アマノジャック@新ジャンル専用
新秋ジャンル「案山子」01_vol02
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新秋ジャンル「案山子」
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- 83 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:05:01.28 ID:B0cP+pZ90
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烏 「腹へったなー」
案山子「……」
烏 「んー、いやいやいやいやいやー」
案山子「……」
烏 「俺は野生のスピリットを持つインテリゲンツァよ?」
案山子「……」
烏 「伊達や酔狂でここの田んぼに来てんじゃねーんだぜー?」
案山子「……」
烏 「ここの田んぼはおたまじゃくしとかカブトエビじゃなく田螺がいるからなー」
案山子「……」
烏 「田螺とろいじゃーん?」
案山子「……」
烏 「稲の根っこかじる田螺はいなくなる、俺は腹いっぱいになる、まさに一挙両得よー」
案山子「……」
烏 「さすが俺たちゃ神様同士、いいコンビだよなー」
案山子「……」 - 84 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:06:32.31 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:まったりクール】……」
男「気長に田んぼに突っ立ってる分にはいいだろうけど」
女「運命は自分の力で変えるもんだよ」
男(こいつ……はなっからすべてのクールを消す気だ!)
女「あーあ。せっかくチャンスをあげたのに。運命を変える努力をしない怠け者は死んで当然だよね^^」
男「まったりした奴に害鳥追っ払うなんて無理ってわかってて……わかってて……」 - 85 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:09:28.84 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:追いかけクール】……いや……やる前から100%結果は見えてるよね?」
男「うん」
女「……あらかじめ三段式高架稲架に引っ掛けといてもいいよね?」
男「なぜ稲架?」
女「稲を天日乾燥させて水分飛ばすために稲架にひっかけるわけだから、秋晴れが続かないと」
男「てるてる坊主かよ――って、待てオイ。首を引っ掛ける気か!」
女「生きてても役に立たないゴミみたいなクールは死んだほうがいいじゃん?」
男「待て、とりあえずチャンスぐらいくれてやれ」
女「無駄手間だと思うけどなぁ」
女「で、田んぼ離れてどこ行ってたの?」
追「あ? 田んぼに来る害獣の住処を探そうと思ってさ。猪のあとをつけてた。
ゴキブリとかと一緒でねぐらを突き止め仲間ごと一網打尽にしたほうが
ここで対症療法的に追い払ってるよりよっぽど効果的じゃない?」
男(言ってることは冷静だけどこの狂った農耕民族にそんな理屈は通じない……)
女「ちょっとー! ロープとはしご持ってきてー!」 - 86 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:12:57.48 ID:B0cP+pZ90
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烏 「田んぼにネット張られたなー」
案山子「……」
烏 「じゃあお前は何のためにここにいるんだー?」
案山子「……」
烏 「むー」
案山子「……」
烏 「哲学的だな」
案山子「……」
烏 「でも気をつけろよー?」
案山子「……」
烏 「神様ってのは存在価値が先に来るもんだからなー」
案山子「……」
烏 「なくなったらゼウスだって北極で釣り糸垂れるだけのじーさんだぜー?」
案山子「……」
烏 「神々一のプレイボーイがよー」
案山子「……」 - 87 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:15:11.83 ID:B0cP+pZ90
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烏 「風がきつくなってきたなー」
案山子「……」
烏 「あれ、なんて言ってんだろーなー」
案山子「……」
烏 「うちの山だとざわざわー?」
案山子「……」
烏 「こっちだとびょおーびょおー?」
案山子「……」
烏 「でもありゃ風が物に当たってる音なんだよなー」
案山子「……」
烏 「風自体はなんて言ってんだろーなー」
案山子「……」
烏 「物識りのお前でもわからんかー?」
案山子「……」
烏 「あいつもクールな奴だからなー、案外お前に似て無口かも知れんなー」
案山子「……」 - 88 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:17:18.49 ID:B0cP+pZ90
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烏 「となりの畑の野菜がもうすぐ食い頃なー」
案山子「……」
烏 「俺は眼がいいからなー、見ただけで食い頃の糖度がわかるのさー」
案山子「……」
烏 「人間もプロはわかるらしいね」
案山子「……」
烏 「おたがい、ぎりぎりまで引きつけておいてー」
案山子「……」
烏 「どっちが先にグヮシっといくか!」
案山子「……」
烏 「知恵比べ根性比べよー」
案山子「……」
烏 「でもそっちの貸し農園のとーしろはダメだなー」
案山子「……」
烏 「旬でもないのにさっさと収穫しちまうしよー」
案山子「……」 - 89 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:20:07.76 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:素直クール】はいきなり『わたしはパン派だから』とかほざいて断りやがった」
男「さすが元祖新ジャンル。嫌なことは素直に嫌って言うんだな」
女「納豆菌と一緒に藁にくるんどいた。お米をバカにする奴は糸ひいて反省するといいよ」
男「結局は稲作民族の魔の手から逃れられんのか!」 - 90 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:22:33.04 ID:B0cP+pZ90
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烏 「……」
案山子「……」
烏 「いやいやいやいやいや」
案山子「……」
烏 「あんまり空が青いんで声がどのぐらい通るのかなって」
案山子「……」
烏 「あそこの陸橋の下は結構響いて面白かった」
案山子「……」
烏 「んあー」
案山子「……」
烏 「のど痛くなったー」
案山子「……」
烏 「でも空があんまり青いとなんかしたくなるよなー」
案山子「……」
烏 「お前はじっとしたままでよく我慢できるなー」
案山子「……」 - 91 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:25:09.69 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:死に神クール】……死神かぁ。害鳥や稲刈り泥棒をざっくざっく殺してくれるといいなぁ」
男「おまえ、田んぼの敵には容赦ないのな」
女「わたしってさぁ、田んぼの敵なら無抵抗のマザーテレサの爪にだって竹串刺せるよ~」
男(こいつだけは敵に回すまい……)
死「残念だが、わたしは殺人鬼じゃあない。稲が雀に食われるのならば、
死すべき定めにあったのは稲魂の方、わたしはその稲魂を淡々と冥界に運ぶのみ」
女「死神を管轄してたのは十殿冥王のうちの秦広王だっけ? ちょっくら埋めてくるわ」
男「落ち着け、クールになれ!」 - 92 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:29:39.86 ID:B0cP+pZ90
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烏 「五百羅漢の類ってよー」
案山子「……」
烏 「その中に一つは自分に似た顔があるとかゆーじゃーん?」
案山子「……」
烏 「お前に似た顔があるかなーって思ってさ」
案山子「……」
烏 「でもなかったわ」
案山子「……」
烏 「お前ってどこにでもありそうな適当な造形なのになー」
案山子「……」
烏 「俺に似た顔はあったのになー」
案山子「……」
烏 「うん」
案山子「……」
烏 「羅漢って人間なのによー」
案山子「……」 - 93 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:32:00.01 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:クールだけど眼鏡を取ったら幼女化】……んー」
男「言葉面からしてろくな結果になりそうにないな」
女「いいよいいよ、クールなんて枡で量って車に積むほどいるんだし」
男「それは本来人材豊富なことのたとえだけど、お前が言うと洒落にならんたとえっぽくていやだな」
眼「あ~! めがね~! カーカーがめがねとってったぁ~!」
男「烏に眼鏡取られて半泣きで追っかけていきましたが何か?」
女「いいよ、だいたい予想はついてたから。次いこ、次」 - 94 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:34:22.91 ID:B0cP+pZ90
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烏 「人間のガキの髪の毛ー?」
案山子「……」
烏 「アレ引っ張るのがおもしろいんだよねー」
案山子「……」
烏 「クール気取ってても引っ張ってやると反応がおもしろいんよー」
案山子「……」
烏 「だいじょーぶ」
案山子「……」
烏 「お前は引っ張らんからー」
案山子「……」
烏 「お前は言動ともに真のクール神だからなー」
案山子「……」
烏 「クールな見た目と相反する反応がおもしろいわけよー」
案山子「……」
烏 「ギャップ萌えってやつだなー」
案山子「……」 - 95 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:37:18.66 ID:B0cP+pZ90
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烏 「猫だ」
案山子「……」
烏 「よく伸びるなー」
案山子「……」
烏 「秋だからかねー」
案山子「……」
烏 「お前も伸びてみたらー?」
案山子「……」
烏 「んー」
案山子「……」
烏 「まじめだなー」
案山子「……」
烏 「でも俺が帰ったあと真夜中に伸びてるんだろー?」
案山子「……」
烏 「いやいや、いいっていいってー」
案山子「……」 - 96 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:41:56.07 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:クール痴女/変態クール】……あー……」
男「全裸で鎌の柄突っ込みながら田んぼのど真ん中であえいでそうでやだなぁ……」
女「いや……日照不足の折にはふしだらな踊り踊っておてんとさま引っ張り出してくれるかもしれんし」
男「前向きだな、お前」
痴「……いい…………んっ…………もっと来い…………」
男「全裸に稲穂勝手にくっつけて雀誘ってやがる」
女「完全にイっちゃってるよあの恍惚の表情は……」
男「雀追い払うのが案山子なのに、呼び寄せてどうするよ?」
女「全身つつかれて血まみれになって幸せそうだねーってどんなプレイだよありゃあッ!!!!!」
男「アレをクールな表情でやられても困るわな。殺して埋めてもいいよ。俺も今回は文句言わない」
女「あたぼうよ。殺さいでか!」 - 97 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:45:03.56 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:クールマシンガン】は予想通りっと」
男「怒涛の如くかっこいいことをしゃべり続けるのはそれなりに鳥よけ音になるんだけど……」
女「烏の順応能力にはかなわなかったねー。はい、次。あー、アレはうるさいから訴えといて」
男「用済みとみればMIYOKO扱いかよ」 - 98 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:49:07.93 ID:B0cP+pZ90
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烏 「ふーん」
案山子「……」
烏 「いや、ね」
案山子「……」
烏 「人間のガキがお前のこと、先生に似てるってさー」
案山子「……」
烏 「先生だからなー」
案山子「……」
烏 「お前ほどじゃないにしても物識りでクールなんだろうなー」
案山子「……」
烏 「そういや先生って奴ぁさー」
案山子「……」
烏 「よく学校の門の前に立ってるわー」
案山子「……」
烏 「あーあー、似てるのはその辺かもなー」
案山子「……」 - 99 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:53:35.09 ID:B0cP+pZ90
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烏 「野菜畑のほうにもネット張られたなー」
案山子「……」
烏 「こっちは回りだけかー」
案山子「……」
烏 「頭上がお留守ですよー? っと」
案山子「……」
烏 「ちょっくらつまんでくるわー」
案山子「……」
烏 「……」
案山子「……」
烏 「食い切れねー!」
案山子「……」
烏 「俺の食いさしだけどここ置いとくわー」
案山子「……」
烏 「遠慮すんな遠慮すんなー、誰もお供えものしねーし、俺からのお供えもんだ」
案山子「……」 - 100 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 08:57:14.43 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:クールテレパシー/読心クール】なら害鳥どもの思考を先取りできる!」
男「なるへそ。天下のことを知る案山子が心の中まで知るようになったら無敵だな」
女「相手の心を読んだ上でさらにクールに対応……これはいける!」
男「しょせん鳥類相手か……」
女「鳥が日本語で考えてくれるわけないしね」
男「しかも集団だしね」
女「あんだけの数、聖徳太子でもさばききれないよね、常識的に考えてさ」 - 101 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 09:00:09.11 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:クールなヒッキー】は日光を浴びると死ぬらしいから却下」
男「死にはしないと思うけど、使い物にならないのはたしかだね」
女「攻撃力を持たせた【タイプ:クールボンバー】を試すときがきたようだ」
男「威銃兼用かぁ」
女「……ダメだねぇ」
男「『稲が雀を引き寄せる……ならばわたしはすべてを道連れに消え去ろう』ってさぁ……」
女「綺麗なクレーターだなぁ……」
男「一切の主観・利害を無視して、対雀のみに特化して冷静に判断すりゃこうなるのかぁ」 - 102 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 09:02:21.44 ID:B0cP+pZ90
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烏 「こうやって一面の稲穂見てるとさー」
案山子「……」
烏 「なんか中から不意にぱしゃって飛び出してきそうじゃね?」
案山子「……」
烏 「今は俺とお前が見てるけどさー」
案山子「……」
烏 「案山子いないとこじゃ誰もいないと絶対飛び出してるぜ?」
案山子「……」
烏 「いったい何が潜んでるんだろーなー」
案山子「……」
烏 「んー」
案山子「……」
烏 「こればっかりはさすがに物識りのお前もわからんか」
案山子「……」
烏 「一番目の前にあるものこそ一番わかんねーもんなんだなー」
案山子「……」 - 103 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 09:06:11.59 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:クールVIP】……」
男「アレですか? 敵に回すとウザいけど味方にすると頼りないっていう……」
女「いや……VIPはごくたまの稀の万分の一の偶然の何かの間違いで
すごいことやってくれそうな気がしないでもない今日この頃だから……」
男「微塵も期待してないな」
V「冷静に考えてわたし一人の知恵じゃ無理かな。
安価でみんなの知恵を集めて案山子を創ろう――――>>5」
男「スレは3レスで落ちたみたいだよ」
女「え? 何の話?」
男(なかったことにしやがった!) - 104 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 09:08:18.94 ID:B0cP+pZ90
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烏 「今はこんなに食いもんが満ちあふれてるのに」
案山子「……」
烏 「冬にはすっからかんなんだよなー」
案山子「……」
烏 「その点ここは便利だなー」
案山子「……」
烏 「となりの畑に大根とか生えるからよー」
案山子「……」
烏 「お前が冬いないあいださー」
案山子「……」
烏 「俺がかわりに番しながらいただくわー」
案山子「……」
烏 「冬のねぐらよりちょっと遠いけどなー」
案山子「……」
烏 「気にすんなー、俺とお前の仲じゃねーか」
案山子「……」 - 105 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 09:12:14.37 ID:B0cP+pZ90
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女「収穫高を伸ばしてくれるか、はたまた……」
男「【タイプ:伸ばしクール】かぁ」
女「まあ案山子として伸びるだけなら別に害はないしね。
ゴムゴムのガトリングでも何でもやって雀追っ払ってくれれば」
伸「あ、向こうの田んぼに比べて生長が遅いんで、ぜんぶ引っ張って伸ばしといたよ」
女「……」
男「うん、まあ、その、なんだ…………ほぼ枯れてるね。あと一歩で収穫ってとこでさ」
女「じょ……『助長』の故事そのままかよ……てめぇ……」
男「なんという孟子の世界」
女「おk。じゃああの腐れ下り物、伸ばして叩いて晒して染めて案山子がまとうボロにでもしようか!」
男「くされおりもの……」 - 107 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 09:20:19.81 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:愛クールしい】……」
男「まだ企画段階のクールを持ってきやがったよこいつは」
女「ゆえに未知の可能性にあふれているとは思わんかね、ボウズ」
男「まー好きにやってみなよ」
女「知ってる? 烏ってまずは弱いものからおちょくるんだってー」
男「本人にはかわいそうだったけど、
愛くるしさで烏引き寄せてたからそれなりにスケープゴートにはなったかな」
女「知ってる? 烏って集団性の鳥なんだってー」
男「面白がってどんどんおちょくりに来てたよなー」
女「最終的にはあぶれた烏が暇つぶしに田んぼ荒らして遊び始めやがったよッ! クソッ! クソッ!!」
男「烏って下手に知能高いだけに、生活のためじゃなく純粋に遊び目的でしょうもないことするからなあ」
女「あのガキャァ、烏の営巣期に巣の下に転がしとけッ」
男「殺されるぞ、冗談抜きで……まだスレも立ってないのに」 - 109 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 09:23:15.54 ID:B0cP+pZ90
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烏 「龍は雲とともに、虎は風とともに現れるってゆーけど」
案山子「……」
烏 「猫は秋風とともに伸びてるだけだなー」
案山子「……」
烏 「さて」
案山子「……」
烏 「俺たちはどうする?」
案山子「……」
烏 「とりあえず俺は風に乗ってとんびごっこしてくる」
案山子「……」
烏 「……」
案山子「……」
烏 「それもいいかもなー」
案山子「……」
烏 「秋風にそよぐ稲穂もなかなか……」
案山子「……」 - 110 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 09:30:05.99 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:不潔クール】は存在自体が不遜なんでファブリーズしたあと無菌室に放り込んどいた」
男「案山子だって似たようなもんじゃん」
女「違うッ! あれは民俗学的にいう『聖なるもの』としての不潔ッ!
怠惰ゆえの不潔と一緒にするな!!」
男「まあ本人は嫌がるだろうけど、清潔にしとくのはいいことだよ」
女「【タイプ:ぶりっ子クール】も【タイプ:デレクール】と同じことになりそうなんで
あらかじめ地ならししておいたよ」
男「ねぇ、その『地ならし』って何の比喩?」
女「【タイプ:ペドクール】は田んぼに幼女連れ込んでよろしくやりやがった」
男「ダメじゃん」
女「ガキと一緒に田んぼの中ではしゃぎやがってさー! 田んぼめちゃくちゃよー?」
男「うん……お前が怒るのはそっちだってわかってたよ」
女「【タイプ:前向きクール】は悪いことが起こってから発動する属性なんであらかじめ鋤き込んどいた」
男「警察って最近マジ動かないよなー」 - 111 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 09:34:14.93 ID:B0cP+pZ90
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烏 「んあー」
案山子「……」
烏 「かゆっ」
案山子「……」
烏 「……」
案山子「……」
烏 「お前さー」
案山子「……」
烏 「ずっと立っててどっかかゆくなったりとかしねー?」
案山子「……」
烏 「いってくれたら掻いてやるよー」
案山子「……」
烏 「むー」
案山子「……」
烏 「あくまでクールに決める気か」
案山子「……」 - 113 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 09:38:21.21 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:デレクール】……クーデレの逆かぁ」
男「デレデレしてたのがクールになるってあれか」
女「終わりクールならすべてよし! さっそくGO!」
女「最初は寄ってきた害鳥どもに甘々デレデレで、奴らがついばみだしたとたんクールに始末し始めたよ」
男「初めて役に立ったな」
女「でもまずはついばませるんだよあいつ。わたしはそんな妥協は許さない」
男「求道者は厳しいなぁ」
女「とりあえず褒めておいてあとでクールに始末しといたよ」
男「だんだんお前が悪の組織の親玉に見えてきた」
- 114 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 09:43:27.55 ID:B0cP+pZ90
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烏 「巣立ったのは去年だけどなー」
案山子「……」
烏 「……」
案山子「……」
烏 「いや、俺はまだ独身な」
案山子「……」
烏 「ずっと見守ってきた稲が刈り取られていくのってどうよー?」
案山子「……」
烏 「……」
案山子「……」
烏 「そっかー」
案山子「……」
烏 「俺も将来家庭を持って子供巣立ちさせにゃならんよなった時はそーなるんかねー」
案山子「……」 - 115 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 09:47:01.97 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:嫉妬クール】!!」
男「メンヘラなヨカーン!!!」
男「大方の予想を裏切らず、自分が案山子やってる間に彼氏がほかの女となんかしてるんじゃないかって
無表情に稲を手当たりしだい引っこ抜いて噛み潰してました」
女「不可触民の中に放り捨てとけ。二度と一般人と交わらせるな」
男「農耕民族っていっぺんメンヘラ扱いされて共同体からはじかれるとこれが怖いんだよなぁ」 - 117 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 10:00:03.06 ID:B0cP+pZ90
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烏 「WOW! かまきり!」
案山子「……」
烏 「神様の頭の上でなにやっとんじゃーい」
案山子「……」
烏 「まさか手を組んだつもりかー?」
案山子「……」
烏 「かっこつけるならその辺の鶏頭の上にしとけよなー」
案山子「……」
烏 「しかしアレだな」
案山子「……」
烏 「たとえ相手が神であっても敢えて挑むのがお前のファイティングスピリッツじゃなかったのかよー」
案山子「……」
烏 「三角首かしげんな」
案山子「……」
烏 「でもよく見たらこいつ、つぶらな瞳してんなー」
案山子「……」
- 118 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 10:09:05.00 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:クール照れ】もいいよね!」
男「んー」
女「案山子になって立つまではよかった」
男「まさに案山子そのもののクール感だったのになぁ」
女「好奇心いっぱいの烏どもに見つめられたとたん照れて隠れやがったッ!!」
男「野ざらしに耐える度胸が足りなかったな……」 - 119 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 10:14:10.91 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:恥じらいクール】は案山子として衆人環視に耐えられそうにもないから
江戸川乱歩張りの鏡地獄に閉じ込めといた。一生あの中でいいよ、あんなクズ^^」
男「なあ……お前のクールに対する憎しみの源って何なのさ?」
女「え? 偉大なる久延毘古の神と同じクール属性を持ちながら役に立たない連中なんて、
案山子を愛するクール教教祖として聖戦の名の下に一方的に虐殺して当然じゃん?」
男「聖戦だったのか、これ……っつかクール教教祖って何よ?」
女「はい、次。さくさくいくよー。【タイプ:パンクール】」
男「これも【タイプ:クールマシンガン】と一緒じゃねぇの?」
女「うん。だとは思うけど、肉声と器物音の違いはあるのか、一応試してはみるよ」
女「田んぼがパンクなことになってたから、あいつをデスメタル状態にしてきてやったよー」
男「あえて訊くまい」 - 120 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 10:22:16.09 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:野生児クール】……フフフ。こいつなら害鳥害獣をバリバリむさぼり食ってくれそうだぜ」
男「そんな案山子やだよ」
女「田んぼを守ってやるって言われたらわたしゃポルポトの靴だってなめりゃヒトラーの髭だってかじるよ」
男「俺はどうすればいいんだろうね?」
野「よし、いい具合に焼けた」
女「い――ね――を――刈――あ――って――ぇ!」
男「焼くのに使っちゃってるね、うん」
女「コイ! だめだ!! 狩猟民族はあてにならねぇ!!」
男「またそのオチかよ」
女「稲作文化のわかんないようなバルバロイは埴輪のかわりに埋めるぐらいしか用途ないよねw」
男「おーい、埴輪と生贄の順序が逆ー」
- 122 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 10:35:39.59 ID:B0cP+pZ90
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烏 「考えてみたらさー」
案山子「……」
烏 「お前って神様一の物識りじゃーん?」
案山子「……」
烏 「天神さんのほうが圧倒的にメジャーなのはなぜなんだぜー?」
案山子「……」
烏 「まー、受験シーズンにはお前いないけどさー」
案山子「……」
烏 「一方は野ざらしで田んぼの見張り、一方はちやほやされてよー」
案山子「……」
烏 「なーんか納得いかねーよなー」
案山子「……」
烏 「えー?」
案山子「……」
烏 「お前、ホントにそれでいいのかよー」
案山子「……」 - 123 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 10:42:20.15 ID:B0cP+pZ90
-
烏 「ほれ、八咫烏の総本山の熊野? 和歌山?」
案山子「……」
烏 「びんちょうタンってのがいるんよ」
案山子「……」
烏 「萌えキャラってやつー?」
案山子「……」
烏 「お前もあんぐらいすりゃ受けたかもなー」
案山子「……」
烏 「けなげに頑張ってるって点は一緒なんだしよー」
案山子「……」
烏 「いや、場所が場所だけに盗まれるか」
案山子「……」
烏 「なるほどー」
案山子「……」
烏 「さすが物識りの神様、ちゃんと冷静に考えてるんだなー、その辺は」
案山子「……」 - 124 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 10:49:30.68 ID:B0cP+pZ90
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烏 「仏像石像は萌えキャラじゃないのによく盗まれてるらしーじゃーん?」
案山子「……」
烏 「骨董品かー」
案山子「……」
烏 「お前はそっち方面でもあんまり需要ないのなー」
案山子「……」
烏 「長くて数年だもんなー」
案山子「……」
烏 「んー」
案山子「……」
烏 「そのボロいなりにこそ真の養生の道が隠されていたかー」
案山子「……」
烏 「さすがだなー」
案山子「……」
烏 「やっぱお前すごい神様だわー」
案山子「……」 - 125 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 10:54:53.22 ID:B0cP+pZ90
-
女「【タイプ:病弱クール】はあとで適当なクズクールと一緒にそこの畑に鋤き込んどいて」
男「はなっから使えないのわかってるのは無視してやれよ」
女「え? さっき言ったじゃん。わたし、クール大っ嫌いなの。理由があればじゃんじゃん消してくよー」
男「所期の目的はちゃんと覚えてるよな……?」
女「ったりまえじゃん。案山子はクールに田んぼに立つ久延毘古の神・または田の神の依り代。
もっと田んぼの守護神にふさわしい依り代を同じクール属性の中から探そうってプロジェクトでしょ?」
男「ならいいんだ…………ああ、うん、いいんだ……」 - 126 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 11:01:31.08 ID:B0cP+pZ90
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烏 「相変わらず暑いなー」
案山子「……」
烏 「日は結構短くなったのによー」
案山子「……」
烏 「白露さえ超越してもう秋分じゃねーか」
案山子「……」
烏 「秋の野郎ー、いつまで中腰で様子見てんだよー?」
案山子「……」
烏 「しゃんと立てよなー、お前みたいに」
案山子「……」
烏 「……」
案山子「……」
烏 「あれ?」
案山子「……」
烏 「お前、少し傾いてる?」
案山子「……」 - 127 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 11:10:32.85 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:ワクワクール】なら何かすごいものを造ってくれるかもしれない!」
男「本人を案山子がわりに立たせるってコンセプトからは少し外れるけど、
たしかにすごい案山子造ってくれそうだよなぁ」
ワ「できた……この案山子なら雀や烏だってイチコロだよ」
男「おおー、なんか効きそうな案山子じゃーん?」
ワ「それと烏は罠とかにすぐ慣れるから、定期的に新しいのを造りに来るよ」
男「おお? なかなか冷静な分析……これは……」
女「おい、定期的以前にあっちゅう間に烏につつかれてメタクソにされてるんだけどー?」
ワ「……またゴロリに負けたか。フッ」
女「かっこつけて鼻で笑ってんじゃねーよ役立たずがっ!」
男「そういやワクワクさんって造ったものを使うのはへたくそだったような気が……」
女「はーい、きょうはおねーさんがこのマンコ臭い肉ぶくれを使って、
真っ赤な真っ赤な、通常の三倍効き目がある案山子を作っちゃうよー!」
男「だから何ですぐ命をもって失態を償わせようとするんだお前!」
- 128 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 11:19:35.31 ID:B0cP+pZ90
-
烏 「お前って相変わらずこぎたねーよなー」
案山子「……」
烏 「んー」
案山子「……」
烏 「ひょっとしてよー」
案山子「……」
烏 「まだ長い旅の途中なのかー?」
案山子「……」
烏 「……」
案山子「……」
烏 「そうかー」
案山子「……」
烏 「気の遠い話だよなー」
案山子「……」 - 129 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 11:29:36.51 ID:B0cP+pZ90
-
女「【タイプ:女装クール】はなんかいろいろ意味なさげだから
ハッテン場として名高い某ピンク映画館に放り込んどいた。二度と出てこなくていいよ^^」
男(人間、どこまで心が歪んだらこうも人間を蔑める眼ができるんだろう……)
女「【タイプ:背中好きクール】は四方八方から迫る雀の背中を追い回して
田んぼ踏み荒らしやがったからてめぇの背中を犂ですいといた」
男「もう少し人の命を大事にしなよ……」
女「【タイプ:宣伝クール】は実り具合を宣伝しまくって稲刈り泥棒呼び集めちゃったから
雀烏の死体と一緒に竿に吊るして田んぼ脇に立てといた。いい警告になるでしょ」
男「稲と人と……あぁ、稲だよな、大事なのは。うん……」
女「【タイプ:束縛クール】は彼氏を捕まえたまま離さないのはどうでもいいんだけど
その彼氏が暴れて田んぼが荒らされるから一緒にひっくくって宣伝クールのとなりに吊るしといた」
男「それはそれで一応鳥よけの一種ではあるんだよなぁ」
女「【タイプ:翼クール】は田んぼの上空を我関せずとばかり超然と飛んでるだけだったから撃ち落した」
男「もうやめて! クールが尽きちゃう!」
女「いいのいいの。VIPのクズどもが無いミソねじって創ったカスを有効活用してやってるんだから」
男「お願い……新ジャンル厨、もう自重して……これ以上この農耕民族の狂気を煽らないで……」 - 131 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 11:42:02.68 ID:B0cP+pZ90
-
烏 「また雨で半端に倒れたなー」
案山子「……」
烏 「コンバイン泣かせだよなー」
案山子「……」
烏 「おーおー」
案山子「……」
烏 「あそこだけ手刈りですかにゃー」
案山子「……」
烏 「古きよき日本の風景ですなー」
案山子「……」
烏 「コンバイン刈りでいろいろと飛び散ったほうがあとでつまめるもんは多いんだけどねー」
案山子「……」 - 133 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 11:50:01.54 ID:B0cP+pZ90
-
烏 「秋ってさ」
案山子「……」
烏 「なんかいつもよりよく見えてよく聞こえる気しねー?」
案山子「……」
烏 「あー」
案山子「……」
烏 「なるほどなー」
案山子「……」
烏 「だからお前、秋口に立ってんのか」
案山子「……」
烏 「さすがは天下の賢神だなー」
案山子「……」
烏 「物識りと称えられても満足せず常に己を磨いてるのか」
案山子「……」
烏 「俺もいつだって野生のスピリチュアルを磨いてるぜー?」
案山子「……」 - 134 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 11:55:37.97 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:低血圧クール】は【タイプ:気だるげクール】と一緒!」
男「長時間の立ち仕事が向くタイプじゃないわな、たしかに」
女「高血圧になると噂の塩化ナトリウムしかない部屋に放り込んどいた」
男「塩分摂り過ぎで高血圧になるとはいうけど、低血圧症の治療に効くもんなの?」
女「優しいなぁ、わたし。実りの時季は一年で一番優しくなれるよー」
男(ここまで悪行三昧積み重ねてきて一年で一番優しいのか!)
女「黄金に揺れる稲筵見てると寛容の精神を取り戻せるよー」
男(これで寛容なのかこいつは!?) - 136 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 12:06:36.23 ID:B0cP+pZ90
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烏 「いたよー」
案山子「……」
烏 「よかったよー」
案山子「……」
烏 「いや、なー」
案山子「……」
烏 「なんか今日、全然誰にも会わなくてよー」
案山子「……」
烏 「寝違えて別の世界に来たんかと思ったー」
案山子「……」
烏 「……」
案山子「……」
烏 「あー、別の世界のお前かもしれんなー」
案山子「……」
烏 「でもお前がちゃんといてくれてよかったよー」
案山子「……」 - 137 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 12:14:10.65 ID:B0cP+pZ90
-
女「【タイプ:天然クール】は稲を食った雀を食えばお米の栄養も取れるじゃないとか
素で抜かしやがったんで、水をたっぷり飲んだ牛のはらわた以外食わせないことにした」
男「たしかに水分・植物性の栄養・動物性の栄養全部あるけどさ……」
女「【タイプ:読書好きクール】は本に夢中で使えない」
男「物識りでクールという条件は満たしてるんじゃない? それに読書中なら動かないだろうし」
女「物を知らんから本なんか読んでるんじゃない。あんなのニセの物識りさんだよ」
男「いい加減妥協しろよ……」
女「っつか本が日焼けするとか雨で濡れるとかぬかして田んぼに出たがらないんで辞書の角で殴っといた」
男「……もう何も言うまい」 - 141 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 12:22:28.91 ID:B0cP+pZ90
-
女「【タイプ:奴隷クール】はいけそうな気がする」
男「ごめん、お前にかかればみんな奴隷扱いですが」
女「えー? 奴隷は役に立つけどクールは役に立たないじゃーん」
男「……」
女「人間と生ごみの区別はちゃんとつけなよ? ね?」
男「…………はい」
女「じゃあ【タイプ:何か生えてクール】いってみようか」
男(ぜんぶ奴隷だって暗に認めやがった……)
生「……」 (ぽこぽこぽこ)
女「雀だー! 烏だー! イナゴだー! アヒャ、アヒャヒャ、アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ――――!!!!」
男「やばいッ! もともと壊れてた奴がさらに壊れたッ!! お前もう生やすな! とめろ!」
生「ごめん。自分の意思じゃとまらないし、何が生えるかわかんないんだ」
女「エヘヘヘヘヘヘ~。食われてるよ~、日本人の魂が食われ~てるよぉ~」
男「その鉈をしまえ! 落ち着け!」
生「あー。久延毘古の神にはなれなかったけど、これで保食神になるのかぁ……ハイヌウェレ型だなぁ」
男「お前も冷静にほざいてねーでとっとと逃げろ!」 - 143 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 12:27:32.70 ID:B0cP+pZ90
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烏 「なんか人間どもがいっぱいきたなー」
案山子「……」
烏 「虫選びー?」
案山子「……」
烏 「ほうほうー」
案山子「……」
烏 「鳴き声をねー」
案山子「……」
烏 「……」
案山子「……」
烏 「虫の声かー」
案山子「……」
烏 「ひまだしいっちょマスターして人間どもおちょくってやりますかにゃー」
案山子「……」
烏 「烏の声色ってマジすげーぜ?」
案山子「……」 - 144 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 12:32:19.06 ID:B0cP+pZ90
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女「【タイプ:野良クール】……これこそが我々の求めていた能力者かもしれん」
男「勝手にお仲間にしないで。それとあんた仙水さんですか」
女「ウフゥフフフーフフゥ! 何とでもほざけ。実りさえ守れりゃなんだっていいのさー」
男「気色悪い笑い方やめろ」
野「……ぽりぽり……がりがり……」
男「大方の予想を裏切ることなく、雀や鹿や猪に混じって米や野菜をほおばってますが?」
女「うん、予想してた」
男「さっきのセリフなんだったの?」
女「ちゃんと猟友会待機させてるから。その余裕からきた戯言……かな?」
男「撃っちゃダメだ!」
女「アレはもう人間じゃないよ^^ 野生生物、しかも害獣だから殺していいんだよー」
男「ダメだっつーの!」 - 145 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 12:39:39.42 ID:B0cP+pZ90
-
烏 「前々から思ってたけどここって蓮根畑だったんか?」
案山子「……」
烏 「稲の中からたまーに蓮咲いてるじゃーん」
案山子「……」
烏 「もともと池?」
案山子「……」
烏 「この辺ぜーんぶ?」
案山子「……」
烏 「もっとぜーんぶ?」
案山子「……」
烏 「それぜーんぶ埋め立てたのか?」
案山子「……」
烏 「でも使ってない田んぼいっぱいあるよなー」
案山子「……」
烏 「人間のやることって神様にはわからんことが多すぎるなー」
案山子「……」 - 147 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 12:47:34.65 ID:B0cP+pZ90
-
烏 「んー」
案山子「……」
烏 「いやいやいやいやいやー」
案山子「……」
烏 「この辺の田んぼにぽつぽつ生えてる蓮?」
案山子「……」
烏 「場所記憶してんのよ」
案山子「……」
烏 「地下は蓮根だろー?」
案山子「……」
烏 「ひょっとしたら冬にかじるかもしれんしなー」
案山子「……」
烏 「大丈夫だって」
案山子「……」
烏 「食いもんの隠し場所167ヶ所、俺ぜんぶ覚えてるからー」
案山子「……」 - 148 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 12:52:12.96 ID:B0cP+pZ90
-
女「【タイプ:ファラオクール】……ねぇ、VIPPER……っていうか新ジャンル厨ってさぁ、バカなの?」
男「お前よりゃましだろ」
女「まあいいや。使えなきゃ殺せばいいんだし。ふむふむ、太陽神と一体化したクールか」
男「もう殺すことを隠そうともしないよね、お前?」
女「農耕に太陽は大切だしね。炎天下に立つ案山子としちゃいけるかもしれないねー」
男「聞けよ人の話」
女「なんか烏がヒッチコック……」
ファ「仕方ないよね。烏は太陽神そのものって言われてたり、太陽神の使いって言われてたり、
とにかく烏と太陽は切っても切れない関係なんだから」
女「あ……向こうの畑におととい植えたえんどう豆、烏にほじくりかえされてる……」
ファ「……」
ぶちっ
ファ「……一発芸・ファラオ」
女「…………」
男「稲穂むしって顎に当ててなにクールにやっとんじゃああああああああああああああああ!!!」
ファ「あー、うけなかったか……」
女「太陽神ってさ、一度に十個昇ったとき射落とされたんだよね……調子こいた太陽は死ぬんだよね」
男「おおおお落ち着けええええ! その鉈をしまえええええええ!!」 - 149 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 12:59:22.37 ID:B0cP+pZ90
-
女「我々が期待した【タイプ:寿命来ーる/余命クール】は手を下す前に死んだ! なぜだ!?」
男「寿命だからさ――って乗せるなよ」
女「はい、【タイプ:孤高クール】。ちゃきちゃきいこうかー」
男「案山子は孤高に立ってるもんなー」
女「馴れ合いを求めないクール! まさに害鳥よけにうってつけよのう、ボウズ!」
男「誰がボウズだ」
女「わーい、完全に実りきる前に稲がぜーんぶ刈り取られてるよー ヾ(*´∀`*)ノ」
男「【タイプ:クールボンバー】と似たような結論か……」
女「稲がなければ鳥も獣も稲刈り泥棒も寄ってこない……むしろ稲魂すらもない完全に独り立つ世界」
孤「……」
男「クールにやってのけやがったなこの野郎……そしてバカヤロウが……」
女「やってくれましたね、【タイプ:孤高クール】……
よくわたしの豊作への夢を見事に打ち砕いてくれました……
稲魂の反応がありませんね……あなたが刈ったんですか?
一晩でどうやったのかは知りませんが、これはちょっと意外でしたよ……
それにしても、収穫まであと一息のところで稲がごみ屑になってしまうとは……
新米を楽しみにしてくださっていたみなさんには残念でしたが、わたしはもっとでしょうか……
はじめてですよ……
このわたしをここまでコケにしたおバカさんは……
まさかこんな結果になろうとは思いませんでした……
ゆ……許さん……
絶対許さんぞ虫ケラがぁ!
じわじわとなぶり殺しにしてくれるッ!!
逃がさんぞ覚悟しろッ!!!」
女「というわけで24時間mixiで馴れ合いの刑に処してやった」
男「何だろ……いままでで一番残酷な話聞いたような気がするわ」 - 150 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 13:04:00.26 ID:B0cP+pZ90
-
女「いろいろ殺ってみたけどなかなかしっくりくるのってないもんだねー」
男「志村ー! 漢字漢字ー」
女「そもそもさー、案山子自体がすでに【タイプ:博学ール】として千数百年もの昔から
確立されてるキャラ造形ジャンルだからほかのクールを当てはめる余地はなかったってことだよねー」
男「この無残なる失敗クールの山を前にして秋風みたいに涼しく言われてもなぁ」
女「……」
女「んー。空は高く遠く、風は涼しいね~」
男「聞けよ腐れ農耕民族。どうすんだよこのクールの山?」
女「魚肥があるんだから人肥もあったっていいよね♪」
男「やめろ! せめて人糞でとめとけ!」
案山子「……」 - 152 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 13:09:10.20 ID:B0cP+pZ90
-
烏 「稲ってさー」
案山子「……」
烏 「個性ないよなー」
案山子「……」
烏 「ずば抜けて高い奴とかいないじゃーん?」
案山子「……」
烏 「みんなおんなじような高さで満足しちゃってさー」
案山子「……」
烏 「飼いならされるとこうなっちゃうのかねー」
案山子「……」
烏 「んー」
案山子「……」
烏 「俺は野生のソウルを忘れずにやってくよー」
案山子「……」
烏 「お前はどーするー?」
案山子「……」 - 153 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 13:15:30.92 ID:B0cP+pZ90
-
烏 「ぶっwwwww」
案山子「……」
烏 「おまっ、そのお面なんだよwww」
案山子「……」
烏 「似合ってねーなー」
案山子「……」
烏 「ゆうべ縁日で見かけたなー」
案山子「……」
烏 「さてはガキがいらんよなってお前に引っ掛けてったなー?」
案山子「……」
烏 「どうせなら笠のほうがよかったのになー」
案山子「……」
烏 「でもお礼にここの米持ってくわけにもいかんわなー」
案山子「……」
烏 「すると案外これでよかったのか?」
案山子「……」 - 154 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 13:25:52.46 ID:B0cP+pZ90
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烏 「一面の稲穂……」
案山子「……」
烏 「護るは俺とお前だけかー」
案山子「……」
烏 「ちょいと人手不足だよなー」
案山子「……」
烏 「これは……ニッチ産業?」
案山子「……」
烏 「いまいちご利益のぱっとしないほかの神様に参入のチャンス?」
案山子「……」
烏 「でも誰も来ないよなー」
案山子「……」
烏 「野ざらし仕事は嫌がるんだろうなー」
案山子「……」
烏 「俺たちみたいにあふれる知性と野性のガッツをあわせもった神様はもういないのかねー」
案山子「……」 - 155 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 13:31:30.93 ID:B0cP+pZ90
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烏 「案山子って昔は弓矢持ってたんだよなー」
案山子「……」
烏 「今ならさしずめ鉄砲か」
案山子「……」
烏 「そうやって両手広げてても全方位はカバーできんだろー」
案山子「……」
烏 「やっぱ弓矢のほうがいいんじゃねーの?」
案山子「……」
烏 「いやいやいやいやいや」
案山子「……」
烏 「雀どもになめられてるってー」
案山子「……」
烏 「お前の優しさなんかわかってねーよあいつら」
案山子「……」
烏 「燕雀いずくんぞって言うぐらいだしよー」
案山子「……」 - 156 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 13:35:47.43 ID:B0cP+pZ90
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烏 「昔はお前に頼るだけじゃなくてさ」
案山子「……」
烏 「人間自身も一緒に番小屋で頑張ってたのによー」
案山子「……」
烏 「秋の田のかりほの庵ってやつ?」
案山子「……」
烏 「楽を覚えたらいかんねー」
案山子「……」
烏 「お前もいちいち付き合わんでもいいのに」
案山子「……」
烏 「義理堅いよなー」
案山子「……」
烏 「任侠だねー」
案山子「……」
烏 「いまどきヤクザすら忘れてるよー、任侠の精神なんてさー」
案山子「……」 - 157 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 13:44:17.02 ID:B0cP+pZ90
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女「案山子こそパワー!」
男「……日本最高気温ウン十年ぶりに更新しちゃったからなぁ」
女「もうクールにはこだわらないよ! 広く世界に案山子候補を求めるよ!」
男「え?」
女「なに、『え?』って?」
男「あれで終わったんじゃなかったの?」
女「終わってもいいけど、来年から米食うなよ?」
男「いや、米は食わせてください」 - 158 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 13:46:26.44 ID:dmo82AGl0
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- 159 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 sage 2007/08/18(土) 13:49:07.21 ID:B0cP+pZ90
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女「というわけで伝説の剣を立ててみました」
男「うっわー、なんかめちゃくちゃ浮いてる~」
女「近所のコーナンにあった」
男「ホームセンターに!?」
女「たまーにこういう超掘り出し物あるしね。まったく、ホームセンターのウキウキ感は異常だよ」
男「しかしこれはもうすでに案山子じゃないな、しょっぱなから」
女「ビールに新ジャンルがあるように案山子にも新ジャンルがあっていいじゃない、農耕民族だもの」
男「どうでもいいけど雀がさっきから稲穂つつきまくってるよ」
女「大丈夫! 伝説の剣で一刀両断にしてくr――――」
男「どした?」
女「抜けない」
男「……」
女「はやく! 稲がやられる前に選ばれし勇者連れてきて!」
男「…………」
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