オカシイ世の中覚え書き

<イージス艦事故>「仲良い父子」…漁師仲間ら無事祈る (毎日新聞)

千葉・房総沖で19日未明に起きた、海上自衛隊のイージス艦「あたご」とはえ縄漁船の衝突事故。海上に真っ二つになった漁船の残骸(ざんがい)が浮かび、周辺で海上や空から行方不明になった漁師の親子の捜索が続いた。現場海域は黒潮が通る漁場だが、普段から自衛艦を含め大型船が通る場所だったという。なぜ、最新鋭のハイテク艦が事故を起こしたのか。海域には不安と怒りが渦巻いた。

 「とおちゃん」「あんちゃん」――。吉清(きちせい)さん親子はこう呼び合い、近所では働き者で仲のいい親子として知られていた。「うちのあんちゃんが」。父親の治夫(はるお)さん(58)は普段から、うれしそうに話していた。自慢の息子だった。漁ができない日には、港の小屋で一緒に楽しそうにはえ縄の手入れなどをしていた。

 治夫さんは漁師歴約40年。中学を出てすぐに漁師になった。素潜りであわびを取るのが得意だったが、数年前に脳梗塞(こうそく)になり、船の漁だけになった。カツオやイカ漁をしていたが、最近、沿岸まで来るマグロを追って漁をしていたという。

 長男の哲大(てつひろ)さんは小さいころから漁師にあこがれていて、県立勝浦高(現・勝浦若潮高)を1年の途中で中退して漁師になったという。約5年前から治夫さんと漁に出掛けていた。

 川津港で釣り船店を経営する女性は「治夫さんは普段は物静かだが、船に乗ると厳しい人だった。哲大さんは『てっちゃん』と呼ばれ、おとなしいが、漁師の仕事に一生懸命だった。泳げないと聞いているので心配だ」と話した。

 川津港には、同漁船80隻が所属しているが、マグロ漁のはえ縄漁船は8隻。港周辺には治夫さんの同級生ら8人が訪れ、「私たちは見守るだけ。生きて帰って来てほしい」とすがるような表情。「それまで1人だったのが息子が加わり、父親としてうれしそうだった。なんで自衛隊がぶつかるんだ。職務怠慢だ」と怒りをあらわにした。

 哲大さんと同級生の息子がいる川津港の漁師、吉清繁夫さん(52)は「息子が幼なじみで昨日も話をしたばかりと聞いた。心配だ」と話し、テレビのニュースを見ながら2人の安否を気遣った。2人は仲間の漁船数隻とマグロ漁に出たといい、「三宅島周辺でエサであるサバを取った後、八丈島方向へ向かったのかもしれない。イージス艦は最新鋭なのにどうして」と憤りをあらわにした。

 吉清さんの自宅では事故を知った親類や漁協の関係者が慌ただしく出入りした。治夫さんの叔母で近くに住む板橋よし子さん(76)は午前6時ごろに連絡を受けた。「2人とも家族思いで仕事熱心。船の端っこにでもつかまって、無事でいてくれないかと思う。2人がいなくなったらこの家は暗闇になってしまう」と、涙を浮かべて生存を祈った。

[毎日新聞2月19日]

[ 2008年2月19日12時39分 ]

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最終更新:2008年02月22日 11:30