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サクラの並木(4) - (2009/04/01 (水) 22:21:08) のソース

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川沿い一面に広がる桜並木。
風が舞い上げる桜の花びら。
見渡す限りの薄紅色。
楽しそうな人々の笑顔。

マンイーター事件が影を残す一月前とは、あまりにも違うその光景に息を呑む。

「うわっ、凄い・・・」
「本当に、綺麗だな」

その幻想的な光景に、言葉も少なく声を上げる恋妖精テタニアのラヴと冴木悠。

昨年まで見ることのなかった、桜の光景。
久々に見たレンジャー連邦の光景は、今までに見たことのない光景だった。

「この間までと比べると、ずっと連邦らしいか」

幸せそうな人々の声を聞きつつ、好ましい変化だと頬を緩ませる。

「--------ゅ~」

遠くから近づいて来る声、土煙とともに鼠のような動物が近づいてくる。

「みゅーーーーーーー!!!」

鼠にしては大きすぎる遠近感の狂ったような巨体、その可愛い泣き声からは想像も出来ない勢いで冴木悠に飛びつく。

「ごっ・・・」

その勢いに少しやばめな悲鳴を上げかける冴木悠。
その悲鳴を何とか飲み込み、にっこりと笑って一言。

「ただいま」
「みゅ~ん」

うれしそうな声で頬擦りをするのは冴木悠のペット、カピパラのちょこである。

「ずっと一人にしてごめんな、ほらお土産もいっぱい買ってきたぞ」
「みゅ~!!」

冴木悠が背負った風呂敷には、食糧生産国でもあるたけきの藩国で買ってきたお土産がたくさん詰まっていた。
食いしん坊のちょこには何よりのお土産だろう。
冴木悠の言葉に、ちょこは涎を垂らさんばかりに風呂敷を見つめている。

「まあ、待ちなって。せっかくの綺麗な桜だ、花見でもするか」
「賛成~」
「みゅ~」



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空に月、闇夜においても舞い上がる薄紅色の桜の花びら。

桜並木を見渡せる丘の上、その場所にも一本の大きな桜が植えられていた。
そこに青いビニールシートを用意して座る面々。
明かりは用意せずとも、月明かりで十分に明るい。

夜になると花見の習慣がないレンジャー連邦では極端に人が少なくなる。
少々寒いということもあるが、この光景をゆっくりと楽しめるということもあり夜桜を楽しむことになったのだ。

『乾杯~(みゅ~)』

乾杯と一緒にレンジャー連邦産のお酒、俺星ビールを一気に呷る。

「・・・くうっ、最高ー」

お酒を呷りつつ、浅葱空さんからおすそ分けしてもらったお団子をかじる。

「うわ、これ旨い。幸せだなー」

たけきの印のお土産とお団子を食いつくさんばかりの勢いで口に頬張るちょこと、その横でぎゃーぎゃーと騒ぐラヴ。

冴木悠の幸せは、ずいぶん簡単に手に入る。
旨い酒に、旨いツマミ、大切な家族。
それだけあれば他に必要なものはないのだと考える。
まあ、欲を言えば嫁さんでももらえれば言うことはないのだが。

それまで、楽しそうに騒いでいたラヴが急に静かになる。
どうしたものかとラヴの方を向くと、何かを探すようにきょろきょろと辺りを見回している。

「どうした?」
「ラヴの、甘酸っぱい恋の気配がするの」

集中しようとして、目をつぶり辺りを探るラヴ。

「・・・なんかそれって、妖怪アンテぶっ」

失礼なことを言ったからか、それともいろいろな意味でギリギリであったためか顔面に体当たりをくらい蹲る冴木悠。

「見つけたっ!すぐそこ」

痛みのある鼻っ柱を抑えつつ、ラヴの指差す方向を見る。

「あれは・・・楠瀬さんとじにあちゃんか」

丘のすぐ下。
仲良さそうに桜並木を腕を組んで歩くのは、レンジャーのフィクションノート楠瀬と猫士のじにあであった。

「や~ん、桜とじにあちゃん、どっちも綺麗だよだって」

きゃいきゃいと騒ぎ、ジト目で冴木悠を睨んでため息一つ。

「はあ・・・うちの甲斐性なしもこれくらい言ってくれたらなあ」
「って別に付き合ってるわけじゃ・・・」

睨む視線の圧力に、台詞を途切らされる冴木悠。

「きゃー、見た。今の見た?後からぎゅって」

恋愛を見て騒ぐ恋妖精にこれ以上は野暮だからと言っても、一向に収まる様子がない。
しょうがないといつものように捕まえて頭の上に乗せてやると、やっと静かになる。

ビニールシートに戻ると、今の騒ぎに我関せずでおやつをつまみ続けるちょこの姿。

「あー、ちょっと私まだお団子食べてなかったのに!!」

戻った先でまた騒ぎ出すラヴ。

その光景を見て、ため息を一つ。
にっこりと笑い。

「幸せだなー」

そう呟く冴木悠の姿があった。


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