オカシイ世の中覚え書き

第166回国会・参議院厚生労働委員会議事録 2月15日 阿部正俊氏の質問

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   午後二時七分開会
○委員長(鶴保庸介君) ただいまから厚生労働委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、社会保障及び労働問題等に関する調査を議題とし、少子化等に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○阿部正俊君 当委員会、休憩が長くなりまして皆様方に迷惑掛けましたが、当委員会、衆議院との関連もありまして、予算委員会の持ち方等との関連で余り後々禍根を残すようなことはしたくないなということで、少し時間取りましたことを御了解いただきたいと思います。
 今日は、厚生労働委員会で厚生大臣に対する質疑を中心にさせていただきたいと思いますが、この二時間余りの間にいろいろ、少しかっかするところがありましたものですから、できるだけ冷静にやりたいと思いますけれども、時によっては少し頭に血が上ったような発言もするかもしれませんけれども、御勘弁いただきたいと思います。
 今日はこうやって、厚生労働委員会としては異例かもしれませんけれども、率直に申しまして、担当の、担当といいましょうか、中心の人物でございます厚生労働大臣の発言をめぐりましていろんな物議を呼びまして、国会審議にも影響したわけでございまして、それの言わば立ち上がりといいましょうか、新しい道筋を踏み出すに当たっての参議院としての一つの場としてこの委員会がセッティングされたということでございますので、その問題を中心に、私は、むしろ厚生労働大臣の発言の中身あるいはその良しあしというふうな、まあ失礼でございますけれども、言葉の問題ということではなくて、本当の意味での政府としての少子化対策、後で私、少子化、名前が不適当じゃないかということを提案しますけれども、その問題について、実質的な意味でのこれからの展望を開く議論をさせていただきたい、こういうふうに思います。
 最初に、そうはいいながら、大臣にも、本当に陳謝、反省ということを何度も繰り返されたわけでございますが、その時期はもう過ぎたのかな。国民が期待するのは、そのときの陳謝、反省の弁を何回も聞くということではなくて、それはそれとしながら、これから先、次の世代を育てる政策というものをきっちり我が国として展開していくということについて、大臣の考え方と将来展望を語り、実行への道筋を示してほしいと。
 そのためには、必ずしも個別施策の中身の説明にとどまらず、日本のこれからの長い将来に当たって影響を与える施策でございますので、相当やはり思い切ったといいましょうか、実際、今までの仕組みをいろんなところで手直しするというふうなことの思いを込めて、その決意についてまず最初に語っていただきたいと思います。
 大臣、お願いします。
○国務大臣(柳澤伯夫君) 我が国の少子化の現状につきましては、多くの国民が結婚したい、子供を産み育てたい、結婚しても、子供を持っても働き続けていきたいと希望しているにもかかわらず、その希望がかなえられない結果として少子化が進んでしまったという面が多いのではないかと、このように考えるわけでございます。
 私といたしましては、この国民が希望する結婚や出産を実現できる環境を整備することが重要だと考えておりまして、このため、何が希望と実態の乖離を招いているのか、それを解消していくためにはどのような方策が有効なのかを明らかにするため、有識者の先生方のお知恵もおかりしながらこれまで議論を進め、これを先般、整理して公表したところでございます。
 いわゆる、潜在出生率に基づく仮定人口試算の出生仮定の設定というような一連の書類でございますけれども、これにおきまして、経済的基盤や雇用、キャリアの将来の見通し、安定性、こういったものであるとか、子育てしながら就業を継続できる見通し、仕事と家庭の調和であるとか、夫婦間の家事、育児の分担であるとか、育児の不安であるとかなどが結婚や出産に影響を及ぼしている要素として整理されておりまして、大変私ども、参考になる資料としてまとめていただいたと、このように考えた次第でございます。
 このような点に焦点を当てまして、先般発足いたしました「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議において、今後、効果的な対策の再構築、実行を図るべく検討を進めていきたいと、このように考えております。
○阿部正俊君 今、大臣から出た「子どもと家族を応援する日本」重点戦略会議、スタートということでございますが、私、余り今まで聞いたことなかった話なんですね。急に降ってわいたような話ではないかという感じするんですよね。厚生労働省の施策では十分じゃないというような前提なのではないかと思いますけれども。
 まあ、今日は少子化相おいででございますし、正に今までの仕組みというのを様々な意味で直していくということ前提にないとこの問題うまくいかないと。あれこれあれこれ、ちょこちょこしたことを一杯やるということじゃないと思うんですね。というふうな視点で、どうかひとつ少子化大臣には、少子化大臣と言うとちょっと失礼な話、何と言ったらいいんでしょうかね、担当大臣には思い切った展開をお願いしたいと思うんですけれども。
 この戦略会議の目標と、正に戦略と目標、同時に私は工程表は絶対要ると思うんですね。いつまでにどれだけの数値をどう実現するんだということ、何を。ただ羅列した項目だけ、うたい文句というようなもう時代は終わったと思います。具体的に就業者はこういうふうな条件になりますとか、所得保障はこうなりますとか、医療はこうだとか、目標を持ってやらないと駄目だと思うんですよ。ヨーロッパ諸国の状況を比較しても、正直、日本は決して十分ではないと思います。まあ消費税もないんですけれどもね。その問題まで僕は行き着くんじゃないかと思うんですよ、真剣に考えれば。
 やはり、次世代をどうするかという戦略を持って思い切った戦略を取ってほしいと思いますけど、大臣の見解をお願いいたします。
○国務大臣(高市早苗君) 先般発足いたしましたこの重点戦略の検討会議でございますけれども、今後、分科会を設置いたします。四つ設置いたしまして、その下で具体的な議論を行っていくんですが、今後の工程といたしましては、まず六月を目途に基本的な考え方を取りまとめまして、経済財政諮問会議にも報告いたしまして、骨太の方針に反映させたいと考えております。その後、税制改正等の議論も見極めつつ、本年末を目途に、今年の年末ですね、を目途に全体像を提示するということで、具体的には平成二十年度の予算、税制に必要な施策が反映されていく、こういった形を想定いたしております。
 なぜこの重点戦略会議がセットされたかということなんですが、御承知のとおり、昨年、新しい少子化対策、四十項目にも及ぶ非常に幅広く総合的な政策というものが発表されまして、平成十九年度の予算案、これはその中のものを具体化していく過程としてかなり新しい制度などもスタートするわけでございます。
 ところが、やはり新しい少子化対策にも入ってはいたんだけれども、具体的なこの実施方法などで掘り下げが足りないところというのが幾つかあると思うんですね。例えば、若い人たちが、昔でしたらもう学校を出たら自立をして、自分で職業を持つ、少々会社で嫌なことがあってもそこはちょっと我慢しながら仕事を続けてみると、そういった形だったかもしれないけれども、今はなかなか離職率も非常に高い。それからまた、就職、自分が選んだ職業と職場のミスマッチというのがあるのかもしれませんね。離職率が高かったり、職業観というものも昔とは随分変わってきている。やはり、若い方々が自分が望む職業に就いて、その仕事を続けられる環境が整い、なおかつやはり経済的に自立していくということじゃなければなかなか少子化という問題は解決しないだろうと。だから、若者の自立支援といったところの視点、ここはまだまだ掘り下げが足りないと私どもも考えてます。
 それからまた、今内閣府でも、少子化対策で既にスタートしているものについて、使い勝手が悪いとか実際にうまくいってないということの御意見をホームページで募集しているんですけど、会社ではちゃんと産休ですとか育休ですとか制度的に整っているんだけど、取りたくても取れないと。とてもじゃないけど、経営者の方に理解がないですとか、同僚の方がなかなかそれを応援してくれる雰囲気じゃないとか、それから、本来、労働基準法もあり、そして育児・介護休業法もあり、男女共同参画、男女雇用機会均等法もあり、法律で例えば産休を取ること、育休を取ることというのはきちっと保障されているにもかかわらず、その法律を皆さんが御存じないと。働いている方もよく理解してないし、経営者の方にもその自覚がないというようなことで、社会全体の空気、子育てというのはすばらしいんだ、みんなで応援するんだと、ちゃんと法律は守ろうよと、こういった空気というのがなかなかまだ醸成できてない。
 そのためにどうするかということで、分科会の方では、働き方の改革の分科会もセットいたしますし、また地域、家族の再生分科会というものをセットします。これまで打ってきた施策が効果がないとか十分にうまく機能してないというところもまずきちっと点検、評価をしなければ改善はできませんので、点検、評価の分科会もセットいたします。そして、先ほど先生がおっしゃいましたような予算措置、税制の面ですね、ここは基本戦略の分科会の方で検討させていただきたいと思いますので、年末に向けましていい結果が出るように頑張ってまいります。
○阿部正俊君 意欲が見えますけれども、ただ高市大臣、やっぱり今までの仕組みを、財政配分も含めて、あるいは国の財源もどう確保するかということも含めて、相当思い切った転換がないと駄目だと思うんですよ、私。何か制度はできている、使ってないの、認識足りないみたいな発想されているようでございますけれども、全く違うんじゃないのか。それだけの力強さがないということ。今までの仕組みでは駄目だと、駄目だという、いい悪いじゃないですよ。社会情勢に合ってないということで、例えば女性と仕事の場面だとかね。
 だから、情勢をどう変えるんだという目標を持たないと駄目だと僕は思うんですよ。そういうのがない、感じられないですね。何か、今までやってたこと何か使い勝手がいいとか悪いとかという話じゃないと思う。後でもう少し具体的な話触れますけどね。その点、やはり今までの仕組みは仕組み、いろんな意味で、やってきた中身も力強さと本当の意味での目標がはっきりしないというような僕は気がするんですよ。その辺触れてみたいと思います。
 それで、少子化対策ということに今言われてますけれども、私は、その少子化対策というのはずっと昔から疑問に思っています。少子化少子化というと今の世代にとっては何か少子化が物すごく困ると。よく年金で言われましたね。おれたちの年金は少子化だともらえなくなる、心配だと、だからもっと産め産めみたいな話になってしまうと。少子化じゃないんじゃないかと。
 それは、現世代にとっては、先世代は年金受給者ですな。現世代にとって働いている人、まあ六十五まで、二十四、五歳からね、と思うんですね。それ以下は僕は後世代だと思うんですね。後世代がどういうふうな形でこれから育成されていくのか、そのための条件というのは現世代が用意しなきゃならぬということだと思うんです。だから、私は、少子化対策と、子供の数の問題というのはえてして、午前中も千葉さんからも攻撃されていましたけれども、どうしてもやっぱり個別の子供の数とかなんとかになっちゃうんですよ。個々人の、あるいは職業別のとかね、あるいは家庭の主婦がどうだこうだとかね。個人の問題じゃないと思うんです、この問題というのは。
 正直言いまして、例えば女性の就労の話というのはヨーロッパ諸国と比較しましても、別にするまでもないんですが、私は、女性の権利とかなんとかということよりも、これからの経済社会、物すごく高度になった経済情勢を維持し、その中で経済を、社会を維持するとなれば、正直に言って、女性も従来の専業主婦とかいう言葉にあるような形をモデルにするのではなくて、すべての女性がそれなりの、言わばフルタイムの労働に従事できる社会というのをつくっていく覚悟が僕は要るんじゃないかと思う。そうでないと、言わば一馬力でやっていた、のうのうとやれる時代じゃないし、かつまた、それでは足りない相当高度でかなり豊かな現実が展開されるわけでございますので、それをやはり二馬力でやっていきましょうということじゃないと僕はできないと思うんですよ、一言で言いますと、権利じゃなくて。
 そういう経済情勢を維持するかということをどうするのかねと、そうなったときに、従来のモデルからいえば女性が育てるというふうなこと、常識だったかもしれませんのですけれども、それじゃうまくいかぬと、これはやっぱりそうすると次世代の育成への力が物すごく落ちますと、それは次世代の育成に責任を持つ現世代として余りにもおかしいんじゃないかと。そこのところをもう少し、言わば私は次世代育成力と言っていますけど、それを保持してこの社会を引っ張っていかなきゃいかぬということが成り立つんではないかと。
 したがって、少子化というと、何か将来、年金心配だからもっとどんどん産んでもらって、おれたちの年金を心配ないようにしてくれみたいな発想で、僕は現世代のエゴだと思います。そうじゃなくて、次世代に対する、次世代をきっちり育ち得る条件をつくりますというのが現世代の責任じゃないのかなと思います。そういうことに立てば、私は、例えで言えば、次世代育成政策と言った方がいいのではないかと思います。この後、子供が、個人個人が産む、産まないとか、人数がどうだこうだとかという話じゃないんですよというふうなことを是非提案申し上げて、そういうことで柳澤大臣も少し御自分の見てきた視点をちょっと変えてみるということをやっていただくと有り難いなというふうに思います。
 これから、やっぱり一つは、前提として、例えば女性の、後でM字カーブというのをちょっと取り上げますが、あの辺の対応になると全然進んでないわけですよね。結果としてやっぱりそれが、全員がフルタイムで、パートタイムがいいわけじゃないんですよ、フルタイムで働いてもらわなきゃこれからの経済は成り立っていきません。特に女子労働と高齢者の労働への参加ということが絶対必要なんですから、それを実現するためにどうするかというような視点ね。
 僕は、もう一つは、親の育児支援という格好をどうしても取るんですけれども、そうじゃなくて、個別の親の問題じゃないんですよ。社会全体と次世代がどう育っているのかねということについてどう考えるかということを、その条件づくりを言わば全体で、経済界、社会でも、あるいは公的なサービスなりも含めて実現するかということなんじゃないかと、勝手な思い込みかもしれませんけれども、私はそう思います。
 そういうことで、だから、今までの個々人の対応に着目した少子化対策という視点じゃなくて、あるいは親から子を見る視点から一歩進めて、次世代の育成をどうするんだと。それから、我々の現世代としては次世代を育成する力を落とさず保持していくためにどうするかという視点で物を考えていただきたいと思いますけど、この辺の考え方について柳澤大臣はどうお受け取りされますか。御見解を聞かせてください。
○国務大臣(柳澤伯夫君) ただいま阿部委員から大変高い、また広い視野に立って我々のこれまで取ってきた少子化対策ということの発想を抜本的に次世代育成力という視点から組み直してみたらどうかと、こういう御示唆に富んだお話を承りました。
 私どもも、ただいま高市大臣の方から御報告をいたしましたとおり、第一回の「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議を先般開いたのでございます。もとより、その基礎になったデータというのは、先ほどちょっと私が冒頭触れましたような、我が省のやりました希望を反映した仮定人口試算というものでございましたけれども、そのときに各委員の先生方から発言された幾つかの発言でも、本当に今、阿部委員の御主張と軌を一にするような発言が大変多く出されたように私は受け止めました。
 もう本当に日本のこれからのことを考えるときに、もちろんこれまでの少子化の施策というものを一々その実績を分析して、どこがどう改めるべきかというようなことを考えなければいけないけれども、同時に、この戦略会議なぞは恐らく日本の将来を考えると歴史的な転換点に立っているんじゃないかと、そういうようなお話もありまして、みんなそのくらいの自覚を持って、社会の成り立ちを本当に組み替えるような、そういう発想を持ってこれから臨んでいかないと、本当に我々が考えるような日本の、と言うとまたしかられるかもしれませんが、未来、明るい未来がとても描けるような状況にないんではないか、こういうようなお話がありまして、我々、そのメンバーは本当にそのとおりだと。別にそれぞれが発言したわけじゃありませんけれども、その顔つき、目つきを見ますと、本当にそのくらいの気持ちで取り組まなきゃいけない問題だと、しかも非常に複雑な問題だということをそれぞれ胸にしまったと。それから、それを基にこれからの検討に臨んでいかなきゃいけない、そんなことを考えた次第でございます。
 お答えにはなりませんが、今の我々の立っている状況について、その一端を御報告させていただいた次第です。
○阿部正俊君 それじゃ、よろしくお願いします。
 それは、私個人の見方ですのであれするつもりはありませんけれども、どうも本当にかなり大きなテーマになっているということですので、今までの見方、社会通念というのはこだわらずに、将来、五十年、百年先を見越して日本というのはどうするのか。多分、人口がどんどんどんどん減っていく先には、僕は未来はないと思います。それなりの社会を維持していくという覚悟が要るんではないかと思いますので、それはまあ数がすべてじゃありませんけれども、世代全体として連綿と続いていくということを維持するためにどうするかということで考えていただきたいと思います。
 それから、もう一つの視点を申し上げたいと思います。それは親と子の関係でございます。
 子育てという言葉がございます。私は、子育てという言葉に換えて子育ちという言葉を考えてみてほしいと思います。子供は、まあミルク飲む、あるいは母乳いただくときは別にしましてといいましょうか、それはまあそれなりの支えがないと生きられません。だけども、基本的にはやはり私は育つんだと思うんです、育てられるんじゃなくて育つ存在ではないかと。まあそれは、二、三歳までどうだと言われりゃ、それはいろいろな議論あるでしょう。ためにする議論はともかくとして、どうも最近何か、昔は親の子育て支援というようなことで教育費の控除を何かしたことありました、小中学生なり高校生の辺りの年齢階層を持つ親御さんは、所得控除、教育費控除みたいにしまして。だけども、これは私、大変疑問なんですね。つまり、消費を増やすだけでございまして、本当の意味で子供を育成するということに役に立ったのかどうなのか分からぬわけですよね。
 教育というのは物すごく、まあ変な話ですけど、五十兆円ぐらいあるんじゃないかと思いますけども、その半分ぐらいをどうも選別のための教育に使われているなと、こう言う人もいます。本当の意味での教育の在り方って考えると、奨学資金の方、後でちょっと触れますが、相当考えないかぬ。ただ、親がやるんだから親を楽にしてやろうという発想だけじゃなくて、子供自身に行き着くような施策というような物の考え方が要るんではないかと。
 そう考えると、あともう一つは、どうも最近の何というか親に対する子の暴力と親の子に対する虐待、お分かりになりますか。最近よく話出るのは、子供の親に対する、ある種の殺人だとか殴り殺したとかあります。一方で、親という存在の絶対視されているような日本ではないかと思いますけれども、一方で虐待というのは結構あるんですね。私の調べたところ、親に対する子の暴力の数よりも親の子に対する虐待の方が一けた違いますね、多いんですよ。親を子に対する絶対的な存在というのをちょっと、少し引いてみる必要があるんじゃないかと。子供はむしろ自主的に育つものだと、それをみんなで育てましょうと、環境をつくりましょうと。その中で、親というのは、それは引き算しようがありませんので、存在は絶対かもしれません。だから、サポーターとしては親が一番の重要なサポーターです、というふうな位置付けをして、全体で、社会も家庭もほかの家族も兄弟も、あるいはほかの公的な制度も、やはり子供の自主性を持って育てる、育つということを応援するんだというふうな仕掛けで物を見てみることが必要なんじゃないかと。
 先ほど、親の子に対する虐待なんかも、あるいはその反対もどうも親の責任みたいな、子は親の絶対性というのを、何か頼ってやらなきゃいかぬみたいなのがおのずと何か重荷になってるんじゃないかなという気もするわけですよ。その辺も少し肩の荷を下ろしてなきゃいかぬのじゃないかと。
 よく、特に欧米なんかでは、子の自立ということを非常に促しますよね。十八歳以降は教育なんか一切面倒見ないというのが一般的でございます。日本はどうでしょうか。大学生になって、すねに毛が生えたやつまでみんなで親のすねかじる、こっちは細っているのにね。みんなで金出して面倒見てやって、大学四年間遊びほうけて、私もその一員だったかもしれません。ですけれども、そういうことが行われているのではないかなという気がするんですよ。本当の子の自立というのはいかがなものかなという気がします。
 親も社会的に、子育て、子育てばっかり言われますから、物すごく何か行き場がなくなっちゃってるんじゃないかなという気がするんですね。少し目を離して、十八までがせいぜいよというふうな感じで物を見るのなら大分違うんじゃないかと思うんですね。
 あと、ついでに言いますと、選挙権は日本は二十です、二十歳ですけれども、世界的に見ても日本と韓国ぐらいではないですかね、これやっているのは。ほとんど十八歳ですよね。というふうなことも、私は個人的にはそう思っています。そんなことも考えてやらないと、子の自立っていうのがなきゃ、私はこれからの日本の社会は先々危ないなという感じするんですよ。
 一方で、子の自立もどうしても遅れてるんじゃないですか。二十歳になったら社会人なんて言葉がありますね。これ、なくしてはどうですか。小学生だって社会人ですよ。当たり前ですよ。義務もあり、エチケットもあり、それを要求して当然なんですね。それまでは何かかごの中に入れられてやっているみたいに言うものだから、まあそこから先は余りあれですけれども、どうも就職なんかについてももう一つ迫力がないみたいなところもあるんではないかという気がするんですよね。
 だから、したがって、一つの視点で言葉遊び、これこそ言葉遊びと言われるかもしれませんけれども、子育て支援ではなくて子育ち支援というふうなことで物を見ていくということが私は必要なんじゃないかと思いますけど、これは感想で結構ですが、柳澤大臣及び少子化相、どうでしょう、これは。
○国務大臣(高市早苗君) その自立という視点については、今般立ち上げました重点戦略検討会議でも非常に大きな柱になっております。
 この自立の遅れということですけれども、海外の事例を見ますと、やはり日本と同じようにパラサイトシングル化というんですか、実家をなかなか離れず経済的にも精神的にも親に依存をする、こういった傾向の強い国、スペイン、イタリアがございます。スペイン、イタリア、日本がパラサイトシングル的傾向が強いと言われておりますけれども、こういった国ではやはり出生率が低いと。どこかで若者がきちっと自立をして、独り立ちをして、そして自分の家族をまた新たにつくっていく、こういった形になっていかないとなかなか少子化という問題も解決しないんだろうと思います。
 それから、昨年の新しい少子化対策の中では、一義的には子育ては家族の責任であるけれども、やはり社会、企業、地域社会挙げてファミリーを応援していこうと、こういった理念が提唱されました。私たちも、これはとても大切に引き継いでいくべき理念だと思っております。
 とにかく、子供を産み育てる、家族によってなされる営みを社会みんなが応援しているんだと、社会全体が応援団なんだと、こういった安心感、一緒に子供、大事な大事な子供を育てていくんだと、こういった社会の、世の中の空気というものが醸成されなければなかなか安心して子供を産み育てられない。特に、昔と違って、親元を離れて遠いところで一人で子育てをされる、こういった状況というのも増えておりますので、こういった意味では社会全体で育てていく、育ちを助けていくという考え方は大変大切だと思っております。
○阿部正俊君 それじゃ、次、言わば、今の話にありましたように、やっぱり親の子離れ、子の親離れということを日本は少し意図的にやっていかないと、なかなかお互い自立し合えないんじゃないかなという感じするんですよね。そこはやはり一つのポイントなんではないかと思いますので、よく御検討いただきたいと思います。
 それから、具体的な話で、先ほど言いました女性の就労状況を示すいわゆるMカーブというのをちょっと一言とらえたいと思います。
 御存じのとおり、二十四、五辺りから日本の女性就労者というのはがくんと減ります。それで、元に復するには四十四、五歳まで待たないと復活しないと。この状況というのはここ数年、ヨーロッパなんか相当改善されてきましたし、ほぼ、何というのか、なだらかな山形になっているんですけど、日本だけがなぜかがくんと減っているんですね。これね、私たまたま上の直線で減った分計算しましたら、これは労働省に聞いたんですが、大体百二十万人ぐらいになるんだそうですね。百二十万人の雇用が非常に不確かな形でしか実行されていないということだと思いますので、これをやはりフルタイムでちゃんと一つも減ることなく自然な状態で働ける状況をどうつくるかというのは、私、その労働力政策としても大事なことだし、逆に言うと、そこのところ、フルタイムで働くためには、一方で両立というのをしないと、子供に、育成に障害が出ますので、それはやはり何らかの手を打たないといけないんだと思うんですね。
 目標は、なだらかな形にするのが目標だと思うし、そのためにどうするのかというのは政策なんだと思うんですね。それを意図的にやはり、極めて明示されているわけですから、年次計画持ってどうするんだということを是非取り組んでもらいたいと思いますけど、これは同僚、昔同僚であった武見副大臣、お願いします。
○副大臣(武見敬三君) 御指摘のとおり、このMカーブの問題、これ欧米諸国ではこの年齢層で労働力率の落ち込みというのはほとんど見られなくなってきておりまして、ほぼ台形になっていますね。また、日本の場合には、現在は働いていない、しかし働きたいと希望している人を労働力に加えて算出した潜在的な労働力率というのがあります。これで見ていきますと、M字の底の部分というのは一〇ポイント以上もこれ上昇をいたしまして、M字カーブというのは相当程度なだらかになる、こういうことも分かっております。
 私といたしましては、働きたい人がその希望を実現できる環境をつくるということがとにかく重要であって、このM字の底の年齢層の女性の大半がやっぱり家事であるとか育児ということを働けない原因として挙げているんですね。したがって、これらの問題を解決をして、そしてこの一〇ポイント以上上がる可能性の高いこの部分というものをしっかりとサポートしていくと、これがまず基本的な考え方としてあるべきだと、こういうふうに思っております。
○阿部正俊君 分かりました。
 それで、これ、出産で減ってくるというのが最大の原因ではないかなと思いますが、今度、法律改正で育児休業手当についても若干の手直しは行われるようでございますが、ただ私、何かもう一つ十分だなと思えないのは、職場に復帰したら後で金やるよという話なんですね。これは何だというと、離職防止だから復帰したことを確認して出すんだとおっしゃるんだけど、何か出産のときにぱっと手が伸びるんじゃなくて、復帰したらと。なかなか復帰できないのが現実ですよね。
 どうも私は、もう一つ、一歩進めて考え方を取ってくれないかと。離職しないようにしましょうということなら、最初から出していくということをなぜしないのかと思います。そうしたら、後で取り返しの付かないことになるということ、いったん出しちゃうとね、取るのが面倒くさいとかおっしゃるんだけど、それはちょっと話違うんじゃないのと。それは、悪いやつは悪いやつだという話なんであって、それでどうだというとちょっと役人的過ぎるんじゃないかなという気がするんですよね。どうか、今回の改正は改正として、一歩進めて将来展望を開いてもらいたいと思っています。
 さて、今言われたことは、MカーブはMカーブとして、もうこれは時間がありませんので申し上げませんが、どうかひとつそこに重点を絞って、非常に目標は明確なんですから、それに対する今年どれだけ改善したかという検証をしながら、どこでだれがどういうふうな働き方をしていて、あるいは辞めているかということを実証的に検証をしていくという施策を是非展開してもらいたいと思います。
 あわせまして、ひとつ今度、子供さんの育児の方でございますが、保育所の問題お尋ねしたいと思います。
 私、元々厚生省なんで余り偉そうなことも、自分の責任にも跳ね返ってくることなんですけれども、言えませんが、やはり保育所についての要件の一つとして、保育に欠ける児童という表現あるんですよ。保育に欠ける児童、どこが欠けているんだろうかという感じするんですね。
 これは、昔流で言えば、お母さんが育てるのを前提にして、モデル的にですね、それが育児ができない状態、例えば働きに出るなんということは本来はどうかなと思われたのかもしれません。それは欠陥の保育状況にある、だからそれはパブリックな形でサポートしましょうという保育だと、こうなんだと思うんです。これは、戦後、児童福祉法、二十五、六年だと思いますけれども、多分私は、言っちゃなんですけれども、上野の公園にベンチにたむろしている浮浪児といいましょうかね、辺りを念頭に置いた表現なのかなと思うんですよ。
 今、保育に欠けるといったって、私の子供も昔、保育所へ行っていましたんで、私も保育に欠けたのかもしれませんね。それはもうこの時代ですから、だから、さっきも私が言ったみんなで応援しましょうということからいえば、フルタイムで働くならば当然それはだれかがどこかでカバーしなきゃいかぬわけですよ。それをカバーするのに保育に欠けるから見るという発想じゃないだろうと思います。
 いわゆる福祉という視点を私は否定はしませんけれども、この時代、保育というのはもっとやっぱり労働と経済とをマッチングした仕掛けというのを構成されるべきではないかと思いますけれども、これについて御見解ありましたらお聞かせください。
○副大臣(武見敬三君) 保育というのがやはりこうした少子化対策の中で一つの重要な柱になってくるということは恐らく共通の認識であろうかと思います。
 そして、その保育を実際に必要とされる母親、父親、そしてさらにお子さん自体というものを考えたときに、いかに適切にこの提供体制を充実していくかということを常に考えておかなければなりません。そういう中で、次世代の社会を担う子供たちが健全に育成されるための環境整備として非常に重要であるという考えの下で、保護者が就労している場合に子供を保育する施設としてこの保育所、これは認可保育所を整備するとともに、企業の事業所内の保育施設の設置、運営への取組を支援しているということは御案内のとおりであります。そして、この認可保育所についてはその質の確保の観点から運営費を公費で負担しているところでありまして、また事業所内保育施設については、従業員の雇用の継続を図る観点から設置、運営にかかわる費用を助成しているところであります。
 このような具体的な施策を推進することによって、先生御指摘の保育というものについてしっかりと強化をし、少子化対策の柱としてその役割をしっかりと確立をしていきたいと、こういうふうに考えております。
○阿部正俊君 さらに、今の話で触れられましたけれども、事業所内保育所がございますよね。経済的に考えますと、うっかりすると企業によっては外部経済、保育所というのは面倒見てくれるものですから、事業所内保育所をつくらぬでそっちで世話になった方がコストは安いわけですね。一方では、近くに保育所がないものだから自前でやらなきゃいかぬ。それで非常に不公平になっているんじゃないかと、ある意味じゃね。というような面もあるわけでございますので、その辺やはり何というかな、認可保育所だから公費で見る、事業所内保育所だから公費で見ないという発想は、私は余り、子供ということを考えますと、施策として私は整合性は取れないんじゃないかなと思うんですね。その辺、やはりもう一つ考え方を変えて仕組んでもらいたいということを御要望を申し上げておきたいと思います。
 さて、それで最後にあれですけれども、あと奨学金なんかも、どうも日本は貧弱でということを言いたかったんですけれども、ここら辺もやっぱり子供を中心に考えて、子供を育成するというような視点からもう少しやるべきことたくさんあるんじゃないかと思います。
 あと、あえて言いますと、そのためには例えば保育所の保育料その他についても、だれでもできましょうというようなことで一定の定額にして、保育料は、あとは消費税で賄いましょうなんということは私はあり得るんではないかと思うんですよ。だから、奨学金にしましても、今、外国に比べて日本の奨学金って非常にシャビーですよね。この辺、やはりそれなりのこの自立あるいは育成ということを考えるともっと充実しましょうというのがあっていいんではないかと思うんですね。そのためには財源措置を、今の財源はどうにもならぬという感じがするんで、消費税なりを考えましょうかということはあり得るんじゃないかと思います。
 そういった意味でも、私は現世代が次の世代を育成するためには、現世代がしなきゃならぬこと、上がる税収から配分するのだけじゃなくて、それへの責任を果たすためにはこれなりのみんな出し合わなきゃならぬよというのを出そうじゃないですか。そんなことをやはりむしろ国民に提起をしていく必要があるのではないかと思うんですね。でないと、何かどっかから削ってきてなんてこと、これはできないと思いますよ。というようなことを、まあこれは意見ですので、考えがあったらお聞きしますけれども、そんなふうな考えも含めて、もっとやはり多面的かつ、まあ例えば家族の問題、就労問題、教育問題、所得保障、育成コスト、税制などの多面的な政策を展開し、今までの仕組みを直していくというふうなことをしませんと、どうも今までそれぞれが問題起こらぬように充実していくという発想では駄目ではないかと思います。
 その重要な一つの柱として私は財源問題ということも是非取り上げてもらいたい。現世代で出していく、ましてや次の世代に借金を残すなんて愚策はもうやめにしてもらいたい、本当に思います。これで少子化対策もないですよ。ツケを残しながら、三千億円の、何か少子化対策を打ちながら、三兆円の借金残して、これ何ですか。何にもしない方がよっぽどいいですよ。じゃないですか。これ、だれか現世代で文句言える人いますかね。言えないと思います。
 是非、そういう発想もあるんだということを、その辺について思い切った我々の現世代の任務を果たしましょうということをしないと、少子化対策、年金が心配だからもっと産んでもらいましょうなんというのは駄目ですよ。本当思います。社会全体が、日本が駄目になると私は思います。そんな覚悟で取り組んでいただくことをお願いし、かつ、以上の点について柳澤大臣、今までの反省も含めて決意を語ってもらいたい。
○国務大臣(柳澤伯夫君) まあ先ほど来度々申し上げておりますように、私どもとしても基本的なデータを出しましたけれども、それはまあ一応念頭に置きましてこれからの日本社会の在り方について広範な立場から検討をいただくということで、恐らくこの発想は今の阿部委員の御主張とかなり近いものがある、あるいは重なっている部分があると、このように考えます。
 そうした中で、単純に子供の、あるいは少子化対策というような狭い観点ではなくて、日本人の働き方をどうするんだということ、それからまた地域、先ほど言った社会と言ってもいいと思うんですが、社会や家族というのは一体どうするんだというようなことと同時に、マクロの経済の中で、そういった社会のありようと密接に関連する諸経費をどのような賄い方をするんだと。これを専門のその分科会を設けてそこで御議論をいただくということになっているわけでございます。
 したがいまして、この中で、実はまあ高市大臣と協力し合いながらなんですけれども、我々の役所がこのうち三つの分科会の事務局を務めるという仕組みで進んでいくというふうに想定されておりまして、まあ非常に、私の責任も高市大臣と共々に非常に高いものがあると、重いものがあると、このように考えておりまして、まあここは本当に、一度もう白紙的なところから新しい社会を組み立てていく、かなり野心的で歴史的な仕事なんですけれども、それを諸有識者のいろんな刺激のある発言の中から我々実務的にそれをどうとらえ、それを組み立て直していくかと、こういうのが今回の課題だというふうに思っておりまして、是非またいろんなお立場でアドバイスもいただきたいと、このようにお願いを逆にいたしておく次第です。
○阿部正俊君 終わります。

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最終更新:2007年03月07日 12:52