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防空リバースSS(2) - (2009/01/29 (木) 20:56:50) のソース

*防空リバース小説(2)「導入の風景:RANGER Side-A」
(→RIWAMAHI Sideは[[こちら>http://www24.atwiki.jp/riwamahi/pages/513.html]])

リワマヒ国の早期警戒システムと、防空レーダーを備える芥辺境藩国の空港航空基地との連携訓練初日。連邦からはスクランブル時の要員として、パイロットとラスターチカのスタンバイ。

そして、連携訓練にあわせてレンジャー連邦で開発されているバッジシステムも初運用を行うことになっていた。

バッジシステム (Base Air Defense Ground Environment、BADGE System)。

防空指揮管制システムのことであり、防衛に置ける非常事態に最速で対処するための大規模オンライン・リアルタイム・ネットワークシステムある。

それも今回のように警戒システムや他国と連携を取ることにより、その効果は大幅な向上を見込めることとなる。

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「今日の連携訓練の時間帯、スクランブルには彩貴さんとシナモンさんが入ってるんだっけ」
冴木悠はシステムをいじりつつ、隣に話しかける。

「そうだにゃー。シナモンはいつもどおりだけど彩貴は緊張しまくってるみたいだにゃー」
返すのは猫士の夜星である。

「分かってるんなら、緊張といてやれよ。それもオペレーターの仕事だろう」
にやりと意地悪く笑って言う冴木悠。

「そういうの苦手なの知ってるくせに。ジョニ子頼んだにゃー」
「にゃ~♪」
「ちょ、無茶ぶりすんなよ。ジョニ子こそこういうのは向いてないんじゃ・・・」

猫士ジョニ子は饒舌にしゃべるタイプではない。
助け舟を出そうかと考えたところで、聞こえてきたのは軽快な歌声。

「~♪」

それは、レンジャー連邦民なら誰もが知る歌。レンジャー連邦の国歌である。
それを聞き、その歌に気づいた管制室の面々に笑いが漏れる。

「へ~、やるなジョニ子。だけど、この曲調はどうなんだよ」

本来なら荘厳な曲調の連邦国歌。
そのはずの歌が、なぜか今はアップテンポのノリのいい曲調で歌われている。
国歌には不釣合いな曲調に毒気を抜かれたのか、2人の舞踏子は笑っているようである。

「ジョニ子に任せて正解だったにゃ」
計算どおりと胸を張る夜星。

「俺には、面倒くさくなってジョニ子に丸投げしたようにしか見えなかったけどな」
冴木悠がジト目で夜星を見ると、図星だったのか額を流れる汗。

その光景をよそに、管制室には楽しそうなジョニ子の歌声が響くのだった。

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「早く早く、後は悠のところだけにゃー」
「そう急かすなよ。バッジシステム、ナショナルネットへの接続確認。・・・っと、AWACSからの情報来たよー」

歓声とともに、広がる拍手。

「へー、こりゃ便利だ。さすがは芥さんの防空レーダーとリワマヒさんの早期警戒システムだ。結構な広範囲をカバーしているな」
「他国と連携することによりレーダー施設増やすことで広域をカバーできるし、可動式レーダーと連携することで弱いとこの強化も出来るにゃ。これなら防空網の穴を埋めるっていうのも納得にゃ」
「よっしいい感じだな、連携訓練中のデータ送られてくるんでみんな処理していこうか」

不眠不休で作り上げたシステム。
皆疲れてはいるが、その結果に話す声も明るくなる。

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異変は連携訓練が始まってから2時間ほどたってから起こった。
管制室に鳴り響くアラーと音に、管制室が緊張に包まれる。
その状況に気がついた冴木悠が即座に声を上げる。

「みんな、バッジシステムはこんな非常事態に対処するためのシステムだろ。俺たちの働きで前線を助けてやろう」
その言葉に頷き一斉に、作業を開始する。

「敵未確認飛行物体、名称をアルファ1と設定。アルファ1への解析急いで!」
「スタンバイに入ってるラスターチカ、発進待機に」
「コンディションイエローのラスターチカ、こちらも出せる状態までもっていけ」
「AWACSと防空レーダーから来る情報処理して、逐一ラスターチカのDamaに送ってくれ。そっちはコバイの彩貴さんと回線つなげて。」
絶え間なく飛び交う指示、行きかう情報、その空気は戦場のものと変わりない。

「アルファ1のデータ解析できました。解析結果は・・・って、ええー!?」
解析データに驚くオペレータ、そのデータを見てめまいを感じる冴木悠。
その冴木悠の様子を見て、一人のオペレータが気まずそうに声をかける。

「あの~、アルファ1から通信が入ってるんですけど・・・」
ガシガシと頭をかいて叫ぶ冴木悠。

「ああー、あの人はもう。繋げて!」
「は、はい」

……

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連携訓練が終わって、管制室に響くのは怒鳴る冴木悠の声と、ひたすらに謝る蝶子藩王の声だった。
今回の事件、連携の確認のための実践を想定した訓練だったのである。

「ごごご、ごめんなさい」
「藩王がラスターチカに乗る必要はないでしょう!」
「うわ~ん、ごめんなさい」
「事前に相談くらいしてください。対空ミサイル撃たれたらどうするつもりだったんですか!!」

その言葉を聞き、にっこり笑って返す蝶子藩王。

「それは問題ないです。夜星君がちゃんと空砲にしてくれてたから」

その言葉に夜星のほうを向くと、得意げにVサインをしている。

「ああー、知らないのは俺だけか!」
叫び出す冴木悠に、その剣幕に平謝りする蝶子藩王。

「ごめんなさいー、もう許してください」

蝶子藩王、怒られすぎでぐるぐる状態である。
後ろでは、同じように怒られる2人の藩王の姿があった。


(文:冴木 悠)