成歩堂×真宵+春美

 大都楼の事件から半年が経ち、ぼくの事務所も落ち着きを取り戻した。
相変わらずソファーに座ってテレビを観ている方が多いのだが、いつもと変わらない平和な1日が今日も過ぎていく。
テレビの中では今年18年目を迎える横浜の古木選手が、今日も元気に後逸している。
「あの…なるほどくん?」
 変わったことといえば春美ちゃんがこっちの小学校に通うようになったことだ。
やはり母親があのようなことになれば里にも居づらいのだろう。あとは…
ぼくと真宵ちゃんとの仲がほんの少し進んだくらいか。
「何だい。」
 テレビに向かっている姿勢から、首だけを春美ちゃんに向ける。
「少し、お聞きしたいことがあるのですが…。あ、でも真宵さまもご一緒のほうが。」
 ? 全く話が読めない。少なくともビデオ予約の方法ではないようだ。
「何。何?あたしも必要な話って。」
 とのさまんじゅうを買いに行っていた真宵ちゃんがタイミングよく話題に入ってきた。
「はみちゃんの頼みだったら、この真宵さんが何だって答えてあげちゃうよ!」
 無責任な発言をする真宵ちゃんをよそに、ぼくは冷静かつにこやかに切り出した。
「で、何を聞きたいの?」
「はい。あの…」
伏し目がちにもじもじしながら次の言葉を探している様子だ。

「誰かにみ、見られながら男女の営みを致すとその…、いつもより二人の愛は燃え上がるものなのでしょうか。」
「はあ?」
真宵ちゃんとぼくが同時に呆気にとられていると、この、遺言も残すことができない年齢の少女は再び口を開き、
「そう、本に書いてありました。」
と、両手で頬を覆いながら締めくくった。
「本ってまさか…。」
全てを察したのであろう。真宵ちゃんが、すうっとこっちを見る。
「なななっ、なるほどくん!あなたって人は、そんなものを子供の手の届くところに置いとくなんて!」
真宵ちゃんはネクタイの結び目を持って上に締め上げると言う細かい技で、ぼくの首を締め上げてくる。
なしか千尋さんみたいな口調に聞こえる。
「それで…。」
春美ちゃんが続ける。
「それが本当なのかどうか私が見ている前でその、なるほどくんと真宵さまで営みを、致していただけないでしょうか。」
とんでもない話だ。しかし、この話をうまく使えば、この前真宵ちゃんによって強制的にぼくの部屋に展示されることになった
世界の霊媒師装束コレクションの仕返しができるかもしれない。
それに、ぼく自身、このようなプレイは嫌いじゃない。
「いいよ。」
ぼくはあっさりとその申込を承諾した。

「なっなるほどくん?何言ってるの。」
真宵ちゃんがどう反応してよいかわからないような表情でこっちを見る。
「異議あるかい?」
「異議あるよっ!」
「その言葉に異議ありだ!真宵ちゃん。君はさっきこう言った。"はみちゃんの頼みだったら、何だって答えてあげる"と。」
びしっ、と人差し指をつきつける。ここで決めないと全面拒否で押し切られてしまう。
「うう…確かに言ったけど。でもアレとこれとは…」
だいぶ効いてはいるが、まだ承諾しようとはしない。
「お願いします!真宵さま。わたくし、一度気になると夜も眠れないもので。」
春美ちゃんがすがりつくような眼でお願いする。いいアシストだ。
「真宵ちゃん!未成年の春美ちゃんにも知る権利がある。それを妨げると言うことは立派な憲法違反だ。」
我ながら弁護士とは思えない目茶苦茶な理論だ。しかしここは何としてもうんと言わせないと。
「…わかった。いいよ…はみちゃん、見てても。」
ゴージャス。ついに仕返しのお膳立てが整った。
「あ、ありがとうございます!真宵さま。そしてなるほどくんも。」
春美ちゃんはとても嬉しそうだ。
「じゃあ今夜ぼくの部屋に集合と言うことでいいね。」
そう言ってぼくはその日の仕事を全力で片付けにかかった。
春美ちゃんをダシに、どのようにして仕返ししようか考えながら。

真宵「うう…あんなこと、言わなきゃよかった…。」


<スレにて連載>
最終更新:2006年12月12日 20:13