作者様より転載許可をいただきましたので、アップローダーに上がったテキストを転載します。


84 亡霊×心音で撮影プレイ。鬼畜陵辱ものですご注意を  2014/10/29(水) 23:49:49.62 ID:V+amDZSO
 亡霊が心音ちゃんを拉致監禁して……な非ジャスティスな状況下で撮影プレイな亡霊×心音。
 鬼畜陵辱ものなのでご注意を。

 エロは亡ココのみですがユガココ要素あります。
 あと未来捏造設定も出てきます。


 上記のように人を選ぶ内容なので、アップローダーを使って投下します。


 ダウンロードパスは、 gyktn  です。


保管庫管理人様へ。
お手数おかけして申し訳ありませんが、本文の方の保管もよろしくお願いいたします。



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 <<WARMING!>>

 亡霊が心音ちゃんを拉致監禁して……な非ジャスティスな状況下で撮影プレイな亡霊×心音。
 鬼畜陵辱ものなのでご注意を。

 エロは亡ココのみですがユガココ要素あります。
 あと未来捏造設定も出てきます。


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 どうやら無意識のうちにため息が零れていたらしい。
「大丈夫? ココちゃん」
 隣を歩くしのぶから不安げに話しかけられ、心音ははっと我に返った。
「あ、うん、ごめんね。ちょっとぼーっとしちゃってた」
 心音は顔に笑みを浮かべて返すが、親友の顔は暗いまま。
「やっぱり、すごく難航しているの? 亡霊の弁護の件」
「……うん。正直にいうと、そう」
 躊躇いがちに切り出された質問に、心音は肩を落として認めた。
「雑談とかにはある程度応じてくれるようになったけれど、今までの活動や事件についてになるとピ
タっと沈黙しちゃって……」
 どんなに朗らかな雰囲気で喋っていても、少しでも確信に触れようとした途端、すぱっと静止して
しまう。……尤も、それはユガミの尋問に対しても同じようだが。
「たとえ正直に語ったとしても、極刑はまず免れない。司法取引による無期懲役が関の山」
 でも。それでも。
「今まで行ってきた事にちゃんと向き合って欲しい。でなきゃ……」
 心音が言葉を続けようとした矢先、前方から男性が息せき切って駆けてきた。
「ナルホドさん?」
 心音としのぶが目を丸くして足を止めた前へ、男性――ナルホドがぜいぜい息をつきながら叫ぶ。
「大変だ、ココネちゃん。亡霊が脱獄した!」
 放たれた言葉は、心音としのぶの顔をさっと強ばらせた。
「ココネちゃん、一緒に来てくれないか?」
「あっ、はい勿論です!」
 言うや踵を返すナルホドに、心音が電流に打たれたかのように身動ぎ、慌てて頷く。
「ごめんしのぶ! この埋め合わせはまた今度に……」
「うん……! ココちゃんも気をつけて……!」
 ナルホドと一緒に走り去っていく心音へしのぶが手を振って見送る。その最中、動揺でしのぶの顔
が俯いた途端、帽子に付けていたひまわりの花がボトリ落ちた。
 ひまわりの鮮やかな黄色と茶色がしのぶの視界を遮る。
 驚き、思わず小さく悲鳴をあげて竦み上がっていたら、後ろから大丈夫? と声をかけられた。
「あ、帽子飾りのひまわりがいきなり落ちちゃって……」
 気恥ずかしそうに笑いながら振り返ったしのぶの顔が、大きく強張る。
「――どうしたんだい?」
 見る間に顔が青ざめていくしのぶに、声をかけてきた人間――成歩堂が、きょとんと首を傾げた。
「えっ……い、今……ココちゃんと一緒に向こうへ行ったんじゃないんですか……亡霊が脱獄したか
らって……」
「だ、脱獄!? 一体どういう事なんだい!?」
 両手を胸の前で握り締めて震えるしのぶに、成歩堂が目を剥いて仰け反る。
(ま、まさか……さっきココちゃんを連れて行ったナルホドさんって……)
 しのぶの顔が更に強ばり、全身がカタカタ震え始める。足がふらつき、道路に落ちたひまわりの花
をぐしゃり踏み潰してしまう。
 鮮やかな黄色い花びらが一枚、千切れ飛んで、雑踏の中へ呑み込まれていった。

 ※※※

(……あれ?)
 ふわっと浮き上がるような感覚と共に、心音の瞼がうっすら開く。
(わたし、ナルホドさんに亡霊が脱獄したって聞かされて……)
 誘導されるまま一緒に走って、それから……。
「――!」
 心音がはっと息を呑んで目を開く。と、知らない部屋の中、安っぽいパイプベッドの上へ裸で寝転
がされていた。
 さっきまで着ていた衣服も、胸元のモニタも、ない。右耳のイヤリングや頭のリボンはそのままの
ようだがはっきり視認できない――両手に手錠をかけられベッドのヘッドフレームへ繋がれている為
に。
(…………ま、まさか……)
 自分の置かれた状況に頬が赤らむ一方、頭の中は冷たくなっていく。キュっと引き絞られた心臓が
苦しげに鼓動を打ち鳴らしていた所へ、部屋のドアが開いた。
「どうやらお目覚めのようだね」
 ビクンと身を竦ませた心音へ、ドアを開けた人間――亡霊が入ってくる。拘置所で面会していた頃
の囚人服ではなく、番刑事に成り済ましていた頃の白スーツに赤いシャツを纏っていた。
「そんな……それじゃああのナルホドさんは……」
「久しぶりに化けてみたんだ。上手くいって良かったよ」
 少しでも身体を隠そうと身を捩る心音へ、亡霊は、額部分が裂けたバンのマスクで、にこりと微笑
んできた。
「――どうして!? どうして脱獄なんか!」
 心音が悲鳴のような声で叫ぶ。勢いで両手が動き、手錠の鎖がジャラジャラ揺れる。
「このままあの中にいてもジブンに未来はない。法の下に死刑か、組織が内部へ殺し屋を送り込んで
きて殺される、か」
 冷たい目で心音を見下ろしながら、亡霊が、親指で己の首をかっきるジェスチャーをした。
「異議あり! まだ決まった訳じゃない!」
「いいや。ジブンがこうして脱獄できた事がその証拠。内から外へ出られるならば、外から内へ潜り
込む事だって可能だろう」
 吐き捨てるように返すと、亡霊はパイプベッドの下からスーツケースを引っ張り出した。
 蓋を開け、中からビデオカメラと三脚を取り出すと、パイプベッドの横、心音の顔の辺りに設置す
る。
 レンズに歪んで映る、不安で震える心音のバストアップ。
「……ウム。これでいいだろう」
 三脚の位置を何度か調整した後、亡霊はビデオカメラの録画スイッチを入れた。
「……何を……するつもりなの……?」
「安心したまえ。殺したり、不用意に傷つけたりするつもりはない。これから五日間、ジブンが”亡
霊でなくなる為の”用件に付き合って欲しいだけだ。終わればちゃんと解放する。あの法廷で、ジブ
ンを狙撃してきた組織の情報のお土産付きで」
 掠れる声の心音を見つめて、亡霊が穏やかな声で告げる。
(”亡霊でなくなる為の”用件……?)
 言葉の意味を計りかねて、心音がオウム返しに問い返そうとするが。
「――ただし。もし途中でキミが自殺を計ったりジブンへ攻撃した時は、キミの親しい人達を殺す」
 亡霊が先に剣呑な雰囲気を声と瞳に宿して宣言してきた。
 心音が跳ねるように震え、パイプベッドと手錠から軋むような音がたつ。
「解ったなら足を開いて待っていたまえ」
 そう言って、亡霊はスーツケースの方へ向き合う。中に入っていたクスコを持ちローションをたっ
ぷりまぶすと、心音の様子をちらと窺う。
 パイプベッドの上に裸で寝転がされた心音は、唇をぎゅっと噛んだまま、足をぴったり閉じている。
「……イヤか。ならばキミと一緒にいたあの娘の生首でも持ち帰ってこようか」
「! 止めて!!」
 亡霊がすっと立ち上がった途端、心音が悲鳴をあげて呼び止めてきた。
「あ、足……開きます……言う事ききますから……だから……」
 涙目で震えながら、心音がゆっくりと開脚していく。すらり引き締まった両足の奥、うっすら生え
た茂みに覆われるオンナの部分をさらけ出す。
 亡霊が見る前で、赤コスモスのような淫花と粒肉がピクピク震えた。
「――素直で嬉しいよ」
 亡霊がニヤァと笑うと、スーツケースからビデオカメラをもう一台取り出す。
 右手にはローションをたっぷりくつけたクスコ、左手には録画スイッチ入れたビデオカメラを構え
ると、亡霊は心音の股の前へ陣取った。
「ヒヨコの嘴みたいにちっちゃくて、綺麗な形をしているなぁ」
 カメラ撮影しながら亡霊が素直に述べれば、心音が顔を真っ赤に染めて悶えてくる。今すぐ閉じて
隠したい葛藤からか膝が揺れ、亡霊の身体をぽかぽか叩いてくる。
 反動で淫花と粒肉もユラユラ揺れて、くらげがたゆたうような踊りを見せてきた。
「……さて、中の方はどうかな?」
 淫花と粒肉の踊りをひとしきり堪能した後、亡霊は右手に持っていたクスコを宛がう。
 赤コスモス色の秘所へ銀色のクスコがぴたり寄り添う。
「ひゃいっ……!」
 冷たい感触に心音が呻き、彼女の中心もびくりと身を竦ませた所へ、亡霊がクスコを突っ込んだ。
 ずぷっ、と、ローションから微かな音が立つ。
「やっ……あ、あっあ……やぁああ……!」
「息を吐いて身体から力を抜くんだ」
 手錠をガチャガチャ揺らして悶える心音へ、亡霊は淡々と命じながらクスコを潜らせる。
 ずぶずぶと、心音の胎内へ入り込んでいく銀のクスコ。粒肉が仰け反るように尖り、左右へ押し広
げられた淫花がローションにまみれながら痙攣する。それらを、左手のビデオカメラが間近で撮る。
「さぁ、息を吸って……吐いて……また吸って……そう吐いて……」
 亡霊の声に合わせ、顔を真っ赤にした心音が唇をワナワナ震わせながら深呼吸を繰り返す。
 クスコの取っ手にかかる抵抗が和らぎ、粒肉や淫花の動きから震えが少なくなってくる。
(――頃合いだな)
 亡霊はニヤリ笑うと、根元まで突っ込んだクスコを開いた。
 くぱぁ……と、心音のナカが開く。クスコに圧される格好で牝肉孔が露わになる。
 彼女の胎内から熱気が漏れ出てきたかと思うと、最奥にある子宮口がキュっと身を竦めた。
「っ……あ、あぁっ……やぁっ……!!」
 手錠をカチャカチャ鳴らして心音が仰け反る。あそこへ突き刺さる視線二つ――亡霊のとビデオカ
メラ――に、顔と頭は否応なく沸騰し、全身はガクガク揺れる。
「……膜はなし、貫通済みか。お相手はユガミ君かな?」
 ビデオカメラと一緒に心音のナカをしげしげと覗いていた亡霊がぽつり口ずさめば、心音が甲高い
声で悲鳴をあげた。
 亡霊は、クスコをぐにぐに廻したり、前後させたり、開閉させたりしながら、心音の牝肉孔を隅々
まで観察して撮影していく。艶麗な光沢と弾力に満ち溢れた楽園は、常時こちらを誘うように蠢きた
ゆたう。
 クスコを通して、むあっとした熱気が亡霊の鼻先へ何度もかかる。すぐ側で構えているビデオカメ
ラのレンズも微かに曇らせる。
「フム……ここでこうなっている、と……」
 早鐘を打つ鼓動を抱えながら、亡霊はクスコで牝肉孔を丹念に押し広げて観察していく。
「……となると、Gスポットはこのあたり、か」
 めぼしい場所へクスコの先端を宛がって押し広げれば、心音が甲高い声で囀って身悶える。
 亡霊やビデオカメラが見ている前で、牝肉孔の奥の方でも小さな泉が湧き出てきた。
「やっ……やだぁ……もう止めて……お願い……」
 思わずほくそ笑んだ亡霊へ、心音が涙をぼろぼろ零しながら懇願してくる。口から零れる吐息は熱
く、唇の端には涎が微かについている。
「……ああ、そうだな」
 亡霊は身体を起こすと、クスコを根元まで心音へ突っ込んだ状態のまま右手を離す。
 パチン、とクスコの取っ手が閉じ、心音の入口が少しだけ狭まる。
「そのまま押し出さないで待っているように。……まぁ、押し出してもそれはそれでいいか」
 亡霊はニヤっと笑って告げると、左手に持っていたビデオカメラを壁へ――ベッド上を足元から俯
瞰できる位置へ――掛けた。
 スーツケースからローションの瓶を取り出すと、心音の腰を持ち上げ、身体を深く折り曲げさせる。
「ひゃいっ……!」
 クスコを突っ込んだ秘部の向こう側に出てきた心音の顔が、驚いて怯える様を堪能しつつ、亡霊は
クスコを全開にし、そこへローションを注ぎ込んだ。
 どぽどぽどぽっ、ローションが心音の牝肉孔へ流入していく。
「ひゃいいいいっ!!!」
 大量に注ぎ込まれたローションの冷たさに心音が顔を歪ませて叫ぶ。全身がビクビク震え、爪先が
助けを求めるように宙を掻く。
 一瓶まるごとローションを注ぎ込むと、亡霊はクスコを取り外し、彼女の腰をベッドへ下ろした。
 ドプッ――と、ローションが吐き出される。粒肉と淫花は勿論、彼女のお尻や太腿の付け根までテ
カテカにコーティングされる。
「や……あ、あぁ、あ……」
 歯の根をガチガチ鳴らして震える心音。粒肉と淫花もピクピク痙攣するそこへ、亡霊は牡茎をズボ
ンから取り出して宛がう。
 ぬちゅりと当たる固い感触に心音が息を呑んだと同時に、亡霊が腰を叩き込んだ。
 ローションの海を泳ぐ格好で、亡霊の牡茎が心音の牝肉孔を一気に昇る。
「ひゃいぃっ!」
 心音が目を剥いて仰け反り、両の乳房がぶるんと上下運動する。その様子を、二台のビデオカメラ
が別々の角度から写し撮る。
 亡霊が恍惚とした様子で息を吐くと、両手で彼女の太腿を抱え上げ、まだ入り切れてなかった牡茎
の根元部分を捻り入れた。
 ローションが二人の隙間から噴水のように流れ出る。
 心音が甲高い悲鳴をあげて飛び跳ね、手錠からガチャリと済んだ音をたつ。
「あ……あ、ああっ……」
 胎内へ侵入してきた亡霊の感触に心音が愕然とした後、絶望に顔を歪めて涙をボロボロ流し始めた。
「イヤぁっ、イヤぁぁああ……!!!」
 嘆く心音の声が部屋の中に響く。
 亡霊は唇を軽く舐めると、揺さぶるように腰を前後させてみる。怯えるようにギチギチ締まる心音
の牝肉孔の中を、牡茎が泳ぐように律動し始めた。
 ずぷずぷぐぷぐぷと溺れる水音の下に、パイプベッドの軋む音が交わっていく。
「やっ、やだぁっ……お、お願い、やめて……っ……!」
 亡霊が突き上げて貫いて肉壁や子宮口を抉っていく度、心音が嬌声を零して、いやいやと首を振る。
目から零れた涙の粒が、ベッドシーツへ模様を描く。
「どうやら、ユガミくんはさほど巧い訳ではないようだな」
「! い、異議……あ、り……ゆぅがみさんは、いつも、優しくしてくれ……ってま、す……!」
 ずっちゅぬっちゅと腰を振るいながら亡霊が口ずさめば、心音が喘ぎながら反応してくる。
「――優しいだけでは快楽は得られないよ」
 亡霊が冷たく笑い飛ばすと、狙った箇所を思い切り突いて擦ってぼこんぼこん凹ませる。たちまち、
心音が甲高い声をあげて悶え、淫花からぷしゃぁと愛液が迸った。
「ほら、こんな感覚、ユガミくんとは味わった事はなかったろう?」
 亡霊が嗤いながら問えば、心音が真っ赤になった顔をきっと鋭くしてくる。
(この程度ならまだ抗えるか。では……)
 亡霊は腰を少し離すと、先程探り当てた心音のGスポットを亀頭のカリで引っ掻き始めた。
 小刻みに、丹念に、亡霊が腰を動かす。
 外に出っぱなしになった牡茎の竿部分から透明な雫がぽたぽた垂れ、心音の太腿に落ちていく。
「ぇ……ぁ……ゃ、あ……あっ……ああ……!」
 戸惑っていた心音の顔が徐々に切迫したものになっていく。体表に微弱な痙攣が走るようになった
と同時に胎内の牝肉孔が鳴動するような痙攣を起こし始める。
「そんな……っ……嘘っ……やあぁ……」
 心音が顔をしかめて、イヤイヤと首を振り出す。身体を捻って、Gスポットから亀頭をズラそうと
試みるが、亡霊が腰をがっちり掴んでいるので動けない。むしろ、二台のビデオカメラの前で悩まし
げに上体を捻って乳房を揺らす格好になってしまう。
「やっ、やだ……何か、クるっ……お願い、やだっ、止めて……やめてぇ……!」
 涙をボロボロ零して懇願してくる心音に、亡霊の胸がかあっと熱くなる。連動して牡茎にも更なる
熱が注入され、竿の表面を走る血管が浮き出る。
 Gスポットを弄っていた亀頭にも熱と圧力はかかり、ぼこっ、と、押し上げるように膨張した。
「っ……!?!」
 心音が身体を竦ませ目を開く。
 ひっ――と、微かな悲鳴をあげて彼女が息を呑んだその刹那、亡霊は離れていた腰を一気に推し進
め、心音の太腿と尻へ全力でぶつかっていった。
 外に置かれていた牡茎の竿が、喜び勇んで胎内へ飛び込む。
 入口付近のGスポットを弄っていた亀頭が最奥の子宮口へ一気に移動し、そのまま何度も叩いて貫
く。
「ひゃいいいっ!!」
 互いの肉体が叩き合わさる音と、パイプベッドが苦悶するように軋む音が響く中、心音が全身を戦
慄かせて嬌声あげた。
「……経験はあるのにGスポットすら未開発なんて、ユガミくんも随分もったいない事をしている」
 恍惚とした表情で息を吐きながら亡霊が独り言つ。彼女の胎内は別個の生き物のように躍り、咥え
込んだ亡霊の牡茎を捻るように動いている。
(あんな綺麗だった場所が、ジブンのをこうもいやらしくしゃぶってくる)
 そう考えた途端、堪えがたい程の衝動が亡霊から湧き出てくる。絶望の表情を浮かべて涙を流す心
音の顔すら、愛おしい。そう――”愛おしい”。
「やはり、この用件にキミを選んだのは大正解だった……」
 ――キミが相手ならば、ジブンの中の”亡霊”は完璧に消せるだろう。
「これからの五日間、よろしくお願いするよ」
 精一杯の感情を込めて囁くと、亡霊は心音の反応を待たずに動き始めた。
 亡霊の牡茎が心音の牝肉孔の隅から隅まで丹念に嬲って擦って抉って突いていく。
 パンパンと肉体が叩き合って鳴る音に、ずっちゅずっちゅずっぷぐっぷずっずっ、と、水の泡たつ
音が被さる。
「ひぁっ、やぁあっ、あっ、あ、あ……あぁぁっ!!」
 ビクンビクンと痙攣しながら、心音が跳ねる。両手を拘束する手錠をカチャカチャ鳴らして、乳房
を揺らす。淫花が何度もひしゃげては愛液を噴射し、二人の腰と腰をベトベトに濡らす。
 亡霊の犯されるままに喘いで、何度も絶頂へ達する心音。そんな痴態を、二台のビデオカメラが別
方向から撮影していく。
(後で見返すのが楽しみだ……)
 亡霊は、腰の腰から尻たぶへ手をずらすと、指をめりこませるように揉みしごく。ぷりぷりした弾
力と、滑らかな肌の質感に、絶頂の痙攣が時折混ざって指へ返ってきた。
 亡霊は恍惚と吐息を零す。悦びで下腹部はグツグツ煮え立ち、欲情のままに牝肉孔と子宮口を抉り
貪っている牡茎は破裂しそうで苦しくなってくる。
(まずは一つ……)
 唇から溢れ出そうになっていた涎を舌で舐めとると、亡霊はラストスパートをかけた。
「ひゃぁっ?! あっ、あ、ま、また何かっ、クる……!」
 心音が目を大きく開くや、顔をしかめて首を振る。
「やっ、やだっ……ぅ……うあ、ぁぁ……ああぁ!」
 全身を跳ねさせ、亡霊から必死に逃げようとするが、返って捻りという刺激を互いの肉体へもたら
すだけ。自ら絶頂を呼び寄せるだけ。
 心音が息を止めて硬直したと同時に、亡霊の牡茎が子宮口へ突き刺さった。
「あぁあぁあぅっ……!!!」
 涙をボロボロ零しながら痙攣する心音の胎内で、亡霊の牡茎がドクドクドプドプ精液を解き放つ。
子宮口を大量の白濁液で汚して、征服した牝肉孔の締まり具合を堪能していく。
 亡霊はほぅと息を吐くと、心音の尻たぶを掴んでいた両手を離して牡茎を引き抜いた。
 ぐぽぉっ、と、音をたてて二人の肉体が離れる。
 嘆く心音の腰がベッドへ落下するよりも早く、亡霊は彼女の腹の上へのっかり、鎮まりかけた牡茎
を乳房の谷間へ宛がった。
「ぁ……」
 涙でぐちゃぐちゃになった顔で心音が息を呑む。
 亡霊は両手で彼女の乳房を掴み寄せて牡茎を挟むと、そのまま腰を前後に振り始めた。
 パイプベッドの軋む音が再び響き始める。
 顔を引き攣らせて戸惑う心音の眼前で、亡霊の牡茎が表面についた愛液をローションにして滑る。
何度も乳房の谷間から突き出ては潜るを繰り返す。
 動きに合わせ、むにゅぅと形を変えて牡茎へ密着する心音の乳房。牝肉孔とはまた違った弾力と柔
らかさは、放出したばかりの牡茎に熱と硬さを呼び戻す。時折腰を大きく前へ出して亀頭を心音の唇
へぶつけてみれば、ぷるんとした感触と共に彼女の涎がくっついてきて、それがまた気持ち良かった。
「素晴らしい、想像以上だよ……またすぐ出してしまいそうだ」
 亡霊が恍惚と息を吐く。
 心音がひっと息を呑んで顔をしかめるや、ぷいと横を向く。
「……」
 亡霊はすっと目を細めると、両手を乳房から離して心音の頭を掴む。無理矢理正面を向かせると、
彼女の口へ牡茎を根元まで突っ込んだ。
「んぐっ――!?」
 びくんと震える心音に構わず、亡霊は腰を振りだす。ぱんぱんと顔を叩くように腰をぶつけて、彼
女の口腔を犯していく。
 締まりはないけどざらっとした舌の感触や、ねっとり熱い内部。喉奥を容赦なく突いて嘔吐かせれ
ば、口全体が痙攣して心地よい刺激をもたらす。
「んんっ、んー、んんーっ!!」
 心音が目を剥き、身体を激しく跳ねさせる。乳房がブルンブルン揺れて亡霊のお尻や太腿を幾度か
なぞっていく。そんな様子を二台のビデオカメラが淡々と撮影していく。
 亡霊は心ゆくまで彼女の口腔でしごくと、両手を離した。
 心音の顔が下がり、亡霊の牡茎が表に出てくる。唾が蜘蛛の糸のように伸びたかと思えば、千切れ
ぽたぽたっと微かな音をたてて落ちる。
「ぁ……ふぁ、あ……」
 顔を真っ赤にして震える心音。瞳の焦点はぼやけ、解放された口は酸素を求めて幾度もひきつく。
「大人しくこっちを見ているんだ。いいね?」
 口調は優しく、見つめる目は冷たく、亡霊が言い放てば、心音が項垂れるように首を動かしてきた。
「いいこだ」
 亡霊はニヤリ嗤うと、完全に起きた牡茎を心音の乳房に挟み込んで再び腰を振るう。
 ずっ、ずりゅっ、と、小さく音をたてながら乳房を泳ぐ牡茎。時折亀頭を心音の唇までぶつければ、
気怠げな顔のまま素直に受け止めてきた。
 そんな様子がまた”愛おしい”くて、亡霊の胸は熱く高鳴ってくる。連動して牡茎にも熱が篭もり、
奥から射精衝動がかかってくる。
(とりあえず、ここで今日の分の撮影は終わらせよう)
 亡霊はそう判断すると、乳房から牡茎を突き出した状態で止まった。
 腰の奥で蠢いていた衝動を解放すれば、たちまち亀頭が噴火を起こす。
 びゅくびゅく、びゅるびゅるっ……!! と、白濁液が宙を飛び、心音の口の周りへびちゃびちゃ
ぶつかっていく。
「あ、あぁっ……!!」
 口元へ次々と衝突してくる亡霊の欲情に、心音が悩ましげな声をあげて身体を震わせる。乳房も小
刻みに揺れ動き、うす桜色の乳首がぴんと尖って持ち上がる。
 亡霊は腰に力を篭めて溜まっていた分を全てを吐き出すと、ふうと息をついて身体を弛緩させた。
 パイプベッドの横に置いてあったビデオカメラと、壁にかけていたビデオカメラを、順ぐりに停止
させると、心音の両手から手錠を外してあげる。
「あっ……」
 ガチャリと音をたてて外れた手錠に、心音が一瞬安堵した後、絶望に顔を歪めて泣き始めた。
「いやぁっ……いやぁぁぁあっ……」
 ベッドシーツを強く掴んで心音が嘆く。
 亡霊はやれやれと肩を竦めると、彼女の腰を掴んだ。
「ひぃっ――!?!」
 心音が盛大に息を呑んで竦む。必死に逃げようとするが、無理矢理うつ伏せにさせられお尻を高く
掲げさせられる。
「や……止めて……! お願い……もう止めてください!!」
 一縷の望みを託して、心音が亡霊の顔を見上げて請う。それがかえって煽るだけの結果だとも知ら
ずに。
 亡霊は唇を舐めて嗤うと、ひゅくつく彼女の秘部をおのが牡茎で貫いた。

 ※※※

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 ――こうして、初日は心ゆくまで犯し、何度もイかせて征服した。現状を肉体で理解させた。
 だから次の二日目は、指と舌で彼女の身体をいじり倒してみた。

 裸にした彼女を後ろから押さえ込みカメラの前から動けないようにしてから弄る。指を胎内へ侵食
させたり、クリトリスを擦ったり。
 勿論、そこだけの刺激ではなく他の場所も忘れずにした。若いだけあって、乳房の張りと皮膚の滑
らかさはバツグンだ。こちらがちょっと吸って噛むだけで、艶めかしい声を上げてビクビク震える。
白い肌の上に浮かぶ赤い痣は、後から見返すとまるで花畑のようだったよ。

 彼女は、潮吹きの寸前まで嫌がって抵抗してきたが、それもまた一興だった。何せ、口では嫌がり
つつも身体は正直に悶えて悦ぶんだ。ジブンが弄れば弄るだけ、彼女はよがり、絶頂を囀ってくれる
のだよ。

 潮吹きの瞬間……あれも素晴らしかった。背中をびっくんびっくん逸らして痙攣しながら、入って
いたジブンの指が折れそうな程に膣をグニングニン揺らしながら、おしっこみたいに大量の愛液を宙
にブシャーと飛ばして。ジブンの手で結構な量を遮られただろうに、空中で綺麗な弧を描いてた。
 勿論、ビデオカメラでその様子はしっかり撮らせて貰ったよ。彼女の股の前のアップと全体の俯瞰
の二つでな。

 噴かせた後はどうしたかって? そりゃあ昨日と同じようにたっぷり楽しませて貰ったよ。お預け
させていたジブンのムスコが、我慢できなくてパンパンになっていたからね。腰をパンパン叩き付け
て犯したさ。
 指よりもずっともっと太くて長くて固いモノで彼女を何度もイかせてジブンもイって。潮吹きする
まで弄ったお陰か、昨日よりもずっと締まりの緩急も表面の感触も良くなってて、ジブンが開発した
と思うと”愛おしい”気持ちが胸の中に溢れて止まらなかった。
 結局何回中出ししたかな。ジブンの気が済んだ頃には彼女は目を剥いて痙攣してて、股もジブンの
精液で真っ白になっていたよ。

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 ――初日、二日目と、こちらがたっぷり奉仕してあげた。
 だから三日目は彼女から奉仕して貰う番だ。従順にしゃぶって咥えてくれる様子を撮影しようと決
めた。

 だけど彼女は強かった。危害を加えてはこないけど、媚びる事もなかった。
 舐めてくれ。根元まで咥えてしごいてくれ。咥えた状態で吸い上げてくれ。言っても彼女は中々従
わない。
 しょうがないので、やる気が見えないと思った時点で顔を掴んで無理矢理イマラチオを行った。喉
をガンガン突いて嘔吐かせながら、キミに拒否権はない事、ジブンの命令へ素直に従わなければずっ
とこうして一方的に犯される存在である事を懇々と言い含めた。
 で、ジブンが口腔へ出したり彼女の顔へぶっかけたら、また最初から口の奉仕を行わせる。やる気
が見えなければまた強制イマラチオと囁き。それを5回ぐらい繰り返した時点でようやく素直になっ
てくれたよ。流石に少しくたびれた。

 だけど、苦労した分の達成は素晴らしい。ユガミ君を愛する彼女が、ジブンという他人に――愛し
てはいないであろう存在に、ここまで健気にご奉仕してくれる。
 ジブンは”愛おしい”が、彼女は多分違う。だがジブンのを舐めてしゃぶって、頬を凹ませるほど
吸い上げて圧迫してくる。最愛の人へするように、素直にご奉仕してくる。それはもう極楽だった。

=============================================

 ※※※

 亡霊が心音を監禁して犯し始めてから四日目。


「……こんなものでいいだろう」
 リビングを見回して亡霊が満足げに息を吐く。
 黒革の二人掛けソファーの正面に一台、斜めからソファー全体を俯瞰するように一台、設置された
ビデオカメラ。両方とも映像ケーブルがリビングにあるTVと繋がれ、リアルタイムで映像が流れて
いた。
「来たまえ、ココネクン」
 亡霊が呼びかける。少しして、亡霊のシャツだけを羽織った心音がよろよろした足取りでリビング
に入ってきた。
 陰鬱と疲労の色が浮かぶ顔。瞳からは光が消え、焦点もどこか虚ろだ。下ろされた髪は幽霊の佇む
柳のように揺れつつ、数本が身体に貼り付く。内股気味の太腿には精液の白い汚れが幾つも垂れてい
た。
「――!? ま、まだやるんですか……!?」
 TVに接続されたビデオカメラ二台に、心音が息を呑んで怯える。
「当然だ。解ったなら、シャツを脱いでこっちへ来たまえ」
 亡霊は二台のビデオカメラの録画スイッチを入れると、手招きをした。
 絶望に顔を歪めながらも、心音は羽織っていたシャツを脱いで亡霊の前まで歩く。
「まずは昨日教えた通りに、口でご奉仕して貰おうか」
 亡霊はソファー正面を映すカメラの前へ陣取ると、ズボンから牡茎を引き摺り出した。
 心音が亡霊の前へ跪くと、彼の牡茎をそっと手に取り、口を開く。そして、ビデオカメラのすぐ前
で亡霊の牡茎を舐め始めた。
 ちゅぱ、じゅぱ、じゅぷ、と、彼女の唾の音がカメラを経由してTVスピーカーから響き始める。
「そうそう。上手いじゃないか」
 しゃぶる心音の横顔が映るTVを眺め、亡霊が恍惚と息を吐く。別の位置に据えたカメラに視線を
飛ばせば、跪いた心音のお尻から白濁液がデロリ垂れていた。
(……この用件も明日で終わりだ)
 彼女を情報付きで解放し、ジブンは再び姿をくらます――”亡霊”でもスパイでもない、市井の人
間として。
 一抹の寂しさすら覚える己のココロに亡霊は驚きつつも、ほくそ笑む。
(やはりこの用件に彼女を選んだのは正解だった)
 こうもココロが動くほど”愛おしい”。普通の人間にはあって”亡霊”にはない”愛おしい”。
 このココロさえあれば――彼女との五日間と”愛おしい”を礎にすれば、ジブンはもう”亡霊”で
ないのだ。
 亡霊の胸が高鳴り、連動して牡茎にも力が篭もる。丁度そこへ心音の舌が裏筋を舐めてきた。
 強い刺激と気持ち良さに、亡霊の牡茎が勝手に本能を爆発させる。
「んぐっ!?」
 びゅくびゅくびゅるびゅる飛び散る精液に心音が顔をしかめて悶える。逃げるように開いた唇の隙
間から白濁液がデロリ垂れて顎をつたう。
 亡霊は慌てて彼女の顔を上向かせて零れるのを防ぐと、開き直って残りも全て放出した。
「んむぁっ……!!」
 目に涙を浮かべて心音がむせる。隙間からまた精液が幾らか飛び出すが、それ以上の量が彼女の口
腔へ注がれて溜まっていく。
 亡霊はゆっくり慎重に牡茎を引き抜くと、近くにあるカメラへ心音の顔を向かせた。
 心音のバストアップがTVに映る。どんよりした目で頬を上気させ、唇や口の中を濁った白でまみ
れさせた顔が映る。
「――!!」
 ビデオカメラを通して突きつけられた己の顔に心音がびくり身体を震わし、目端に涙を浮かべる。
が、瞳の色は変わらず――陰鬱と快楽にまみれて濁っている。
「上体を曲げたまま足を立てるんだ」
 亡霊が心音のうなじを手で軽く抑える。
 心音がうっとなるものの、すぐにしゃがんでいた腰を浮かせ、ビデオカメラへお辞儀するように上
体を折り曲げた。
 亡霊は心音のうなじから手を離すと、彼女の両手を後ろに引っ張る。心音の背が少し逸れ、カメラ
の前でぷるり乳房が揺れる。
 亡霊は心音の真後ろへ陣取ると、だらしなく開いていた牝肉孔へ牡茎を突っ込んだ。
「ひゃいっ――!」
 心音が掠れた声をあげて上体を揺らす。反動で口の中に溜まっていた精液が零れ出て、彼女の顎や
胸元に落ちる。
 それをTV越しに眺めながら、亡霊は腰を振り始めた。
 ビデオカメラと真正面から向き合った状態で、亡霊が心音を突いて貫く。
「やっ、やぁあっ……!」
 心音が顔を真っ赤にして悶える。口の中の精液が更に零れて、ぷるんぷるん揺れる乳房で跳ね返っ
て飛び散る。その様子を真正面からビデオカメラは撮っていく。
 もう一台、少し離れた所に設置されたビデオカメラには、横から俯瞰する形で二人の姿が――上体
を折り曲げて後ろ手にされた心音が自ら腰を振って亡霊に犯される様子が、映されていた。
「ああ、素晴らしい……素晴らしいよ……」
 カメラに映る痴態は勿論、映らない内部――牡茎をぎゅうぎゅうに咥え込んで締め付けてくる牝肉
孔や、逃げるように身動ぎながらもキスをしてくる子宮口の感触も。
 全て全て素晴らしい、”愛おしい”。ついさっき出したばかりだというのに、もう次の精液が装填
される。意識して堪えておかないといけなくなってくる。
 亡霊は心音の尻へ腰をパンパン叩き付けて、犯し続ける。ぷくり腫れ上がった粒肉や淫花を何度も
圧しひしゃげさせては、根元までねじ入れて貪っていく。
「ヒッ……だ、だめ……も、う、腰が……ぬけ、る……」
 心音が両足をガクガク震わせる。言葉通り、腰もユラユラ落ちかけては、その度に亡霊から腰と牡
茎を叩き込まれて戻っていた。
「やれやれ。しょうがないな」
 彼女の口に精液が殆ど残ってないのをTV越しで確認すると、亡霊は彼女を後ろから抱きかかえ、
そのままソファーへ一緒に座り込んだ。
 唐突に飛び込まれたソファーのスプリングが、驚いたような物音をたてる。
 根元までみっちり挿入された牡茎の角度がぐるり回った刺激と、重力で更に密着する腰と腰に、心
音が目を剥いて悲鳴をあげる。
 亡霊は心音の乳房をわっしと掴むと、お互いの背を軽く逸らして腰を揺らし始めた。
 ソファーのスプリングが軋む真上で、亡霊が心音を突き上げる。びらを全開にした淫花の間を、屹
立した牡茎が大量の愛液と一緒に潜ったり飛び出したりする様子を、真正面に置いたビデオカメラに
撮影させる。
「すぐ外では、こんな風に受け入れてくれてたのか」
 亡霊が熱っぽく囁けば、心音が喘ぎながらガクガク顎を震わせる。その目端からは涙が、口端から
は涎が垂れて顔を濡らす。
(……どんな味がするのかな?)
 亡霊は、心音の顔についた涙と涎を舐めてみる。その際、舌先が心音の唇に触れた途端、彼女が悲
鳴のような嬌声をあげて身震いしてきた。
 牝肉孔が悶えるように身動ぎ、むぎゅうと締め付けてくる。
「ほぅ……」
 新しい反応に、亡霊は興味を覚え、舌を再び心音の唇へ近づける。触れる寸前、心音が亡霊から逃
げるように顔を背けてきた。
 彼女の亜麻色の髪がしなるように回って、亡霊の顔を軽くはたく。
(!? まだ拒絶する意思と箇所が残っていたのか……!)
 亡霊が目を剥いて驚き、それから瞳をすっと冷たくする。
 心音の乳房を揉んで乳首を弄っていた手を彼女の頭へ回すと、力ずくでこちらを振り向かせた。
「んむゃっ……!」
 拒絶する心音の声を、亡霊は己の唇でもって塞ぐ。
「んんんんぁ……!!!」
 眼前にある心音の瞳が歪み、大粒の涙をぼろぼろ流し始める。
(まさかキスだけでこんなにも嫌がるとは……!)
 最初に犯した時のような反応に亡霊は盛大に驚く一方、胸の中が”愛おしい”想いで熱くなってい
く。
(――素晴らしいよ。”愛おしい”よ……)
 心でそっと囁きかけると、亡霊は舌を突き出し、ついさっき牡茎で蹂躙した心音の口腔を、今度は
己の舌で掻き回し始めた。
 同時に、いつの間にか停止していた腰の律動を再開させる。
「んー、んんぅー!! んむぁあぁ……!!!」
 上の口も下の口も完全にロックされた心音が、乳房と髪を振り乱して悶える。
 ぐじゅぐちゅとシェイクされた唾が二人の顎をつたう一方、牡茎の抜き差しに合わせて愛液が二人
の下半身を濡らしていく。
 パンパンと腰の肉が叩き合わさる音もすっかり濡れて、ソファーの黒革には大きな染みがべっちょ
りつく。
「ん、んぁ、ぁ、むぅぁあぁ……」
 心音の、亡霊から唇を離そうとする抵抗が徐々に薄まっていく。反比例して瞳の奥が更なる快楽で
濁り、牝肉孔の締まりと痙攣の頻度が増える。
 小突く度に触れる子宮口も咀嚼するような動きを始め、亡霊に射精を誘ってくる。
(そろそろ良いか……)
 亡霊は心音の頭から手を離すと、粒肉を軽く擦りながら中指を折り曲げ、彼女の胎内へ突っ込んだ。
 牡茎を抜き差しに合わせて中指を進ませ、彼女のGスポットへ指先を固定させる。
「ひゃいいいいいいいっ!!?!」
 心音が絶叫をあげて仰け反るのも構わず、亡霊は腰を振るう。Gスポットを指で強く圧しながら牡
茎で子宮口をガンガン突き上げ貫く。
 そして、数度の往復の果てに、心音が再度絶叫をあげて全身を竦ませた。
 牡茎と中指の隙間から、ぶしゃぁあっ! と、大量の愛液が潮を吹く。
 心音の胎内にも激震が走り抜け、揺さぶられた亡霊の脳髄が快楽でキーンと痛くなる。牡茎も堪え
きれず精液を放出させ、彼女の子宮口へ白濁の礫をぶつけていく。
 外では愛液が、ナカでは精液が、それぞれ勢いよく噴き出て拡散していく。
 亡霊は軽く身震いして精液の残滓を彼女の胎内へ注ぐと、突っ込んだままだった中指を外して腰を
ひいた。
 ぬちゃぁ……と、粘っこい水音をたてて二人の肉体が離れる。
「ぁ……」
 心音が泣きながらほっと安堵したかと思うと、ソファーへ力無く倒れた。
「…………そんな……キスまで……キスだけは夕神さんだけって……守りたかったのに……」
 ソファーに寝転がった心音が無力感と絶望に震えて涙する。
「あぁっ……うぁぁあぁっ……!!」
 ソファーの黒革を指でガリガリ引っ掻きながら心音が嘆いていたら、ふいに身体を回された。
 真正面に置かれたカメラと向かい合ったかと思うと、片足をソファーの背もたれに引っ掛けられ、
大股を開いて横たわる格好にさせられる。
「丁度いい方向に倒れてくれて良かったよ」
 亡霊が嗤う背後には、斜め前からソファーを俯瞰して撮るビデオカメラがあった。
「! ……まだ、なの……? まだわたしは、貴方に犯されるの……!?」
「安心したまえ。5日たてば――明日になれば解放する約束は必ず守る。撮影も今日のこれで最後
だ」
 絶望に震える心音へ、亡霊が穏やかな微笑みを浮かべる。
「だから。〆はよがり狂ったキミが絶頂の果てに気絶するまでを撮らせて貰うよ」
 亡霊はにこり笑って言い放つと、心音が絶望に悲鳴をあげる間も与えずに犯し始めた。

 ※※※

=============================================

 ――ああ、ほんと素晴らしく”愛おしい”気持ち。感情などとんとなかったジブンへ、注ぎ込まれ
ていく、満たされていくココロ。
 空っぽであるが故に、何物でもない虚無だった故に、存在していた”亡霊”が、ジブンから確かに
削られていく。”亡霊で無くなっていく”――。

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「……約束通り、今日で最後だ。”亡霊”は二度と、キミタチの前には現れない」
 五日目最終日。
 数度目の放出を終えて数秒後、亡霊は心音の胎内から牡茎を引き抜く。中に溜まっていた液を掻き
出すように、ずりゅっ、と、外れた途端、彼女の胸元でモニ太が驚きの黄色と喜びのグリーンで光っ
た。
(おかしな機能があるといけないから没収していたが、これなら着けっぱなしで撮影を行った方が良
かったかもな)
 モニ太の反応を見て、亡霊はちょっとだけ後悔するが、過ぎてしまったものはしょうがない。
 ――”亡霊でなくなる為の”撮影計画は昨日で終わった。もう二度と彼女を抱く事はない……出来
ない。それが思った以上に名残惜しくて、ついつい身体を重ねてしまった。
「……ココネクンには感謝してもしきれない。キミの……キミと過ごしたこの五日間のお陰で、ジブ
ンから”亡霊”は消え去った。これから市井の人間として過ごす為の礎を手に入れる事が出来た」
 ベッドから下りて牡茎を仕舞うと、亡霊はちらと振り返り、ベッドの上に残した心音を見る。浚わ
れた時の衣服を纏ってはいるが、乳房は表に引き摺り出されて無数のキスマークと歯形がつき、股と
太腿の付け根は精液と愛液でぐちょぐちょに濡れていた。
「…………どういう、事ですか……?」
 心音が問う。ここ五日間、幾度も絶頂を囀ってきたせいかそれとも絶望故にか、すっかり掠れきっ
た声で。
「ただの人間にあって”亡霊”に無いのはココロ――何かを”愛おしい”と思う気持ちだ。ジブンは、
今までそれが無かったから”亡霊”だった」
 だがこれからは違う。
「これからジブンは、キミと過ごした五日間の記憶を”愛おしい”と思いながら生きていく。スパイ
でもなんでもない、ただの人間として」
 どこにでもいるような一人になって社会の片隅で慎ましやかに生きていく。
「時々は、この五日間に撮り溜めたビデオカメラの映像を観賞して”愛おしい”という気持ちを確認
する事もあるだろう。だが、ジブンはもう”亡霊”として捕まる事はない……”亡霊”ですらない。
――キミとの逢瀬を礎に”愛おしい”想いを、ココロを手に入れたのだから」
 そう告げた時、亡霊の顔は自然と笑みを浮かべていた。
「ありがとう、ココネクン。ジブンは、キミのお陰で人間に生まれ変われたよ」
 心からの感謝を込めて亡霊が述べる。
 言われた心音が微かに息を呑んで表情を変える前で、亡霊は踵を返した。
「ジブンが退室して暫くしてから、キミがここにいる事を連絡する。お土産のデータは、そこのサイ
ドテーブルに置いておいた。後で持ち帰ってくれ」
 喋りながら部屋の入口まで歩き、当座の荷物をまとめたスーツケースを手に取る。
「もう二度と会う事はない……が、もし、ユガミくん達がジブンを追いかけてくる事があれば、この
五日間の撮影データをネットに放流するので気をつけたまえ」
 警告に、ベッドに寝転がる心音がビクンと身を竦ませるのを背中で感じながら、亡霊が部屋のドア
を開け放とうとした矢先。
「…………だめ、です……」
 心音から、か細い声が届いた。

「だめ……そっちには、何もない……いっちゃだめです」
 強張る亡霊の背中へ、心音の掠れた声が再度届く。
 亡霊の心臓がドクリ波打ち、彼女の方へ振り向きたい衝動に全身が揺れる。が、無意識のうちに捻
りかけた上体を、握っていたスーツケースの重みが引き止めてきた。
「――……!」
 亡霊は、はっと我に返る。
「――ここにいてもジブンに未来はない。法の下に死刑になるか、組織の送り込んできた殺し屋に殺
されるか。……そんなもの、まっぴら御免だ」
「でも……貴方が向かおうとしている先は、何もない。完全に独りになってしまう道です……」
 背を向けたまま吐き捨てる亡霊に、心音がか細い声のまま反論してくる。
「貴方が真に生きたいと願うなら……そう願うのならばこそ、そっちへは行っちゃ駄目です」
 今にも砕けそうな程弱々しい心音の声は、亡霊に、胸をワイヤーで引き絞られるような痛みを抱か
せる。
 が。
「お願い……ちゃんと自分の犯した罪と向き合って、償って。でないと……」
 震える声で心音が請うてきた途端、亡霊の胸の痛みは解け、意識はすっと落ち着いた。
「――人間は独りで生まれ、死んでいく生き物だ」
 はっと肩を揺らして笑い飛ばすと、亡霊は顎の付け根に手をあてる。額の裂けたバンのマスクに歪
みが浮かぶ。
「ならばジブンは生きる。檻の中、誰かに処刑される瞬間を怯えながら過ごす位ならば、独りで生き
延びる方を選ぶ」
 心音に背を向けたまま言い切ると、亡霊は被っていたバンのマスクを勢いよく脱ぎ捨て部屋を出た。


 ドアが無機質な音をたてて閉まり、床に落ちたマスクがふわり揺らぐ。
「ぁ……」
 背を向けたまま出て行った亡霊に、ベッドの上から手を伸ばしていた心音が微かな声をあげて顔を
歪めた。
『イッショウニゲラレルワケジャナイノニー……』
 胸元で、五日ぶりに装着したモニ太が、蒼く染まる。
「……そうだよね……」
 モニ太に言い返しながら、心音はごろんと仰向けになる。昨日のように気絶するほどではないが結
構な回数貪られた身体は気怠さで重くて、ベッドから起き上がる気力すらない。
(結局、わたしは何も出来なくて……)
 物思いにふける意識は、ふいに胎内から零れた熱の残滓によって切断される。
 淫花から滴り落ちた欲情の欠片は、心音の身体の芯へ針で突かれたかのようなじれったさと気持ち
良さを呼び覚ます。
「っ……!」
 たまらず心音が身体を縮めて堪える。その後で、自分の頭を乗せている枕を掴んで嗚咽し始めた。
(犯された汚された……)
 なのに気持ち良さに溺れてよがってしまった。
 この五日間の記憶が、心音の中で台風のように渦を巻いて暴れ狂う。
『ヤダヨー、ヤダー、ヤダー……』
 胸元で、モニ太が悲しげな電子音を繰り返すのを聴きながら、心音はひたすら泣き続ける。
 そうしてどの位の時間が経っただろうか。
 自然と泣き疲れて眠っていた心音が、ふいに我に返った時。外からドアのノブを回す音が聞こえた。
「ココネっ……!!」
 竦み上がるようにベッドから上体を起こして振り向いた心音の前で、ユガミがドアを蹴り飛ばす勢
いで入ってくる。
「夕神さ……」
 心音が何の気なしに言いかけ、はっとなる。今の自分の姿、亡霊に散々弄ばれて汚された自分の姿
を思い出して。
「――!!」
 心音が目を剥いて息をひっと呑んだと一瞬、胸元のモニ太が様々な色の光で目まぐるしく輝きぶつ
んと切れた。
「ひっ……いやあぁぁぁぁぁっ!!!」
 心音の絶叫が、近付こうとしたユガミの足を止める。
「見ないでぇぇ!!! お願い、見ないでぇ……!!!」
 心音がユガミから背を向け、真っ黒になったモニ太を抱えるように縮こまる。頭の中は何度も爆発
が起きてぐちゃぐちゃに攪拌されて、訳が分からなくなってくる。
 ――いや、”解りたくない”が正解か。
 好きでもない男に犯されて汚されて……それを気持ち良かったなんて感じて。最後の方は自分から
腰を振っていたなんて。
 それを一番知られたくない人に、一番愛している人に、知られてしまったなんて。
「ひっ……!」
 心音の瞳から光と焦点がすっと消える。
「い……いや、いやぁぁ……!!!」
 痙攣する自分の身体を押し潰すように抱き締めて、心音が、眼球が零れんばかりに瞼を剥く。全身
が自壊しそうな程に揺れて苦しくて気持ち悪くて、いっそこのまま砕けて――死んでしまいたい。
 音程の外れた笛のように乱れた呼吸音を喉から吐き出して心音が震えていたら、ふいに後ろからユ
ガミが抱き締めてきた。
「――!!?!!」
 天井へ頭をぶつける勢いで竦み上がった心音へ、ココネ、と、ユガミが掠れた声で呼びかけてくる。
深い悲しみと怒り――そして”無事で良かった”と喜ぶノイズと共に、心音を包み込むように全てか
ら隠すように、抱き締めてくる。
「ぁ……」
 心音の痙攣が止まる。
 かなりの時間が経ってから、心音は恐る恐る振り返る。
 ユガミは、包む両手は決して離さず、でも、心音が自由に動けるように優しく抱き締めてくる。そ
んな彼の温かさと大きさに、両目から涙を流して頬を濡らしながらも心音を決して離そうとしない彼
の姿に、心音が気が付いた途端、自壊しそうな程に苦しかった痙攣がぴたり収まった。
「……ゆぅ、が、み、さ……ん……」
 心音の瞳の光と焦点がじわじわと戻ってくる。同時に、目に涙が溢れ、ぼろぼろと滝のように流れ
出してくる。
 そのままユガミへ全力でしがみつくと、心音は誰に憚ることなく泣き喚き始めた。

 ※※※

 それから月日は二十数年ほど流れ――。

 とある地方にあるホスピスの個室のドアが、壊れんばかりの勢いで開かれる。
「……思ったより早かったな。あと数日はかかるかと思ったのだが」
 ぜいぜいと荒い息をついて部屋へ飛び込んできたユガミを見つめ、ベッドの上にいた男性が唇を綻
ばせた。
「それにしても……キミは元から老け顔だったからか、あまり変わっていないな」
「黙りなァ!」
 肩を竦めた男性へ、ユガミが眦を裂いて怒鳴る。その迫力に、ドアの外へ集まりかけていた野次馬
達が蜘蛛の子散らして逃げていった。
「”亡霊”……テメェが今更何を企んでいるか知らねェが、ココネ達には指一本触れさせねェ! 留
置所で死ぬまで尋問付けにしてやらァ!!」
 地獄の底から這い出てくるような声と迫力を乗せて歪みが告げる。
「――ああ、それも仕方ないなぁ」
 男性は、少しだけ目端を動かした後、疲れた様子でため息をついた。
「まぁユガミくんにはそこまで手間をとらせないよ。どの道、末期ガンでそれ程長くないと宣告され
ているんだ」
「……だからこそ、最期の懺悔ってヤツかァ?」
 軽蔑に顔をしかめたユガミが一枚のポストカードを男性の前へ放る。ぐしゃぐしゃに握り締められ
たそれは、男性がリタアドなしでここから出した手紙だった。
「このハガキに嘘はない。あの時の映像は、ここに入る前に全て処分した」
 淡々と答えると、男性はポストカードをサイドチェストへのせる。
「その、テメェの身勝手な計画の為に、ココネがどれだけ苦しんだと思っている……!!」
「解っている。法廷に復帰出来るまで丸二年かかったそうだね」
 男性がさらっと告げる。
 ユガミの怒気がはらみ、ベッドにいる男性の胸倉を掴みかかる。
「……法廷への復帰と同時期に、ずっと献身的に支えてくれたキミと結婚し、やがて一男一女をもう
ける。正義感の強い長男は警察へ入り、次女は心理学者の若きホープ。『地球が生まれてから二人目
の天才』とは、キミのお姉さんのコメントだったかな?」
 掴まれたままに、男性は淡々と述べる。
 さっと顔をこわばらせたユガミへ、男性は力無く微笑んだ。
「……前に一度だけ、キミ達家族を遠くから見せて貰ったよ。とても幸せそうで……そして、あの時、
彼女が引き止めてきた本当の理由がようやく解った」
 生きる事は出来ても、独り。その意味がやっと解った。
「――ココネクンの言う通りだった。こっちには何もなかった……」
 がらんどうのガラス容器に何も持たされずに閉じ込められて、ガラスの向こう側に広がる幸せを眺
め続けるしか出来なかった。
「それでも、あの時のジブンは生きていけると思ったんだ」
 映像と思い出を礎に、ジブンなりに独りで生きていける……逃げ続けられると思ったんだ。
 でも……。
「結局、ジブンは、ジブンで思っていた以上に愚かで弱くて、そして寂しがり屋だった」
 疲れきった様子でため息をつく男性の顔に、陰鬱な影がかかった。
「……今更なァに言ってやがる」
 ユガミがはっと笑い飛ばすと、男の胸倉から手を離す。
「今からテメェを留置所へ移送する。中断していた”亡霊”の尋問は勿論、脱獄と逃亡生活にまつわ
る尋問もセットできっちり追求してやるからな。覚悟しなァ」
 瞳を怒りに燃やしながら告知するユガミに、男性がこくり頷く。
「……予め言っておくが、向こうに戻ればココネに会えると思ったら大間違いだ。俺の権限全て使っ
てでも、面会なんざさせねェからな」
「そうか。……ついぞジブンにアフロディーテは訪れない、か」
 ふうとため息をついて呟いた男性に、ユガミが目を剥いて息を呑んだ。
「! 映像の目的でもしやと思っていたが……やはりピュグマリオンコンプレックスを応用して感情
を会得していたか……!!」
 ユガミが奥歯をギリギリ食い縛って呻く。
 ピュグマリオンコンプレックス――心理学用語では人形偏愛症(ピュグマリオニズム)と呼ばれる
それは、人間ではなく人形に偏愛を抱いたり、女性を人形のように扱う性癖等を意味する。由来はギ
リシャ神話の【自ら彫り上げた女性像を本気で愛した末に女神アフロディーテから女性像を人間にし
て貰ったピクマリオン】の逸話からきている。
「……ああ。何かを”愛おしい”と思う気持ち。それこそがジブンから”亡霊”を消し去って逃げお
おす為に必要だったからね」
「その為にココネを……ココネをあんなにも苦しませて泣かせて……!!」
 ユガミの顔が真っ赤に染まる。
「ココネはテメェの彫像じゃァねェっ!!!!」
 部屋そのものを震わせるほどの声で、ユガミが叫んだ。
「………………ああ。解っているよ」
 激情に荒ぶるユガミとは対照的に、男性は淡々と冷静なまま口を開く。
「そうでなければ、こんなにも”寂しい”なんて思わなかった。ずっとあの五日間の思い出と幻想の
みを愛して生きていけた。……今更になって、こうして居場所を報せるなんて愚行をしなかった」
 あの日、立ち去ろうとした背中にかけられた心音のか細い声が、男性の背中を撫でていく。
(……あの時、立ち去らずに振り向いてココネクンを見ていたら……どうなっていたんだろうなぁ)
 ふと浮かんだ疑問は、あの五日間の記憶と愛おしいという想いを蘇らせ、男性の胸へズキリとした
痛みを走らせる。
 男性は少しだけ目を伏せると、自虐的な笑みを唇に浮かべた。
「移送するぞ! とっとと手続きしやがれ!!」
 ユガミが男性から背を向け、ドアの外にいるスタッフへ八つ当たり気味に指示を飛ばしていく。
 その背中を眺めながら、男性はふうと安堵の息をついた。
(どうやら、何故今更連絡してきたのかは見逃して貰えるようだな……)
 留置所で死ぬ事になると解っていても、手紙を出した本当の理由。
(……もし、最後の一瞬だけでもココネクン、キミと出会う事が出来たなら)
 そんな希望に縋りながら残りを生きていけるなら。
(たとえ再会が叶わず死んだとしても……ジブンはそうしたい、そう生きたいと思ったんだ)
 今更、遅すぎるかもしれないが、な。
 サイドボードの上、突き返されたくしゃくしゃの手紙をちらと見やって、男性は穏やかに微笑んだ。
最終更新:2021年01月22日 22:53