冥×糸鋸

「狩魔検事、お話があるッス!」
夜。その部屋には一人だけ、狩魔冥しかいなかった。
「なに?」
冥は作業を続けたまま、部屋に入ってくるなり大声で叫んだ男──糸鋸圭介に聞き返した。
「こ、今月の給料は何スかっ!これじゃ本当にソーメンしか食えないッス!どうして自分が──ぐわっ!」
言葉はどこからか伸びてきたムチによって遮られた。
「どうしてそんな話を私にするの?」
「うう……」
いつのまにかムチを装備している冥に睨まれて萎縮しながらも、糸鋸はヒリヒリと痛む顔をさすりながら説明を始めた。
「今回の自分の給料査定が狩魔検事の一存で決まったって聞いたッスから……どうにか元に戻してもらおうと直訴に来たッス……」
「ふぅ……馬鹿が馬鹿にふさわしい査定を受けただけなのに不平を言うなんて、馬鹿の馬鹿馬鹿しさには呆れかえるわね」
「そ、そんな……ひどいッス!あんまりッス!横暴ッス!」
必死で糾弾する糸鋸に、冥は冷たい視線を投げかけてさらに致命的な言葉を突きつけた。
「その様子じゃあ来月の査定ではさらに素晴らしいミラクルが起こりそうね」
「ぐああああああああああああああっ!!」
「帰りなさい、糸鋸刑事」
崩れ落ちる糸鋸を横目に、冥は明日の法廷の準備を再開した。
「……こうなったら……アレしかないッス……」
つぶやく糸鋸の決意の眼差しに彼女は気づかなかった。

立ち上がった糸鋸はゆっくりと冥のデスクに歩いていった。
冥が顔を上げて言う。
「帰りなさいと言ったはずよ」
「最後の手段ッス……」
「最後の手段?」
冥は訝しげに聞き返した。糸鋸はすでにデスクを回り込んで彼女のすぐ横にいる。
「こうするッス!」
「!」
糸鋸は冥がムチを手にするよりも先に彼女の両手を掴みあげた。キャスター付きの椅子を蹴り飛ばし、空いた床に押し倒す。
「いたっ…」
尻餅をついて痛がる冥を無視して糸鋸は手錠を取り出すと、素早くデスクの脚を間に入れて彼女の両手に手錠をかけた。
バンザイの形で冥の両腕は固定され、両足もその上に腰をおろされて動かせない。
「な、なにを……!」
「最後の手段ッス!」
糸鋸が取り出したカメラを見て、冥に決定的な動揺が表れる。
「ふ、ふざけないで!こんなこと……!」
糸鋸は冥の言葉を無視して彼女の胸元のリボンを解き始めた。
「やめなさい!」
冥がいくら腕を動かそうとしてもほんの少しデスクをずらす程度のことしか出来ず、彼女の力では両足にかかった糸鋸の体重をはねのけることも出来なかった。
「この場面を写真に撮って、アップ査定と交換するッス!取引ッス!」
糸鋸は冥のベストのような奇妙な上着とシャツ(?)のボタンを外しにかかる。
「やめないとタダじゃすまないわよ」
顔には焦りの色が浮かんでいるものの、彼女の口からはまだ高飛車なセリフが飛び出してきた。
「さすが狩魔検事。強情ッスね。……ええい、めんどいッス!」
「きゃああっ!」
よくわからない構造になっているシャツを剥くのに手間取っていた糸鋸は、業を煮やして力任せに引っぱった。生地が伸び、ボタンが飛び散る。
そのままシャツのボタンを全部外す(引きちぎる)と、冥の胸元からおなかにかけての白い肌と少々小振りな乳房を隠す黒い下着が露わになった。
都合良く前側にあったホックを外し、ブラジャーをはがして桜色の突起をも晒す。
彼女の強気さとは裏腹に頼りない華奢な身体だ。
「胸、小さいッスね」
「うるさいっ!」
「い、いや、でも形はきれいッス!」
「そんなフォローはいらないっ!」
糸鋸の素直な感想に半ばムキになって言い返してきたものの、抵抗は諦めたのか、あとは睨み付けるだけで何も言わなかった。

糸鋸はカメラで冥のあられもない姿を撮りはじめた。
「くっ……」
冥は腕で顔を隠そうと試みたが、繋がれた腕ではしようがない。結局顔を背けて目をつむる事しか出来なかった。
「許さない…ムチの…フルコース…覚悟しなさい」
屈辱に歪んだ顔で、しかしはっきりと冥は言い放った。
「ムチ……ちょうどいい機会ッスね。”その”仕返しもやるッス」
写真さえ撮れればそれ以上の事をするつもりはなかった糸鋸だが、両手を束縛された半裸の冥の身体を撮っているうちに、ムラムラとこみ上がってくる欲望を抑えることが出来なくなっていた。
「えっ?……ちょっと……」
立ち上がり、デスクの上に置いてあったムチを手にした糸鋸を、冥は引きつった表情で見上げた。
ビシッ!
「うっ!」
ムチの一撃が冥の柔らかな胸を襲った。白い肌に一直線の痕があかく浮かび上がる。
ビシッ!
「あっ!」
ビシッ!
「痛い!」
次々にムチで打たれて冥は痛みに涙をにじませた。
糸鋸が立ったため両足は自由になったものの、両手が固定されていては多少身をよじるのが精一杯で無防備な部分を守ることなど出来るはずもない。打たれるたびにあざでき、体中で汗が吹き出した。

「うう……」
散々打たれて、冥の身体はあざだらけになっていた。
息も絶え絶えに、じっと糸鋸に涙の浮かんだ目を向けている。
さすがに意気消沈したか、と糸鋸が思った頃、
「……100倍にして、返すから……覚えてなさい……」
「検事の根性、本当にすごいッスね……」
糸鋸は半ば呆れまじりに感嘆したが、実は彼女の身体をムチで打つという行為に少なからず興奮していた。
「……このままじゃあ収まらないッス」
「な、なにが……?」
「ナニがッス!」
「ちょ、ちょ、ちょっと、待って……!」
糸鋸はしっとりと汗で濡れている冥の乳房に顔を埋めた。
彼女の匂いに糸鋸の理性が削られる。
胸元についたムチの痕のひとつに舌を這わせると、冥がピクリと反応した。
「や、やめて」
柔らかな乳房を吸い、乳首をチロチロと転がすたびに冥の身体は震えた。彼女の胸が唾液にまみれていく。
冥はときおり抗議の声を上げていたが、糸鋸はすべて無視した。
はだけた服に手を入れて、冥の背中を触れるかどうかの微妙なタッチで撫でると、
「んっ……」
のけぞって、くぐもった声が漏れた。
(思ったより敏感ッスね……元々感じやすいのか、それとも今までの行為で高ぶってたのか…まぁ、どっちでもいいッスけどね)
糸鋸は冥の身体に舌を這わせたまま上目遣いに彼女の顔を観察してみた。
冥の顔は汗ばみ、朱に染まっている。さっき涙ぐんでいたため、瞳が濡れている。心なしか息も荒くなっているようだ。
「タダじゃ…すまさないわよ……」
彼女の口からは未だに強気な言葉が出てくるが、糸鋸には誘うような表情にしか見えなかった。
「さっきちょっと感じてなかったッスか?」
「な、なにを馬鹿な……」
「それならそれでいいッスけどね」
糸鋸は冥のズボンのベルトを外した。
「腰を上げてもらえるッスか?」
「……」
無理矢理下ろすしかないか……と糸鋸が考え始めた頃、冥がおずおすと腰を浮かせたので彼はズボンを下着ごと一気に引き下ろした。
「やっ……!」
下着も一緒に脱がされるとは思ってなかったのか、声を上げた冥の下半身に糸鋸は手を伸ばした。
しばらく毛の感触を楽しんだあと、柔らかい部分に指を這わせる。
「狩魔検事、ここ、濡れてるッスよ」
「そ、そんなはずは……」
「これが証拠ッス」
冥の割れ目に少しつき入れた糸鋸の指先には、透明な粘液がからみついていた。
「うっ……」
その指を見せられた冥が呻く。
反論できない冥に気を良くした糸鋸は彼女の性器に手を戻し、今度は奥まで指を差し込んで膣がうねり、からみついてくるのを味わう。
割れ目の上の突起を愛液で濡らした指で撫でると冥の下半身が揺れて、彼女の口から声が漏れた。
「あっ……」
割れ目を撫で、熱い内部をかき混ぜ、敏感な突起を転がすと粘液と甘い声が溢れ出てくる。
「ああっ……はぁっ……」
冥の下半身は彼女の意志とは無関係に、糸鋸の指に反応して揺れている。
その悩ましげな腰の動きに、糸鋸の興奮が高まる。
糸鋸は思わずズボンとトランクスを脱いでいきり立った男芯を解放した。
男芯を割れ目に近づけようとして床に膝をついたときに、上気した冥が荒く息をつきながら糸鋸の顔と性器を交互に見ていることに気がついた。
まだ何か言うのかと糸鋸がしばらく様子を見ていると、彼女の薄い唇から意外な言葉が紡ぎ出された。
「はやく……」
かすれた声での懇願を受け、糸鋸は冥に覆い被さった。

「ああっ……」
一気に突き入れると冥は声を上げ、糸鋸の男芯をきゅっと締め付けた。
「うっ……」
男芯から全身に伝わる快感に、思わず声を出す。。
性器同士が擦れ会う感触を味わいながら糸鋸はゆっくりと腰を動かし始めた。
「…あっ……あんっ……ああっ……」
糸鋸の先端が冥の奥に達するたびに粘液が分泌され、声が上がる。
汗ばんだ身体をいいいように揺すられ、朱に染まった顔で半開きの唇からあられもない声を漏らすその姿は、普段の凛々しい狩魔冥検事からは想像もできないほど淫らだ。
糸鋸は彼女の乳房を愛撫しながら囁いた。
「狩魔検事、すごく、いいッス……」
「馬…鹿……」
糸鋸は冥の背中から頭に両手をまわして身体にのしかかると、虚ろな眼差しで見つめる彼女の唇を塞いだ。くたびれたYシャツの下で冥の細い身体が潰れる。
糸鋸が冥の舌を探ると彼女も応じてきた。腰の動きを続けたまま、舌を絡め合い、口の中を探り合った。
「うっ……ぐっ……」
息苦しいのか、唇と唇の隙間からくぐもった声が漏れたので糸鋸は冥の口を解放した。
冥はぐったりと首をのけぞらせて大きく喘いだ。
「はぁ…ああぁ……」
結合部の愛液はますます増えていた。
二人の息づかいと衣擦れの音に混じって、クチャクチャという音がかすかに響いている。
「こんなの……いや……」
その音に気づいたのか、冥は目を閉じて顔を背けた。その反応に糸鋸の嗜虐心が刺激される。
「この音…狩魔検事のものッスよ……」
「ち…がう……」
「違わないッス……」
「いや……」
冥がかすれ声で否定するたび、彼女の膣は吸い付き、うねった。
(もう…ヤバいッス……)
男芯が吸い込まれそうになる錯覚を覚えて、糸鋸は冥の身体を強く掴んだ。

「…ああっ…あん…はぁ…あんっ……」
冥の身体は火が着いているかのように熱かった。腰の動きに合わせてその身体が前後し、熱っぽい声が響く。
出し入れが早まるにつれて粘液がかき混ぜられる音と下半身同士がぶつかる音が大きくなった。
腰に感じていた心地よい痺れは全身にまで広がっている。限界が近い。
「ああっ!」
冥が高い声を出して全身をのけぞらせた。
「…あっ!…だ…め……ああっ……」
糸鋸の男芯がきゅっきゅっと締め付けられて猛烈な射精感に襲われた。
「あっ、で、出るッス……!」
糸鋸の男芯が何度も跳ね、精液が放たれて膣内に広がっていく。
冥の膣は最後の一滴までも吸い取るかのように締め付け、うごめいた。
糸鋸は射精が終わると、きつく目を閉じて荒い呼吸を続けている冥に体重を預けた。

「ちょっとやりすぎたッス。すまないッス」
体中のムチの痕をさすっている冥に糸鋸は謝った。解放はされたものの、まだ服を着る元気もないらしい。
「と、とにかく査定のほうをよろしくお願いするッス。そしたらこのカメラもきちんと渡すッスから──」
そう言って糸鋸が足下にあった冥のズボンを拾おうと屈んで、彼女から目を離した瞬間、
「この馬鹿刑事っ!」
「ぐぎゃっ!」
ムチで頭を一閃された。
「この馬鹿っ!馬鹿っ!馬鹿っ!馬鹿っ!馬鹿っ!馬鹿っ!馬鹿っ!馬鹿っ!馬鹿っ!」
「あがががががががががががっ!!」
一瞬の隙をついてムチを手にした冥は、怒り狂った形相で糸鋸が失神するまでムチを振るった。

糸鋸の目が覚めたときには冥はいなくなっており、取引に使うはずだったカメラも消えていた。
彼の薄給生活は当分続きそうである。

~おわり~
最終更新:2006年12月13日 08:34