英語の「stealth(ステルス。「隠れる」「こっそりと」「内密」といった意味を持つ)」を語源とする言葉で、商品やサービスを提供する側の人間が、一般の消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為を行うこと。通称「ステマ」。
一部の口コミ系サービスサイトが実際に金銭がらみのやらせを行っていたことが発覚、報道されたことで認知度が一気に広まり、消費者庁が警告を出すにまで至る。
具体的には、ある商品を作っている企業が、消費者を装って掲示板や口コミサイトに商品を褒め称える記事を書いたり、有名人等に依頼して、(会社と繋がりがあることを伏せさせた上で)商品のレビューを行ってもらう等の行為を指し、平たく言ってしまえば「口コミにおけるサクラ」のようなものである。また、自社の製品を宣伝する行為だけでなく、ライバル商品に対して消極的な口コミを広める行為(ネガキャン)もステマの一種である。
どんなに面白いゲームであっても、プレイされなければ意味は無い。我々ゲーマーにとって、企業による宣伝とは良ゲーと出会うための手がかりであり、有意義なものである。しかし、それでもなおステルスマーケティングが忌避されるのは、往々にして商品に関する評価が歪められてしまうからに他ならない。
企業が自身の身分を名乗った上で商品の宣伝をしても、その全てを信じる消費者は少ない。資本主義社会を生きる我々にとって、企業が行うアピールは魅力的な点に集中している(悪い言い方をすれば、話を「盛って」いる)ことは想像に難くないため、バイアスをかけて宣伝を評価するからである。
しかし、いち消費者が発したレビューとなると、多くの人はそのバイアスを放り投げてしまう。同じ「消費者」という立場の人間である以上、良い点にも悪い点にも着目した客観的・実利的な意見であると解釈してしまうためだ。ましてや、そのレビューの発信者が自身の敬愛する人物によるものだとしたら、たちまちのうちに信じ込んでしまうことだろう。
限りある資金と時間でやりくりするために、口コミを参考に購入するゲームを選別するユーザは数多い。それらのユーザにとって、「良ゲーだと評判になっていたゲームを買ってみたらクソゲーだった」「クソゲーだと聞いていたのでスルーしたが、実は良ゲーだった」という事態は絶対に避けたいものである。その口コミの信頼性(*1)を根本から覆してしまうステルスマーケティングがいかに卑劣な宣伝手段であるかは、想像に難くない(*2)。
なお、本Wiki及び姉妹Wikiも、「誰もが編集できる」という仕様上、関係者が消費者を装って記事を書くことは十分に可能である。しかし、3カ月ルールの効果もあってか(*3)、ステルスマーケティングが目的である思われる記事が書かれることはほとんどない(*4)。とは言え、ステルスマーケティングに利用される土台が十分に備わっていることは肝に銘じておくべきだろう。
何にでもまず疑ってかかるような生活を送るのは窮屈だが、嘘を嘘と見抜ける人でないと情報の活用は難しい。結局は、インターネットや口コミで得た情報は鵜呑みにせず、情報の出所を確かめたり、他の情報と比較するなどして自分で情報を取捨選択するしかない。
*1 「そもそも口コミに信頼性もクソも無いだろう」という突っ込みはナシである。ここで言う信頼性とは、『ユーザの立場からの意見である』という信頼性のこと。
*2 実際、欧米などの消費者意識の高い一部の国では違法化されている。
*3 ゲームの売り上げの大半は初週売上であること、発売から3カ月も立てばおおよその評価は決まっていることなどから、記事を立てたところで大きな効果は期待できないためと思われる。
*4 過去に関係者自らが記事を書いたと疑われた事例はあるが、発売からかなりの時間が経っていることや、犯人とされる関係者の人物像等を総合して考えると、マーケティングより卑小な自尊心を満足させることが目的であった可能性が高い。
*5 以前から特定の企業のネガキャン・ポジキャンを行っており、ステマの噂自体はあった。