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新ジャンル「文房具」01_vol02

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新ジャンル 「文房具」
185 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 19:02:09.80 ID:IZ8daTuk0
うぃっす、今回は調べもノしながらだから、少し進むのが遅いが…

とりあえず、始めよう。



2,「進むべき道は」

時に季節は、4月の終り。
あれだけ、淡い白を保とうと奮闘していた桜の木も季節の移ろいには勝てず、
いや、言葉が悪いな。
季節の移ろいをその姿を若い優しい緑にすることで、表していた。

って、いつの間に俺は、こんな乙女チックに物を見るようになったんだろうね?

186 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 19:05:58.03 ID:zwKCRmPq0
こういう語りが好きだ

187 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 19:26:27.29 ID:IZ8daTuk0
俺は今、緑に白、スクーターと違ってまるで針金細工のような繊細な、
――でも燃費だけはかなりいい――中古のカブにのって、バイト先に向かっている。
学校、スーパー、その他利用しない娯楽施設から比較的近いこのアパートも、
バイト先だけからは遠く、このバイトを止めるきなんて毛頭ない俺は、
やっぱり我慢してこの原付にのって、行くしかないのだった。

189 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 19:37:57.57 ID:IZ8daTuk0
温かくなろうとしているこの季節でも、夕方に原付で走り回るのには、
まだ少し寒く、俺は一張羅の厚手の皮のジャンパーを着ていた。
まだまだ落ちるのが早い太陽のせいで、今自分が走ってる商店街の細道は、
軽い哀愁が漂っている。個人経営の、八百屋、花屋、
食堂の看板ががうすぐらい赤に覆われていて、寂びれたというより、
錆びた感じがする。

190 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 19:52:12.92 ID:IZ8daTuk0
距離的にはあと少しというところで、信号に捕まった。すると、ジャンパーの胸元から
メイドの格好をした女の子が顔を出してきた。明らかに今まで寝てましたみたいな顔と、
ところどころ寝癖でショートの黒髪がところどころはねた頭をこちらに向けながら、
「寝てたわ、ここ、どこ?」もうすぐ着くから引っ込んでろと、俺はまた、
服の中にこいつを押し込んだ、むぎゅうなんて聞こえたが、知ったことじゃない。

191 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 19:59:58.88 ID:IZ8daTuk0
あの日以来、移動する時は胸ポケットの中に入るか、
今つけているような、布で出来たお守り状の首飾りの袋の中に
こいつを入れないと、鬼のように機嫌が悪くなるのだ。

うん、一度だだをこねておやつを買って貰った子供って、
こんな感じだよなと思ったが、
あとが怖いので、死んでもそれは口にしない、しないったらしない。

192 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 20:08:12.83 ID:IZ8daTuk0
信号が、赤から青にかわる。
この信号を少しすぎたコンビニを左折するとコンクリート剥き出しの
小汚いビルが並んでいる。
ここの通りの入って左側3番目の3階建ての小さなビルが
弁護士である先生の事務所件、住まい件、書庫だった。

193 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 20:16:13.75 ID:IZ8daTuk0
外も小汚いが、中もそれに負けず汚い。内装をするぐらいなら、
その金を本と、自分のために使うというポリシーをもつ先生の
ビルは、内側も灰色一色の壁だった。
その上、ところどころにゴミが散乱している。

194 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 20:23:51.79 ID:IZ8daTuk0
先生は多くのものを、天から与えられた人間だったが、
毎日掃除をするというマメな性格だけは
与えられなかったらしい。そのくせ、秘書をやとわないのだから、
日に日にビルが汚くなっていくのはしょうがない、
まぁ、そんなの雇われると俺が食いっぱぐれるんだけどね
なんて思いながら鞄をあけて、ゴソゴソやる。
俺のバイトの仕事内容のほとんどが、先生のビルの掃除なのだが、毎日
掃除をしても、まるで、廃棄物を拾ってくる迷惑なゴミ屋敷の住人のように
少し間があくとこのように、半ばゴミ屋敷と化している。

195 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 20:31:03.24 ID:IZ8daTuk0
とりあえず、目に映るゴミを拾って
鞄から取り出したビニール袋に放り込みながら、奥に進む。
いつものことなので、バイトに来る時は、いつもゴミ袋をもって
くるのだった。右手に見えた階段を通り過ぎ、左手に見えるキッチン
に通じるドアも通り過ぎた後、そのまま、通路の奥に鎮座している
ドアを3回ノックしてに手をかけた。

196 愛のVIP戦士 hage 2007/02/08(木) 20:37:16.54 ID:SFcgjNQd0
wwkkttkk

197 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 20:40:01.05 ID:IZ8daTuk0
油をさしていないドア特有の擦れる音を聞きながら、戸を開く
「やぁ君、今日も相変わらず早いな」
そこら辺の男よりも見事に男性用のスーツを着込なしている
長身の女性が俺を迎える。
「どうも先生、今日も相変わらず汚いですね」
俺はビニール袋を掲げながら、いつものやりとりを交わした。



>>196 サンクス 正直沈黙はイテェんだwww
     頼む、wktkするか、けなすか、どっちかにしてくれww

200 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 20:47:13.75 ID:HDDRd3xc0
+   +
  ∧_∧  + ワクワク
 (0゚・∀・)  + テカテカ
 (0∪ ∪ +
 と__)__) +

201 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 20:50:08.17 ID:IZ8daTuk0
俺は脱いだジャンパーをたたんでソファーの上に置くと、
「先生、少しは掃除したらどうです?」少し責めるように言う。
「アッハッハ、君の仕事を奪うのは心苦しいというものだ。
 いいから早速仕事をしたまえ。」宝塚の男役のような声で俺を笑い飛ばし、
背中にかかる髪を揺らして、俺に仕事を促す。これも、いつものやりとりだ。



ありがとう、やっぱり力が出るわww
がんばるおー。

203 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 20:58:18.19 ID:IZ8daTuk0
俺は脱いだジャンパーをたたんでソファーの上に置くと、
「先生、少しは掃除したらどうです?」少し責めるように言う。
「アッハッハ、君の仕事を奪うのは心苦しいというものだ。
 いいから早速仕事をしたまえ。」
 宝塚の男役のような声で俺を笑い飛ばし、
 背中にかかる髪を揺らしながら、パンッと手を叩いて俺に仕事を促す。
 これも、いつものやりとりだ。

204 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 21:14:06.46 ID:IZ8daTuk0
――さて、どこから掃除するかと部屋全体を見回した。
さっきの通路とは違った汚さが、この部屋にはあった。
ゴミはそんなに落ちていない。
が、物が散乱している。
まず、応接するはずのテーブルの上は、
いつ使ったかわからないコーヒーカップが出っ放しだ。
先生が読んだ本は、入って真正面の先生のデスクの周りに、
無造作に積んで置かれている。
この人は掃除機なんて使わないのに
――掃除機を片手に掃除をしている先生なんて、それだけでシュールだ――、
何故か部屋の隅に転がっているし、もはや必要ないのだろう書類が、床の
絨毯に転がっている。…ここに、本当にひとを呼べるのか?と思う。

206 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 21:28:36.91 ID:IZ8daTuk0
しかし、デスクの上だけは
まるでそこだけ別の空間を切り取ったかのように、整理されていた。
でも、やっぱりこっちを不思議そうに見る小さな人が見えたりするのはご愛嬌だ。
それは、こっちの問題であって、先生のせいじゃないしね。
ふと、そのままの形をとどめた無機質な文房具
――どうやら、ファイルが多い――も見えて、
少し心に引っかかる。
そういえば、学校でも、「なってるやつ」と「なってないやつ」
がいたことを思い出した。あぁ、そんなことより掃除しないとな。

207 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 21:29:39.27 ID:IZ8daTuk0
その後、デスクの後ろにあるラックに目を移す。
あそこには先生の服が整然と並べられていることを
俺は知っている。
この2つだけは、絶対に俺には触らせない。
というより、多分、誰にも触らせないのだろう。

208 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 21:33:13.24 ID:IZ8daTuk0
先生曰く、
「仕事机の上は政域であり、すなわち聖域。
 このラックにある服は、正装でありすなわち聖装だからね
 これだけは、整えておかないとな」
だ、そうだ。言葉遊びが好きな先生にふさわしい言葉だ。

209 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 21:38:24.04 ID:r2jum79f0
懐かしい新ジャンルだな

と思ったら普通に新しいな

210 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 21:43:28.10 ID:IZ8daTuk0


wktkな言葉は俺に力をくれるが、

>>209 な言葉は、俺をtktkさせるおwww

211 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 21:52:11.63 ID:IZ8daTuk0
とりあえず、先生に聞いて、
いらない書類いる書類を分別しいらない書類は、ビニール紐でまとめて
ビルの玄関の入り口まで持っていく。
読み終わった本を書庫がある2Fまで運ぶ、量があるのでこれが一番大変だった。
掃除機を片付ける前に、ソレで絨毯の上をかける。
最後の仕上げとして、俺はコーヒーカップを下げて、
この部屋のそとにあるキッチンに向った。ドアを開ける。

212 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 21:54:47.13 ID:IZ8daTuk0
…まず目に入ったのは
 大量のコーヒーカップが突っ込まれたシンクだった。
 ここは喫茶店か何かか?

一瞬あっけにとられて、立ち尽くす俺の胸の袋から、
消しゴ…さくっ……消しゴムがハンマーゲームで飛び出してくるワニのように、顔を出した。

213 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 21:59:12.70 ID:r2jum79f0
>>210
あれ、お前ひょっとして前立ってたスレの>>1か?

214 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 22:02:03.14 ID:IZ8daTuk0



>>213
うぇwwノン いや古いけど新しいって言ってくれたから、
        俺がtktkしたと、伝えたかっただけだw
      
        まぎらわしくてすまんなorz


216 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 22:12:41.35 ID:IZ8daTuk0
「相変わらず、あの人は凄いわね」すぐに口を開く。
「あぁ、先生は例外を除いて、片付けるということをしらないからな。それに――」
 拘りも、ない。それは、先生のいいとこを表すときにも使えるのだけど、
今回は適当すぎるという意味で使わざるをえない。
 前に、コイツと一緒にこのシンクを見たときは、
中にあったのは、大量の湯呑みだった。

217 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 22:21:08.30 ID:IZ8daTuk0
腕まくりして、洗いものをはじめる。
静かなキッチンに、古くなった蛍光灯の安定器が発する虫が鳴くような音と、
コーヒーカップが擦れる音が、響く。俺もだまってるし、消しゴ…さ、
桜もじっと流れる泡を見つめている。

219 愛のVIP戦士 hage 2007/02/08(木) 22:25:27.62 ID:SFcgjNQd0
これは

 本 当 に い い

220 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 22:34:00.23 ID:IZ8daTuk0
とりあえず、何か話そうと思って、声をかける。「なぁ?」
すると桜は振り返って、疑問符を浮かべた表情でこちらを見上げてくる。
しまった!これはっ。この角度はっ!その角度はぁ!!
何気なく声をかけたつもりだったたのに、不意打ち的な表情に心臓がはずむ。
何も考えてないのに、うぁ、何て話を続けよう。

222 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 22:43:10.45 ID:IZ8daTuk0
「な、なぁ、俺、文房具がこんな風に見えちまうけどさ…、
 時々、元のままの普通の…いや、もう普通が何かわからなくなりつつあるけど…
 無機質な物のままに見えるヤツもあるんだ。何でだと思う?」口から落ちたのは、
こんな2人に関係ない言葉だった。…いやぁ、誰か、俺を殴ってくれないか?

それを聞いた桜は、あらなんだ、そんなことといった表情で前に向き直った。

223 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 22:50:04.22 ID:IZ8daTuk0
「『器』と『揃い』の違いよ」何だそれ、と俺は聞き返した。
「そのままよ。器は入れ物。揃いは入れ物と、魂がそろった状態よ」――聞いたことない?
とさらに付け加えていく。
「ほら、愛着をもったもの、何年も使ったものには魂が宿るって。特に人形。
 あれなんか、人の業(かたち)そのままだから、人形自体が自分が魂を持てることを意識しやすいの」
 オカルトな話になってきたなと思いながら、話を聞く。
「多分、あなたが見ているものは、そんな物に宿った魂よ。でも不思議なのは…
 あなたは、『揃った』状態じゃないと見えないってコトかしらね?」

224 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 22:59:10.17 ID:IZ8daTuk0
「ふぅん、例えるなら、怨霊単体では、それは見えないけど
 怨霊が人に乗り移ると、とたんにそれが見えちまう感じか?」
「あんなのと私達を一緒にしないでちょうだい」と抗議する、桜。
やばい怒らせたかな?と思って、首の袋に目を移すと、
…まぁ、そういう感じのこともないことはないけどさ…と、
彼女はうつむいて、小声で言った。 
 そして、また、沈黙が辺りを包みこむ。俺も洗い物の方に視線を戻す。
 静けさの中、
やっぱり、虫の鳴き声に似た音と、コーヒカップの擦れる音だけが響いていく。

225 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 23:05:16.39 ID:6xhIDPxaO
wktk
そしてコンパスたんの登場を期待

226 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 23:13:00.65 ID:sDCeBZVzO
何かとレスしたがる>>1に言うが

>>1レスにつき10人以上はROMってる事を忘れないでほしい

心配すんな


227 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 23:19:43.24 ID:0aHMgTs50
ここは 無い絵心をくすぐられるスレですね
http://vipmomizi.jog.buttobi.net/cgi-bin/uploader/src/7171.png

p01_227_7171.JPG
228 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 23:24:39.74 ID:IZ8daTuk0
 食器を洗いきり、
 普通の家庭における年末の大掃除のような、
しかし、ここでは別段珍しくない大掃除がようやく終わった。
「掃除、終わりましたよ」とデスクで本を読む先生
――世の中、本を読む姿が綺麗な人と、
  貪欲さが滲み出る人がいるけど、先生は前者だなと思いながら――に伝えると、
  本から目を離して
「あぁ、ご苦労だった、いつもすまないな」が、全然悪びれ素振りをせずに
「フム、まだ時間があるな。
 コーヒーでもついで来てくれないか? 一緒に飲もう」と言った。
ありがたい話だったけど、これ、多分俺が洗うんだよなと、
心のスミで思った。


229 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 23:30:10.43 ID:IZ8daTuk0
――チェンジ ア ヴューポイント

 コーヒーを持ってきた彼は、ソファーに座った先生と呼ばれる女性の前にコーヒーを置くと
その人の向かい側に座る。そして、彼等は話し始める。
その声を聞いて、小さな彼女は袋の口に手を置いて、ピョコリと顔を出した。
向こうで、綺麗な姿勢でコーヒを飲む大人の女性の仕草を目で追う。
ハサミの姐さんとはまた違った大人の気配があるわね、と桜は感じ、天井を見上げる。
姐さんが、包み込む優しさを備える女性なら
この人は、遠くまで見通す鋭さを備えた女性なのだろう。
人を癒す人と、自らの力で進む人。自分の持ち主の方に視線を移した。。
あぁ、この人が、彼女に憧れるのも何となくわかる気がするわ。
そう思って、視線を目の前の彼女にに戻すと、
気のせいかもしれないけど、微笑みかけられた気がした。
まさかね、と思いつつ、袋の中にもぐりこんだ。

――リターン ア ヴューポイント


231 愛のVIP戦士 sage 2007/02/08(木) 23:40:49.32 ID:IZ8daTuk0
すまん、>>229を訂正させてくれ。

1人称と、3人称がまじった。


――チェンジ ア ヴューポイント

 コーヒーを持ってきた彼は、ソファーに座った先生と呼ばれる女性の前にコーヒーを置くと
その人の向かい側に座る。そして、彼等は楽しそうに話し始める。
その声を聞いて、小さな彼女は袋の口に手を置いて、ピョコリと顔を出した。
向こうで、綺麗な姿勢でコーヒを飲む大人の女性の仕草を目で追う。
ハサミの姐さんとはまた違った大人の気配があるわね、と桜は感じ、天井を見上げる。
姐さんが、包み込む優しさを備える女性なら
この人は、遠くまで見通す鋭さを備えた女性なのだろう。
人を癒す人と、自らの力で進む人。桜は自分の持ち主の方に視線を移した。
あぁ、この人が、彼女に憧れるのも何となくわかる気がするわ。
そう思って、桜は視線を目の前の彼女にに戻すと、
彼女から微笑みかけられたように感じた。
まさかね、と思いつつ、桜は袋の中にもぐりこむ。

――リターン ア ヴューポイント

233 愛のVIP戦士 2007/02/08(木) 23:50:58.96 ID:IZ8daTuk0
 先生とたわいもない話をする。
 今日のキッチンのシンクの話から始まり、自分の学校のことや、まぁ、いろいろ。
 そうしてるうちに少し話すことがなくなって、静かになってところに
「ところで、その首にぶらさげてあるものは何だ?大事な人にでももらったのか?」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら、質問してくる。
こういうとこは、この人もやっぱり女の人なんだなと思いつつ、
同時に、当たらずとも遠からずといったところを突かれて少したじろぐ。
飲んでるコーヒーに砂糖を入れて、照れをごまかしながら、
「まぁ、そんなとこです」と言った。

236 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 00:10:04.16 ID:fYJHAoHE0
「まぁ、そんなとこです」と言った。
正確には大事な…いや、なんでもない。
ふぅんと、先生は深く問い詰めることはしなかったが、やっぱりニヤニヤ笑っている。
うぅ…居心地が悪いなと、自分の腕時計を見る。
少し時間的には早かったが、
まぁ、先生の表情からして楽しませることはできたのだろうと思い、
「先生そろそろ、時間ですし、帰ります」と伝えた。

237 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 00:16:34.96 ID:fYJHAoHE0
先生は、ちょっとだけ目を丸く見開いた後微笑えんで、
「あぁ、わかった、気をつけて帰りなさい」
といい、少し追い出すような感じで手を振る。
ありがとうございますと、頭を下げ、
横にたたんであったジャンパーを羽織って、
鞄を肩にかけ立ち上がる。

238 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 00:29:53.76 ID:fYJHAoHE0
そして、自分のと、先生のコーヒーカップを下げようとすると、
別にそこまで気を使わなくてもいいと、先生は言ったが、
俺は笑いながら
「多分これ、いつか俺が洗うことになるんでしょ、きっと」と言うと
先生も笑って、
あぁ、そうだな、きっと、と言いながらカップを渡してきた。

239 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 00:48:38.19 ID:fYJHAoHE0
2つのカップを洗って、ビルを出ると、
外灯もないこの通路は、暗い闇に満たされていた。
ヘルメットをかぶり、スタンドを倒して、原付に跨る。
エンジンをかけると、
オンボロの甲高く情けない排気音が、路地裏に響いていく。

俺は家に向かってアクセルをひねった。

夜の小道にバックライトの残像が滑る。

240 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 01:05:35.25 ID:fYJHAoHE0
――チェンジ ア ビューポイント 彼の家にて

彼が、帰路についているころ。
手持ち無沙汰の4人がその主の帰りを待っていた。
ペンケースごと連れて行ってくれたのなら、
今頃こんなにも暇をもてあましていないのだが、
あの主の少年はバイト先にペンケースを持っていくのを忘れたのだった。


243 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 01:57:35.44 ID:zfR0WjgT0
ttp://up2.viploader.net/pic2/src/viploaderf103500.jpg
初めてupしてみた
>>1がんばれ

p01_243_viploaderf103500.jpg
245 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 02:28:39.38 ID:J0shndsmO
>>1さんへ
>>160くらいでノートにうつしてるって言ってたものなのですが、
今までずっとうつしてましたが、
まだ全部うつせてません…
これからも続き書いてください!
応援してます!

保守おながいします…orz

247 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 02:39:05.15 ID:zLNXTPWZO
>>245
おまいに男を見たと昼間は言ったが
むしろここまでくると何か可愛いなw

248 愛のVIP戦士 sage 2007/02/09(金) 03:07:03.00 ID:fYJHAoHE0


おk、すまない、寝たから再開する!!

249 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 03:14:38.76 ID:fYJHAoHE0
「暇…ね。」と、退屈に長い髪を弄びながら、ハサミの姐さんはつぶやく。
「暇だね」と微笑みながら、ボールペンに腰掛けてる白衣の女性は言った。
「……」何も言わず定規の少女は黙々と何かを読み続けている。
 巫女姿のコンパス娘にいたっては、もはや寝ているケースの中から出てきそうにもない。
何もすることのない姐さんと白衣は、暇そうにぼぅっと、宙を見上げている。

250 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 03:24:04.88 ID:fYJHAoHE0
「あなた、暇なのに嬉しそうね」ハサミの姐さんは横にいる白衣に言った。
「あぁ、私、今『楽』だからね、暇な時はだいたいコレにしてるわ
 心やすらかに過ごせるし、あぁ、『嬉』でもいいけど、あれは疲れるから」
と、自分の腰掛けてるボールペンの4色の所を指差した。『緑』の芯がセットされている。
 鎮静剤、アッパー系、ダウン系のクスリ、覚せい剤が、
バランス良く体に常備されてるようなものねと、姐さんはぶっそうに例えた。
便利ねとも思ったが、よくよく考えると「ニュートラル」がない。少し疲れる生き方ねと、感じる。

251 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 03:31:01.24 ID:fYJHAoHE0
「ねぇ、あなた、あの『箱入り娘』がおきてるとこ見たことある?」
「んー、ないねー。」「そうよね…ないわよね…」と呟いた。
「なかぬなら殺してしまえ、ホトトギス」「こ、殺してしまえ!!??」流石に白衣が突っ込む。
「間違えたわ、なかせてみよう…よ」スッと立ち上がって、
白衣の前を通り過ぎコンパスケースに向かって歩み寄る。

252 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 03:41:02.83 ID:fYJHAoHE0
と、何を思ったか戻ってきて、やっぱり白衣の前を通り過ぎる。
「?」不思議に白衣が眺めていると、ボールペンの4色のところに膝を下ろして、『青』をセットした。
「アハッ、ちょっと、ウフ、何かってに触ってるのよ」
面白いものでも見て、嬉しくてしょーがないといった感じで、姐さんに近寄って、肩をバンバン叩く。
姐さんは冷静に白衣を見つめて、この子、酒もいらないわね、と思った。


253 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 04:11:04.38 ID:fYJHAoHE0
姐さんはコンパスケースを覗いた。
ふぅん、ホントに死んだ風に眠っているのねと姐さんは思う。
白衣も同じことを考えていたらしくケラケラと笑いながら、
「アハハ、ねぇ、生きてるの、コレ?ウフ」と言った。
とりあえず、姐さんがケースの蓋を開けようとすると、
チャイナ服の後ろを誰かが引っ張る感じがした。
振り向くと、氷のような定規のあの子が、私の後ろにいた。

254 愛のVIP戦士 sage 2007/02/09(金) 04:12:39.59 ID:fYJHAoHE0
>>253 訂正      どちくしょう、一人称と、三人称まざっちまうんだよー!!ねみぃ


姐さんはコンパスケースを覗いた。
ふぅん、ホントに死んだ風に眠っているのねと姐さんは思う。
白衣も同じことを考えていたらしくケラケラと笑いながら、
「アハハ、ねぇ、生きてるの、コレ?ウフ」と言った。
とりあえず、姐さんがケースの蓋を開けようとすると、
チャイナ服の後ろを誰かが引っ張る感じがした。
振り向くと、氷のような定規のあの子が、ハサミの姐さんの後ろにいた。

255 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 04:17:10.04 ID:fYJHAoHE0
白い純白のセーラー服を着た彼女が、
眼鏡の奥にある透き通るような青い目で、私達を見つめている。
「ダメ」と、耳を澄まさないと、聞こえないような小さな声で、彼女が呟く。
「あぶない」と、再度忠告する。
珍しい状況に、姐さんと白衣は目を見合わせた。
本しか興味のなさそうなこの子が、忠告するってことは、ホントに危ないのだろう。
でも、今の彼女達にその言葉は逆効果だった。
彼女達は『暇』で、『面白い』ものを探していたからだった。

256 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 04:27:41.51 ID:fYJHAoHE0
「アハハハ、何が起こるの?」
ハイテンションな、ボールペンの質問に、少しだけたじろぐ少女。
それにインプットは好きだが、アウトプットは苦手なのだろう彼女は、少しの沈黙の後
「あぶない」と繰返した。
「ごめんなさいね、一度だけ、話してみたいの?」と、
姐さんは、セーラ服の眼鏡少女の前にしゃがみこんで、言った。

「そう…」とだけ、氷のような少女は呟くと、
ほんの少し、雪の結晶のようにほんの少しだけ、あきらめたような表情をすると、
身の丈の2倍以上ある定規をかついで、テクテクと2人から離れていった。


257 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 04:35:08.61 ID:fYJHAoHE0
机の引き出しを開けて、定規はその中に入った。
口下手な彼女には、危険を正確には伝えることはできなかったけど…
少し暗いその中で「わたしは、止めた」とだけ呟いた。


258 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 04:46:42.22 ID:fYJHAoHE0
その頃、すでに2人はコンパスケースの蓋を開けていた。
綺麗な割には、意外と古いコンパスだった。その割りに、魂の方は
先ほどの定規の子よりも少しだけ上の印象しか受けない。
まぁ、私達に外見の年齢なんて関係ないけどねと思いながら、ハサミの姐さんはその
巫女姿のコンパスを見つめる。

259 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 04:56:26.39 ID:fYJHAoHE0
さて、忠告もあったし、
どうやって起こそうかなと、考えていると、
ハイテンションの白衣があっさり行動に移す。
「おっきろーなんてね、アハハ」と、
巫女のデコに思いっきりチョップをした。
「オバカッ、あなたっ!さっきの話を聞いて――」
ヘラヘラと笑っている白衣の肩を姐さんが勢いよく揺さぶっていると、

「ふぇ…」息を吐き出すように呟いて、巫女が起きた。


260 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 04:57:20.66 ID:fYJHAoHE0
すまぬ、ちぃと、寝かしておくれ。

もし、覗いてくれる人がいたら、たまに保守ってくれると、助かります><

262 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 05:03:26.43 ID:HfjZ+r8EO
>>260乙!
(`・ω・´)ゆっくり休んでくれ
wktkで待ってるから

263 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 05:08:27.65 ID:AyGzN/G30
やっと追いついた
この場に居合わせたことを誇りに思うぜ

267 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 06:27:36.03 ID:fYJHAoHE0
おはよう、緑茶片手に、がんばるんだぜ。

268 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 06:29:59.90 ID:fYJHAoHE0
コンパスの巫女少女は上半身を起こして、ゆっくりと辺りを見わたす。
とろんとした目が、姐さん達二人を見つけた。
彼女の瞳がゆっくりと絞られて焦点が合っていく。
カチリ、何かがはまるような音を姐さんは感じた。
とたん、まるで色が変わるように気配が変わる。ブルーから、レッド。
平常から、異常の警報へ。
焦点が合う?そうじゃない、そんな生やさしいものじゃない。
この目は、猛禽類が獲物をとらえようとするときの目だと、姐さんはあせった。 
「アハー、起きた起きた、チョップしたかいあったね」と、
無警戒に近よる白衣、訂正、鴨一羽。
途端、巫女が素早い動きで、3倍返しがごとく、持っているコンパスの腕を
白衣の顔にめりこませる。きゅうっと倒れる白衣。

269 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 06:40:42.45 ID:fYJHAoHE0
あぁ、これは――
あぁ、これは、たしかに退屈しないですみそうだけど――
ちょぉぉっと、失敗したかな。

そう思いながら、
姐さんは背中にかけてるハサミを構えながら、しなやかに後ろへ跳ねた。

270 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 06:45:54.45 ID:fYJHAoHE0
――リターン ア ヴューポイント

272 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 07:29:10.32 ID:fYJHAoHE0
真っ直ぐ帰ろうと思ったのだが、
閉店間際のスーパーが目に入ってしまい、俺はふらりと立ち寄った。
この時間帯のスーパーは、貧乏な一人暮らしをする者にとっては
殺虫灯の青白い光なみの誘惑を発するのだ。

夜、この時間帯は、物を裁くために半額になったりするからなと、
主夫バリバリの考えで、肉や、魚のコーナーを物色する。凍らせば
消費期限も怖くないしね。


274 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 07:47:39.89 ID:fYJHAoHE0
安い品物を、無造作に買い物籠に放り込んでいると、
ジャンパーの胸元から顔を出している桜が、話しかけてきた。

「あの人…いい人ね」と優しい声で。あの人とは先生のことだろう。
あぁ、とちょっと誇らしげに俺は答える。
「それに強い人だわ」と、今度は少しだけ不安そうに。

どうしたんだろうと思って、胸の桜を見た。目と目があう。
少しの間、そうした後、彼女はプルプルと首をふって、
何でもないわと小さな声で呟いた。

変なヤツ。俺は前を向きなおして、買い物に戻った。

275 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 07:59:42.89 ID:fYJHAoHE0
桜は思う。
あの人はいい人と同時に強い人。
そして、人間には珍しい、ほとんど一人で生きていける人だわ。
その姿に憧れるあなたの気持ちはわかる、痛いほど。
あなたは一人で生きていく力をずっと欲しがっていたのだから。
でも、その強い姿って――
それって、対象が自分か、他の何かという違いなだけの
あなたが嫌った、完全を求めるってことじゃないかしら?という疑問がよぎる。
ダメね、ちょっと考えすぎてるわ、と思い
自分の持ち主を見上げた。

276 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 08:06:36.40 ID:fYJHAoHE0
――チェンジ ア ヴィユーポイント  [机上の戦場]

間合いをとる?バカめ、させるか。巫女は赤い女性に食らい着く。
朱色の袴と、流れるような黒髪を翻しながら、同じ朱色のコンパスで
後方へ下がろうとする姐さんの顔右側を横に薙ぐ。
それを赤い女性ハサミでうまく受けるが、派手に吹っ飛ぶ。
しかし、うまく彼女は受身をとり、結局は間合いをとられた形となった。

278 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 08:22:10.95 ID:fYJHAoHE0
巫女は内心舌打ちする。
フン、わざと受けて、衝撃を殺すため自分から飛び距離をとったか。
やりおるな、まぁいい、寝覚めの相手には申し分はない。
――我の眠りを妨げた彼女に、我の手で制裁を。
巫女姿の彼女は自分の得物を前に構え直す。

279 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 08:30:15.45 ID:fYJHAoHE0
何事にも無関心なあの子が、この巫女ちゃんを起こすのを止めるだけはあるわ、
結構本気で間合いを作ろうとしたんだけどね、
追いつかれちゃった。
自分の右側にハサミの刃を降ろし、構えた赤の姐さんは、
唇をなめてしめらした。

280 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 08:34:40.53 ID:fYJHAoHE0
相対す、赤と朱白。空気がお互いの殺気で極限まで張り詰める。
先にしかけるのは、赤き閃光。
間合いを一瞬で詰め、刃を右袈裟切りに叩きつける。
それを防ぐは、朱白の旋風。
来る一撃をかわしきり、舞う風のように得物をそのまま叩きつけた。
赤がそれを受け止める。
そのまま言った。「おはよう」朱白が返す。「くたばれ」
二人は笑いあう。


281 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 08:35:32.55 ID:K0OtBfxu0
⊿定規「平行線はねぇ」
△定規「わたしを軸にして」
⊿定規「わたしを△に沿って動かせばいいのよ?」
△定規「ぁん、そんなに激しくしちゃ、くっついちゃうぅ」

282 愛のVIP戦士 sage 2007/02/09(金) 08:42:49.60 ID:fYJHAoHE0
>>281 ちょwwwwイヤラシスwwwww

283 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 09:03:50.10 ID:fYJHAoHE0
遠くからを眺めると、それはまさしく演武だった。
しかも、極度に芸術的な。
舞う黒長髪と、散る赤長髪。
響く衝突音に、合わす双方の武。
探す互いの隙に、出し尽くさんとする互いの気力。

近距離の数合のあと、彼女らは再び間合いを取った。

284 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 09:22:41.19 ID:fYJHAoHE0
お互い、素直に相手の腕に感心していた。
決まったと思った一撃は交わされ、受けられ、
かわしたと思った一撃の後に、間髪いれず、次の一撃が飛んでくる。
そして、決定打を双方が得ることができなかった。
あんな近距離で決着がつかないなんて、双方が『卓越した』
という言葉で片付けられない程の技量を持っている。

285 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 09:29:34.51 ID:fYJHAoHE0
しかし、再び間合いを取り直した彼女達は、次で
勝者を決めるつもりだった。離れた間合いを、互いが
少しづつ詰めあう。
ある一定の距離になったとき、まるで決め合っていたかのように
双方が地を縮ち、激突する。


286 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 09:36:03.30 ID:fYJHAoHE0
果たして、勝負はついた。
少し離れたとこで、自分の得物が落ちる音を赤の敗者は聞いた。


287 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 09:36:54.83 ID:fYJHAoHE0
「我の勝ちだな。さぁ、我を起こしたことを――」
 朱白の勝者はは自らの得物を振り上げ、
「つぐなってもらおうか」告げる。
「まぁ、しょうがないわね、受けてあげるわよ。起こして悪かったわ。」
 肩をすくめながら姐さんは言った。
 それに笑って、朱白の巫女は得物を叩きつける。

288 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 09:37:48.81 ID:fYJHAoHE0
――しかし、それは結局姐さんには届かなかった。
姐さんが不思議に思って顔をあげると、明らかに先と気配が違う人が、そこにいた。
所在無くキョロキョロと辺りを見渡して
「あれー…、私、どーしたんでしょー、寝てたはずなんですけど…」心底不思議そうに呟やいた。
「おはよう」と赤の姐さんはいい、
「あ、おはようございます」と朱白の巫女はペコリと頭を下げる。

289 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 10:07:19.82 ID:C86LNDTjO
ここまで頑張る>>1も珍しい
頑張れ、超期待

290 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 10:09:18.84 ID:fYJHAoHE0
姐さんは、ようやく挨拶を交わせたわねと、ため息をついて、頭を掻いた。
静かになった部屋の外から、主の原付が帰ってくる音が響く。
少したった後、ドアを開ける音が聞こえた。
いつの間にやら出てきた阿部が、つなぎのホックを外し始める。
とりあえず、彼の頭をはたいてから、赤の女性は主とかわいい妹を迎える。

――リターン ア ヴィユーポイント 「机上の戦場」 了


293 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 11:27:53.02 ID:fYJHAoHE0
部屋に戻ると、文房具のヤツらが、迎えてくれた。
そこで初めて俺は、ペンケースを持っていくのを忘れたことを知り、
置いていった連中にすまんと謝った。
とりあえず、小さい四角のちゃぶ台の上に買った物を置くと、
首かけ袋を外して机の上に置いた。

294 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 11:29:51.81 ID:GQ15fh+q0
今追いついた

なんてゆーか文章に続きを読みたいと思わせる何かがあるね



こーゆーの好きだ 
wktk

295 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 11:44:41.80 ID:fYJHAoHE0
桜がキャベツを食む青虫のように
――本人にこの例えを聞かせたら、間違いなくこいつは切れるだろうな――
ピョッコリと顔を出して袋から這い出ると、
とてとて音をたててハサミの姐さんに近寄き、抱きついた。
うん、微笑ましい。微笑ましすぎる。

296 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 11:57:00.27 ID:fYJHAoHE0
すると、机の上に巫女姿のコンパスの美人の少女が、
所在なさげに立ってるのに気づいた。
俺は、机の下に落ちてある姐さんのはさみを拾って、

「コイツがおきてるの、はじめてみる。起きてきたのか?」
渡しながら聞くと、
「いえ、起こしたのよ」と言い、
開いたコンパスケースの近くで、
目で×の字を作り天井を向いてオネンネ中のボールペンの白衣さんに目をやって、
私達がね、と付け加えた。

297 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 12:05:37.10 ID:fYJHAoHE0
さて、
取りあえずスーパーの袋の中身を冷蔵庫にしまわないとなと考えていると、
大きな定規を手に持ち、
引き出しから懸命に机の上に上がろうとしている、
白いセーラー服の眼鏡っ娘を見つけた。
ひょいとつまんで、机の上に降ろす。

298 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 12:09:32.60 ID:fYJHAoHE0
眼鏡の奥の青い二つの瞳で、少しだけ俺を見つめた後、
ほとんど角度を変えず頭を下げ、
この眼鏡っ娘との対比でバカに長くみえる定規を肩にかかえて、
ペンケースの中に戻っていく。
うーん、いい目をしてたな、コイツ。なんて思うオレは大分末期やもしれん

299 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 12:12:37.29 ID:fYJHAoHE0
ホックを開いて胸元を露わにしこちらを見つめてくる阿部は、
見なかったことにして、
テーブルの上の買い物袋を掴み、俺はキッチンに向かった、
ついでに飯でも作ろうかと思いつつ。

300 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 12:29:27.49 ID:fYJHAoHE0
作った飯をテーブルに置き、
飯に対する礼を言う前に、ふと、疑問に思ったことを口にする。
「しかし、お前ら、飯は食わないのか?」
「別に食べなくても問題ないけど――
 供えてもらえるのなら、頂くわ」と、桜が言い
「まぁ、『気持ち』の問題ね」と姐さんが
「考えは神様、仏様に何かを供えるのと一緒よ。
 私達は物そのものを食べることはできない、
 それを供えてもらって、『気持ち』を頂くしかね」さらに付け加えた。

301 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 12:35:45.07 ID:fYJHAoHE0
コイツらと出会って三日目にして、俺の中から神と仏は消えうせたが、
アニミズム的な考え方は信じてやろう。
現に目の前のこいつらが、そう言うんだしな。
それに元は無機質のこいつらが、間接的ながら、何かを食べることができるということが、
少しだけ俺は納得いかなかったが、まぁ、昔話で川に人身御供を捧げたってのも聞くし、
無理はないのだろう。

302 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 12:37:53.32 ID:gy8V2iZmO
wktkがとまらない!!!

303 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 12:42:17.66 ID:fYJHAoHE0
「ふぅん、こうでいいのか?」
目を閉じ、パンッと手を合わせ、頂きますと言う前に、
まぁ、食え食え、と心の中で思う。

目をあけて文房具達の方をみると――
ご大層にそれぞれの前に、
各人別々のテーブルとマイ食器にもられた、俺の飯のミニチュア版があった。

…何でもありかよ。好きにしな、もう。

304 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 12:55:53.04 ID:fYJHAoHE0
「ありがとうね」
ハサミの姐さんがスプーンを掲げながら優雅に微笑む。
そして、それに倣うようにそれぞれが感謝を伝えてくる。
白衣さんは、ありがたくなさそうに、右手だけで手刀を切り
巫女の少女は、やっぱり何度もお辞儀をし、
セーラー服の眼鏡っ娘は、目を閉じて両手を合わせている。
阿部は何故か、ワインの入ったグラスを片手に白い歯を向けている。
おかしい、コイツなんでそんなものもってやがる。

305 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 13:08:50.74 ID:fYJHAoHE0
五者五様で、お礼を投げてくる中、一人、桜だけこちらを黙って見つめてくる。

こ、コイツ、礼の仕方も知らんのか?なんて思っていると、桜は口を開いた。

「あたしを、そっちのテーブルに連れて行きなさい」「はい?」
いや、そこの机の上でも食べられるじゃないかと、俺が返すと
「ダメなの?」と少し悲しそうな顔をして、
やっぱり少し潤んだ目でこちらを見つめてくる。

308 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 13:15:56.35 ID:fYJHAoHE0
その表情を見て、少し息が止まった。
心の中で、狙撃銃の発砲音が二回木霊する。これも反則打!
生命維持を狙うラビットブロー、ちょっと、見ました、審判?
彼女俺の脊髄を狙った反則打を放ちましたよ??レフェリー!!
あれ?レフェリーィィィ!!???
俺は、心の中で蝶ネクタイをしたおじさんに必至に訴えたが、
さっきの狙撃音は、
どうやら、俺のATフィールドを司るこのおじさんを狙ったものらしかった。
レ、レフェリィィィィ!!???
「わ、わかったよ」と俺は顔を真っ赤にしながら、
桜とミニテーブルをつまんで、俺のテーブルに降ろした。
満足そうに笑って、「ありがとう」と伝えてくる。

止めをありがとうね、感謝してるよ。

309 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 13:25:38.35 ID:fYJHAoHE0
人が、煩悩の業火に萌え死にそうになってると、
「そうね、私もお願いしようかしら」と、
ハサミの姐さんが笑いながらテーブルを手で抱えて立ち上がった
すると、巫女の少女も慌てたように立って、
うんしょといってテーブルを持ち上げて、数回お辞儀を繰返す。
そして、定規の眼鏡っ娘は、まるで機械が動くように、
テーブルを両方の手のひらで挟むように持つと、起立する。
阿部は、なぜかすでにテーブルの上にいた。
もはや、常識なんて通用しないこの部屋で、その遥かななめ上を行く男である。
最後に取り残されたボールペンの白衣さんは、
座ったまま憮然とテーブルを少し前に動かすと頼みますとだけ伝えてきた。


312 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 13:39:15.66 ID:fYJHAoHE0
全員移動させ終わると、見慣れない光景にとまどう。
…こいつらと一緒に飯を食うということに?いや、違うな。
その理由はきっと
――こんなに大勢で、俺の家で夕飯を食べるのは初めてだからだと思う。
うん、学校での集団行動を除けば、俺の人生で初めてかもしれないな。

得意そうに胸を張って、こちらを見上げてくる桜を見た。
もし、もし、ここまで考えてああ言ったのなら…。
こいつには、絶対かなわないなと、息を吐き出しながら笑う。

313 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 13:43:39.17 ID:fYJHAoHE0
気づくと、皆がこちらを見ていた。
あぁ、俺の合図待ってくれているんだなと感じる。

――さぁ、ご飯を食べるための言葉を口にしよう。
心に、食べられることへの感謝をこめて、手を合わせ、
心に、皆で食べられることへの感謝をこめて、目をつぶり、
――始まりの言葉を口にしよう。

314 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 13:44:23.80 ID:fYJHAoHE0
俺は少し、大きな声で言う。「よし、じゃぁ、いただきます!」

少し時間がたったせいで飯は冷たかったけれど――
これほど柔らかな時間に温かい夕飯を食うのは本当に久しぶりだった。


319 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 14:54:09.67 ID:K0OtBfxu0
保守ついで

プラ消し「いやっ、ケースから出したまま仕舞わないでっ。と、とろけちゃうぅ」

練り消し「わたしでどうやって消すんだろ?」
男「こうやるんだよっ」
練り消し「んっ、あっ、ちょっとつよっい。そんなに揉まれたら、こすり付けられたらぁっ、字が消えちゃうぅ」

320 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 15:05:11.96 ID:jyAcLUqM0
バーローw

324 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 15:54:41.27 ID:fYJHAoHE0
話、練ってるので、閑話。
あとスマン、バイトなんで5時半ごろから、ちょっと消える。
よかったら、それぐらいから保守ってくれると、tskr。

水のり♀「ねぇ、僕の出番は?即戦力じゃなかったの?」
イレイザー「い、いや、アハハハ…、その、何?まぁ、どんまい」
水のり♀「ふゅ…ひどいひどい、
     僕をだましたんだね、君ならロリ枠を制することなんて、
     よ、あいたっ(舌をかんだ)余裕よ、未来のスターのた、
     たみゃごだわとか、言ったのにぃ…」
シザー「あなた、そんなこと言って連れてきたの?…無責任なAVスカウターみたいよ」
イレイザー「…いっそのことAV界に覇を――<<肩をぽんと叩く>>」    
水のリ♀「はやぁぁぁぁぁんっ。…ひろぃひろぃ、むせきに…ビクンビクン(光悦)」
シザー(…意外と天職かも…)

325 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 16:05:34.47 ID:fYJHAoHE0
食事の間、
やれものの斬り方が雑や、醤油とみりんの使い方が甘いだ、
栄養素のバランスが崩壊してるだの、好き放題言ってくれたヤツらだったが、
結局は食器を綺麗に空にして、
めいめいのタイミングで終了の言葉を述べた。

326 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 16:05:58.34 ID:fYJHAoHE0

…文房具なのに、味にうるさいって正直どうなのよ?
なんて思ったりしたが、まぁ、残さず食べたのでよしとしよう。

――それに、まぁ、白状すれば嬉しかったしな。
だが、これはここだけの秘密だ。
こいつらにばれたら、意地の悪い笑み×六で俺を襲ってくるに違いない。

327 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 16:27:23.26 ID:fYJHAoHE0
それだけは死守せねば。

俺も食べ終り、食器を下げて、キッチンに向かう。
こいつらの食器はいつのまにやら、消えていた。
出し入れ自由なのか…あれ…。
とりあえず、洗い物が終わると、
文房具どもを、机の上に戻して、俺も椅子に腰を下ろす。
ここのところ、学校から渡された宿題だけは、
最後まで格闘するようにしている。

328 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 16:28:45.74 ID:fYJHAoHE0
そもそも宿題を広げると、
メイド服についたエプロンのポケットから、タオルを取り出した桜が、
腕を胸の前に組んで、お目付け役として、
俺が見える範囲内で仁王立ちするからってのもある。


329 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 16:33:02.14 ID:fYJHAoHE0
やっぱり、途中やってられなくなる時もあったが、
少し前の黒板前の攻防を思い出してしまって、
手を抜くことができないってのも一つの理由だ。

330 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 16:36:32.82 ID:fYJHAoHE0
しかし、俺がこのシャーペンをカリカリと動かす一番の理由としては、
この言葉の影響が一番大きい。

最近のことだ。
宿題なんてやってられねぇなぁと、
声に出してしまったときがあった。
その時、別段彼女は怒る様子もなく、
――いいのよ、別に。
あなたが、自らの未来のために他のことを優先させたいから、
こんなものなんてやってられないと言うのなら、やらなくていいわ。
こんな紙っきれなんて、人生において、この紙の重さ分の価値しかないのだから。
でも、まだそれが見つかってないと言うのなら、
何よりも優先させることが見つかってないと言うのなら――
今は、とりあえず真剣にこれをやりなさい、か。
仁王立ちしている彼女に目を移す。
全く、いい調教師だよ、お前は。

339 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 18:48:40.82 ID:J0shndsmO
書き終わりました!!!!!!!11

1だけですけど…

340 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 18:55:55.60 ID:zLNXTPWZO
>>339
頑張れ、私は>>1は勿論だがお前も応援してるからwww

344 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 19:51:21.93 ID:SSCYe48zO
やっと追い付いた

>>1の今後にwktkしつつ保守


…最近SS職人の腕前上がってきたなとか思うのは俺だけか?

346 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 20:01:58.85 ID:fYJHAoHE0
帰った。
もまえらの、保守的ヌクモリティに感謝しつつ、続きをのっける。
VIPに幸アレ。



気合を振り絞って、宿題のプリントを終わらせると、
桜が少し微笑んで「おつかれ」と言って来た。
いや、まぁ…ホントの理由はこれかもしれません、グッド。
しかし、これは心に秘めて、
俺は桜に向けて、お礼の言葉を口にする。
それを聞いた桜は当然。といった顔でニッと笑うと、
ペンケースの方向に向かって歩き出した。





349 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 20:17:48.41 ID:fYJHAoHE0
ペンケースに入る直前に、
こちらに向けた後姿のまま、右手だけを上げてヒラヒラさせる。
その毅然とした後ろ姿が心地よく、
俺はじゃぁなと返し、入りきるまで見送って、
ペンケースを閉じる。
さて、今日という一日の仕上げに風呂でも入るかと思って、俺は立ちあがる。

350 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 20:19:23.98 ID:J0shndsmO
>>340さん
ありがとうございます><
全部書きたいんですけど実は一冊ノートがうまっちゃって
のーとなくなっちゃったんですよー。

352 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 20:26:11.39 ID:fYJHAoHE0
>>350 す、すまんな、ノートを潰させてしまってw
    でも、気に入ってくれたみたいで、嬉しいです、ハィ。

353 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 20:26:12.17 ID:zLNXTPWZO
私はコンパスたんの理想具現度と>>350の可愛さに戦慄しているわけだが

>>1
めちゃくちゃwktkしてるから頑張ってくだしあ

355 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 20:33:42.02 ID:uMGlT/Ze0
やっと追いついたww
すげえおもしろいよこれw wktkして待ってるからがんばって(`・ω・´)

誰か白衣タンの絵うpして(´・ω・`)

356 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 20:38:47.17 ID:fYJHAoHE0
少しいつもより長めに湯船に浸かって一日の汗を流した俺は、
寝巻きに着替えてからその足で目覚ましをセットし、
ベットの中にもぐこんで、電気を消す。

357 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 20:40:26.41 ID:fYJHAoHE0
目が慣れてきて、
見上げた天井がただの黒から、薄暗い木目調に変わっていく。
それから、目をつぶった。
柔らかな日常が続く今に、誰に向けるでもなく感謝する。
もし叶うのならば、緩やかにこの状況が続いてくれますようにと、
これも誰に向けるでもなく祈りつつ、穏やかに意識を無の海に
埋没させていった。

359 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 20:48:25.92 ID:fYJHAoHE0
[Changing a viewpoint]  黒い現実

徐々に冷えていく、主の体。
徐々に離れていく、主の核。

主の最後の緊張は、終局の弛緩へ。
続いた日常は、昏き絶望の淵へと追い落とされた。
私に気づけない主は、
最後の瞬間まで、一人の寂しさに刻まれながら逝ったに違いない

360 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 20:49:30.87 ID:fYJHAoHE0
せめて一番近くにいた私が、
声をかけることができたなら――
力を貸すことができたなら――
この状況に陥る前に救うことも、
この主の最後の寂しさを、
少しだけでも紛らわすことができたかもしれないというのに。
奪われたものの大きさをこの近距離で感じ、
もうずっと入るものがなかった私の中に、絶望の黒い現実が満ちていく。

[Returning a viewpoint] 黒の現実 了

361 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 20:57:18.69 ID:fYJHAoHE0
あっはーん。 [Returning a viewpoint] 黒の現実を黒い現実に訂正ね。

細かくてすまん。

363 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 21:05:30.27 ID:SSCYe48zO
>>1がんばっ!

多少のミスなんて俺等の期待の前には小さいことだ!

保守

364 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 21:09:47.08 ID:fYJHAoHE0
高校生の一人暮らしの条件は、別に勉学でもなんでもなく
『朝起きれること』なのかもしれないなと、
寝ぼけた目で歯を磨きながら考える。
以前のように朝のこの時間帯ぎりぎりまで、
宿題と格闘することのなくなった俺は、
のんびりと、歯磨きをにぎった手を左右に動かしながら、
しばらくぶりにテレビをつけ、朝のニュースを見ていた。

366 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 21:20:57.68 ID:fYJHAoHE0
殺人やら、カードのスキャンとか、
朝一番の知識として入れるとしては
ぶっそう過ぎるニュースを、
坦々と報道するテレビに、
粛々と受け入れる世の中に、
ほんの少しだけだが、慣れへの恐ろしさを感じる。
どんなに異常なことでも、続けばそれは平常になっていくのだろう。
そんなことを考えているうちに、磨き終わった俺は、
漱ぎに洗面台へと向かった。

367 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 21:28:49.77 ID:fYJHAoHE0
TVを見ながら、身支度を整える。
教科書、ノート、宿題よし。
服よし、文房具、アイツを入れた首かけ袋よし。
デオドランドのスプレーに、青林檎味のガムを鞄に入れる。
もう一度洗面台へ行き、
ワックスを手のひらに塗り、髪をセットする。
髪型よし。鼻毛も…出てないな、うん、よし。
顔は…ダメ、ほっとけ、コンチクショウ。

369 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 21:37:07.98 ID:fYJHAoHE0
オーケーもう大丈夫だ、壁にかかった時計をみる。いつもの時間の少し前。
そろそろ来るころか?と、椅子に座って待つ。
少したった後、インターホーンの電子音が部屋に響いた。

返事をして、靴をはきながら戸を開けると、
ぽっちゃりした人のよさそうな同級生が「いよう」っと笑いかけてきた。
俺も鼻をならして笑いつつ、「おはよう」と返した。

370 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 21:37:28.09 ID:NWxAEttnO
わっくってっかー
もしかして月厨?(いい意味で

371 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 21:45:30.71 ID:fYJHAoHE0
>>370 ギクリ。

372 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 21:46:36.27 ID:fYJHAoHE0
自転車二つ、滑るように並列に進んでいく。
「やっぱ、さんまはすげぇな」と、生粋のお笑い好きのヤツは言う。
「ただの他人の話を、ひき笑いと話術で、笑いに昇華(か)えてしまう」
まさに、笑いの錬金術師、とヤツは話を続けた。
「うまいこといったか、俺?」と、こちらを見てくる。
うるせぇこっち見んな、危ねぇから前向いてろと俺に言われ、
笑いながら前を向くヤツは、
そんなことを言う割に、実は理系の人間である。

373 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 21:50:33.79 ID:fYJHAoHE0
朝から個性的な話題を振ってくる割に、
周りには細やかな配慮を行うヤツは、昔、
テレビに映るエンターテイナーを指してこういった。
――俺はあの箱の中にいる人間のような、大輪にはならなくていい。
でも、せめて、俺の周りにいてくれるやつぐらいは、
ニヤニヤさせることのできる道草ぐらいには――
外見に似合わず意外と浪漫チックなことを言うやつだと思ったものだ。

まぁ、だから、俺と友達やってるのかもしれんがな。と思う。

375 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 22:10:32.72 ID:fYJHAoHE0
「そういや、最近やけに勉強熱心なそうじゃないか」
俺がポケッと思慮にふけってると、ヤツが聞いてきた。
「いや、宿題だけだよ」コイツがうるさいんでなと、これは声に出さず、
学ランの裏に隠れてある、首下げ袋のあるだろう位置をチラリと見る。
「いやいや、これは激烈なる変化だぜ?ふんっ、お前、俺を、置いてけぼりにする気か?」
「嘘つくな、先日の模試の結果じゃ、俺の遥か前を走ってやがったくせに」
「努力することを知ったヤツぁ、
 前を走ってるヤツが冷酷無比に走る新幹線的人間じゃない限り
 最終的には追い抜いちまうもんだぜ…っと」
前から自転車が来たのでアイツが、俺の後ろに行き、一列になってやり過ごす。

376 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 22:20:15.96 ID:msPl78FhO
このスレはもっと評価されてもいい

保守

378 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 22:24:38.76 ID:fYJHAoHE0
「んで、どういった心境の変化だ?
 確か、まだ志望校は決めてないと聞いたはずだが」
「…。急に、朝起きたら頑張ろうと思いました、じゃダメか?」
「お前が?ハッ、朝から面白い冗句を口にする。
 朝練がない日は、お前と登校するに限るな。
 登校時間に暇することはない」それはどうもと、俺は憮然と返す。

380 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 22:32:31.96 ID:fYJHAoHE0
「何事も目立たず、急がず、気張らない、が、お前の基本方針じゃなかったか?
 それを曲げるたぁ…、
 もしやお前、よくないものにたぶらかされてるんじゃないか?」
 ぶほっと、吹きそうになる。 
 こいつも先生も、俺の首からぶら下がってるのも、
 どうして俺の周りにはこう勘の鋭いヤツラばかりなんだ。
 内心脂汗をしたたらせる。

381 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 22:37:31.02 ID:fYJHAoHE0
 内心脂汗をしたたらせる。
「それか、好きなやつが出来たとか。いや、これはないな。
 お前が認める女子なんて よっぽど変わり者か、
 その軟弱な姿勢を叩きなおそうと寄ってくる貴重なるバカか、
 そのどちらかだろう。
 そして、少なくとも、そんなヤツはウチの学校にはいない」
カカとソイツは笑った。
 …すまん、両方正解の上、俺の首下げ袋の中にいるんだ――。
なんだコイツ、GODか!?

382 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 22:37:36.96 ID:ADiwekzF0
追いついた
なんで誰も阿部さんに突っ込まないんだwwww

384 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 22:55:47.46 ID:fYJHAoHE0
こういうやつが、
センター試験前日に予想問題を某巨大提示板群に書き込んで的中させてしまい、
ちょとした騒ぎになるのだろうなと思いつつ
「ハッ、言ってろ」とだけ、俺はかろうじて言った。
相変わらずヤツはカッカと豪傑のように笑っている。
生まれる時代を間違えたんじゃないか、コイツ、とうんざりしていると、
「そういえば、おふくろが、
 妹に野菜をもっていかせると言っていたんだが、今日空いてるか?」と聞いてきた。
「すまん、今日もバイトだ、
 頂く身分でわがままをいって申し訳ありませんと伝えておいてくれ」
「いちおう伝えておくが、おふくろはそんなことで、
 機嫌損ねたりしないぜ?
 むしろ、俺が機嫌の損ね方を教えてほしいぐらいだ」と、ヤツは笑う。
「教えてやろうか?もらう野菜を断ればいい」と、俺も笑いながら言った

385 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 23:05:23.13 ID:fYJHAoHE0
その後は、適当に言葉を交わした。
冗句と、皮肉と、日常の交換、それにケラケラと笑いあう。
気がつくと、校門が見える距離になっていた。
それを通り、狭い駐輪場に向かって、
自転車をおいた後、3年の校舎である南棟に向かった後、
俺達は分かれる。ヤツは三階へ、俺は一階の3-Bへ。
自分の教室の扉を開けると、
もう、見慣れてしまったファンタジーワールドが俺を迎えた。
いつもとかわらない、でも常識から幾分外れた学校生活が始まる。

386 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 23:07:15.21 ID:5c0w5ODB0
wtkt

387 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 23:10:39.73 ID:l4TjdOcx0
>>386
違うくないか?

389 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 23:15:36.88 ID:5c0w5ODB0
そんなことは…あれ?

390 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 23:16:54.24 ID:fYJHAoHE0
代わり映えのない退屈な授業を、
変化に富みすぎる、桜とペンケースの連中と一緒にこなして行った。
一、二、三、四、昼休み、五、六限を乗り切って、
放課後の今、俺は帰り支度をしていた。
鞄に荷物を入れ、帰ろうと思った時、
キツツキの雛鳥が、巣穴から顔を出した時のように、
学ランの第ニと、第三ボタンの隙間から、桜が身を乗り出す。

392 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 23:19:33.36 ID:fYJHAoHE0
学ランから、体を出すのは珍しいなと思っていると、
「嫌な――」
 不安の色に染めた顔をこちらに向け
「嫌な――予感がするわ」彼女は言った。

394 愛のVIP戦士 2007/02/09(金) 23:31:04.19 ID:gQ9M/Oqb0
>>382
俺はもはや阿部さんに違和感を感じないレベルにきてしまったぜ

400 愛のVIP戦士 2007/02/10(土) 00:35:29.25 ID:0aNyE34YO
やっと追い付いたww
楽しみにしてる



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