御剣×真宵①

「御剣検事……」
真宵君が潤んだ目つきで私を呼ぶ。私が近づくと、彼女はそっと目を閉じた。
私は彼女に羽毛のように軽いキスをする。
そのまましばらくその柔らかい唇を味わったが、段々と触れるだけのくちづけがもどかしくなった。
私は感情の昂ぶりを抑えきれずに、彼女の閉じられた上唇を優しく食む。
未知の体験に恐れたのだろうか、僅かに彼女は震えた。私はそれを無視して──しかし最新の注意をもって窺うように──舌で唇の隙間をつついた。
恥らうように真宵君の口唇が開く。
ゆっくりと、だが堪えきれない激情を込めて、私は彼女の舌を絡め取る。
甘やかな真宵君の吐息と、それよりももっと甘い唾液を私は飲み干したいと思った。
私も彼女もすでに衣服は着ていない。
それを少々不思議に思いもしたが、それを深く考える余裕はすでに私には無い。
掌に収まってしまいそうな柔弱なふくらみの感触を楽しんだ。
真宵君はどこもかしこもひどく柔らかく甘い。
私の手は胸を下り、薄い繁みに触れた。そうして彼女の潤んだ秘唇に指を……………………

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

飛び起きた私は、荒い息で肩を上下させている。
私は……なんという夢を……。
そう慙愧の念に悶える私の目に、屹立した布が映った。
……………………思考が停止する。そして一瞬の後、思い直す。
いや、これは男ならば抑制のしようのない朝の現象だ。そうだ、生理現象なのだ。
うん、生理現象には人間逆らえぬからな。
そうだ、トイレだ。トイレに行こう。そうすればこの理性に反する生理的現象など雲散霧消するというものだ。
ザー ゴポゴポゴポ────。

うム、すっきりした。これが本来の私だな。
人間睡眠中には己が思いもしない夢を見るもの。それに少々動じてしまった事は私もまだまだ若輩者ということか。
さて本日の予定を確認しておこう。
今日は土曜日だ。
昨日はコーヒーの懸賞でアメリカ旅行を当てたとかいう成歩堂を見送りに行った。
今にして思えば、メイも成歩堂を憎からず思っているようではあったから……、まぁヤツに運があれば鞭のフルコースを前菜くらいで済ませてもらえるだろう。
私は彼女の弟弟子のようなものだが、幼いメイを妹のようにも思っていたのだ。だから彼女が幸せならばそれでいい。
もし成歩堂とメイがうまくいったとしたら、…………多少複雑な気持ちはするだろうが。
それにしても昨日の真宵君は、見ているこちらも辛かった。
成歩堂の乗るジェット機が飛び立つまで、いや、糸鋸刑事と春美君がいなくなるまで見事に笑顔で通したのだ。
私が声をかけなければ、家に帰るまで……おそらくはひとりきりになるまで、彼女はああして笑っていただろう。
肩を震わせ、しがみついてくる彼女を思い出せば、心の奥から『愛しい』という気持ちが湧き出てくる。
!? 『愛しい』だと!?
いや、愛しいとは小さきものを慈しむ、そういう愛しさであって、決して邪な思いを持った訳ではない。
そうだ、年若な彼女が精一杯堪えながら、それでも抑えきれずに幼子のように泣く彼女の背中を撫で、少しでも彼女の悲しみを流してやりたいと思っただけなのだ。
震える肩、涙に潤んだ瞳、しがみついてくるまだ薄い身体を、宥める為に抱きしめた。
小刻みに揺れる髪の香り、悲しくも甘い彼女の吐息。そうして流される涙のなんと美しかったことか。
…………いかんな、どうも今朝は妙な方向へ思考が向かってしまう。あんな夢をみたせいだろうか。
そんな思いを振り切ろうと、頭を振る。

その時私は妙な感覚を覚えて、視線を下へずらした。
!!
そこには先程と同様に着衣の脹らみが──あった。

く…私としたことが、何という醜態だ。
まぁいい、まだ朝の5時だ。この様な物は時間が経てば治まる。
そうだ、脱線してしまったが、今日の予定を確認していたのだった。
気を取り直して私は、スケジュール帳を見た。
うム、午前中は予定を入れていないな。休みくらいはクラシックでも聴きながら、ゆっくりとした時間を過ごしたいものだ。
「ようし、午後は……と」
午後のスケジュールを確認した私は、血の気が一気に引いていくのを感じた。
……13時真宵君達とトノサマンの映画を見る、だと!?
そういえば、真宵君を何とか少しでも元気づけたいと思って、春美君と糸鋸刑事も一緒に誘ったのだった。
私とした事がすっかり失念していた。
いくら何でも『コレ』は、午後には治まるだろう。
しかし──どうも今日の私はオカシイ。己にも自覚できる程に──。
もしも真宵君がいる時に、こんな事になってしまったら……。
────悪夢だ。
それを回避するには、どう対処すべきか、私は沈思黙考する。
暫しの後、私は『ソレ』しかない事に思い至り溜息を吐いた。
「仕方が…ない」
私はベッドルームへ戻り、一冊の雑誌をサイドテーブルの下から取り出す。
「この私が何故こんな……」
言葉に出すと妙に滑稽で、それでいて虚しい。
私はパジャマのズボンを脱いだ──下着まで。
ソレは私の意に反して、異常に元気な様を見せつけている。
そのまま雑誌を開き、横になりそれに軽く触れた。
己の茎を握り、その手をゆっくりと上下に動かす。
雑誌には、媚びた笑みを顔に貼りつかせた裸の女性が、煽情的なポーズをして写っている。
それを眺めながら私は、暗澹たる思いで自分の手に更なる上下運動を命じた。

数ページ進み、それなりに自分の中に欲望の高まりを感じてはいるのだが、いまひとつ盛り上がりに欠けているような気がする。
忙しさのあまり自分でそういった欲望を処理する必要もない故に、めったにしない事をしているという緊張感があるのだろうか。
「おかしいな、先程真宵君の事を思った時は……!!」
『真宵君』と呟いたとき、脳髄まで痺れる様な電流が走った。
これは、かなり、まずい状態と言わざるを得ない。私は彼女の名前に反応している…のか?
そんな訳は無い、頭を振って、私はその雑誌を読み進める。
雑誌の中の女性達は美しい裸身を存分に私に提供してくれている。
──にもかかわらず、私自身はそれに応える欲求を覚えず、精神的局所的苦痛だけが増えてきた。
真宵君の事を考えれば、この虚しい行為も早く終るかもしれない。
すでに目的と手段が判らなくなってしまった私は、一縷の望みを托して雑誌から手を離し、そそり勃った自分自身を両手に預けた。
目を瞑り、空港での彼女を思い出す。
──震える肩を抱きしめた。すぐにそれは嗚咽に変わり、私の胸へとダイレクトに伝わってきた。
それを思い出しただけで、これまでの疲労と苦痛が痺れるような感覚へと変わった。
ゆっくりと上下する片手と、もう一方は先端を探る。
今度はまだ生々しく感触を覚えている、今朝己の見た夢を頭の中で再現する。
──彼女の唇の柔らかさ。そのちいさくふくらむ双丘。
頂上から粘り気が込みあがる。それを掬い取り、根元へ向かって塗りこめる。
──細く柔らかい繁み、そして触れかけた潤んだはずの……。
我知らず速くなる手の動きに、私は激しい快感と昂ぶりを覚え、ティッシュを求めた。
「くっ…ま…よい…くん……」
思わず呟いて私は、その愚かしい欲望を吐き出した。

なぜだ! 私は何故あのような事をしてしまったのだ。
つい数分前の己の所業が恨めしい。
今日、午後には真宵君と会わなければならないというのに、あのような事をしてしまって、彼女にあわせる顔があるだろうか。
彼女の目をまともに見る事はできないだろう……罪悪感故に。
私は頭をかかえた。
こんな状態で真宵君に会えるはずがない。
────しかし、約束を反故にする訳にもいかない。
何しろ弱々しく泣く彼女がまがりなりにも笑顔を見せたのは、トノサマンの映画で気持ちを少しでも浮上させたからなのだ。
それを私の個人的感情で消すことはしてはならない。
そうだ、こんな最悪の気分は熱いシャワーで流してしまおう。そして熱く苦いコーヒーで、私の理性的思考を叩き起こすのだ。
幸いまだ時間はある、ゆっくりと気持ちを切り替えて、第一に真宵君の事を考えるのだ。
そう、あの少女にこれ以上悲しい思いをさせてはならないのだ。

そう念仏のように何度も繰り返し、何とか気持ちを切り替え(ようと)、御剣は風呂場へと消えた。
しかし彼は、シャワーを浴びている最中に思わず真宵の事を考えてしまい、再びひとりで切ない声をあげるハメになってしまったのだった。




待ち合わせの喫茶店に時間より15分ほど早く着いてしまった私は、気だるい身体を背もたれに預ける。
今朝の悪夢は──いや、現実にあった事ではあるのだが──精神のみならず、私の身体をも蝕んでいた。
全身を疲労感が襲う。結局起きてから出かけるまでに……3回も…私は…………。
とてもではないが、真宵君に会わせる顔が無い。
──しかし、会わない訳にはもっといかない。
強烈なジレンマを感じ、深い溜息を吐いたとき、賑やかな声が聞こえた。
「ここッスよ。待ち合わせの店は」
「わー、すてきー」
「ま、真宵さま、わたくし喫茶店なるものに入るのはじめてですー」
「ああ、御剣検事はもうお待ちになってるッスね」
── 来た! ──
落ちつけ、落ちつくのだ、御剣怜侍。
所詮今朝の出来事を知るのは、私ひとり。真宵君達にはもちろん知る由もないのだから、己さえしっかりと持っていれば、何の事はない。
糸鋸刑事が私の隣、向かい側に真宵君と春美君が座った。
私はできるだけ自然に話しかける。
「糸鋸刑事が遅刻もせずに時間通りに来るとは珍しいことだな」
そう笑って話し掛けたつもりだったのだが、糸鋸は神妙な顔つきで私を見た。
「……御剣検事、どうかしたッスか? 何か顔色がお悪いッス。目の下にうっすらとクマも……」
「あれー、ほんとだ! みつるぎ検事どうしたんですか?」
そう、私の顔色が今現在よくないのは、自分自身が一番よく解っている。
だからちゃんとその質疑応答についても対策はたててきていた。
「うム……いや、昨夜は過去の事件の調書などを読んでいて、遅くなってしまってね」
本当は忌々しい事に朝から体力を使ってしまったからなのだが……。
「さぁ、早くシアターへ行こう。チケットは手配してある」
私が立ち上がると、真宵君と春美君は嬉しそうに笑った。……なぜか糸鋸までが一緒になってはしゃいでいるが、放っておこう。
とにかく真宵君との約束さえ果たしてしまえば、後は家に帰るだけだ。
私はそれだけを考えつつ、できるだけ真宵君の方を見ないようにしていた。
──悪夢だ……。
一体何故この様な状況に陥ってしまったのだろう。
何事もなく映画を観終え、そうして何事もなく私は帰宅するはずだった。
それなのに────!!
午前0時現在、私の家のリビングのTVにはトノサマンのTVシリーズ第10話が映し出されており、春美君はその前でうつらうつらしている。
真宵君も春美君の隣で眠たそうに目をこする。
糸鋸はソファで横になり、テーブルの上に酒を広げたまま大きないびきをかいている。
……何をどうして今、この様な事態になってしまったのか……。

映画を観終わって、シアターから出ると、真宵君が頭をさげた。
「みつるぎ検事ありがとう。トノサマンの映画、すっごく楽しかったです」
やや興奮した面持ちで春美君も言う。
「ええ、本当に楽しい時間を過ごさせていただきました。わたくし、トノサマンがこんなに面白いものだとは思っておりませんでした」
「ねー、言ったでしょうハミちゃん。……あーまたトノサマンのTVシリーズ見たくなっちゃった!」
昨日とはうって変わって、真宵君はご機嫌のようだ。何とか私の苦労も報われたというところだろうか。
「真宵様、わたくしもぜひテレビシリーズが見たいです」
「うーん、そうだね、今度レンタルでみよっか。…………でもう~~~ん、今映画見たばっかりだからかなぁ、すぐ見たいな~~~」
「じゃあじゃあ、今日れんたるして帰りませんか?」
子供同士の無邪気なやりとりが微笑ましい。そんな光景を見ると余計に今朝の我が身の罪深さが身に染みる。
しかし、こんな子供らしい姿を見れば、今後二度とあの様な事にはならないだろう。
ふと見ると、真宵君は少々複雑そうに、誰に言うともなく笑った。
「大きなスクリーンでトノサマン見たら、オートロの家にあったテレビとか思い出しちゃった。……あの時はあんな画面で見れたら死んでもいい、なんて思っちゃったんだよね~」

二ヶ月程前、彼女は誘拐された。その時の事を思い出しているらしい。
それ以前にも彼女は二度も殺人犯として留置され、その度に肉親との別れを余儀なくされた。思えば辛い体験をしてきた少女だ。
しかも一度は私が担当した事件だった──。
そんな彼女の境遇を思い、つい口にしてしまったのだ。
「家にはTVシリーズが全てある。王都楼ほどのAVシステムではないが、そこそこ楽しめると思う…よければ明……」
そこまで言って、真宵君と春美君はキラキラとした瞳に言葉が途切れた。そしてやはり何故か糸鋸までが……。
「「「トノサマン見たい トノサマン見たい トノサマン見たぁい」」」
やめろ、糸鋸。真宵君と春美君はともかく、貴様が瞳を光らせ、両拳を口元に持っていく姿には異議あり! だ。
そうして今の状況がある。
明日来るといい、という言葉を私が言う前に、三人の中では本日訪問、が決定していた。
この私が結局、『待った!』も『異議あり!』も言う隙さえなかった。

視線をTVの前に戻すと、ついに沈没してしまった真宵君が目に入る。
仕方がない、春美君と真宵君には寝室を使ってもらおう。
真宵君を起こさないよう、春美君を抱え上げる。
そのまま寝室へ運び、ゆっくりとベッドへ下した。
布団をかけるとき、ふと目に入ったゴミ箱に、今朝の己を思い出し赤面する。
本当に、何故こんな事に……。
そのままにしておくのも躊躇われ、とりあえずゴミ箱を持って寝室を出た。
ゴミ箱をキッチンに置き、リビングへ戻る。
──糸鋸はあのまま転がしておけばいいだろう。
真宵君の邪気の無い寝顔を見ると、再び己の所業に胸が痛んだ。
そっと抱き上げ、寝室へ向かう。
ベッドへ下したとき、真宵君が呟いた。
「なるほどくぅん……」
成歩堂、この少女は眠る時でさえ、お前を想っているのだ。それをお前は知らない。
勿論ヤツに責任があるわけではない。それは解っているが、思わず知らず成歩堂への怒りが込み上げる。
だが、寝室の扉を閉めながら、怒りとはまた別種の感情が私の中に生まれつつあることに気づく。
それを自覚したくない私は、糸鋸がテーブルに広げた酒のひとつを苦い思いと一緒に飲み下した。

小一時間もした頃、寝室の扉が小さな音と共に開いた。
視線をやると、真宵君が立っている。
「ごめんなさい、あたし、眠っちゃったんですね」
我ながら呆れるほど早いペースで飲み続けたアルコールで、私の妙な気持ちはどうにか封じ込められているようだ。
「構わない。ゆっくり眠るといい」
できるだけ優しく笑うと、真宵君も笑った。
「あのー…みつるぎ検事……」
「?」
「のど渇いちゃったんですけど、何かもらっていいですか?」
「ああ、冷蔵庫にミネラルウォーターがあるはずだ。持って来よう」
「すみません」
私は立ち上がり、キッチンへ向かう。冷蔵庫のドアを開け、ボトルを取り出した。
「あー、お水、こっちにあるみたい。これもらっていいですかー?」
そう真宵君の声が聞こえた。──そうだったろうか……覚えがないが……。
「それはかまわないが、今冷えたのを持って……」
そこまで言って、私は思い出した。
「真宵君、それは水では……」
テーブルには確かに水のボトルがあった。しかしそれには量り売りで買った泡盛が入っていたはずだ。
水のボトルを手に私がリビングへ戻ると、真宵君は激しく咳き込んでいた。
まさか酒だとは思わず、一気に飲み込んでしまったらしい。
咳き込む背中を何度か叩き、冷蔵庫から出してきた水を渡す。
真宵君は急いでそれを飲み干した。
だが度数の高い酒を少なくない量飲んでしまったらしく、顔はすでに真っ赤になっている。
「これー…お水じゃなかったみたい~」
「ああすまない。これは泡盛だ。こんなボトルに入れておくべきではなかったな──真宵君大丈夫か?」
「うー、何かからいっていうか…あついっていうか……」
真宵君の目がとろんとしてきた。
「…………みつるぎ検事……」
「どうした、気持ち悪くなったのか?」
私は焦って聞いた。
「あたし、オンナとして魅力ない?」
「い、いきなり何を……」
「だって…なるほどくん……アメリカ行っちゃったもん…………あたしを置いて……行っちゃった…」
真宵君の心の傷は、未だ生々しく開いているのだろう。
「真宵君、安心しなさい。成歩堂に見る目がなかっただけだ」
したたか酔っていたせいもあって、私は空港で言った言葉をかけるしかできなかった。

だってだって、と繰り返す真宵君を宥めて寝室へ連れて行く。
春美君の眠る側に横たわらせ、私は笑う。
「とにかく、ゆっくり休みなさい」
そう言って立ち上がりかけた私の腕を真宵君が掴んで引っ張る。
「ねぇ、あたし、そんなにオンナの魅力ない?」
何度も繰り返した言葉を口にする。
「いいや、君はとても魅力的な女性だ。それが解らない成歩堂が愚かなのだ」
そう言う私を真宵君の瞳がまっすぐ貫く。
「異議あり! 証拠もなしに、そんな事言わないでよ みつるぎ検事」
上気した頬と、ごく近くにある真宵君の吐息。アルコールで思考の痺れた私には、それ以上の抑制がきかなかった。
真宵君の唇を私の唇で塞いだ。柔らかくけれど弾力のある唇に触れる。
無理やり口唇を開かせ、私は舌を侵入させた。
躊躇う彼女の舌を己の舌で絡めとリ、夢よりもなお甘い、彼女の唾液を吸い尽くそうとキスを続けた。

これ以上続けると、本当に理性が消えてしまう。そう思って唇を離すと、急に寒くなった。
「これが証拠だ。君は男にこんなキスをしたいと思わせるほど、魅力的な女性だ」
やっとそれだけ言って、私はベッドから離れた。

何とか格好をつけて、真宵君から離れた私だったが、私自身はかなり欲望に忠実だったようだ。
今朝の如く痛いほどに屹立した自分を認める。
「…………」
寝室には真宵君と春美君、リビングには糸鋸。
この状態の私が向かうべき場所は、最早トイレかバスルームのみ。
しかしトイレではあまりにも情けない。
結局私にはバスルームへ行くしか道は残されていなかった。


こうして朝同様、バスルームへと消えた御剣怜侍に、果たして幸せは訪れるだろうか。
それはまだ、誰にもわからない。
最終更新:2013年05月06日 19:35