オカシイ世の中覚え書き

「艦長許可のもと祝杯が始まった」

「そういうことはないと信じている」
 2月29日の衆院予算委員会、民主党・前原誠司議員による、「あたご」館内での「飲酒疑惑」を正された石破防衛相(51歳)はキッパリと否定した。根拠は舩渡健艦長(52歳)による28日付の答申書である。
 (2月4日、(ハワイの)パールハーバー停泊中に米海軍関係者を招待したレセプションを除き、館内で酒類を使用したこと、ならびに使用させたことは一切ない)
 石破大臣は、右の答申書の内容を紹介し、疑惑報道を「残念で悲しい」と批判までして見せている。
 しかし、である。本誌(週刊現代)は、この石破発言と真っ向から対立する衝撃的な証言を得た。証言者は、現役の防衛省幹部。絶対匿名を条件に、本誌にこう明かしたのだ。
「大臣や省上層部は否定していますが、事故がおきた2月19日未明の前夜、残念ながら、見張りなどで勤務していた隊員以外の、艦長以下、艦内の多くの乗組員たちが”飲酒”していたことは間違いありません。
 日本領海に近づいた「あたご」は、海幕(海上幕僚幹部)に「自動操縦に切り替えて隊員を慰労します」というように報告した。海幕側は「お疲れ様」というように答えたと聞いています。その後、昨年10月の出港以来4ヶ月ぶりの帰国を目前にして、艦長が許可を出し祝杯が始まったのです。」
 その”酒宴”から数時間後の午前4時7分、「清徳丸」との衝突事故は起こったというのだ。発生時、艦長は仮眠を取っていたとされているが、実際は酔って熟睡していた可能性があるという。さらに、もっと重大な爆弾証言が、この幹部の口から飛び出した。
「事故の後、事故の捜査権がある海上保安庁の了解を得ないまま、「あたご」の航海長(事故直前の当直仕官)を”捜索ヘリ”で防衛省に運んだことが明るみに出ましたが、この移送は当初は完全な極秘扱いでした。それはなぜか?事故発生後、前夜の”酒宴”で開いた酒瓶は粉々に砕いて海に捨てられた。さらに栓の空いていない酒は全て減りに積み込んで防衛省へ運んだのです。海保の捜索で”艦内にあってはまずいもの”を、航海長と一緒にヘリで運び出した。もちろん”証拠隠滅”のためです。
 これらは完全に極秘事項でありかん口令が敷かれています。指示を出したのは海幕。だから吉川栄治海上幕僚長(60歳)はこの事実を当然知っているはずです」
 にわかには信じがたい話が次々と語られていくが、こう話す幹部の目は、嘘をついている目には見えない。
 飲酒疑惑については、本誌は3月15日号でも報じている。だが、事故直後の段階でこのような悪質極まりない隠ぺい工作を行っていたという情報は、その時点では得ていなかった。
 航海中、艦内で飲酒すれば厳罰は必至だ。さらに事故後、吉清治夫さん(58歳)と哲大さん(23歳)の捜索中にもかかわらず、”飲酒”の証拠隠滅を図っていたというのが真実なら、これは石破大臣のクビを切る程度で済む問題ではない。福田政権そのものが吹っ飛んでもおかしくない、超弩級のスキャンダルといえる。
 海上自衛隊員の飲酒について、ある海自関係者はこう漏らす。
「寄港先での洋上パーティを除き、艦内に私的に酒を持ち込んで飲むことは禁止されています。但し、実際には長期間の遠洋航海のときには、艦長や司令などがこっそり酒を持ち込んで、艦長室や司令室に隠すことは良くあるんです。乗員の無許可飲酒も珍しくない。最近明るみに出たものでは、インド洋の給油活動で派遣した護衛官で、02年、03年と立て続けに発覚しました。乗員たちが寄港地なので買いおいた酒類を繰り返し飲んでいたんです。計100人以上が減給処分を受けています。」
 飲酒およびその事実の隠蔽という点を念頭において、改めて事故発生後の防衛省の動向に注目してみると、確かに不可解な部分が多いことが分かる。 
 まずは事故当日、午前8時30分ごろ。横須賀基地の護衛歓待幕僚長がヘリで「あたご」には要り、艦内で乗員への”事情徴収”を行っているが、これも事前に海保の了解は取っていない。そこで何が話し合われ、艦内でどのような行動が取られたのかは一切不明だ。
 ついで9時10分、別のヘリで航海長が極秘裏に市谷の防衛省に運ばれている。防衛省では10時ごろから海上防衛部長、その後、石破大臣、増田幸平事務次官、齋藤隆司統合幕僚長、吉川海上幕僚長の4首脳らが、航海長から事故原因などについての聞き取りを行っている。
 9時27分には、救助活動中に指を骨折したという乗組員が館山基地から来たヘリに乗せられ、「あたご」を去っている。艦内には医官がいるはずで、なぜ被害者捜索中のこのタイミングでわざわざヘリを呼び寄せ一人の負傷隊員を緊急で艦外へ出したのか、疑問は残る。
 繰り返すが、防衛省は当初、組織ぐるみでこれらのヘリを使った移送の事実を隠蔽していたのだ。2月末、こうした行動がマスコミにばれると、「海保には事前に連絡している」などとさらに嘘を塗り重ね、発言を二転三転させた。この一事だけを見ても、防衛省の隠蔽体質は歴然である。

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最終更新:2008年03月19日 12:36