「エターナルフォースブリザード!!!」
「ル・ラーダ・フォルオル!!」
「『ノーザンテラレイド』炎系に大ダメージ!!」
「フェルエリア・フォン・エターナリティ!!」
「バーニング・ダーク・フレイム・オブ・ディッセンバー!!」
「煉獄炎火灼鎌(メギド)!!!」
「ルート・ファン・ニステルローイ!!」
「ドロー! モンスターカード!」
あまりに厨臭い呪文の数々を無差別に唱え、虐殺を行っている名無しさん。
普通使った方が、その痛さで再起不能になりかねない危険な攻撃ばかりだが、彼には何の影響もないようだ。
何故ならば、
「フヒヒwwwww俺TUEEEEEEEEEEEE!! っつーかマジで俺強くね? カオスロワ中でも最強じゃね!?」
彼は完っ全に自己陶酔……要するにまんま『俺TUEEEEEEEEEEEE!!』な状態だったからである。
一旦こうなってしまったVIPPERを止める術は皆無に等しい。電凸から2chコピペブログ炎上まで、何でも行う危険野朗でしかない。
「おっといけない。安価安価」
ふと何かを思い出したように、彼は懐からモバイルを取り出す。どうやら、彼は生粋の携帯厨であるようだ。
モバイルの画面には、あるニュース速報掲示板、その一スレッドが表示されていた。

  『>>730
   とりあえず適当にスガンしてきた。
   安価
   >>750
   >>755
   >>760』

彼は、恐るべき指捌きでそう瞬時に打ち込むと、十字キーの中央を押し、スレッドに書き込んだ。
この携帯は、超次的集合存在の行動端末である彼が『複数集合意識』……要するに自スレの総意を反映するためのアイテムである。
わざわざこんなもんを使わなければ意志が伝えられないというのは、随分と面倒な設定を……もとい、性質をしているものだ。
しかし、このモバイルから指令が与えられ続ける限り、彼が指針を見失うことはない。そういう意味では恐るべきものであった。
「安価返信キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ! 何々、>>750が『クラウザーさんのコスプレしろ』で、>>755が『一日目から動いていないキャラをズガンしろ』、>>760が……」
その上、彼は『VIP魔法』とかいうネット上の妄想を具現する、カオスロワ中でも群を抜いて厨な……いや厄介な能力を与えられていた。
例えば、中二病っぽい言動を取れば、それが現実を侵食し、実現してしまう。
『エターナルフォースブリザード』と唱えれば、周囲の空気ごと相手を凍結させ、死亡させる。
まさに、外道である。
「……『議事堂に特攻』wwwwwwぅぇwwww俺に死ねってかwwww」
彼に与えられた指令は、いささかキツめのものだったようだが、実行をやめようとする気配は感じられない。
それが、スレを立ててしまったVIPPERの宿命なのだから。

彼は一番早く実行できそうな>>760の指令から遂行することにした。国会議事堂には強力な主催者達が巣食っているが、そこはあまり気にしない。
現実では単なるヒッキーでしかない彼も、この世界ではヴォルデモートも真っ青な大魔法使いである。余計、それは悲しい話であるが。
「ノロウィルス撲滅同盟軍? ボコボコにしてやるよwwwwイヒヒwwww」
彼は意気揚々と国会議事堂に向かう。
一言彼が『フェルエリア・フォン・エターナリティ』と唱えれば、『ぬわーーー』と叫びながらアーカードや範馬勇次郎は消え去ってしまうだろう。
危うしノロウィルス撲滅同盟! 果たして彼を止められる者はいるのか!?



「   や   ら   な   い   か   」



いきなり、そんな声が横手から聞こえてきた。
(!? ま、まさか、こいつはあの……ッ!!)
思わず、心当たりの在り過ぎるセリフに、全身を硬直させる名無しさん。
どうでもいいけど、『ななしさん』で変換すると『七資産』になって微かっこよくなるよね。
ギチギチと、首をめぐらせ、彼はゆっくりとそちらを振り返る。

―――ベンチ。
―――ツナギ。
―――いい男。

ネットジャンキーのサガか、思わず『ウホッ!』と口から飛び出てしまいそうになるのを、必死で押し留める。
言ってしまったら、アウトだ。
いや、言わなくてもアウトだろうか。
「……俺はノンケだって構わないで喰っちまう人間なんだぜ?」
ほらね。
(ま、待て! ここはアレだ、そうだ、安価指定すれば何とかなるはずだ! あいつらなら分かってくれる!)
モバイルの指令がなければ、彼は行動することができない。それがVIPクオリティだからである。
彼は己を強制する『指令』に一縷の望みを託し、モバイルを今までの中でトップ10に入る速度でタイプした。

  『やべぇ、阿部だ! 阿部高和だ! どうすればいい!?
   安価 >>800』

(頼む、俺に攻撃する権利を! この変態を撃破する手段をくれ! 俺はノーマルなんだ!)
彼は祈った。仏から家族からS学会まで、祈りうるありとあらゆるものに祈りを捧げた。
その結果―――

  『>>784
   「アッー!」
   「スネーク! 返事をしてくれ! スネェェェーク!!」』

無常にも神様(まろゆき)は、彼を見捨てたようだった。
がっしり、と肩を捕まれ、彼は公衆トイレへと引きずられていく。
「安心しろよ。ケツの滑りがスムーズにいくよう、ローションを使ってやるからな」
彼は聞いていない。完全に抵抗を諦め、静かに空を見上げた。
虚ろな目つきで、天を仰ぎつつ、彼は最後に呟いた。

「それが世界の選択か……」


―――ラ・ヨダソウ・スティアーナ―――




「アッー!!!」






「なんだ、そんなに気持ちよかったのか?」
阿部は力の入っていない体を叩いてみる。
返事はない。
ただの屍のようだ。
「腹上死させちまったか……次からは少し押さえていかないとな」
大してその事実に感じるものもなく、阿部は自分のブツを抜き去る。
阿部にとって死んでしまったいい男は、いい男の死体、という認識でしかない。
「ま、最後にお互い良い気分を味わえたから満足だろう。結構な締まりだったぜ」
清掃用具が入っている場所へ、死体を乱暴に投げ入れると、そのまま扉を閉めてしまう。
阿部は再びツナギを身に纏い、公衆トイレを出て行った。
そして、己の定位置であるベンチに腰掛け、新たなる獲物を待ち続ける。
全ては、いい男のために。


【東京都 例の公衆便所 四日目 19時】

【阿部高和@くそみそテクニック】
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: 支給品一式 バブルローション×2 メルティローション×3 ビターローション×3
[思考]: や ら な い か


【名無しさん@2ch 死亡確認】

【チェルノボーグ@ファンタジア 死亡確認】
【フリードリヒ・ニーチェ@哲学者 死亡確認】
【アレイスター・クロウリー@魔術師 死亡確認】
【イリオモテヤマネコ@特別天然記念物 死亡確認】
【竜崎一矢@闘将ダイモス 死亡確認】
【修正マン@とっても!ラッキーマン 死亡確認】
【不屈闘志@全力ナイン 死亡確認】
【紺野あさ美@元モーニング娘。 死亡確認】
【生真面目小隊長◆UcMW2ED.5Q@キャプテン 死亡確認】
【水乃小路飛鳥@うる星やつら 死亡確認】
【星野奈留@リビドー7 死亡確認】
【ジャンヌ@ロマンシングサガ2 死亡確認】
【美輪昭宏@オーラの泉 死亡確認】
【南都夜々@ストロベリーパニック 死亡確認】
【ブリジット@ギルティギア 死亡確認】







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