ちなみ×千尋①


心に刻み込められた傷は、癒されはしない。
満たされる物など、何一つ無い。

だからこそ、傷つける事を決める……


-婬雨- (ながあめ)


二月のある寒い日。
寒空の下、一人の女性が風に当たりながら立っている。
綾里 千尋。
弁護士生活の第一歩を、癒えない心の傷によって、めちゃくちゃにされた女性。
千尋は辺りを見回した。
(確か、この辺りのはずなんだけど……)
冷えた手をもみほぐしながら、そう思った。
こんな日に、寒空の下に立っているのには、訳が在る。
千尋はポケットから紙を取り出す。
薄ピンク色の紙には丁寧な字が書かれていた。
『綾里 弁護士 様

 ごきげんよう、弁護士さん、美柳 ちなみですわ
 急なお手紙に、驚いていらっしゃいそうですわね
 実はわたくし、あなたに、お話しなくてはならない事がありますの
 つきましてはお会いしたいのですが、よろしいでしょうか?
 ご都合が付きましたら、二月○日にお会いしましょう
 時間は○○時○○分 ××××前でよろしくお願いしますわ』

美柳 ちなみ。
千尋が癒えぬ心の傷を負った原因とも言える人物。
手紙は続く。
『二月十六日は本当に残念な事になりましたわね
 胸中察しますわ、綾里弁護士さま?』
ぐしゃ、と千尋は手紙を握り潰した。
(胸中察しますわ、ですって?)
唇をかみしめ、千尋は法廷をにこやかに微笑んで出て行ったちなみの事を思い浮かべた。
彼女の魔性の『美』のために、一人の人間が死んだと言うのに。
無念を晴らしたい。
千尋は自分の依頼人の無念を晴らすべく、また自分の無念を、自分の先輩の無念を晴らすべく、こうしてちなみの呼んだ場所に立っている。
自分の先輩である神乃木は、千尋の事を止めようとした。
絶対何かが在る、行くな、と。
しかし、千尋は行くと決めた。
売られた喧嘩は買う、と言う訳ではないのだけれど、もしかするとこれは、ちなみの事を掴み取るチャンスなのかもしれないと、千尋はそう思ったからである。

そして、時間通り来てみたのだが。
ちなみは、居ない。
(約束をすっぽかして喜ぶような相手じゃないと思うんだけど……)
確かに、ちなみは性格が良いとは言えない。
千尋に対しても良い感情は抱いていないだろう。何せ、二月十六日の裁判の証人として出た彼女の事を追い詰めかけたのだから。ちなみにとっては良い迷惑だっただろう。
しかし、こんな些細な嫌がらせで満足するような人物ではない事くらい、千尋には分かっていた。
(絶対、追い詰めてみせる……)
「ごきげんよう、弁護士さん」
「きゃあっ!」
後ろからいきなり声を掛けられ、思わず悲鳴を上げる千尋。
「って、美柳 ちなみさん……」
そこには、約束をした人物、ちなみが居た。時計を見てみると、時間ぴったりだ。遅刻、ではない所が悔しい。
「お寒い中を、お待たせてしてしまいましたようですわね」
ちなみの言葉に、「いいえ、わたしも今来た所ですから」と、千尋は嘘を吐いた。
別にちなみの事をかばい立てする積もりは無かったのだが、まあ要するに、決まり文句みたいな物である。
「それで、わたしに話さなければならない事って、一体何?」
「くす……」
ちなみは微笑んだ。あの時、法廷で見せた微笑みと同じ顔で。
「……」
その笑みに、千尋は何も言わなかった。しばらく黙った状態が続いたが、ちなみが唇を開いた。
「まあ、取りあえず、お食事でもいかが? 弁護士さん」
「弁護士さん、は止めて貰えない?」
千尋の言葉に、ちなみは冷ややかに笑った。
「そう……お嫌なのですね。自分が弁護士だ、と言う事に」
「!」
その冷ややかな目で見据えられた時、千尋は見透かされているのではないかと思った。
「でも、わたくし……あなたの事、はっきり言ってお名前でお呼びしたくありませんの」
(結構な嫌われ方ね……)
千尋は内心、嫌になった。
けれど、どうして彼女が自分の事を呼んだのか分からない。
取りあえずそれだけでも聞き出さなければならない。
上手く行けば、チャンスなのであるから。
「それでは、どうぞついて来て下さいな」
「良いけど、何処に?」
「わたくし、レストランにご予約をいたしましたの。そこでお食事でも取りながら、ぽつりぽつりとお話しいたしますわ」
ちなみの言葉に、千尋は眉をしかめた。
何故、彼女が、自分と食事を取ろう、何て思ったのだろうか。
彼女にとって、メリットは無いはずだ。
「お疑いですのね。このわたくしを」
ちなみが微笑む。
読めない笑顔だ。
「けれど、わたくし一緒に食べたいと思いましたのよ。あなたと」
ぞくり、とした。
その笑みは冷ややかさを通りすぎて残忍であったから。
千尋は心の何処かで恐れる。
(駄目よ、千尋! ここまで来たら、後には引けない!)
ごくり、と生唾を飲んでから、「分かったわ」と千尋はかろうじてそれだけ言った。
その言葉に、ちなみは優しく微笑む。
千尋は知っている。
その笑顔は、決して親愛を表してなどいないと言う事を。
それでも、千尋は先を歩き始めたちなみの後を、黙ってついて行った。

温かなデパートの高層部。
千尋は目の前に現れた高級レストランの姿に、ひるんだ。
(こ、こんな所、一度も来た事無い!)
寂しい事に、神乃木ともこんな所には来た事が無かった。
流石は、美柳の人間だけは在る。
美柳の言えと言うのは、大金持ちだと言う事が、二月十六日の裁判で判明した事だ。きっとちなみにとって、こんなレストランなど当たり前の範疇なのだろう。
(何てうらやましい……じゃなかった、無駄な生活してるのよ!)
そんなんだったら、少しは今の社会に貢献しなさいよ、などと心の中で愚痴りながら、さっさと中に入って行ったちなみの後に千尋も続いた。
中を照らす証明が、少々まぶしいくらいだ。そして、床にはじゅうたんなどが敷いてある。
(うっ……よ、汚せない)
本当、神乃木を呼ばなくて良かった、と心底思った。
神乃木は千尋が行くのを止めないと分かると、今度は「俺も行くぜ」などと言い始めたのだ。
それを何とかして来ないように千尋は神乃木の事をなだめ、ここに居る。
そのための代償は、夜通し神乃木の色々な相手をする事であったのだが。
とにかく、千尋が神乃木を呼ばなくて良かった、と言うのには訳が在る。
先日事務所にて些細な事を千尋に突っ込まれた彼は「突っ込まれたらダメージを受ける、それが俺のルールだ!」などと訳の分からない事を言い、事務所のじゅうたんに向けてコーヒーを吹いたばかりであったのだ。
コーヒーの染みは落ちない。
それがましてやこんな高級レストランのじゅうたんであったら、もはや千尋は監督不行届を言われてしまう。
「こちらですのよ、早くおいでなさいな、弁護士さん」
ちなみの声に、千尋は我に返った。
こんな時にも神乃木とのやり取りを思い出している自分が恥ずかしくなり、黙って千尋はちなみが手招きする部屋へと入った。

結構離れた所にぽつんと位置する部屋。
そう、部屋だ。
個室だ。しかも、VIPと書かれている。
『Very Important Person』、だ!
高級レストランで、個室、しかもVIPなどとは……千尋は正直言うと、金持ちだと言う事をひけらかされているような気がしてならなかった。
コーヒーの一杯や二杯、こぼしてやろうかと思ったが、ひけらかしているのは美柳 ちなみであって、ここのレストランには何も罪は無いのだ。そんな事を思って、千尋はコーヒーをこぼそうとする事を思い直した。
ちなみはそんな千尋の胸中を察しているのかいないのか、とにかくにっこりと微笑んだまま、黙って部屋に入り、そこに在る椅子(これも結構豪華な物である)に腰かけた。
千尋もひるみながらも部屋の中に入ると、椅子に同じように腰かけた。
「今、フルコースが参りますわ」
(こ、この女!)
法廷の時のように、机をばしんっ! と叩いて異議を申し立てようかと思ったが、場所が場所なだけに、千尋はマナーを守って黙っていた。
(よりによって、フルコースと来たか……)
これはもう、嫌がらせとしか言いようが無い。
言いようが無いが、こちらは四歳も年上なのだ。年上は年上らしく、年下に花を持たせたほうが良い。
怒りを沈めようと密かに深呼吸をする千尋を見て、ちなみは微かに口の端を持ち上げた。
「お酒は飲めますの?」
「のの、飲めるわよ! それくらい!」
小馬鹿にしたようなちなみの言葉に、千尋は思わず声を上げた。そして「あ……」と言ってから、赤面して口を閉じた。
一方のちなみは、「それは良かったですわ」と言って微笑んだ。
「楽しみにしていて下さいね」
「そんな事より……どうしてわたしを呼んだの? わたしに話したい事って何?」
「まあ、わたくし、こう言いましたわ。『お食事でも取りながら』と。お聞こえになっていませんでしたの?」
いちいち気に障るような言い方をされ、「ぐっ……」と千尋は唸った。とは言っても、ちなみの言っている事は本当で、先程から『食事をしながら』喋るとは言っているのだ。
だが、こちらも慣れあっている積もりなど無い。千尋は何とかして早く話しておかなければならない事を聞き出し、早々に切り上げようと思っているのだ。(まあ、そうは言ってもこうした高級レストランのフルコースなどと言うのは、なかなか魅力的なのであるが)
(く、悔しい……こんな子に、馬鹿にされ続けるなんて)
唇を千尋が噛みしめた時、扉が開いて、ワゴンが運ばれて来た。
「お待たせしました」
「ほら、お待ちになっていたフルコースが来ましたわよ、弁護士さん」
ウェイターの言葉に、何とか千尋が爆発するのを抑える事が出来、ちなみの言葉に、再び爆発しそうになる千尋。
そうしている間にも、ウェイターは迅速に料理をテーブルの上に配置させて行く。
しばらくすると、全て出し終わったウェイターが、最後にワインを取り出した。
「あ、それはわたくしが注ぎますわ」
「し、しかし……」
「わたくし、このフルコースが待ち遠しくてたまらない弁護士さんと仲良しさんになりたいんですわ」
ちなみの言葉にウェイターは「そうですか」と言って、蓋を開けるまでをして、ちなみに手渡した。
「ふふ……ロマネコンティですわよ」
挑発するように、その価値を言って来るちなみ。言われ続けている千尋の脳内は、もはや切れる寸前の綱がみしみしと悲鳴を上げている。
(お、落ち着くの、千尋! こんな所で怒ったら、相手の思うツボなんだから)
数回深呼吸をすると、千尋はふてぶてしく笑った。
もうピンチである。
「まあ、ごゆるりとお食べになりましょう」
(敬語、間違ってるわよ!)
声でこそ言わなかったものの、千尋は思わずちなみに突っ込んだ。

ちなみは微笑んでワイングラスに赤ワインを注ぐと、千尋に手渡した。
千尋は「ありがとう」とだけ言い、そのワイングラスを受け取る。
「でも、食事にダージリンって、合わないんじゃないかしら」
「まあ! お食事は見た目にも細心の注意をお払いにならなければなりませんのよ。不細工な寸胴のコップに入れたお水なんて、この場にはお合いになりませんわ」
そう言って、ちなみはカップを美しく摘まみ上げると、千尋の方に向けた。
「一応、乾杯をなさらないと始まりませんわね」
それが、『完敗をしないと始まらない』と言う風にも捉えられて、千尋は思わず拳を作った。
完敗。
二月十六日の、あの虚しい完敗。
判決こそ下されなかったものの、千尋の中には依頼人を助けられなかったと言う敗北感が拭えなかった。
「……」
千尋は黙ってワイングラスを掲げた。
明るすぎる程の部屋の明かりに、赤ワインは明るい部分とくぐもった部分とに光源が分かれた。くぐもった部分は、まるで血のように見えた。

ナイフとフォークが奏でる無機質な音楽に包まれ、千尋とちなみは黙って食事を口にしていた。
千尋は待っていた。
ちなみが口を開く、その時を。
話さなければならない事、が一体何なのか。
一方のちなみは口を開こうともしない。
何の為に千尋を呼んだのか、千尋には理解出来なかった。
「……」
ちらちらとちなみを見る千尋の目は何時しか鋭くなって行った。
「……」
「……弁護士さん、目が怖いですわよ」
くすり、とちなみが笑った。その言葉に千尋ははっとして、慌てて目許をほぐす。
「睨みつけるなんて、よっぽどお疑いのおマナコをお持ちですのね」
「そ、そんな事無いです!」
そう言って、千尋は赤ワインをぐっと飲んだ。
やはり牛肉と赤ワインは合って良い。
これが11年前なら、こうしたホテルでは牛肉は出なかっただろう。
(……でも、国産なら出るかしら?)
「そうそう、このお牛さん、国産ですわよ」
ぴったりのタイミングで言われた物だから、千尋は思わずむせた。
「お疑いのおマナコをお持ちでしたので……もしかして、安っぽいお肉を食べさせられているんじゃあ、って言う感じに見えましたから、一応言っておきますわ」
(そんな事の為に疑ってた訳じゃないわよ!)
ちなみの言葉に、むせながら千尋は突っ込んだ。しばらくむせ続けていたが、持っていた赤ワインを千尋は飲み干す。赤ワインのお陰で何とか落ち着いた千尋は、痺れを切らしてちなみを見た。

「それで、話さなければならない事、言って貰えないかしら?」
しばらくちなみは目を丸くしていたが、やがて「ああ」と言う目をした。
「それでお睨みになられていたんですね」
「……」
「わたくし、実はあなたについて調べましたの」
「……え?」
その意図がさっぱり分からず、千尋は間抜けな声を上げる。
話したい事とは、そんな事なのだろうか。
調べるも何も、弁護士生活をして、初めての裁判にすら勝敗も無かったような弁護士だ。
それ以外に、どんな情報を得られると言うのか?
目を白黒させている千尋を見て、ちなみは柔らかく笑う。
法廷で見せた、あの微笑みだ。
「お霊媒師さま、ですわよね」
「!」
霊媒師、と言う言葉がちなみの口から出て来た時、千尋はぎょっとした。思わず身体が緊張のために熱くなり、手が汗ばんで来た。
千尋は弁護士時代では霊力を使ってなど居ない。それは、二月十六日のあの裁判でもそうだし、それ以前もそんな事はしなかった。そして恐らく、今後もしないだろう。
「もっと詳しく言うと……」
微笑みはそのままで、ちなみは冷たい目で千尋を見た。
その目で射られ、千尋はますます緊張に身体が熱くなった。
それこそ、異様なくらい。
「倉院流霊媒術の家元のお娘さま、ですわよね」
ぞくり、と千尋は何か悪寒を感じた。
身体はこんなにも緊張して熱いと言うのに。
「何で……あなたが……」
それを、と言おうとした時、千尋が手に持っていたワイングラスが、急に重たく感じられた。
千尋は慌ててワイングラスをテーブルの上に置く。と同時に、千尋は目の前がくらくらした。
(え……?)
何が起こったと言うのだろうか。
頭がぽーっとして、身体中が熱い。
緊張から来る熱さとは違う、何か。
「やっと……効いたようね」
冷ややかに笑いながら、ちなみが口を開く。
そう、本性を表した時のような、冷たい口調で。
ちなみはそのまま椅子を立ち上がり、千尋の方に向かって歩き始める。
「な……にを?」
何処か恐ろしさを感じ、何かをちなみにされたのだ、と言う事だけが分かった千尋は、ぼんやりとしながらちなみに尋ねた。ちなみは千尋の目の前まで立つ。
「はん……さっきの赤ワインに媚薬を入れさせてもらったの。分かる? び・や・く」
媚薬、と言う言葉に合わせ、ちなみが千尋の胸をつついた。千尋の身体がひくついた。
「あたしがアンタのワインを注ぐ時にね、手の中に持っていた媚薬を入れたのよ」
そう言って、ちなみは掌をひらひらと揺らす。
千尋は恨めしそうにグラスを一瞥した。
「けど、アンタも馬鹿よね。まさか本当に来るなんて。あたしの事知ってて来たの? それとも、本当に何も知らないで来たお馬鹿さんなのかしらね」
(どうせ、お馬鹿さんよ……)
もはや言い返す事も出来ないくらい頭がぼんやりとしている千尋は、かろうじて頭の中でちなみに突っ込んだ。
だが、彼女にそれで届くはずも無い。

ちなみは無防備になった千尋の胸に掌を押しつけた。
「ン、う……あっ……」
ひた、と胸に張りつく手の感触に、千尋は思わず声を漏らす。
「あ、なた……こんな、所で……何、考えて、るのよっ……」
頭はぼんやりとしながらも、このまま流されてはいけない。そう思った千尋は何とか声を絞りだして、ちなみに言った。
その言葉の覇気の無さに、ちなみは千尋を見下す形で笑った。
「アンタこそ、忘れてるんじゃないの? ここはホールよりも離れたVIPルームよ。人が来るにはあそこのボタンを押さない限りはありえないのよ」
そう言って、ちなみは千尋の服の前のジッパーを、わざと音を立てて胸の下まで下ろした。
「ちょっ……や、止めなさいっ!」
「アンタ……何も知らなかったのね。あたしの事」
(……?)
何を言われているのか、さっぱり分からなかった。
ちなみの事なんて、何も分からない。
それなのに、どうしてこうもちなみは関係があるように関係があるように言うのだろうか。
ただの嫌がらせか?
それとも訳の分からない事を言って翻弄させようと言うのだろうか?
いずれにしても、ちなみの言葉は千尋には理解出来ない事だった。
そんな千尋の事を見ながら、ちなみは千尋の服に隠れていた胸を乱暴に掴むと、そのまま揉み始めた。
「あっ、ン……ふうっ……や、止め、なさい!」
「何が『止めなさい』よ。少し揉んだだけでこんなに声を上げてるのに」
そう言って、ちなみは千尋の胸の突起部分をぴんっ、と指で弾いた。
「ああっ……!」
電流が流れたように、千尋の身体がびくんっ、と震えた。
「もしかしてアンタ、この上なく感じてる? 女にされるのって、もしかして初めてなの?」
指先で千尋の胸を弄びながら、冷ややかにちなみが言う。
(初めてじゃなかったら怖いわよ!)
千尋は叫びたかったが、あえぎ声でもはや口が使われてしまっているため、心の中でしか突っ込めない。
「あたしはね、初めてじゃないわよ。女相手にって」
「!」
「あたしには妹が居るの。『アンタと同じよう』にね」
何で、それを……
千尋の唇だけがそう動く。妹が居る事なんてそうそう人に言うような事でもないから、あまり周りには言っていなかった。ちなみは何故千尋に妹が居る事を知っていたのだろうか。
やはり、成人してこちらに来るより前の記録を見たのだろうか。
「真宵、だったかしらね。あたしは知らないけど」
「ん、ふあっ……あんっ……」
先程よりもいやらしい手付きでちなみは千尋の事を弄ぶ。指先で何度もその先端をこね回し、そのたびに千尋があえぐのを見ては鼻で笑う。
「とにかく、妹にもしてあげるから、あたしは慣れてる訳。こんな風に……」
そう言って、ちなみは乳首を唇で挟むと、そのまま舌を使って幾度と無く刺激をした。
かと思えば、その歯で軽く噛む。
「ああんっ……ひっああぁ!」
途端、千尋の身体にしびれるような快楽が襲い掛かった。千尋は身体をのけぞらせ、思う様にあえぎ声を上げる。
媚薬の効果で千尋の理性は徐々にほぐされて行った。
しばらく舌と歯で刺激を送ったちなみが、口を離し、冷徹に笑う。
「どうすればより感じるのか、何処が一番高まるかを知ってるのよ」
残忍な言い方に恐れを抱いたけれども、それ以上千尋は何もする事が出来なかった。ちなみは千尋の耳たぶに顔を近付けた。
「や…め………」
とろんとした目で、それでも千尋が訴える。そんな千尋の言葉を振り払い、ちなみは千尋の耳に付けられたイヤリングに舌を這わせた。
舌が動くたびにちなみの唾液がイヤリングを伝って千尋の耳たぶにじわ、と広がった。
「くふ、うっ………」
生温かい液体に、千尋は鳥肌が立った。
生まれて初めての恥辱に、千尋はどうすればよいのかも分からず、ただ襲い来る恐怖と快楽に身を委ねるしかない。
ちなみは千尋のそんな表情と反応を楽しみながら、イヤリングを舐め続けて行く。
そのざらざらした舌は、イヤリングの弧の通りに動き、やがてそれは付け根の部分まで来た。
すなわち、ちなみの舌は、千尋の耳たぶを舐め上げたのである。
「ひあっ!」
生温かい液体から、急に柔らかな感触の舌が滑り込まれ、千尋は叫んだ。
舌が、耳たぶをなぞる。
「う、んんっ……ぁ、はあっ……」
陵辱に対する悔しさと、襲い来る快楽に揉まれ、千尋の意識が溶けて行く。
ちなみはそんな千尋をあざ笑いながら耳たぶを舐め上げ、終いには耳たぶを甘噛みした。
微妙な力の入れ具合と、耳たぶにあたるちなみの歯の感覚が、千尋を更に高めて行く。
普段神乃木と及ぶ行為とは違った行為に、千尋は背徳感と束縛感を覚えて行く。
そんな千尋の表情を見て、感じ取ったのだろう。ちなみは千尋の耳たぶを甘噛みしながら空いている手の内の片方で千尋の乳房を再びいじくり始める。
「あ、んっ……ぁ……っ!」
ちなみの腕の飛び入り参加に、千尋は身体をのけぞらせる。

と、舌を這わせていたちなみが急に顔を離した。
「あたしがアンタを呼んだのはね……」
そのまま千尋の顎に空いている手を添え、持ち上げて目を合わせる。
「何も知らないであろうアンタに教えに来たのよ」
「ふ……ぁ、な、にを……?」
くらくらしながら、千尋はちなみの言葉に答える。
その様子を見て、冷たい表情のまま、ちなみは千尋の唇を、自らの唇で塞いだ。
「んっ……」
目の前に、ちなみが居る。その事実に千尋は思わず瞳を閉じる。
だが、五感の内の一つ、視覚を遮った分、聴覚と触覚は敏感になる。
千尋の口内に、ちなみの舌が無理矢理挿入され、その舌によって千尋の舌が絡み取られる。そのために、千尋の口内はお互いの唾液にまみれた。
「んふっ、ふぅっ……んぅ……っ」
口内を荒らされているために、上手く呼吸も出来ず、声を上げる事も出来ない。
うめき声が、敏感になった聴覚に捉えられ、千尋は自身の声に陵辱されて行った。
そんな中、ちなみの指先が、千尋の乳房から離れた。
そして、そのまま下腹部に向けて進み始める。
(いやっ! 止めてっ……!)
声を出せない状況の中で、千尋は何とか拒絶しようとした。ちなみの手をフラフラな手で振り解き、そのまま千尋は携帯を取り出した。
千尋はボタンを数回押した。
それをちなみは振り払う。千尋の手から、携帯が弾き飛ばされた。
ちなみは千尋の携帯の画面を見る。
そこには何の変哲も無い、ただの画面だけが映っていた。
「電話でも入れようとしたのかしら」
「………」
「まあ、電話だろうとメールだろうと、今の時間じゃ何も出来なかっただろうけどね」
そう言って、再びちなみは千尋に近付くと、強引に床に押し倒した。
「うくっ……」
背中に広がる痛みに、千尋はうめいた。何とかして千尋はちなみから逃れようとするが、ちなみはそれをさせない。
そのままちなみは千尋の身体に再び手を掛ける。千尋は足を閉じようとした。だが、先程から頭はぼーっとしているし、身体はちなみが与える快楽を待ち望む状態に徐々になりつつある。
先程と同じく、ちなみは千尋に口付けた。今度は優しく、甘く。
千尋の理性をしびれさせてしまうほどに。
ちなみは千尋の表情を楽しみ、指を更に下部へと移動させた。
スカートの裾まで、ちなみの細い指が届く。
「んんーっ!」
千尋が叫ぼうとしたが、その前にちなみがその舌を絡め取ってしまう。
ちなみの指が、そのままスカートの中へと侵入した。そして、千尋のショーツにまで届く。
千尋は慌てて両足を閉じようとした。
それを見ると、ちなみは唇を離し、自分の足を千尋の両足の間に挟み、それ以上閉じられなくなるようにした。
「そんなにつれなくしなくても良いじゃないの」
ちなみは指を進め、ショーツの上から千尋の敏感な部分に指を押し付けた。
「ひっ……」
「あたし達……従姉妹(いとこ)なんだから」
その言葉に、千尋の頭は真っ白になった。
今、彼女は何と言った?
誰が、何だと言った?
「気付かないアンタに教えるために、呼んだのよ」
呆然とする千尋の事を見ながら、ちなみは冷たく言う。
「アンタとあたしが、『従姉妹』だと言う事を」
「や……」
ちなみの口から出た真実に、千尋は首を横に激しく振る。
「アンタも、あたしと似てるのよ。誰かを殺してしまうの。アンタが受け持った依頼人を見殺しにしてしまったように」
「いやああああああああっ!」
千尋は泣き叫んだ。
絶望のあまり、身体が上手く動かない。
傷付いた千尋の身体に鞭を打つかのように、ちなみは再び指先を動かした。
「あひぃ……っ」
何とか千尋を支えていた理性も、今や途切れ、千尋の口からは快楽の反応のあえぎ声が絞り出された。
ちなみの指が、千尋の『部分』をショーツ越しに幾度と無く刺激を与えて行く。
時に優しく、時に残忍に。その部分が緊張をほぐすまで、ちなみは何度も安定しない愛撫を繰り返した。
じわり、とショーツが湿る感覚が現れる。
「んくっ…はぁんっ!」
それが千尋自身にも分かるのだろう。小刻みに身体を振るわせ、顔は紅潮しきった千尋が、千尋の陰部をなぞり続けているちなみの指をせがみ始めた。
ちなみは千尋の表情と、身体の反応に満足し、千尋のショーツに手を掛けた。
「あ……」
もはやちなみの行為に抵抗する気力さえも残っておらず、とろんとした目でちなみの事を見詰めている千尋が、かろうじて甘い声を上げた。
それを楽しみながら、ちなみは千尋のショーツを膝頭辺りまで下げた。そして、そのショーツを見てから、千尋の方へと視線を向ける。
「薬は偉大よね。少しの愛撫で、こんなに濡らさせるんだから」
「……っ」
言葉で犯されていく千尋。
「どんな味がするのかしらね。家元の娘のって」
「は、ぅ……」
涙目になり、甘い吐息を吐く千尋を後目に、ちなみは両足の間に顔を近付けた。そして、舌を出す。
秘部に、ちなみの舌が近付く。
「あっ、だ……だめぇっ……」
弱々しくそう言うものの、千尋の両足には力が入らず、その部分を露わにしていた。
ちなみは千尋の秘部を舐め上げる。
「あ、ああぁんっ!」
電流が走ったような、そんな感覚に、千尋はのけぞった。思わずあえぎ声も悲鳴にも似た声になってしまう。
女性に、舐められている。
そんな慣れない状況と感覚が、千尋の閉ざしていた感情を掘り起こす。
「あふ、あああっ……い、いいのっ! は、ううっ!」
身体はますます熱くなりながら、千尋は舐め続けるちなみの舌に合わせ、声を上げる。
「んくっ、そ、こ……もう、ぐちゃぐちゃに濡れちゃううううっ!」
普段絶対に言わないような淫靡な言葉を遂に吐く千尋。
「イ、イクっ、イっちゃうううううううっ!!」
その言葉に、自分自身が感じてしまっているのだろうか。千尋の秘部は、千尋の愛液で濡れて行く。その愛液を舌で拭ってから、ちなみは顔を上げ、千尋の方を見る。
「ここまで感じるなんて……淫乱なのね、アンタ」
喋りながら、ちなみは指を再びそこになぞらせ、刺激を与える。
「ん、ひぃっ……」
目を閉じて、押し寄せる快楽に微かな悲鳴を混ぜたあえぎ声を上げる。
「じゃあ、アンタのここは、感じるかしら?」
ちなみは更に千尋の両足を広げさせると、雛尖(ひなさき)を指で摘まんだ。
「ひっ、ああっ! い、痛っ……!」
急に押し寄せた痛みに、千尋は眉をしかめる。その様子を見て、ちなみは驚いた顔をする。
「へえ……ここは痛いの……アンタ、まだ子供ね」
「あっ、かはっ……」
雛尖をいじり続けるちなみに、千尋は痛みを訴えるように激しく首を横に振った。
「普通、ここは女は感じる部分なのよ」
「く、ふうっ……やっ……痛い、あふっ…!」
「流石は家元の娘様ね。思った事をすぐ口に出来るんだから」
そう言って、冷ややかな目でちなみは千尋の方を見た。
「あたしは分家だったのよ。母親の名前はキミ子。とは言っても、もう籍も違うけど」
「お、ばさま……の……」
痛みと、快楽に揉まれながら、ぼんやりと千尋はちなみの言葉を反芻する。
「家元と言う下らない物のせいで、アンタ達のせいで、あたし達はめちゃくちゃにされたのよ! 何もかもを!」
憎々しげにそう言うと、ちなみは立ち上がり、赤ワインのボトルをテーブルから持って来た。
そのまま、ちなみは千尋の両足の間に、赤ワインのボトルの口を向ける。
一瞬、何をしたいのかが分からなかった千尋は、差し向けられたボトルの先を見、ぞっとした。
挿れられる……!
そう思った時には、もうボトルは千尋の中に在った。
「あ、あああっ!!」
いきなり冷たい液体がどくり、どくりと入って来る感覚に、千尋はがくがくと震えた。
ボトル内にまだ残っていた赤い液体は、傾けられた角度に忠実に従い、千尋の内部へと流れ込んで来る。
「あんっ、く、はあああっ!」
そうした物を普段絶対に入れない千尋にとって見れば、いきなりの冷たい来訪者に声高く反応せざるを得ない。
ちなみはそれを楽しみながら、どんどん赤ワインを入れて行く。
「心配しなくても、ワインには何もしてないわ。媚薬なんかも入れてないから」
耳元に口を近付け、吐息が掛かるようにしながらちなみが言う。
「でも、急性アルコール中毒になるかもしれないわね」
そう言ってから、ちなみは千尋の耳たぶを軽く舐め上げ、目じりから流れた涙を舌で拭った。
ぞくり、と悪寒と快感の混ざった寒気が千尋の背筋を撫でる。
「ひああっ、んぅっ!」
舌で舐め上げられ、下部はワインが注がれ、千尋の頭の中はもはや真っ白になっている。
「あたしは……アンタとの関係を教えると同時に、アンタを傷付けに、壊しに来たのよ」
ボトルの角度を更に上げ、急速にちなみは千尋の中に赤ワインを注ぐ。
「あひぃ……っ!」
「白ワインの方が良かったかしら? 何だかこれだと血を流しているみたいね」
冷淡に言いながら、それでも注ぐのを止めようとしない。
千尋の秘部は、受け入れきれなかったワインにまみれ、あふれ出た赤ワインによって一帯を濡らされていた。
「けど……あたしにとってはこんなの、全然たいした事無い恥辱よ。あたしがアンタ達一族に付けられた心の傷は、こんな物じゃ癒えない」
ちなみはそう言って、千尋からワインボトルを引き抜いた。
ごぼ、ごぼり、と残っていたワインが、千尋に、千尋の服に、じゅうたんに落ちる。
血のような跡を残して。
「汚しちゃったわね。赤ワインと、アンタの蜜で」
「あふっ……んんん……」
言葉で再び犯され、千尋は涙を浮かべて首を横に振った。

媚薬は、効果が薄れて来たらしい。千尋の身体が在る程度言う事を聞くようになって来た。
けれど、戻るにはもうすでに遅かった。
千尋は精神も身体も犯され、残ったのはわずかな快楽と多大な恐怖であった。
それでも、ちなみは千尋の事を掴むと、千尋の秘部に向けて指を進めた。
「い、いやっ……あっ」
もはや逃れられないのか、と言う恐怖に、千尋は首を激しく横に振った。
ちなみは残忍な笑みを浮かべ、千尋の内部をその指で貫こうとした。

「それ以上は強姦罪、だぜ」
扉の外から声が掛けられ、ちなみは驚いて顔を上げた。
その隙に、千尋は何とかしてちなみの手を振り解く。だが、そこまでで千尋は床に座り込む形になった。
その時、扉が開く。
「!」
千尋はその人物の姿に、息を飲む。一方のちなみも呆然とする。
「アンタ……どうして!?」
「連行されちまったコネコちゃんを連れ戻しに来たのさ」
「な……」
ちなみが驚きの声を上げる。
「どうして……それを……」
「クッ……てめえが何かしようとしている事なんざ、最初からお見通しだ。この、神乃木 荘龍にはな」
「神乃木さん……!」
「もっとも、見通せないコネコちゃんも居たらしいがな」
そう言って、神乃木は千尋の方を見た。
あられもない姿であるのと、見通せなかったと言うのとが、千尋の羞恥心を掻き立てる。
ちなみはいまいましそうな顔をする。
「あたしは待ち合わせ場所しか書かなかったわ。それに、時間まで見張っていたけどアンタは居なかった。それなのに、何故ここが分かったと言うの!」
どおりでちなみの来る時間が遅いと思ったら、そんな事をしていたのか。千尋はぼんやりとそう思った。
「確かにあの場に俺は居なかった。だが……俺達はある約束をした」
「約束、ですって……」
「何かが起こったら、メールを送るってな」
そう言って、神乃木はポケットから携帯を取りだし、画面を見せた。
そこには、千尋が指し出し人で、題名も何も無い白紙のメールが映っていた。
あの時か、とちなみは思った。
一度だけ、千尋が携帯を持った瞬間。
あの時、何の変哲も無いただの画面だと思ったのは、メールを送信した後、メニューに戻った画面だったのだ。
「でも! そこには場所は書いてない。それなのに、ここだと言う事を絞り込めるはずが……」
「あるさ。圧力を掛けたいのなら、普通の人間が滅多に行かない所に連れて行けば良い」
そう言って、神乃木は(何処から取り出したのか)コーヒーカップを取り出し、ごきゅ、と飲んだ。
「アンタの挑発的な手紙を見れば、一目瞭然、だぜ。圧力も同時に掛けるような性格だ、とな」
神乃木は千尋の方に向かって歩いた。
千尋の方も、何とかして神乃木に近付こうとしている。しかし、恐ろしさからなかなか座り込んだ状態のまま動く事が出来ないで居た。
そんな千尋の元まで辿り着くと、神乃木は千尋の事を抱き締め、かばうような形になった。
「恨むぜ。何せここに入るためだけに、俺は高いコーヒーを頼んだんだからな」
「……ぐ……っ」
ちなみはうめいた。その手は震え、その瞳は二人を睨み付けている。



しばし、沈黙が続いた。だが、先に沈黙を破ったのは、ちなみの溜息だった。
「……良いわ。今日はこの辺りにしといてあげる」
ちなみの言葉に、神乃木が睨みつける。
「待て。てめえがした事は……」
「はん……あたしは『いや』と言われた後、そこの女を犯してなど居ないわ。それ以前に一回言われたけど、それはこう言う行為に対して言われた訳でもない。つまり……強姦罪にはならないわよね」
小賢しい事を言うちなみ。神乃木はうっと詰まった。
「クッ……なかなか、嫌な所をつついて来やがる」
神乃木は唇を噛んだ。
「はん…………それじゃあ、これ以上ここに居ても仕方在りませんし、そろそろわたくし、帰りますわ」
「ま、待てっ……」
「お勘定はわたくしがお払いいたしますわ。ご心配なく」
そう言って、ちなみは扉まで歩いた。そこで、振り返る。
「それではお二人とも、ごきげんよう」
あの時と同じように、法廷の時と同じように、ちなみは美しく微笑むと、何も無かったかのように部屋を出て行った。
神乃木は追い掛けようとしたが、千尋が神乃木の服を掴んで阻んだ。
「離れないでっ! 傍に、居て……」
未だ恐怖の中に居る千尋の言葉に、神乃木はしばらく黙っていたが、やがて千尋の方を振り向き「ああ」と言うと、千尋の事を再び優しく抱き締めた。
(許せねえ……)
神乃木は徐々に強く千尋の事を抱き締めていきながら、心の中で思う。
(千尋をこんな風にした代償、高く付くぜ。美柳 ちなみ……)
そして、神乃木はそっと千尋に口付けた。



レストランを出たちなみは、いまいましそうにレストランを振り返った。
(後少し、後少しであの女を壊す事が出来たと言うのに……)
ちなみは突然の乱入者を思い出し、唇を噛み締めた。
何故、あの女にばかり、救いの手が差し伸べられると言うのか。
自分はあの女のせいで、何もかもがめちゃくちゃになったと言うのに。
だから、ちなみは千尋が許せなかった。
何の苦労も無く育ち、どんな意図があったにせよ、あっけなく家元の座を捨てた千尋を。
その家元の座のために、自分達は弄ばれたと言うのに。
「良いわ、綾里 千尋。今回はあたしの負けで」
そう呟き、冷淡にちなみは微笑んだ。
あの時。
神乃木が千尋に近付き、千尋も神乃木にすがり寄った時。
ちなみは確信したのだ。
「アンタが一番傷つく方法を見付けたのだから」
そう言って、ちなみは高らかに笑い飛ばした。
雨の音が微かに聞こえて来る。
外は、雨が降っていた。
長い雨に、なりそうだった……



(終わり)




自分の中じゃちなみは誰に対しても攻めな気がするんですね。だからあやめに対しても攻め。義姉さんに対しても攻めなんですよ。
つまり小悪女。(ちなみスキーさん、ごめんなさい)
こんな事書いている自分ですが、自分はカミチヒ大フィーバー中です。
もっとカミチヒ書いて欲しいです。自分にはエロの表現がまだ足りないので。

それと、無茶苦茶ネタばれでしたね。本当にご迷惑をおかけしました。
ネタばれ解禁になるまでは、自粛します。 m(_)m
最終更新:2006年12月12日 20:07