オカシイ世の中覚え書き

第166回国会・参議院厚生労働委員会議事録 2月15日 山本保氏の質問

○山本保君 公明党の山本保です。
 限られた時間でございますので、具体的な内容をお聞きするんですが、最初に柳澤大臣にも少し申し上げますが、十八年前、十七年前になりますか、平成元年の一・五七ショックがございまして、その直後に海部内閣で健やかに子供を産み育てる社会環境づくり政策ができました。実は、私も担当官でございまして、これができたときには大変感動したことを覚えております。
 といいますのは、この政策は、正にこれまで、それまでの人口政策的な将来人口というものを主たる目的ではない、主たる目的は現在の子育て世代の生きがい、働きがいというものをしっかり支え、その子育てと仕事を両立させるんであると、こういうことを打ち出した政策であったわけでございます。それから十何年たちましたけれども、現在もその政策の基本方針は変わっておりません。柳澤大臣は、そういう点で少し将来の人口政策というようなことに少し重点を置かれてお考えになっておったんではないかなと思いますので、この辺は是非反省をしていただきたいと思っております。
 正にそう考えますと、人生の各段階において再チャレンジをしていく。安倍総理が、再チャレンジ、そして人材、国の宝、人は宝であると、こういうものの中で子育て支援という政策もきちんと位置付けていくべきだというふうに思っております。
 そこで、まず最初に、まず児童手当について少しお聞きを、確認をしたいと思っております。
 十一月の二十四日に先生方の前で本会議で少し質問させていただきまして、そのときに私も応援をさせていただいて、高市大臣には大変御奮闘されたというふうに聞いておりますけれども、来年度予算で、四月からですか、ゼロ歳、一歳、二歳の子供さんへの児童手当が一万円ということになるというふうになりました。ただ、これを各現場でいろいろ聞いておりますと、財源について大丈夫だろうかと。これまでなかなか苦労してこの間拡大をしてまいりましたので、今回のこの拡充、加算につきましても大丈夫か、また言うならば、今年度はいいとしても、今年度、十九年度はいいとして、二十年度以降は大丈夫だろうかと、こういう御心配の声もありますので、この辺についてはきちんとした手当てが必要だと思います。
 先のことではありますけれども、特に地方の負担への手当てが重要だと思いますので、総理、まずこの辺についてのお考えといいますか、できれば積極的な御答弁をお願いしたいと思っております。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 山本委員も大変熱心にこの児童手当の拡充に取り組んでこられました。改めて敬意を表したいと、このように思います。
 今回の児童手当の拡充に伴う平成十九年度分の国、地方の財源につきましては、緊急雇用創出特別基金からの国庫返納を前倒しすることで対応し、御指摘の地方負担分についても地方特例交付金により措置することとしたところでございます。
 そして、平成二十年度以降についてどうするんだという御質問でございますが、平成二十年度以降の公費財源については、与党の税制改正大綱において、少子化対策のための国、地方を通じて必要な財源の確保について、税制の抜本的、一体的改革の中で検討するとされていることを踏まえて、今後適切に対応をしていかなければならないと考えております。

○山本保君 もう一度後でお聞きしたいと思っておりますが、その前に、一つ具体的に保育関係について、たくさん問題といいますか課題はございますが、一つだけ今日はお聞きしようと思っております。
 それは、保育園というのは、保育所というのはやはり専門的な子育てセンターでありまして、ただ単に食事とそして遊びの場を与えると、託児というような伝統的な概念ではございません。最近幼稚園と一体化されたような施設もできておりますが、当然の姿だと思っております。
 その中で一つ、病気になった、それが大分回復してお医者さんにはもう行かなくてもいいという子供さんが家庭にといいますと、これはお母さんが大変でございます。また、保育園にお願いをして預けていましても、何かあったときにはすぐに呼出しがあって帰らなくちゃいけないと、こういういわゆる病後児というんでしょうかね、こういう子供さんのための保育という制度が、もう十年ぐらい前からやっているわけですが、なかなか進みません。これは本来、小児科の先生方のところでまずやっていただくというところからたしか始めまして、その後、特別なそういう設備を持った保育園でもよろしいというふうにたしか以前つくったなという気がするんでございますが、これでもなかなか足りませんので、これは抜本的にといいますか、是非、各市、区、最低一つ以上あるような形で伸ばしていただきたいという声が非常に大きいんでございます。
 柳澤大臣、この辺についてはどうでございましょうか。

○国務大臣(柳澤伯夫君) 山本委員、いつも実情を踏まえた的確な御質疑をいただいて大変感謝いたしております。
 体調不良の児童や病気の回復期にある児童に対する保育、いわゆる病児・病後児保育につきましては、今委員の御指摘のように、地域児童を対象として、特定の医療機関、保育所等において一時的に預かる乳幼児健康支援一時預かり事業というもので行っております。どちらかというと、医療機関が主で保育所は後で加わったという形かと思うんです。全国六百か所でございますが、これが今御指摘のようにかなり地域によって区々でございます。
 こうした事業あるいは事業の今の実績に対する状況を踏まえまして、近年のニーズの高まりもございますので、平成十九年度予算案におきましては、従来の事業に加えまして、現に保育所に通う子供が微熱を出すなど体調不良だが保護者がすぐに引取りに来られない場合に、その保育所の医務室において看護師が緊急的な対応等を図る病児・病後児保育事業、自園型というものを創設しまして、これを全国一千か所において実施可能な予算を計上しているところでございます。
 いずれにしても、この予算措置によって事業の大幅な拡充が図り得るものと考えているところでございます。

○山本保君 大臣の今の御答弁で、いわゆる看護師さんなどに来ていただくというところを前提としております。ただ、御存じのように、看護師は今不足しておりますし、もちろん逆に、厳しい病院の勤務よりは保育所の方でという方も当然おられると思いますけれども、これは看護師さんの全体の政策という中でも一つ課題だと思いますので、是非そういうことを進めていただきたいと思っております。
 総理にもう一度確認でございます。
 先ほどお答えもあったんですが、つまり今の制度にしましても、今度、大体十九年度一・七兆円ですか、子育て支援策が国の予算として今後これから審議をするわけでございますけれども、これは、今の制度というのは国以上に地方負担が大きい制度でございます。私どもも実際やってまいりましても、なかなか使っていただけないということをいつも感じておったわけでありまして、是非これは、地方にそのための費用をきちんと、交付税というようなことも最後はあるんですけれども、できればもっと恒常的にきちんと税として置いていただくということが必要だと思っております。
 来年度はいわゆる国税、地方税の見直しということも予定になっているわけでございますので、是非ここは、特に子育て支援については、最近、先ほどもお話出ました二月九日の検討会議ですか、そこで尾身財務大臣が非常に少子化については頑張れというようなことをおっしゃったという、新聞報道でございますから本当かどうか分かりませんが、そういう声もあったというふうに漏れ聞いておりますので、是非来年度以降については少子化対策についての地方負担についてしっかり担保していただきたいということをお願いでございますが、総理、どうでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) この財源の問題、これは極めて重要であって、やはり財源の手当てを行いつつ政策的な経費を我々少子化については拡充していきたいと、こう考えているわけでありますが、二十年度以降どうするかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、今年の秋に抜本的な税制の改革を我々議論をしなければならないと、このように思っております。その中で、地方の言わば財源等々の拡充をどうしていくかということも含めて議論をしていかなければならないと考えております。

○山本保君 地方負担につきましては、ほかにも例えば非常に問題になっております特定疾患の地方分とかございます。是非、我々も与党としてその辺は積極的にきちんと入れておくようなことを考えたいと思っております。
 次に、保育ともう一つ並びますのが育児休業制度でございます。これについて一、二点お聞きします。
 どうも今見ておりましても、男性がほとんど取られていない、全国で五百人ほどであるとか、また、女性の方がなぜ取りやすいのかといいますと、まとめて休んでいただくということの方がいいというようなこともあるようでございます。
 私は、理想論というか一つのモデルとして、例えば男性が、父親が週二回休まれる、女性が週二回、母親が休まれる、もう一日は保育所へ行くとか、まあちょっと機械的ですがね、これは。しかしトータルな話なんです。そんな形で、正に若い夫婦が子育てにしっかり参加していくような、それを担っていくような、そういう労働の形というのが必要なんじゃないかなと思っているんです。
 どうも今の育児休業の、しかもそれが、今度給付が四割から五割にしようと、これはまあ非常にいいことなんですが、こういう政策がもう少し柔軟に使えないだろうかと、こう考えておりまして、この辺について何か最近の施策の方針をお聞きいたしたいと思います。

○国務大臣(柳澤伯夫君) 育児休業制度をまとめて取るのか、あるいはやや、毎日の中で必要な時間に短時間取るのかというのは、なかなかこれは大事なところかと思います。
 かなり子供が大きくなればあるいは長期間取るようなことも必要かとも思うんですけれども、しかし、特に乳幼児のときには、先ほどの話もありますように、もっと熱が出たらやっぱりお父さん、お母さんどちらか行かなくちゃいけないというようなこともありますと、短時間で言わば育児休業の時間を、育児の時間を取るという柔軟な働き方を整備することが必要である、これは非常に理解できるところでございます。
 育児・介護休業法におきましては、三歳に満たない子を養育する労働者に対しては、事業主は勤務時間短縮等の措置として、短時間勤務やフレックスタイム制、あるいは始業・終業時刻の繰上げ、繰下げ等の六つのメニューの中から適切な措置を選択して実施しなければならないということが言わば義務付けられております。
 厚生労働省といたしましても、このような制度に対するニーズを踏まえまして、平成十九年度予算案におきましては、育児のための短時間勤務を行う労働者に経済的な支援を行う事業主に対する助成措置の創設を盛り込んだところでありまして、今後とも短時間勤務等の柔軟な働き方の普及、定着に努めてまいりたいと、このように考えているところでございます。

○山本保君 いろんな手段があるということはお聞きしておりますし、ただ、今度の育児休業給付というようなものが充実していく、もっと充実させたいわけですが、こういうときに少しアンバランスがあるのではないかなという気もしております。この辺は、また引き続いて委員会でいろいろ議論したいと思っております。
 総理にちょっとお聞きしたいんですが、こういうことを考えていきますと、子供のいない家庭もございます。私は子育てというものを、先ほどちょっと申し上げましたように非常に重要ですけれども、若い方の世代、若い子育て世代の生き方とか働き方を充実させるということを考えますと、子育てだけに育児休業という形をするのではなくて、社会貢献活動、社会貢献休業といいますかね、もちろんその中の多くが子育てになるけれども、しかし場合によってはボランティア活動、NPO、そして介護というようなものをやるということについても同じように保障すべきではないかなという気がするんです。
 これはなかなか難しいことかもしれませんですけれども、そうしませんと、やはり子供がいない方の方が昇進が早くなるとか、いろんな形が考えられるのではないかという気もするので、何かこういう幅広い制度が要るのではないかと。
 今、公務員ではボランティア休暇というのがあるんですが、これは割と古い考え方でして、NPOのようにずっと常態的にあるものを応援するというのではなくて、突然のものに出ていくというような考え方ですね。そうではなくて、持っている力をもっと社会のために使っていけるというようなことも必要ではないかなと思いますけれども、総理、どうでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 仕事と生活の調和を実現をし、労働者の生活を生きがいのあるものとするためには、労働者の社会貢献を促進をしていくことも重要であると、正に山本委員の御指摘のとおりであろうと、このように思います。
 現在、企業における社会貢献を目的とする休暇の取得については、大企業ではある程度普及をしているわけでございますが、全体としては普及が進んでいない状況にあります。このため、政府としては、労働時間等設定改善法に基づきまして社会貢献を始めとする休暇取得の推進に取り組む中小企業団体等に対する支援を行うほか、来年度から、社会貢献等を目的とした企業内の特別休暇制度の普及を図るための周知啓発事業を実施することといたしております。

○山本保君 それでは、時間がなくなりましたので、もう一つ、少子社会というのは少子高齢社会でございます。この高齢、つまり元気で長生きをしていただくということについても、少しこの際お聞きしたいと思います。
 一つ端的に申し上げますと、こういう声がございます。一年間一生懸命頑張って介護保険を一度も使わなかったと。使わなかった保険なので、何かそれに対して頑張ったというものが出てこないだろうかと。実は、一昨年法律改正、今年度からそういういわゆる要支援以前の方に対する介護保険の費用を元にしたサービス、いろんなもっと元気になる対策というのはやっていいことになっておりますが、なかなか進んでいないと思っております。
 私ここでちょっと、なぜ進まないのかを一つ御指摘といいますか、させていただきますと、例えば、これ全体の二%とか三%使うんですよというが、一人当たり例えば幾ら使えるのか、昨日、おととい、自分で大ざっぱに計算しまして、担当の方にどうだと言いましたら、大体そんなものだと。
 実は、介護保険を使ってない方に、その介護のお金だけで、市の負担なしで、介護保険だけで幾ら使えるかというと、一年間大体一万円使えるんでございます。このことをもっと周知しまして、今はそれをただ単に、市町村の言わば事業費に使いまして、こういう事業をやりますから参加してくださいよと、こういうやり方では参加する方はもう限られますし、はっきり言って元気出ません。
 私は、もっと市町村にこのお金を元にして、例えばお年寄りのための食事でありますとか、喫茶店のメニューでありますとか、日本舞踊でありますとか、いろんなことを、やれるところに参加していただいて、そこに、まあ全額でもいいですが、半分でもいいです、参加できる新しい、今のお年寄りが若いころやりたかったけれどもやれなかったということについて、もっと参加していただけるような、そういう手を打つべきではないかなと思っているんです。その辺の方針がちょっと国が地方に示しているのと違うような気が、ちょっと私はポイントがずれているような気がしますので、厚生大臣、この辺はどうかということと、もう一つ、時間がないので一緒にお聞きします。
 もう一つは、介護の職員というのは今大変不足しております。非常に施設が困っております。この仕事というのはやはりある程度若い方に頑張っていただく必要がございます。介護福祉士は今度、専門家職としてより充実させますが、私は、ヘルパーという資格は、これは正にボランティアといいますか、そういう資格としてしっかり守っていくべきではないかなと思っておりまして、この辺は、実は若い方、特に高校生は全員ヘルパー資格を持てるようにすべきではないか。
 総理がよく美しい日本と、美しい国、私は、美しい国日本、美しい日本人だと思うんですが、この美しい日本人というのは、世界じゅうで、日本人がいれば介護ができる、看護ができる、国のために戦うということもこれも重要な資質でございますけれども、日本人がいれば、そういうことができる国民であるという、こういう姿を作りたいという気がするんでございますが、この辺は一緒にお答えいただければと思っております。

○国務大臣(柳澤伯夫君) 介護保険につきまして、介護予防事業というものを創設いたしたわけですが、今先生からはその実施についていろいろアイデア、いつもながらのアイデアをいただきました。
 現在は、その実施については、その事業が介護予防に効果があるかということなど、また高齢者の自立支援に資するものであるかどうか、こういったこと、さらには、保険料や公費を財源として実施するものにふさわしいものであるかどうか、こういうものを見極めた上で市町村が決定をすると、そういう事業の仕組みになっているわけでございます。
 今ちょっとお触れになられたかと思いますけれども、これを、金額で一万円なんだから、例えば商品券のようなものを配付することによって介護予防などに資するかどうかということで、いろいろちょっと疑問がありそうなんですが、いずれにしても、そうしたことにバラエティーを持って効果的な事業実施というものを考えたらどうかと、こういうお話かと思うわけでございますけれども、やはり原理原則からいいますと、本当に介護予防に効果があるか、自立支援に資するものかどうかというようなこと、また保険料、公費の財源として実施するものにふさわしいものかということについては、それを基本にして考え、検討していかなければならない、このように考えます。

○政府参考人(布村幸彦君) 中高校生の福祉・介護施設での就業体験につきましては、まだ全員という段階ではございませんけれども、体験をした生徒からは、将来、福祉関連の職に就きたいという感想も出ているところでございます。
 今後とも、各学校において積極的に取り組まれるよう努めてまいりたいと考えております。

○山本保君 終わります。

○委員長(鶴保庸介君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2007年03月07日 12:36