オカシイ世の中覚え書き

麻生グループ企業が「二重派遣」で訴えられていた!


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 今年10月末、大阪府内に住む30代の男性(以下、A氏)が、人材派遣会社などを相手取り、総額約300万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。
 この民事事件、被告の1社が、福岡市に本社を置く麻生太郎首相の親族企業で、麻生財閥のひとつに数えられる「アソウ・ヒューマニーセンター」というから穏やかではない。
 麻生財閥は、麻生首相の実弟・泰氏が社長を務める「株式会社麻生」を司令塔に、傘下企業60社超という一大地場コングロマグリットを形成している。
 麻生グループの人材派遣企業は「アソウ・アルファ」や「ユニバースクリエイト」など数社を数えるが、中でもAHCはこれらを束ねる中核企業である。AHCは九州全域のほか東京や大阪、兵庫にも営業拠点を持っており、昨年9月には派遣社員の割増賃金など、約3000万円をピンはねしていた事実も発覚した。
 本誌が入手した訴状に寄れば、今回、原告であるA氏から訴えられたのは、AHCとパイオニアもー場射る西日本(以下、PMN)の2社。昨年春、A氏は派遣元であるAHCから、カーナビなどを販売するPMNに派遣された。A氏はPMNでの業務内容について、得意先を訪問するルート営業と説明されていたが、実際にはカー用品などを販売する「スーパーオートバックス43道意店」(兵庫県尼崎市、以下SA43)に際派遣され、SA43の営業ヘルパーとして「二重派遣」をはじめとする違法な勤務を強いられた。
 二重派遣とは、派遣会社から派遣されたスタッフを、派遣先企業がさらに他の企業に派遣する違法行為である。労働者の賃金が不当に搾取される恐れや、事故などが起こったときに、その責任の所在などが不明確となることなど、労働者が不利益をこうむることから、職業安定法によって固く禁じられている。現職の首相の親族企業がこれを行っていたとすればまさに大問題だ。早速大阪へとびA氏から話を聞いた。

違法の実態が次々明らかに



 昨年来の心労のせいか、いささか憔悴気味の様子で現れたA氏は、昨年1月14日付の全国紙大阪版に掲載された、AHCによるPMNへの派遣求人広告を広げつつ、こう切り出した。
「PMNに派遣される前、私はある小売店での店頭販売の仕事をしていたんですが、自分にはまったく向かない仕事でした。そこで、一般の営業の仕事ならと思って応募したんです。また、麻生さんの親族企業の紹介なら大丈夫、という安心感もありました。AHCの大阪支店に面接に出向いたときも、開口一番、担当者は「うちは麻生セメント系列の会社ですから」とアピールしていたんです」
 事実、A氏が広げた件の求人広告には、派遣元であるAHCについて「麻生セメントグループの総合人材サービス企業」と謳われていた。しかし、A氏の期待はいともあっさりと裏切られる。
「その年の3月にAHCの大阪支店からPMNの大阪営業所に派遣されたんですが、配属から間もない4月1日から、PMNの神戸営業所に移動させられました。その直後にSA43で働くように命じられたんです。SA43では売り場責任者の指揮、命令の元、SA43の征服や名札を着用させられ、店頭販売に従事させられた上げk、当初の派遣契約では休日だった土日祝日も勤務日とさせられるなどめちゃくちゃなものでした。明らかに二重派遣に当たるもので、完全に違法な勤務命令でした」
 A氏に拠れば、違法な勤務を強いられてすぐ、A氏は派遣元のAHCと派遣先のPMNの担当者に苦情を申し出たが、いずれの担当者もこれを聞き入れなかったという。中でもAHCの対応は迷走し、A氏の再三に渡る苦情に対して、担当者が「役所で確認する」と何度も返答を留保した末、「労働基準監督署に確認したところ、これは違法ではないといっている」と説明した。だが、後にこれはその場しのぎの作り話だったことが判明する。
「派遣問題を所管しているのは都道府県にある厚労省の労働局で、そもそも所管外の労基署が適法だの違法だの言うはずがありません。要するに、口からでまかせの大嘘だったんです。AHCの対応があまりにもひどいので、5月になって大阪支店に担当者をたずねて言ったんですが、この間の心労で体重が5キロ近くも減ってしまった私を見て、田当社は「ずいぶんお痩せになりましたね」などと言ってのけたんですよ。」
 結局、A氏はこの年の6月にPMNとの契約を打ち切られたが、派遣元であるAHCのでたらめぶりはこれだけではなかった。
「その後、AHCには別の派遣先を紹介してくれるよう求めましたが、次に紹介されたのも、PMNの場合と同様、派遣先のメーカーから、さらに小売店にヘルパーとして派遣されるもので、あいた口がふさがりませんでした。その後、AHCからの連絡はなしのつぶてで現在に至っています」
 しかも、あろうことか、AHCは人材派遣会社が法的に負うべき最低限の義務すらないがしろにしていたという。
「AHCでは、派遣業者に義務付けられている健康診断も技術研修もなく、すぐにPMNに派遣されました。AHCからPMNへの派遣は、私以前のケースを含めて、数件あったことが分かりましたが、私のこれまでの経験から考えて、私以外の人たちも違法な勤務を強いられていたと見て間違いありません。」
 実は、今回の民事提訴の先立つ今年3月以降、A氏はこれまでの経緯を告発すべく、大阪と兵庫のそれぞれの労働局に対して、それぞれ2度にわたる是正勧告申請を行っている。A氏による勧告申請は、AHC大阪支店は無論のこと、PMNの本社と神戸営業所、さらにはSA43まで対象が及ぶ、徹底的なものだった。
「最初の是正勧告申請の際には、大阪労働曲の担当者から「AHC大阪支店には派遣元管理台帳がないようだ」との電話連絡がありました。台帳は派遣社員からの苦情などを記録しておくもので、派遣業者には台帳の作成と保管が法的に義務付けられています。AHCは私からの苦情を台帳に意図的に書き込まず、労働局の調査に苦し紛れで「台帳はない」といったのかもしれません。また、2度目の申請の際には、兵庫労働局の担当者から「一連の派遣は違法な二重派遣に当たる」旨の明確な電話連絡がありました」
 健康診断も技術研修も実施せず、派遣元管理台帳すら提示できない上に、二重派遣をはじめとする違法な派遣業務を繰り返そうとする。派遣社員からの再三の告発を受けても、事態の改善に動くどころか、一切を封殺してはばからない・・・・・・。
 これでは「麻生セメントグループ」の金看板も形無しだが、A氏の訴訟代理人を勤める村田浩治弁護士も次のように指摘する。
「原告の訴えを無視し続けたAHCは派遣法違反、二重派遣を行ったPMNは職業安定法違反に問われますが、二重派遣についてはAHCも共犯に当たります。AHCが健康診断や技術指導を行わなかったこと、あるいは派遣元管理台帳が存在していないことも、人材派遣会社が負うべき義務の不履行に当たり、明確な法律違反となります。」

AHC社は”ノーコメント”



 今回のA氏の告発について、PMN本社は本誌の取材のこう答える。
「訴訟についてはコメントできませんが、労働局からの調査が入り、指導を受けたのは事実です。その後はオートバックス側とも話し合い、制服や名札などを当社のものに変えたほか、指揮、命令系統についても必要な改善を行いました」(赤名昭彦経営統括部長)
 オートバックスセブン本社も「労働局の指導を受け、全店舗を対象に(二重派遣の実態がないか)再徹底を図りました」(小野田拾繁経営企画室アシスタントマネージャー)と答えた、だが今回の騒動の震源地であるAHC大阪支店を尋ねると、「A氏の一軒については本社に聞いてほしい」の一点張りだった。そこで、福岡にあるAHC本社を直撃すると、「担当者が不在」と返答を引き伸ばした挙句、最後はファクシミリで
「本件については弁護士と協議中であり、コメントできません」
 と回答してきた。
 大阪労働局の関係者に拠れば、大阪と兵庫の労働局による調査の際にも、AHCは「全て当社の取引先が勝手にやったこと」と言い放ったという。
 麻生太郎首相は、73年5月から79年12月までの間、「株式会社麻生」の全身に当たる「麻生セメント株式会社」の代表取締役社長を務めており、AHCをはじめとする人材派遣関連の麻生グループ企業の振る舞いについて、決して無縁とはいえないだろう。しかし、親族企業の違法行為疑惑についてどう思うか、という本誌の質問に対し、麻生首相の事務所からは、期限までに回答はなかった。
 連日の高級バー通いを指摘された際、麻生首相は「ホテルのバーはそんなに高くない」と反論したが、やはり労働者の感覚には程遠い御曹司であるようだ。