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サクラのなまえ - (2009/04/01 (水) 22:35:45) のソース

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桜並木。その一際大きな樹の下で、うーんと唸る声が聞こえる。
今回の企画を立ちあげ、あれこれと立ち回っていた女がひとり、そこにいた。

桜の名前を考えているのだった。
国の皆からいろんな案を出してもらい、気に入ったのにしてくださっていいですよーと一任され、それじゃあこれだと人気のあった名前に一旦は決めたものの。。。


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ころころと唸るサクの元に、大柄な男が近づいて行く。
双樹 真であった。
その手の上のお盆には、お菓子やらお茶やらが乗せられていた。

「お疲れ様ですーさくらもちでもどうですか…  あれどうしたんです? 」

ころんとしていたところに声をかけられ、サクはがばっと起き上がると目を輝かせた。

「わあいさくらもちーーー もぐもぐもぐ」

差し出されたそれを手に取ると、嬉しそうに食べ始める。
勢いよく口に入れたせいか、苦しそうに胸を叩くサク。
それを見て、双樹は笑顔でお茶を差し出した。

「梅昆布茶もどうぞー」

ずずずずいとサクには少し大きすぎる湯呑を差し出した。

「ありがとうございますありがとうございます!」

出されたお茶で桜餅を飲み下し、笑顔で頭を下げるサク。
一方双樹は桜餅の桜の葉を取り除きながらそれを笑顔で見つめていた。
その作業を見て青くなるサク。

「は・・・はっぱも丸ごと食べてしまいました・・・ とりのぞくと破れますよね・・・それ。」

「いやいや、フツーに食べて大丈夫…なはずですよ・・・多分」

青くなるサクに頼りないフォローを入れて、双樹は桜餅に齧り付いた。
月夜に照らされたまだ名もなき桜の花びらが、ひらひらと辺りに降り注ぐ。
その様子をしばし楽しんでいた二人だったが、双樹が思い出したように口を開いた。

「そう言えば、なにか唸ってるって言うか ころころしてましたね。どうしたんですか?一体。」

双樹の問に気まずそうに頭をかくサク。

「あーえーと。サクラの名前、再考してるのですー… しんさんのがいいような気がしていて・・・。ぐだぐだですみません…」

なるほど。と頷く双樹。

「にゃー名前は大事ですからねぅ。悩むべきですよー。要は悔いをのこさなければ良いのです」

「ありがとうございます。そうですね、ちゃんと考えてあげないとサクラがかわいそうですね」

サクの言葉に双樹は少し考えて、口を開く。

「別にどんな名前でも、さくさんがこれなら良いと思えるものなら良いと思うですよ。重要なのは想いです」

桜の並木を作りたい。
そう始めて声にしたのはサクであったし、みんなの協力を得られたのも、サクの熱意があったからだから。

「一番は、さくさんの、最初の想いを込めれば良いのだと思います」

桜を見上げて、そう呟く。

「俺のが採用されたらまぁ、個人的にはわーいですがね。」

ちょっぴり本心を込めて、小さく双樹は付け加えた。

「しんさんの応募した名前… 『あかだ』を見て某野球選手の名前を激しく思い出しつつ」

「わはは」

「野球詳しくないんですけどね。「梵」って書いて「ソヨギ」と読むらしいのです。友人にファンがいて、この人のことよく言ってたので覚えてました」

「そよぎ…なんだかすごく格好良いきがします…!」

双樹は大好物である漢字ネタに目をキラキラさせている。

「珍しいお名前ですよね。えーとこれによると…『“凡”を“風”にとらえ、“林”に“風”が吹いて“そよぐ”としたのでは』 なんだそうです」

その手元には、作業現場でも活躍した小型の情報端末。
手際の良い操作で情報を引き出した。

「しんさんの考えてくださった名前の由来と、それからこれをみて。すごく心惹かれました。コノハナサクヤも、どこかで見かけた気がするんですが…思い出せないー」

サクが情報端末を操作しようとするよりも早く、双樹は話し始める。
好きな分野であるせいか心なしか口も軽くなっているようだ。

「コノハナサクヤはまぁ日本神話の神様ですねー」

火の神とも水の神とも言われる女神で、その名は木の花(桜の花)が咲くように美しい女性、という意味を持つ。
双樹は、その美しさと強さがこの桜にも宿ればと願っていた。

「なんか響きがかわいいですよね! コノハナサクヤ!」

「可愛いですよね-。」

コノハナサクヤの響きに笑いあうサクと双樹。
そんな二人の背後から、藩王、霞矢蝶子が顔を出した。
突然の来訪に驚くサクと双樹。

「うお。わーお疲れ様ですー。」

「お疲れ様ですー。」

「お疲れ様ですお疲れ様です  ごめんなさい!サクさんの仕事を増やしちゃうリクエストがあるのですが・・・。」

「わー、はい。…おお、これは・・・頑張って直します・・!指摘ありがとうございますー」

深々と頭を下げるサクを見て双樹は手を叩いた。

「さてお仕事も出来たみたいですし 一旦解散しましょうかー」

そう言って双樹は辺りに並べたお菓子お茶をお盆に並べるとサクに一礼し政庁へと歩き出す。

「はあい お話相手してくださってありがとうございましたー 藩王もチェックありがとうございました!」

頭を下げるサクに、にこやかに手を振ると、桜の花を眺めながら政庁へと戻っていく藩王。
いつの間にチェックに来てくださったんだろうと不思議に思い、次にありがたく思う。


「うん…よし!」

ようやく名前をこれと決める。
少し笑って見上げるその視線の先には、ひらひらと舞う桜の花びら。

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この道を、うつむいて歩く人は 樹の根元にある千羽鶴に気が付くだろうか
上を見上げたそのときに、沢山の花が咲いていることに気が付くだろうか
病院から見えるこの並木は、きっと白く柔らかく、時には緑に輝いて、病や傷を癒すための 心の元気を分けてくれる

子ども達は…見てくれるだろうか
あのひとは見てくれるだろうか


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「綺麗だなあ」

桜が舞っている。


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#right(){&color(#C0C0C0){(文:矢神サク・双樹 真)}}

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#center(){
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