い聞かせていた。

だが一つだけ、この場で冥が気にいらないことがあった。
「そこのでっかい彼氏!オクテそうな顔してなかなかやるねぇ、こんなベッピンの彼女連れちゃって!」
「………」
ワタアメ屋台の主人からかかったニヤけた声に、糸鋸が反射的に冥を情けない上目遣いで見やる。
だが彼女はやや無表情になってそれを無視するだけだった。

もう何度、屋台主や通りすがりの者たちからこの手のからかいを受けたか分からない。
カップル客など周りに掃いて捨てるほど居るのだが、二人にばかりやたらとそういう声がかかる。
糸鋸にしろ冥にしろかなり独特な風貌で、しかも並べば実に対照的なため、その絵に描いたような
《美女と野獣》っぷりが人混みの中でも際立って目立つのだろう。

最初の数回こそ頭に血が上って、からかう相手を鞭打とうとして糸鋸に止められた冥だが、
あまりに繰り返されるそれにいちいち反応するのが面倒になり、放置することに決めたのだ。
カップルに間違われていることを糸鋸がどう感じているのかは分からないが、彼も決してそれを話題にしようとはしない。
そして、それを話題にしないことで少しずつ、二人の間に妙な空気が漂い始めていた。

照れているのか困っているのか分からない顔で自分から目をそらす糸鋸を見て、冥の心に加虐的な悪戯心が湧き上がった。
もっと困った顔が見たい。困らせてやりたい。
日ごろから冥は鞭や給与減額で糸鋸に困った顔をさせてはいるが、最近の彼はそんなことにはすっかり慣れ、
立ち直りも早くなっている。
糸鋸が心底から困った顔を久々に見たくなったのだ。

気付けば祭りも佳境で、狭い通路は行き交う人の波でごった返していた。
「かなり混雑してきたわね…そろそろ帰りたいところだけど、抜けていくのが大変そうだわ」
「そうッスね、帰り始める人と今から行く人が混ざる時間帯ッスから。
でも検事が自分の真後ろを歩けば、人混みもラクに抜けられるッスよ」
糸鋸の体は頑丈で、ケタ外れに幅広い。
確かに彼が先に立って歩けば人波が割れ、細身な冥なら誰にもぶつからずに進めるだろう。
だが冥はそうはしなかった。
「それもひとつの方法だけど…こういう手段もあるわ。」
と、糸鋸の左腕に両手をからませて抱きつき、その野太い二の腕に頭を寄せてみたのだ。
「は!?な!?何をッ、検事ッ…!!??」

案の定、糸鋸は硬直し、その顔が一気に赤く染まり上がる。
予想通りの反応に冥は満足して続けた。
「さっきからずっと、恋人同士に間違われてばかり。
どうせならいっそ、それらしくしてみればいいんじゃないかしら」
意地の悪い目と笑みで見上げてやると、抱きついている糸鋸の左腕がビクリと跳ねた。
「は…いや、検事、自分はその、あの」
「感謝なさい、この私の恋人役も務められる光栄にね」
「あ……うぅ…ッス……」
まともに言葉も出ない糸鋸の困り果てた表情を見て大いに満足し、冥は自分の倍ほども体積がある大男を
引きずるようにして歩き始めた。

そしてそのまま人混みを抜けた頃。
目的は達したのだからもう解放してやろうかとも思ったが、冥は糸鋸の腕を離そうとしなかった。
糸鋸の、丸太のような太さの腕は見た目通りに逞しく、暖かい。
そして頭を寄せると漂ってくる、汗と大人の男の匂い。
意外なことにどれも決して不快ではなかった…いや、歩き回って疲れた体に、それらはとても心地よかったのだ。
やや潔癖性の気がある冥にとって、自分が糸鋸に触れることを心地良く感じるなどというのは全くの予想外で、
それを認めたくなかった彼女は無理やりに“暑苦しいし汗臭い”と思い込もうとした…が、それでもやはり
離れるのが惜しいという思いの方が勝ってしまっている。
冥自身がそれを自己分析するのに時間がかかったため、その間ずっと二人で黙って歩き続けるしかなかった。

そうやって無言のまま、タクシー乗り場まで辿り着いたとき。
「で、では自分はこれで失礼するッスから……」
苦しく絞り出すようにそう言う糸鋸に対し、調子に乗っていた冥はつい余計な一言を口にしてしまったのだ。
「あら、これで終わり?“恋人同士”ならこのまま一夜を共にするのが理想ではなくて?」

冥は糸鋸が限界を迎えて自分の手を振りほどいて逃げるだろうと予想していたのだが、そうはならなかった。
「………!!
………け、検事がそうお望みなら!!オトコ糸鋸圭介、どこまでもお供するッス!!」
「え………」
そこで『冗談よ』と突き放せば済んだはずなのに今度は冥が糸鋸の勢いに飲まれてしまい、そのまま一緒に
タクシーに乗り込み、気がついたら自分のホテルに帰り着いていたのである。

部屋に入ってからもまともに顔を合わせられず、とりあえず糸鋸をバスルームへ放り込み、
一人になって落ち着いた冥はようやく今の状況を把握して狼狽した。
(私はいったい何をしてるの!?このままでは、あのバカヒゲと…!)
しかも、どう思い返しても、冗談とはいえ誘ったのは自分の方なのだ。
あまりのことに冥はめまいを感じてテーブルに手をついた。

今ならまだ、風呂だけ貸してやって追い返すということもできる。
しかし冥は自分の内心に、そうしたくない、あの男を帰したくないという気持ちがあることにも気づいてしまった。

糸鋸と過ごした、無心になれた時間の高揚感。
そして、抱きついていた腕の心地よい感触。
冥の心の奥底には、またその感覚を求める欲求が確かにあった。
(私は…もう一度、触れてみたいと…思っている?あのバカヒゲに??)
認めたくはなかったが、それはまぎれもない事実だった。

そして糸鋸と入れ替わりで冥もシャワーを浴び、彼女は意を決した。
(…いいわ。今さら後には引けないもの)
シャワーを終えてまた何か着るのも妙な気がしたし、全裸では大胆すぎる。
逡巡した挙句、冥はその身と、それでもいまだに戸惑いを残す心をバスタオルで覆い隠してドアを開けた。

ベッドルームに入ると、腰にタオルを巻いただけの糸鋸がベッドに腰掛け、己の膝に両肘をついて俯いていた。
冥の気配を察した彼はゆっくり彼女の方に顔を向けたが、口元はいっそ不機嫌に見えるほど固く結ばれ、
眼差しは鋭かった。
薄暗がりに浮かぶ裸の巨体と予想外の厳しい表情に冥は一瞬だけ怖気づいたが、無言でベッドに近づく。

と、糸鋸が座ったまま素早く冥の腕を取り、強引に引き寄せて彼女の華奢な体を抱き締めた。
「きゃ……ッ!?」
その勢いで外れかけたバスタオルを慌てて手で押さえ、冥は息をすくめる。
冥の体重を受け止めたくらいでは、糸鋸の体は微動だに動かない。
まるで壁にぶつかったかのような頑健さだ。
予想よりずっと積極的な行動と、密着して改めて実感した糸鋸の体の巨大さ、力強さに冥は圧倒された。
糸鋸の胸板の幅は冥の肩幅よりも広く、抱え込まれると身動きもとれない。
この男と本気での体力勝負、腕力勝負になっては冥に勝ち目などあるはずがないのは元から分かっていたが、
それを実際に体感して思い知らされた己の非力さに冥は思わず唇を噛む。

それでも糸鋸は無言のままだった。
そういえば、タクシーの車中からこちら、冥は糸鋸とろくに会話をしていない。
ほんの少し前まで祭りで浮かれ、冥の言動に照れ固まっていた彼とはまるで別人のようである。
本当にこの男は、自分が知っている糸鋸圭介なのか。
お人好しの顔が崩れてひとたび「オス」として目覚めれば、力ずくで自分を蹂躙するのではないか。
そんな疑問が頭に渦巻いて冥は恐怖と不安を感じ、我知らず身を小さくして己を抱きしめた。

「……やっぱり、自分となんかじゃイヤッスよね?」
と、冥の頭の上から、聞き慣れた呑気な声がした。
「え…?」
顔を上げると、いつものように人懐こい苦笑を浮かべた糸鋸がそこにいた。

「検事、震えて怖がってるッス。ダメッスよ、勢いだけでこんなことしちゃ。検事らしくないッス」
そう言って糸鋸は体を離して冥を自分の片膝に座らせ、乱れた彼女のバスタオルを整えてくれた。
もっとも、その目は少し名残惜しそうに、冥の胸元や太腿を捉えていたのだが。

おそらくは糸鋸も一人になった間に落ち着きを取り戻し、勢い任せで冥が後悔するようなことにならないよう、
やや強引に振る舞ってみせて事態を収拾させようとした、というところだろう。
(……見抜かれて、試されていた?この、私が、この男に…!)
それが彼なりの気遣いだと分かってはいても、生来の負けず嫌いはどうしても屈辱と捉えてしまうのだ。
冥は怒りに任せて叫んだ。
「だ、誰がこの程度のことで怖がるものですか!いいからさっさと続けなさい!」
「いや、しかしッスね…」
「今さら怖気づいたのはどちらなの!?誘われて簡単についてきたクセにっ!」
「あ、あの時は自分も頭が混乱してて、何が何だか分からなかったんッス!ホント、申し訳なかったッス……」
「じゃあヒゲ!あなたは、私と…したくないというの!?」
「………」
まくしたてる冥は自分がなかなかに大胆な発言をしていることに気がついていない。
問われた糸鋸は眉を八の字にしてしばらく視線をさまよわせていたが、やがて溜息をついて冥の手を取り、
自らの股間に導いた。

「正直言えば、さっきちょっと検事に触っただけでこうなっちまって、おとなしくならないッス…」
タオル越しに感じた、異物の熱くて固い感触に冥は慌てて手を引いたが、照れ隠しの強気な言葉は止まらない。
「ほ、ほらみなさい…こ、こんなになってるクセに…さあ、続けて。私の命令がきけないの!?」
冥が姿勢を正して胸を張った瞬間、彼女のバスタオルがはだけて落ちた。

「あ……」
形の良い両乳が露わになり、弾むように揺れる…意地になっていた冥はどうにか恥ずかしさをこらえて
隠そうとはしなかったが、さすがの彼女も頬が赤らむのまでは止められなかった。
糸鋸はそんな冥の様子をまじまじと見つめてから意を決したように息をつき、その大きな手で遠慮がちに冥の肌に触れた。
冥の体にはシャワーの熱がまだ残っているのに、その手はそれよりもっと暖かい。

じかに触れられて冥の緊張がまたぶり返したが、そのとき糸鋸が口を開いた。
「はぁ…検事の肌、キレイッスねぇ…真っ白で、すやすやで…」
「す、すやすや?」
「いや、すいすい…………あ!すかすか!」
「……すべすべ、と言いたいの?」
「あぁっ!それッス!ホントにホントにすべすべで真っ白でキレイッス!」
糸鋸はそう言って嬉しげににこりと笑った。

こんなときでもこの男はマイペースで、やはりどこかがズレている。
間の抜けた会話に冥の心身は自然と脱力し、いま目の前にいる男が紛れもない糸鋸圭介で、そして自分が
これから彼に抱かれようとしているのをようやく認めて受け入れることができたのだった。

糸鋸がそっと冥の体を抱き上げ、ベッドに横たえる。
「途中でイヤになったら、ちゃんと言って欲しいッスからね?」
「当たり前よ。不快なことを必要以上に耐えて我慢する気はないわ」
真剣な顔でしつこく確認してくる糸鋸にさらに余裕を取り戻した冥だが、のちほど逆に自分が快楽に
耐えることになるのを彼女はまだ知らない。

糸鋸の手つきはたどたどしいのだがひたすら優しく、触れるか触れないかの繊細な力加減でゆっくり
冥の全身を撫でている。
温もりが鎖骨、胸の谷間、臍周りと降りていき、脇腹から乳房の横を通ってまた肩口あたりに戻ってくる。
そしてあまりの遠慮加減に冥がもどかしさを感じる頃合いに、愛撫に唇が加わって、ほんの少しだけ
肌を味わっては離れていく。

「大きな図体して…ずいぶん弱々しい触りかたね」
「自分、バカヂカラッスから。力入れすぎて検事にアザでもできたら大変ッス」
「いい心がけね…褒めてあげる」
覆いかぶさる糸鋸の巨体はそれだけで圧迫感があったが、重みは全く感じない。
己の体重がいっさい冥にかからないよう、姿勢にも気を遣っているのだろう。
とことん冥を苦しませまい、不快な思いをさせまいとしている糸鋸から感じる安心感と弱い愛撫が、
経験薄いが誇り高い冥には心地よい。

やはり自分は、この男に触れるのが嫌ではない…というよりむしろ、分厚く大きな掌の乾いた感触に
暖かい頼もしさを感じていること、そしてそれに自分が身を委ねたいと望んでいることを、冥は改めて自覚した。

そうして冥の体がすっかり弛緩した頃合いに、糸鋸の掌が冥の乳房をそっと包み、指がその先端に僅かに触れた。
「………っ」
ほんの微細な刺激ではあったが、冥の呼吸が少し止まる。
さらに首筋に唇を這わされ、男の息遣いを耳元に感じて冥の体が小さく震えた。
「ちょっ…くすぐったいわ、よっ…」
「え?も少し強くした方がいいッスか?」
そう言って糸鋸は冥の乳首をつまみ上げ、挟んで軽く転がし始めた。
「バカ、そっちじゃな、い…耳が……んっ!」
すると今度は耳たぶを甘噛みされ、冥は思わず糸鋸の角張った肩口にしがみつく。

耳たぶを吸われて水気のある音が響くたび、乳首をつまみ上げられて擦られるたび、冥の体が小さく跳ねた。
胸と耳から受ける刺激が冥の体内で繋がり、甘い痺れとなってじわじわと全身に広がっていく。
「検事、どっちが気持ちいいんッスか?耳と、おっぱいと…」
だが突然そんなことを耳元で囁かれ、快楽に身を任せかけていた冥は思わず目を見開いた。
「な、にをっ…い、いやらしいこと言わないで!」
「でも、イヤラシイことしてるんッスから。検事には気持ち良くなってもらわないと」
「……っ!」

糸鋸は決して冥をからかっているわけではなく、彼なりに真面目な発言なのだが、それが冥にとっては
余計に気恥ずかしい。
何か言えば言うほど自滅する気がして冥は口を閉じようとしたが、呼吸するたび漏れる声までは抑えきれない。
「……っく、う………あっ、やっ…」
「ほら、検事の声、どんどんいやらしくなってるッス。検事はどっちも敏感なんッスね…」
「バ、バカ、ちが…あ、うっ…ん……あ……」
冥が声を漏らすたび、糸鋸の呼吸も熱く荒くなっていき、気づけば冥の両脚は幅広い糸鋸の腰で割られて
開かされていた。
思わず脚を閉じようとした冥だが、その動きは糸鋸の体に腿を擦りつけることにしかならず、
少しざらついた男の肌の感触がますます冥の恥辱を煽る。
肌だけではなく、しがみついている肩から背中にかけて盛り上がるゴツゴツとした筋肉も、頬に擦れる無精髭も、
いま冥が触れている糸鋸の全てが“男”を実感させ、彼女の“女”を否が応でも高ぶらせていく。

そこで糸鋸の頭がふいと下がり、空いていたもう片方の乳首を唇で捉えた。
「は、あうっ…あっ、あ、あ…っ!」
さらなる刺激を求めるかのように鋭く固く尖っていく冥のそこを、糸鋸の指と舌が転がし、包み、
ときには強めに挟み込む。
不器用ながらも丁寧な愛撫で冥の乳首は赤に近いほど濃い桃色に染まり、色素の薄い肌によく映えた。
大きな手で乳房を揉みしだかれながら左右に異なる種類の快感を受け、もう冥には乱れる声を
抑え切ることなどできなくなっていた。

そしてゆっくりと、糸鋸の手が冥の下腹部に伸びていく。
「あ……っ」
両脚が開かされていることで、その中心は無防備にさらされている。
胸に感じている快楽の波はすでに両脚の間にも届いてそこを疼かせており、冥はそこに訪れるであろう刺激を
予感して身構えた。

が、伸びた手は冥の内腿を撫で回すばかりで、なかなか中心に触れようとしない。
「ふぅ、んっ…ん……んんっ…くふぅん……」
さんざん焦らされた冥の声が、切なく急かすような響きに変わり、彼女がうっすらと目を開いて
糸鋸の様子を伺おうとしたとき、ようやく男の手が冥の女の部分に触れた。
「!…ひぅ、ん…!」
不意を突かれた冥の高い声と同時に、ちゅくっ…と響いた粘着質の音。
すっかり溶けかけているその部分の感触に、糸鋸が小さく「おぉっ…」と呟き、冥はたまらず顔を背けた。

糸鋸の指が粘液で滑るたびに発せられる淫らな音が、二人の欲情を煽る。
「検事…すごいことになってるッスよ」
くちゅり。
「そ、んなこと、なぁい…っ……んん…ん」
つぷっ。
「証拠がいるッスか?じゃあ、こうすれば…分かるッス」
入口を探り当てた糸鋸の指が、するりと冥の内側へ入っていく。
「あ、あ、っ…や、だめ…!」
予想よりも太い指が割り入ってくる感触に、思わず冥は体をよじって腰を逃がそうとしたが、
糸鋸の指はそれを追うようにさらに深いところへと進み、敏感な部分を探して蠢いた。

「いやっ、そ、んなに、動かさないでっ…!」
「あ…い、痛いッスか?」
紅潮した顔を振る冥の様子に糸鋸は少し慌て、差し入れていた指を入口付近まで戻した。
そうなると冥の中に再びもどかしさが蘇り、乱れた呼吸で途切れながらも誤解を解こうとする。
「い、痛くはないのよ…そうじゃなくて、そ、そんな太い指でそんなこと、されたら…っ」
「…されたら、どうなっちゃうッスか?」
相手に苦痛を与えているわけではないと知って糸鋸は安堵したようで、もう一度ゆっくりと指を冥の中に戻す。
「ど、どうって、それは…」

恥ずかしげに言いよどむ冥の表情も声も糸鋸が初めて見聞きするものだった…切なげに寄せられた眉と、潤んだ瞳。
その下の頬は、乱れた息とか細い声を漏らす半開きの唇に負けないほどに赤く染まっている。
法廷で被告と弁護士を追い詰めている気丈な彼女とはあまりにも違うその痴態が、糸鋸の中の悪戯心と
性欲をくすぐるのだが、冥にはその自覚はなかった。
「じゃあ検事…もっと太いの、入れていいッスか?」
「え……?」
訝しがる冥の手は糸鋸の股間に導かれた。
「もう、自分もこんなになっちゃってるッスから」
握らされた糸鋸のそこは、先ほど僅かに触れさせられたときとは比べものにならないほどにすっかり硬く、
熱く膨張していた。

「いっ、いや…っ」
その感触と大きさに慌て、冥はまた恥ずかしげに首を振りながら手を引こうとしたが、
今度は糸鋸にがっちりと手首を抑えられ、そのまま湿りを帯びた先端を掌に擦りつけられる。
「あ、やっ、バカぁ…!」
「…そんなかわいい声の“バカ”は初めてッス…検事、お祭りではしゃいでたときもかわいかったッスけど、
こういうときはもっとかわいいんッスね」
「な……!!」
糸鋸から“かわいい”と言われる日が来るなどこれまで思いもしていなかった冥は怒りと照れが混じった顔になったが、
彼女が強がりの言葉を思いつく前に、糸鋸が自らのモノを冥の入口に押し当てた。

「あ…だ、め、そんなの、入らな…っ!」
「大丈夫ッス、ゆっくり、すれば…検事のここ、こんなにヌルヌルッスから…」
先ほどの指とは比べものにならない太さと熱さのモノがじわじわと冥の秘部を押し広げていく。
「ん……っ、くぅ…」
自分に入ってくるモノが過去に経験したどれよりも大きいことを確信し、冥の心中は快感に対する期待と不安の間で揺れ動いた。
身を硬くしてほとんど無意識に相手の背中に手を回した冥の髪を糸鋸の手が撫で、顔と顔が近づいて
どちらからともなく唇が触れ合う。

「ふっ、んん…」
そういえばこんなことをしているのに、まだキスはしていなかった…そんなことに気がついた冥の意識が
秘部の感覚からやや離れた。
そして差し入れられた舌の優しい動きに応えるうちに少しずつ体の力が抜け、ゆっくりと進んでくる糸鋸を
心身ともに抵抗なく受け入れる。
最奥まで達したところで糸鋸が僅かに唇を離し、荒げた呼吸とともに囁いた。
「くぁ…検事の、中…すごいッス。熱くて、柔らかくて、キツくて…自分、あまり長く保ちそうにないッス」
「い、いちいちそんなこと、言わなくていいわよ…っ、あ、やん…!」

糸鋸が軽く腰を使っただけで冥は体をのけぞらせた。
冥の膣内は糸鋸のそれによって目一杯まで押し広げられており、僅かな動きでも指先まで痺れるような快感を彼女にもたらす。
そして溶け始めた冥の中が絡みついてくる感触に誘われ、糸鋸の動きが徐々に激しくなる。
「あ…んっ、んんっ…いやっ、こんな…!あ、はぁっ…!」
脚を抱え上げられ、さらに深いところを突き動かされて、冥はあまりの快感に戸惑いながら身をよじって
切ない声をあげるしかなかった。

充分過ぎるほどに潤った冥の中から奏でられる愛液の鈍い音、肌と肌が激しく合わさって起きる打楽器のような音、
それらに被さる冥の甘い鳴き声と、時おり糸鋸が漏らす野性味を帯びたうなり声。
密着した互いの粘膜がとろけ合い、その快感を最大限に伝え合う…初めて味わうその境地に冥も糸鋸も溺れていた。

「あ、あ、あっ、あ、あぅっ、ん、くぅっ…!」
冥の嬌声が小刻みになり、糸鋸にしがみつきながら無意識に腰を浮かせている様子に絶頂の気配を感じ、糸鋸が問う。
「検、事…イッちゃうッス、か?」
が、すでに朦朧となりかけている冥が素直に返した答えは彼の予想とは少々違っていた。

「……っ…わ、分からな、い…っ…」
「え?」
「わ、私…そう、なったことが…ない、から…っ」
弱々しい声でそう告げられた糸鋸は動きを止め、冥をまじまじと見た。
「ないって…えと、検事…イッたことがないんッスか?」
「そ、そうよっ…な、なによ、別におかしなことじゃ、ないでしょっ…」
「………」
言いながら両腕を顔の前で交差させて紅潮した頬を隠す冥を少し見つめ、突然、糸鋸は再び激しく腰を使い始めた。

「やっ!や、あ、あっ、あぁぁ…っ!ま、待って…やめ…!」
思わず糸鋸の肩口を押し返す冥の手はあまりに非力で、結局は汗ばんだ男の体にしがみついて快楽に耐えるしかなかった。
「ダメッス、そんなこと言われたら、もう止められないッス…検事が、初めてイクところ…自分に、見せてほしいッス」
「そ、んな、あっ、あ、や、あぁ…っ!」

快楽の中心を突き上げられるがままで逃げることもできず、冥は秘部から全身に広がる甘い痺れに
己の理性が完全に溶かされていくのを自覚した。
理性を失っているのは糸鋸も同様のようで、その手は思うさま冥の肌に滑らされ、乳房をわしづかみにして
その形を淫らに変え、その口は冥の唇を幾度も貪り吸っている。
「あぁん、やぁ…あんっ、んん…っ!」
この男にならもう、何もかも見られて奪われてもかまわない…その思いを最後に、冥は最深部の熱い感覚にのみ集中した。
「く、うッ…検事、検事、ッ…」
「もう…や、あ、あ………やあぁぁ………っ!!」

頭の中に弾けた白い閃光とともに、冥はひときわ大きな嬌声をあげて長々と体を硬直させた。

はあっ、はあっ…と響く荒い呼吸…それが自分のものだと気付き、冥はうっすらと意識を取り戻した。
これが果てるということなのか…と余韻を噛みしめようとした冥だが、彼女の体の上にぱたぱたと何かが落ちる音がそれを遮った。
「え…?な、なによ、ちょっと、これっ…!」
見れば、冥の下腹部から臍、それどころか胸元を通り越して喉近くにまで、白くどろどろとした液体が
糸を引くようにかかっている。
それが何なのかは冥にもすぐ理解できたが、今までこんなことはされたことがなく、その光景とそれらの量と
独特の匂いが彼女を混乱させた。
そして、冥と同じように息を切らせている糸鋸が呟く。
「あ、危なかった、ッス…さすがに、中でってわけには、いかないッスから」
冥には気付く余裕がなかったが、彼女の絶頂による締め付けで糸鋸も果てていたのだった。

「いやっ、ちょっとヒゲ!は、早く拭いて!」
冥が身動きすると、ところどころ固まりのようになっているそれが、なめらかな肌の上を転がり落ちる。
「あぁ、検事!起き上がったらシーツにこぼれるッス!」
「………っ!ティッシュ!早くしてっっ!」


……その数分後。

冥は糸鋸と共に、この日二度目のシャワーを浴びていた。
体に粘り付いていた白い液を洗い落とし、熱いシャワーに身を委ねてようやく人ごこちついた冥は、
目の前にある糸鋸の広い胸板をぼんやりと見ながら考えた…
(どうして私、このバカヒゲとこんなことしてるのかしら…
ほんの数時間前までは普段通りただ一緒に仕事をしていただけなのに、まさかこんなことになるなんて…)
いまだに冥の思考力は完全には戻っていない。
と、頭上から全く同じ疑問が投げかけられた。
「…検事…いったい何がどうなって、自分と検事が一緒にフロ使うようなことになったんッスかねぇ…」
見上げると、糸鋸もぼんやりとした表情だ。

自分も同じことを考えていた、とは気恥ずかしくて言えず、冥はややむくれたような顔を作った。
「他人ごとみたいに言わないでよ」
「いやぁ、半日前にはまさかこんなことになるとは思ってもみなかったもんッスから」
その述懐も冥と全く同じだった。
糸鋸と自分に同じ思考回路が存在したことに冥は驚いたが、腹立たしくはない。
何もかもが正反対のような二人だが、この手のことに関してはむしろ似た者同士なのかもしれない、と思うと
おかしみすら覚え、冥は少し微笑んだ。

「それでその…検事、後悔してないッスか??」
そう問うて心配げに冥の顔を覗き込む糸鋸の口調の真剣さに、彼女も彼女なりの表現で本音を言わざるを得なくなる。
「してたら、今ごろはもうあなたを裸のまま部屋から追い出してるわ。余計な心配しないで」
「じゃ、してるときに痛いとか苦しいとかも」
「…なかったわ。あったらその時にハッキリ言ってるわよ」
糸鋸は明らかにホッとした顔になる…彼は最初から最後まで、ひたすら冥を気遣い続けている。
その真摯な優しさに素直さで応えることを拒む理由がなくなり、冥はもう少しだけ本音を告げてみることにした。
「…むしろ、良かったわよ」
「ほぇっ??」
妙な声で聞き返されてためらったが、冥は糸鋸の胸板に軽く額を付け、顔を隠して続けた。

「だから、その……も、もう一度くらいはしてもいいかしら、と思う程度には…良かった、って言ってるの!」
「え!!」

糸鋸は冥の言葉を理解するのに若干の時間をかけたが、すぐに顔を明るくして冥を力強く抱きしめた。
「じゃ、自分は二度でも三度でも、狩魔検事としたいッス!」
その無邪気な反応に冥の頬が緩みかけたが、糸鋸の言葉にふと引っかかりを覚えて彼女は記憶を辿った。
「……ちょっと待って。それ、お祭りのときにも聞いたわ…焼きそば食べたい、だったかしら?」
「はっ??」
「私とするのと焼きそばと、あなたの中では同列なのかしら」
「へ?……いやいやいやいや!決して自分、そんなつもりじゃ…!」
いつものように慌てふためく糸鋸を見て冥もいつもの強気を取り戻し、その切れ長の目から発せられる
苛烈な視線で糸鋸の巨体を切り裂いた。
「いいわ…私をそういう扱いにしたこと、これからゆっくり後悔させてあげる…!」
「ひッ、検事、なにをッ…!?」
条件反射のように糸鋸は後ずさったが冥は相手の太い首に腕を回してそれを許さず、顔を引き寄せて囁いた。
「…もう一度、抱いて。それで二度三度どころか、二十回でも三十回でもしたいって…私に思わせてごらんなさい」
「は……」
糸鋸は口を開けたまま、悪戯な目でにこりと微笑んだ冥の顔をじっと見つめていたが、やがてそのまま
吸い込まれるように彼女に深く口付けた。

二人にとってのお祭りの夜は、まだまだ終わりを迎えそうになかった…。

ーー完ーー
最終更新:2014年04月17日 20:37