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RP中継所_ターン11」(2008/06/07 (土) 04:31:10) の最新版変更点

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*r:ターン11期間内の藩国所属フィクションノートによるロールプレイをここに中継する ---- #最新の日付以外はWIKI構文によってクリック開閉式に収納されています #20080606 f:PLAYER =むつき・萩野・ドラケン ●むつき・瀧野・ドラケンのRP 「どうぞ、こちらを使用して下さい」  政庁関係者用の独身寮にリワマヒ国から来た医師団を案内する。  本来ならば都内のホテルを提供したい所だが、治安が不安定な現在、彼らの身の安全も考え寮の何室かを提供する事になった。 「作りは質素ですが、石壁が厚いので室内は静かで涼しいですよ」  窓を開ければオアシスの水と緑の匂いが風と共に入り込んだ。 「病院までは必ず誰か護衛がつきます、帰りも連絡をいただければ迎えに上がりますので」  家具や水回りの使用方法の説明をしながらそう言えば、医師の一人から苦笑が帰って来る。 「そちらの国も大変ですね…いや、我々の国やこの国はまだいい、まだ…。」  窓の外から見える風景は平和に見えるというのに、不安による圧迫に耐えられなくなった住民が喧嘩を起こすに始まり、状況のどさくさを利用した犯罪、そして政府への抗議が毎日どこかで起きている。 「治安が戻らないと、流通もなにもあったものじゃないですからね…。」 「当国も先日交番を設置していました、犯罪者が流れ込んでしまいまして。」  お互い顔を見合わせてため息をつく、問題は山積み、戦争まで始まる。 「…でも、諦めたら終わりですから、お互い頑張りましょう。」 「はい」  その言葉ににこりと笑えば、彼らも微笑む。 「笑顔はいいですね、病にも笑顔が一番の薬です、医者の自分が言うのもなんですが。」  笑いが病に及ぼす影響は学会でも発表されていて、治癒率が格段に上がるという事が分かっているのです。そう付け足すと、彼はますます笑みを深くした。  そんな彼らの笑顔に心から頭を下げる。 「本日ささやかですが、歓迎会を開く事になりました。夕方に迎えをよこしますので、それまでゆっくりなさって下さいね」  用意していた招待状を、申し訳なさそうな顔をした彼らに渡す。 「歓迎会といっても、只今絶賛節約中なので炊き出しみたいなものですが、色々出し物とかありますので楽しんで頂ければ幸いです。」 「それなら、是非。」  風と共に笑いも開けたままのドアを通って行く、入口で護衛の為について来た猫のお巡りさんも、その風にヒゲをそよがせこっそり笑ったのだった。 #openclose(show=#20080605){ f:PLAYER =浅葱空、春雨、楠瀬藍、むつき・萩野・ドラケン /*/ ●浅葱空のPR  闇が暗ければ暗いほど、と言ったのはだれか。  止まない雨も、明けない夜もないのだと。  私に教えてくれたのは、強がりな彼だった。  その黄色いジャンパーを、その背中が愛しくて駆け出し始めたんじゃなかったのか。  いっしょに走りたかったんだ。  大丈夫。走ったり、転んだりしていたら。  大切な愛しい人や物がこんなにも増えていたよ。  少しは貴方に近づけたかな。  一緒にいこう。  ハッピーエンドを手に入れるために。  強がりな大人になるために。  だって、貴方を愛していたら、この国を、そこに息づく人をこんなにも愛していたよ。  あなたと愛が共にあるように。  皆と手を繋いで、治安を、安らぎを皆に。  大丈夫。 「さあ、皆。行こうか」 /*/ ●春雨のRP  治安の悪化が進む中、活動中のACEの負傷・疲弊の報せをタリアの人形店で聞いた春雨は、  怒った。  人の優しさに身勝手に願いをかけていた自分に酷く腹を立てた。  春雨は片方しかない暗い目を強く見開くと  今は祈りの時ではないのに、駆け出さない自分の足を睨んだ。  そして避難民誘導の為巡回していた冴木悠を店先で捕まえ老婆のタリアを預けると  自分の巣に戻って銀色のリボルバーに今度は飴玉でなくフォローポイントを込めた。  魔術的舞踏子の装備の一部を切り裂き身軽にし、  胸には布をきつく巻いてから防弾ベストを羽織った。  何処からか黒いブーツを引っ張り出して履き、グローブを付けた。  最後に磨かれて光る銃剣で、自分の髪を束ねて一気に切った。  切り取られた髪は束ねて「全ての善き神々に捧げます」と祈りを込めてから  天に届くようかまどにくべて焼いて煙にした。  顔の包帯は解かれぞっとするような鳥形の左目の傷跡が現れて、直ぐに大きい黒の眼帯で覆われた。  かくして、実に貧弱で不名誉の傷まみれで、強い舞踏子でもない娘の戦闘準備が出来上がった。  ベリーショートの銀髪と黒の眼帯に囲まれて、薄いスミレ色の目が鋭く光ったが  全体的に弱かった。歩兵でもサイボーグでもないので当然だった。  それでも走り出せる足があって、反動で弾道が多少ずれても  何とかグリップを握れる手がまだ残っていたから、  なによりなにより 蝶子藩王やサクさんやむつきさんが悲しんだことに 腹を立てていた。  ACEが傷ついたことに腹が立っていた。悔しかったのだ。  フィクションノートは設定国民にしろACE達にしろこの世界に生きる人の笑顔が見たくて  きっと、このアイドレスをまとっているのだから。 「武装している国民は・・・すでに暴徒・・・便乗して暴れてる奴も多分、いる・・・」  武装している国民の数、その武装の種類、入手及び流出ルートもわからなかった。  また、この暴動に不参加の国民や非難している人々の数も国外にでた人の数も見えてこない。  そして我々に協力してくれる国民は、まだいるのか、そしてどれ位なのか・・・  なにもかもが予想の範囲であったが、治安悪化は間違いない。  春雨は高い場所に上って騒動の大きい箇所で治安維持活動を続けるACEや警官隊を見つけると状況の詳細をより把握するために命令も指示も何もかも忘れて駆け出した。  何をやれるのかも判らなかったが、兎に角ACEの背中を守る事だけでもしたかった。 「藩王を泣かす・・・奴は・・・ぶっ飛ばすわ・・・」  にやりと笑いながら路地を駆けた。その姿は豪華絢爛でも勇壮でもなかった。むしろ悲壮だった。  それでも駆けた。その時だけは、狼の気持ちで。 /*/ ●楠瀬藍のRP 「ここは、要注意と聞いていたが・・・」  俺は、北の港にいた。  周りを見て軽い驚きを感じた。  交番が、できていた。  そこに詰めていた猫士に話を聞く 「ここはこの国の玄関口じゃあないですか。ここできっちりしておかないと、よそから来た人に悪い人が混じってたら一大事ですからね」 「なんと・・・意外に、早い対応じゃないか」 「ふっふー、そこはそれ、さすがはわれらの藩王様なのですよ。君もボーっとしてないで、がんばってくれたまい、『楠瀬クン』」 「・・・俺も、がんばらないと、だな」  一本取られた俺は、早速、というわけではないが、愛用のめがねをサングラスにかけ替え、陰ながら交番の下働きの真似事を始めることにした。 } #openclose(show=#20080603){ f:PLAYER =彩貴、むつき・萩野・ドラケン、空馬、浅葱空、豊国 ミロ、春雨、楠瀬藍、遊佐呉、双樹真、城華一郎 /*/  彩貴はみんなに配るお茶を淹れていた。みんなが落ち着いて冷静な対応ができるようにとやってることだが…つまりは今はそうすることしかできなかった。なにか状況を打開する手段も思いつかないし戦闘の編成ができるほどの経験もない。レンレンジャーとして治安維持活動は正体隠してやってはいるが…とにかく動きたかった。 「彩貴ちゃん節約ー。水とお茶っ葉ほどほどにゃ。」 「うん…わかってるー…」  生返事をつい返してしまうが猫士の言葉はもっともだった。市場が止まった今は少しでも長く国民の生活水準を下げないように努力しないといけない。その証拠にお茶菓子は無かった。非常時の備蓄に回したのだ。もちろん海に囲まれた砂漠の国であるから飲料水も節約が始まっていた。 「明日にはもうこんな贅沢はできないしね。近々炊き出しになると思うし…そうなったら節約しても美味しい物作りますね?」 「彩貴ちゃん…料理できたの?見たこと無いニャー」 「むー。一応得意なんですよ?作る機会が無かっただけだもん。こうなったら…」  この動乱が終わったら美味しい物たくさん作ってやる、と言おうとして止めた。もちろん平和にはなってほしいし努力はするが…いつそんな時期が来るとは今の自分にははっきり言えなかった。 「こうなったら、とにかく動かないと…ね。今はお茶配り!」 /*/ 「うちの人や、蝶子さんの惣一郎さんが頑張ってくれてた分、私達も頑張らないといけません」  むつきは刻一刻と変わる被害にあった人や建物、そしてそのデータをファイリングしながら、市街に出て駆けずり回る仲間達や自分の夫を思う。  女性は危ないから外に出るな、と言われる当り、少し腹が立つがここはそれに甘んじる事にした。  外はそれほど混乱を極めているのだろう、彼等で抑えきれないところへ出ていくほどまずいものは無い。 「物資の準備を城さんがしてくれてますから、配当のリストを誰か作成してください!」  誰かが慌ただしく廊下を走り、次々と指示が飛んで行く。  女性には女性がやれるべき事が沢山あるのだ。  こんな時に強い団結をもつのがこの国たる所で、誰もが率先して状況改善の為に働こうとする。 「住民の避難受入先決まりました、ニュースの速報に回して!」 「はい、すぐ持って行きます!」  この時ばかりは新人も古参も忙しく走る、国の為に民の為に。  それゆえに、ACEと呼ばれる存在もこの国を動かず、彼女や彼等と共にあろうとするのだ。 「被害状況ファイルデータ6/2分上がりました、こちらもニュースの方に回して下さい!」  通りすがりの猫士にそれを渡せば、彼女もにっこり笑ってそれを受け取り走っていく。 「今日も寝てる暇無さそうだな…」  呟きながらふと廊下を見やれば、新人さんがお茶を沢山もってよたよた歩いているのを発見し、それに微笑む。 「手伝いますかねー」  デスクにかじりつきで固まった体をほぐしながら立ち上がり、大変そうな彼女の元へ向う、大変な時こそ、仲良く、と思いながら。 /*/  故郷が無くなるのはとても悲しい。故郷が無くなった時、悲しくて、悔しくて、歯を食いしばりながら泣いたのを今でも覚えている。あの居心地のよかった場所には二度と帰れない。  国が無くなったら、どれだけの人が泣くんだろう?  数字でなくて、涙の一つ一つを受け止められる?  ………………  故郷を捨てなくてはならない、と言うのは理解ができない。経験が無いからだ。  でも、理由があるんだろうな。もう、我慢ができなかったんだろうな。  誰にも非難できる事じゃない。みんな悔しいだろうし、悲しいのだから。  自分の国を自ら傷つけようとしてる人は怒っているのだろうな。  でも何に?この状況を止められなかった俺たちに?この状況を作った人に?それとも何もできなかった自分達に?  怒るのは当然だろうな。  でも傷つけあうのは悲しい。  じゃあ国に残り、守ろうとしている人達は何を思っているのだろう?  ………………  ………………  俺はこの国が好きだ。この国が好きだ、と言ってた設定国民もみんな好きだ。この国を支えている人達もみんな好きだ。だから護りたいんだ。  みんなも同じ気持ちなんだろうか?  だとしたら・・・・・。  遠く炎で焼ける空を見ていた空馬は踵を返し部屋を後にした。 /*/ ●城華一郎のRP -[[状況小説執筆(前編)>http://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/420.html]] -[[状況小説執筆(後編)>http://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/421.html]] /*/ 1. 嵐吹く 銀の砂舞うこの国で 空が落ちても前を向く 心に描く誰かのために  右手に正義 左手に勇気 胸には愛を 我ら西方の遊撃者 明日を見るために沈む今日 立ち上がれ 命尽きてなお 心は愛と在るように 2. 陽は燃える 銀の風吹くこの国で 海が割れても前を向く 心に描く何かのために  眼(まなこ)に夢を 唇に歌を 胸には愛を 我ら西方の遊撃者 明日を見るために沈む今日 いざ行かん 命尽きてなお あなたが愛と在るように -藩王蝶子さんが作ったレンジャー連邦の国歌(偽)-  「そーら、何してるの?」  猫士のにゃふにゃふがいつもの優しい口調で覗き込む。  私、浅葱空は一生懸命蝶子さんが作った歌をノートに書いていた。  よし、これでよし。  歌詞を書いたページをびりりと破りとって丁寧に畳んで服にはさむ。 「それ、蝶子さんが作ったうた?」 「うん。忘れないように持っておくの」  私たちは愛の民。  今怒りと悲しみ、憎しみが渦巻いている。  でも、その胸には必ず愛も息づいている。  一番大切なことを忘れないように。  私は何のためにここに来た?  皆を抱きしめるために来たんだ。  会いたかった。会いたかったんだ。  まだ見ぬ友人に会いたくてぎゅーしたくてきたんだ。  私たちのした事で悲しい想いをさせて、苦しい想いをさせてしまっているのならば。  全部全部。私たちがぎゅーして受け止めないといけない。  私は頭が良くないから、どうして皆の幸せを守ってあげられなかったのかわからない。  精一杯だったけど、結果がこれでは意味がないのもわかっている。  無知は罪で、ごめんなさい、としか言えない。  だから、ぎゅーして全部受け止める。  私たちは愛の民。  次元を越えて、世界を超えて巡り合った、同じ場所で生きている愛の民。  その悲しみ苦しみ憎しみすらもぎゅーしたい。  愛しているんだ。  ご飯を食べる、お金が必要という現実的な事はとっても重要。  愛、と言ってお腹がいっぱいになるならこんなに楽な事はない。  でも、それを解決しよう解決しようとするあまり、一番大切なことを忘れてはいけない。  私たちは愛の民。  Love be the withyou  あなたが愛と共にありますように。  愛と共にあるんです。私たちは全て。  それをけっして忘れないために。 「にゃふにゃふ、聞こえる?」 「ああ、きこえるよー」 『嵐吹く 銀の砂舞うこの国で』  歌声が聞こえる。 「私たちも歌うよ」 「うん、一緒に歌おう」 「ありがとう。私の愛しいともだち」  皆、待ってて。みんなみんなまとめてぎゅーしにいくから。 /*/ #豊国 ミロのRP  蝶子さんのヤガミが怪我したらしい。  うちの国のひとはみんな、どっちかっていうとのん気な方だった。だから彼らが怪我をさせたと聞いて私はとても驚いたのだけれど、それだけ殺気立っているということなんだろう――きっと皆ものすごく不安なのだ。  先が見えなくて。とにかく怖くて、怖くて。  みんなを助けてあげなくちゃ!とにかく、不安を取り除いてあげなくちゃ。  でも、私にできることなんてあまりないように思えた。政治のことはよくわからない。戦闘も、一応士族ではあるもののそんなに得意ではなかった。  そこで炊き出しをすることにした。  最近私は食堂のおばちゃんと仲がいいので(料理特訓を受けているのである)そういう発想になったのかもしれない。  人間お腹が満たされると気持ちも落ち着くものだから。これは自分自身がそうだから分かる。 (でも、おばちゃんたち、いるかな…)  こんなに不安定な世情なのだ。いかにプロの賄い係といえど、自宅で家族と必死に騒ぎをやり過ごそうとしているに決まっている。 (いや!一人でもなんとかす…る…)  厨房から白い湯気が立ち上っている。いいにおいがする。  中では割烹着にオレンジのバンダナを巻いたおばちゃんたちが、忙しく働いていた。 「おそいよー」 「早く運んでねー」  次々に声を掛けられる。  みんないつものように、黙々と、ご飯を作っている。  私は、顔をめちゃくちゃにこすると、同じようにオレンジのバンダナを頭に巻いて食べ物の搬出にとりかかった。  みんなのお腹を満たすのだ。 /*/  焼き討ちや騒動がすこしづつ拡大していく中、春雨は街の一角の店の中にいた。  創作球体関節人形のミュージアムを兼ねた、展示販売を行う店である老婆が細々と経営していた。  丁度この店の裏口が(古家具を組んだりガラスで飾ったりした)春雨の巣が隣接というか、くっ付いている。  つまり春雨はこの店の裏路地の中庭を間借りしている状態で、その代わりに老婆の身の回りの手伝いをしていた。  ついでに、店主との人形作りの師弟関係もあり、家族のようにもなっていた。  外の声が大きくなったり小さくなったり。  物を壊す音もする。泣き声も怒声も罵声もする。  フィクションノーツ達が、精一杯民衆をなだめる高らかな声も聴こえる。  玉子色したガラス窓をすかして、やわらかい光が指す赤茶色した店内で老婆と二人、  春雨はお茶を飲んでいた。 「いや・・・だわ。織物屋の坊やまで・・・大人と一緒に走ってる。」  坊やというが、実際は18歳くらいの男性である。彼女は自分と同い年の人でも「この子」と言う。  魂の年齢を見ているのだと本人は相手を茶化すが、たぶんに何も考えてはいないことは明白だったりする。 「大丈夫かしら。」  老婆がやや温くなったカップを両手で包みながら呟いた。 「大丈夫よ、タリアおばあちゃん・・・何かあっても・・・」 「必ず護るわ・・・」  春雨は15分ごとに街の状況を各フィクションノーツに送るようにしていた。  彼女だけが知っている塔に昇り、煙の場所を地図にチェックして王宮に逐一報告。  また、足の弱い老人や親のいない子供達の居場所の把握もしていたので  まずそこらをまわり安全を確認してまわった。  タリアの店を拠点とし、表通り、裏路地のルートを  あらかじめ作成されていた避難経路図と照らし合わせて  現状の通行状況から安全なルートをチェックし、  移動中のフィクションノーツやレンレンジャーに連絡をする。  猫士達数名にも協力してもらい、大通り以外の細かい場所でおかしなことがないか  連絡を受けて本部に中継もした。  ただし、春雨本人は女性であるので何かあると危険なので帰還するよう支持を受けたが  いつもの口調で断った。 「はい。自分は・・・異常ありません・・・装備もあります。大丈夫です。任務を続行します。」  任務といいつつも、特に命令は受けていない。  春雨は自分なりの正義の下す命令に正直に答えたつもりでいた。  発砲は厳禁だ!ときつくきつく言われたが、銀色の狼の意匠がある拳銃を手放す気にはならなかった。 「大丈夫なのね?」  タリアが、冬の湖色の目で静かに春雨を見つめている。 「大丈夫よ・・・だって・・・この拳銃、金平糖しかはいってないのよ」  春雨はにんまり笑うと、シリンダーを回して見せた。  虹色の金平糖がきらきらしながら転がり落ちた。 「本部・・・自分はいざとなればタリアさんを抱えて逃げます。このまま中継を続けます。」 「タリアおばあちゃん・・・」 「クリスマスには・・・角砂糖一個にも魔法が宿るのよ・・・」 「でも・・・私の飴玉には・・・いつも・・・魔法があるわ・・・」 「優しくなれる・・・おまじない・・・知ってる・・・もの・・・」  どこからか 国歌が聞こえてくる。 「優しさは弱さじゃないの どんな地獄でも 血みどろでも・・・笑っていられる・・・・」 「夜はあけることをを知ってる・・・人の・・・心に・・・光の柱のように・・・立つ・・・」 「フィクションノーツは・・・身体は死なないけれど・・・心は死ぬ時がある・・・  だか・・・ら・・・心に力が宿ることを知っている・・・」 「国の人々も・・・わかってくれるわ・・・」 「みんなの心に優しさが戻れば・・・・・・・・その為に私・・・」 「今、命のネジがとけても・・・気にならない・・・」 /*/ 「街へ出ます」  情報を聞いた楠瀬藍は、手近なメモ用紙にそう書くと、無言で姿を消した。 /*/  フードを深く被った男が、街中を彷徨う。  暴動に参加するでもなく、止めるわけでもなく。  男は、別の何かを見ながら歩いていた。  街角で泣き暮れる子供に声をかけ、手を引いて大学施設へ送り届ける。  その場の石壁に子供の名前と行き先を手にしたナイフで刻み、途中で迷子を届ける、との連絡もわすれない。  火の手が上がるのを見れば、警察やレンレンジャーに連絡し消火を願う。  急ぐからと名乗る前に電話を切る。  逃げ遅れた人がいると聞けば、火の中瓦礫の中を問わず飛び込み、助け出す。  感謝の言葉には 「都市大学が避難所になっている」  との言葉だけ残し、足早に立ち去る。  男の足は休むことなく、先へ、先へと急いでいた。 /*/  偽善だ。  俺のやっていることは偽善だ。  楠瀬はわかっていた。  国民たちの暴動は止められない。  なぜなら、自分たちフィクションノートの行動によって生活が左右されているのだ。  自分たちは国民の世話になっているのに、だ。  だから生活が悪いほうに傾けば、怒りは当然自分たちに向く。  そんな自分たちがいまさら助けの手を差し伸べたところで、簡単に受け入れられるものではない。  遅かった。  思ったよりも早くことが起きたため、後手に回ってしまった。  しかし、それを理由にはできない。  後手に回ったからといって、自分たちフィクションノートが何もしないわけにはいかない。  藩王は国内関係各所に回り頭を下げ続けている。  仲間はみなめいめいに自分にできることをはじめている。  特に城華一郎は、名前を出すという危険を冒してまで呼びかけを実行している。  攻撃の対象になりかねないのに、だ。  楠瀬自身も、手をこまねいているわけにはいかなかった。  自分には名前を出して矢面に立つ勇気はない。  ならば、この混乱の影でさらに被災者となっている国民を、いつも影から支えてくれている国民を、助けたかった。  当然、楠瀬一人で行うこの活動に限界はある。  楠瀬の目の前のひとは救えるが、見えないところのひとは、救いきれない。  でも、やるしかなかった。  レンジャー連邦のフィクションノートは、国民を愛している。  そんな彼らが、立ち上がっている。  ならば、きっと俺が見てないところは、誰かの目が届いているはず。  俺だけ、人任せになんてしない。  偽善といわれようと、楠瀬は自分の思うところを全うするため、都市を彷徨う。 /*/ 「大丈夫、藩王様は国民を見捨てないって放送で言ってた。大学が、避難場所だってさ」  デモや暴動が起こるその後ろで、不安そうに見つめる人々に楠瀬はそう伝えて回った。 「惣一郎さんも、俺たちを、みんなを心配してた。いつもお世話になっているあの人に、心配かけっぱなしは悪いよね」  寄り集まっている家族に、姿を見せられない霰矢惣一郎氏の思いを伝えて回る。  放送で流れている事実を、伝わらない地域に伝えていく。  ともすれば、フィクションノートとばれてもおかしくない行動だが、すでにその考えは楠瀬の頭には無かった。 「食糧配給、やってるそうです。大学がそのまま避難所になってるから、いくととりあえず落ち着けますよ」  道端で座り込んでいる老人に、声をかける。 「おお、あんた・・・どこかで見た人じゃ・・・」 「しーっ」  楠瀬は口元に人差し指をあて、にっこり笑う。 「続きは、大学に着いたらね」  楠瀬は老人をおんぶすると、足早に大学を目指す。  ふと、蝶子藩王が作った国歌が聞こえてくる 「おお、これは最近できた・・・」 「国家、みたいですね」 「うちの孫が蝶子様が大好きでなぁ。かく言うわしも、好きなんじゃが」 「俺も、ですよ。蝶子様もがんばってるって、放送で流れてました。俺も、がんばらないと、です」  歌が聞こえてきてから、街が少し落ち着いた空気になった気がした。 「嵐吹く 銀の砂舞うこの国で」 「空が落ちても前を向く」  楠瀬と老人は、聞こえてくる歌に合わせて口ずさむ。  心に描く誰かのために   右手に正義 左手に勇気 胸には愛を  我ら西方の遊撃者 明日を見るために沈む今日  立ち上がれ 命尽きてなお 心は愛と在るように  大学までは、あと少し。 /*/ 「しかしあんちゃん、音痴じゃのう♪」 「おじいさんは美声ですね・・・俺の負けです・・・」 /*/  女性陣は室内担当ということになっているということで遊佐呉は作業をしていた。  しかし目まぐるしく変わる情報を、長時間にわたり処理するには限界がある。  私は合間にお茶を配ったり貰ったりして一息ついている。  本当は一息つく暇なんてないし、お茶なんてすすってる状態ではない。  しかし無理にでも休憩はとらねばならない。  国民を安心させねばならぬ方が不安と焦燥を見せていれば説得力はないのだ。  もっとも、今の悪意の状態ならば何をしても文句を言われそうではあるが。  次々と更新される連邦のニュース。  緊迫した声が飛びかい、慌ただしい足音が響く。  何か疲れてきた…蝶子藩王作の歌でも歌おう。 「嵐吹く 銀の砂舞うこの国で 空が落ちても前を向く 心に描く誰かのために」  歌い始めは音程をハズしたが上手くのって歌えてきた。 「右手に正義 左手に勇気 胸には愛を」  小声で歌いながら仕事を再開したら心なしかはかどってる…気がする。 「我ら西方の遊撃者 明日を見るため沈む今日」  どこからか歌が聞こえる気がする…実は本格的にまいったのかもしれない。 「立ち上がれ 命尽きてなお 心は愛と在るように」  そういえば以前は苦しくなるとこうして歌を歌っていたよなあ……忘れてた。 /*/ ○双樹真のRP  黒い柱が幾つも立ち上げられていた。  切望は絶望に変わり、信頼は疑心へと変わっていく。  あの時と同じように。  あの時よりもなお昏く闇はこの国を喰らい尽くしていた。  それでもなお諦めず、忙しく走り回る仮想飛行士達を尻目に男は呆然と黒煙を見上げていた。  無知は罪。  無識は悪。  そして無力はその身を今までのように引き裂いた。  力無く、ただ呆然と空を見上げる。  天に穴は空いていないかと  切望し絶望し。  この期に及んでなお他を頼るのかとその心根をただ恥じた。  脳裏にあるは桜の海。  今となってはその前に立つ資格すらない彼の人の、かつての言葉が胸を貫く。 「「そなたは優しいのだな」」  永久に咲き誇る桜を見据え、何気ない一言をそう評した彼女。 「…違うんです」  呟く。  人を憂う事すら出来なかった俺が…優しくなぞあるわけが無い。  優しくなど無いからこそ、こうなるまで俺は何も出来なかった。  そして今でさえ何も出来ずに居る。  でも、それでも。  彼の人から学んだ大切な言葉。  どんな時もどんな場所でも支えてくれた言葉。 「…やらぬよりは…よい」  心の内の彼の人に合わせるように声を出す。 「やらぬよりは」  拳を握り締める。  少なくともまだ何もしていないから。  諦める事なんて知らない人を俺は知っているから。  踏み出そう。  どんなに罵られようとどんなに傷つけられようと。  自らの罪を認めよう。  自らの悪を受け入れよう。  どんなに些細でもどんなに微力でも。  やらぬよりはよい。  やらぬよりはよい。  この身に彼の人を語る資格は無いけれど。  ほんの刹那でも彼女の隣に立った物として、恥じぬ生き方をしてみせよう。  そして男は、空を見ることを止めた。  男に出来る何かを求めてその足を踏み出した。 } #openclose(show=#20080602){ f:PLAYER =城華一郎 /*/  華一郎は国庫の開放を始めていた。  一刻の猶予もない。焼き討ちが始まっている。  知識に特化され、文族として積み重ねた心を宿すアイドレスを身にまとい、怒号と悲鳴の飛び交う街へとスピーカーを使って声を通した。  最近の避難訓練でも使われていた、藩国の各所に設置されている緊急用のスピーカーだ。  ホープのアイドレスには、オペレーター能力とてあるのだ。 『皆さん、落ち着いてください!  物資は国庫より開放されます!  器物損壊や窃盗については我々政府が補填を致します。  この度の騒乱の元凶は我々フィクションノートの力足らずによるもの。  つまり、罪を負うべきは我々フィクションノートです!  貴方がたに罪を問うのは間違っている、しかし貴方がたの行動もまた間違ってる!  繰り返します、物資は国庫より開放いたします、  生きるために物を奪うのはやむなし、されど奪うために人を傷つけるのであれば、  アメショーやアイドレスの戦闘能力など使いやしない、  俺にだって個人的な蓄えぐらいある、まずは俺から奪っていってほしい!  共和国にいるのが不安なら、どうか奪い合わないでくれ、  帝國でも通用する通貨の一切合財を俺が足代に出して補う!!  誰かを傷つけて失うものは、かつてここに集おうとしたあなたたちの胸に、  あったはずの愛だ。  繰り返します、物資は国庫から開放されます、  落ち着いてその手を止めてください!』 }
*r:ターン11期間内の藩国所属フィクションノートによるロールプレイをここに中継する ---- #最新の日付以外はWIKI構文によってクリック開閉式に収納されています #20080606 f:PLAYER =むつき・萩野・ドラケン、空馬 ●むつき・瀧野・ドラケンのRP 「どうぞ、こちらを使用して下さい」  政庁関係者用の独身寮にリワマヒ国から来た医師団を案内する。  本来ならば都内のホテルを提供したい所だが、治安が不安定な現在、彼らの身の安全も考え寮の何室かを提供する事になった。 「作りは質素ですが、石壁が厚いので室内は静かで涼しいですよ」  窓を開ければオアシスの水と緑の匂いが風と共に入り込んだ。 「病院までは必ず誰か護衛がつきます、帰りも連絡をいただければ迎えに上がりますので」  家具や水回りの使用方法の説明をしながらそう言えば、医師の一人から苦笑が帰って来る。 「そちらの国も大変ですね…いや、我々の国やこの国はまだいい、まだ…。」  窓の外から見える風景は平和に見えるというのに、不安による圧迫に耐えられなくなった住民が喧嘩を起こすに始まり、状況のどさくさを利用した犯罪、そして政府への抗議が毎日どこかで起きている。 「治安が戻らないと、流通もなにもあったものじゃないですからね…。」 「当国も先日交番を設置していました、犯罪者が流れ込んでしまいまして。」  お互い顔を見合わせてため息をつく、問題は山積み、戦争まで始まる。 「…でも、諦めたら終わりですから、お互い頑張りましょう。」 「はい」  その言葉ににこりと笑えば、彼らも微笑む。 「笑顔はいいですね、病にも笑顔が一番の薬です、医者の自分が言うのもなんですが。」  笑いが病に及ぼす影響は学会でも発表されていて、治癒率が格段に上がるという事が分かっているのです。そう付け足すと、彼はますます笑みを深くした。  そんな彼らの笑顔に心から頭を下げる。 「本日ささやかですが、歓迎会を開く事になりました。夕方に迎えをよこしますので、それまでゆっくりなさって下さいね」  用意していた招待状を、申し訳なさそうな顔をした彼らに渡す。 「歓迎会といっても、只今絶賛節約中なので炊き出しみたいなものですが、色々出し物とかありますので楽しんで頂ければ幸いです。」 「それなら、是非。」  風と共に笑いも開けたままのドアを通って行く、入口で護衛の為について来た猫のお巡りさんも、その風にヒゲをそよがせこっそり笑ったのだった。 /*/ ●空馬のRP  コンコン 「?。どうぞー。」 「失礼するでゲス。オーッと、怪しいもんじゃないでゲスよ。ワタシ流離いのマッサージ士でゲス。おひとついかがでゲスか?」 「マッサージ屋さん?んーじゃあお願いしようかな。」 「毎度アリでゲース!」  上半身だけ裸になって貰ってマッサージ開始。本格的にワセリン+Xを用いて心臓付近を中心に揉みほぐし、背中→肩→腕へ血液を押し出すように揉んでいく。  10分後。 「おぉ!まるで体の疲れが取れたようです!有難うございます。お代は幾らでしょう?」 「お代はいりません。貴殿方医師団の方々は連邦の為に身を粉にして働いて下さいました。お礼を言うのは私達の方です。本当に有難うございました。」 「それではまたの機会にでゲス!お疲れ様でゲス!」 ※余談:相手が女性の時は肩だけ揉んで帰ったそうです。 #openclose(show=#20080605){ f:PLAYER =浅葱空、春雨、楠瀬藍、むつき・萩野・ドラケン /*/ ●浅葱空のPR  闇が暗ければ暗いほど、と言ったのはだれか。  止まない雨も、明けない夜もないのだと。  私に教えてくれたのは、強がりな彼だった。  その黄色いジャンパーを、その背中が愛しくて駆け出し始めたんじゃなかったのか。  いっしょに走りたかったんだ。  大丈夫。走ったり、転んだりしていたら。  大切な愛しい人や物がこんなにも増えていたよ。  少しは貴方に近づけたかな。  一緒にいこう。  ハッピーエンドを手に入れるために。  強がりな大人になるために。  だって、貴方を愛していたら、この国を、そこに息づく人をこんなにも愛していたよ。  あなたと愛が共にあるように。  皆と手を繋いで、治安を、安らぎを皆に。  大丈夫。 「さあ、皆。行こうか」 /*/ ●春雨のRP  治安の悪化が進む中、活動中のACEの負傷・疲弊の報せをタリアの人形店で聞いた春雨は、  怒った。  人の優しさに身勝手に願いをかけていた自分に酷く腹を立てた。  春雨は片方しかない暗い目を強く見開くと  今は祈りの時ではないのに、駆け出さない自分の足を睨んだ。  そして避難民誘導の為巡回していた冴木悠を店先で捕まえ老婆のタリアを預けると  自分の巣に戻って銀色のリボルバーに今度は飴玉でなくフォローポイントを込めた。  魔術的舞踏子の装備の一部を切り裂き身軽にし、  胸には布をきつく巻いてから防弾ベストを羽織った。  何処からか黒いブーツを引っ張り出して履き、グローブを付けた。  最後に磨かれて光る銃剣で、自分の髪を束ねて一気に切った。  切り取られた髪は束ねて「全ての善き神々に捧げます」と祈りを込めてから  天に届くようかまどにくべて焼いて煙にした。  顔の包帯は解かれぞっとするような鳥形の左目の傷跡が現れて、直ぐに大きい黒の眼帯で覆われた。  かくして、実に貧弱で不名誉の傷まみれで、強い舞踏子でもない娘の戦闘準備が出来上がった。  ベリーショートの銀髪と黒の眼帯に囲まれて、薄いスミレ色の目が鋭く光ったが  全体的に弱かった。歩兵でもサイボーグでもないので当然だった。  それでも走り出せる足があって、反動で弾道が多少ずれても  何とかグリップを握れる手がまだ残っていたから、  なによりなにより 蝶子藩王やサクさんやむつきさんが悲しんだことに 腹を立てていた。  ACEが傷ついたことに腹が立っていた。悔しかったのだ。  フィクションノートは設定国民にしろACE達にしろこの世界に生きる人の笑顔が見たくて  きっと、このアイドレスをまとっているのだから。 「武装している国民は・・・すでに暴徒・・・便乗して暴れてる奴も多分、いる・・・」  武装している国民の数、その武装の種類、入手及び流出ルートもわからなかった。  また、この暴動に不参加の国民や非難している人々の数も国外にでた人の数も見えてこない。  そして我々に協力してくれる国民は、まだいるのか、そしてどれ位なのか・・・  なにもかもが予想の範囲であったが、治安悪化は間違いない。  春雨は高い場所に上って騒動の大きい箇所で治安維持活動を続けるACEや警官隊を見つけると状況の詳細をより把握するために命令も指示も何もかも忘れて駆け出した。  何をやれるのかも判らなかったが、兎に角ACEの背中を守る事だけでもしたかった。 「藩王を泣かす・・・奴は・・・ぶっ飛ばすわ・・・」  にやりと笑いながら路地を駆けた。その姿は豪華絢爛でも勇壮でもなかった。むしろ悲壮だった。  それでも駆けた。その時だけは、狼の気持ちで。 /*/ ●楠瀬藍のRP 「ここは、要注意と聞いていたが・・・」  俺は、北の港にいた。  周りを見て軽い驚きを感じた。  交番が、できていた。  そこに詰めていた猫士に話を聞く 「ここはこの国の玄関口じゃあないですか。ここできっちりしておかないと、よそから来た人に悪い人が混じってたら一大事ですからね」 「なんと・・・意外に、早い対応じゃないか」 「ふっふー、そこはそれ、さすがはわれらの藩王様なのですよ。君もボーっとしてないで、がんばってくれたまい、『楠瀬クン』」 「・・・俺も、がんばらないと、だな」  一本取られた俺は、早速、というわけではないが、愛用のめがねをサングラスにかけ替え、陰ながら交番の下働きの真似事を始めることにした。 } #openclose(show=#20080603){ f:PLAYER =彩貴、むつき・萩野・ドラケン、空馬、浅葱空、豊国 ミロ、春雨、楠瀬藍、遊佐呉、双樹真、城華一郎 /*/  彩貴はみんなに配るお茶を淹れていた。みんなが落ち着いて冷静な対応ができるようにとやってることだが…つまりは今はそうすることしかできなかった。なにか状況を打開する手段も思いつかないし戦闘の編成ができるほどの経験もない。レンレンジャーとして治安維持活動は正体隠してやってはいるが…とにかく動きたかった。 「彩貴ちゃん節約ー。水とお茶っ葉ほどほどにゃ。」 「うん…わかってるー…」  生返事をつい返してしまうが猫士の言葉はもっともだった。市場が止まった今は少しでも長く国民の生活水準を下げないように努力しないといけない。その証拠にお茶菓子は無かった。非常時の備蓄に回したのだ。もちろん海に囲まれた砂漠の国であるから飲料水も節約が始まっていた。 「明日にはもうこんな贅沢はできないしね。近々炊き出しになると思うし…そうなったら節約しても美味しい物作りますね?」 「彩貴ちゃん…料理できたの?見たこと無いニャー」 「むー。一応得意なんですよ?作る機会が無かっただけだもん。こうなったら…」  この動乱が終わったら美味しい物たくさん作ってやる、と言おうとして止めた。もちろん平和にはなってほしいし努力はするが…いつそんな時期が来るとは今の自分にははっきり言えなかった。 「こうなったら、とにかく動かないと…ね。今はお茶配り!」 /*/ 「うちの人や、蝶子さんの惣一郎さんが頑張ってくれてた分、私達も頑張らないといけません」  むつきは刻一刻と変わる被害にあった人や建物、そしてそのデータをファイリングしながら、市街に出て駆けずり回る仲間達や自分の夫を思う。  女性は危ないから外に出るな、と言われる当り、少し腹が立つがここはそれに甘んじる事にした。  外はそれほど混乱を極めているのだろう、彼等で抑えきれないところへ出ていくほどまずいものは無い。 「物資の準備を城さんがしてくれてますから、配当のリストを誰か作成してください!」  誰かが慌ただしく廊下を走り、次々と指示が飛んで行く。  女性には女性がやれるべき事が沢山あるのだ。  こんな時に強い団結をもつのがこの国たる所で、誰もが率先して状況改善の為に働こうとする。 「住民の避難受入先決まりました、ニュースの速報に回して!」 「はい、すぐ持って行きます!」  この時ばかりは新人も古参も忙しく走る、国の為に民の為に。  それゆえに、ACEと呼ばれる存在もこの国を動かず、彼女や彼等と共にあろうとするのだ。 「被害状況ファイルデータ6/2分上がりました、こちらもニュースの方に回して下さい!」  通りすがりの猫士にそれを渡せば、彼女もにっこり笑ってそれを受け取り走っていく。 「今日も寝てる暇無さそうだな…」  呟きながらふと廊下を見やれば、新人さんがお茶を沢山もってよたよた歩いているのを発見し、それに微笑む。 「手伝いますかねー」  デスクにかじりつきで固まった体をほぐしながら立ち上がり、大変そうな彼女の元へ向う、大変な時こそ、仲良く、と思いながら。 /*/  故郷が無くなるのはとても悲しい。故郷が無くなった時、悲しくて、悔しくて、歯を食いしばりながら泣いたのを今でも覚えている。あの居心地のよかった場所には二度と帰れない。  国が無くなったら、どれだけの人が泣くんだろう?  数字でなくて、涙の一つ一つを受け止められる?  ………………  故郷を捨てなくてはならない、と言うのは理解ができない。経験が無いからだ。  でも、理由があるんだろうな。もう、我慢ができなかったんだろうな。  誰にも非難できる事じゃない。みんな悔しいだろうし、悲しいのだから。  自分の国を自ら傷つけようとしてる人は怒っているのだろうな。  でも何に?この状況を止められなかった俺たちに?この状況を作った人に?それとも何もできなかった自分達に?  怒るのは当然だろうな。  でも傷つけあうのは悲しい。  じゃあ国に残り、守ろうとしている人達は何を思っているのだろう?  ………………  ………………  俺はこの国が好きだ。この国が好きだ、と言ってた設定国民もみんな好きだ。この国を支えている人達もみんな好きだ。だから護りたいんだ。  みんなも同じ気持ちなんだろうか?  だとしたら・・・・・。  遠く炎で焼ける空を見ていた空馬は踵を返し部屋を後にした。 /*/ ●城華一郎のRP -[[状況小説執筆(前編)>http://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/420.html]] -[[状況小説執筆(後編)>http://www25.atwiki.jp/tosyoshitsu/pages/421.html]] /*/ 1. 嵐吹く 銀の砂舞うこの国で 空が落ちても前を向く 心に描く誰かのために  右手に正義 左手に勇気 胸には愛を 我ら西方の遊撃者 明日を見るために沈む今日 立ち上がれ 命尽きてなお 心は愛と在るように 2. 陽は燃える 銀の風吹くこの国で 海が割れても前を向く 心に描く何かのために  眼(まなこ)に夢を 唇に歌を 胸には愛を 我ら西方の遊撃者 明日を見るために沈む今日 いざ行かん 命尽きてなお あなたが愛と在るように -藩王蝶子さんが作ったレンジャー連邦の国歌(偽)-  「そーら、何してるの?」  猫士のにゃふにゃふがいつもの優しい口調で覗き込む。  私、浅葱空は一生懸命蝶子さんが作った歌をノートに書いていた。  よし、これでよし。  歌詞を書いたページをびりりと破りとって丁寧に畳んで服にはさむ。 「それ、蝶子さんが作ったうた?」 「うん。忘れないように持っておくの」  私たちは愛の民。  今怒りと悲しみ、憎しみが渦巻いている。  でも、その胸には必ず愛も息づいている。  一番大切なことを忘れないように。  私は何のためにここに来た?  皆を抱きしめるために来たんだ。  会いたかった。会いたかったんだ。  まだ見ぬ友人に会いたくてぎゅーしたくてきたんだ。  私たちのした事で悲しい想いをさせて、苦しい想いをさせてしまっているのならば。  全部全部。私たちがぎゅーして受け止めないといけない。  私は頭が良くないから、どうして皆の幸せを守ってあげられなかったのかわからない。  精一杯だったけど、結果がこれでは意味がないのもわかっている。  無知は罪で、ごめんなさい、としか言えない。  だから、ぎゅーして全部受け止める。  私たちは愛の民。  次元を越えて、世界を超えて巡り合った、同じ場所で生きている愛の民。  その悲しみ苦しみ憎しみすらもぎゅーしたい。  愛しているんだ。  ご飯を食べる、お金が必要という現実的な事はとっても重要。  愛、と言ってお腹がいっぱいになるならこんなに楽な事はない。  でも、それを解決しよう解決しようとするあまり、一番大切なことを忘れてはいけない。  私たちは愛の民。  Love be the withyou  あなたが愛と共にありますように。  愛と共にあるんです。私たちは全て。  それをけっして忘れないために。 「にゃふにゃふ、聞こえる?」 「ああ、きこえるよー」 『嵐吹く 銀の砂舞うこの国で』  歌声が聞こえる。 「私たちも歌うよ」 「うん、一緒に歌おう」 「ありがとう。私の愛しいともだち」  皆、待ってて。みんなみんなまとめてぎゅーしにいくから。 /*/ #豊国 ミロのRP  蝶子さんのヤガミが怪我したらしい。  うちの国のひとはみんな、どっちかっていうとのん気な方だった。だから彼らが怪我をさせたと聞いて私はとても驚いたのだけれど、それだけ殺気立っているということなんだろう――きっと皆ものすごく不安なのだ。  先が見えなくて。とにかく怖くて、怖くて。  みんなを助けてあげなくちゃ!とにかく、不安を取り除いてあげなくちゃ。  でも、私にできることなんてあまりないように思えた。政治のことはよくわからない。戦闘も、一応士族ではあるもののそんなに得意ではなかった。  そこで炊き出しをすることにした。  最近私は食堂のおばちゃんと仲がいいので(料理特訓を受けているのである)そういう発想になったのかもしれない。  人間お腹が満たされると気持ちも落ち着くものだから。これは自分自身がそうだから分かる。 (でも、おばちゃんたち、いるかな…)  こんなに不安定な世情なのだ。いかにプロの賄い係といえど、自宅で家族と必死に騒ぎをやり過ごそうとしているに決まっている。 (いや!一人でもなんとかす…る…)  厨房から白い湯気が立ち上っている。いいにおいがする。  中では割烹着にオレンジのバンダナを巻いたおばちゃんたちが、忙しく働いていた。 「おそいよー」 「早く運んでねー」  次々に声を掛けられる。  みんないつものように、黙々と、ご飯を作っている。  私は、顔をめちゃくちゃにこすると、同じようにオレンジのバンダナを頭に巻いて食べ物の搬出にとりかかった。  みんなのお腹を満たすのだ。 /*/  焼き討ちや騒動がすこしづつ拡大していく中、春雨は街の一角の店の中にいた。  創作球体関節人形のミュージアムを兼ねた、展示販売を行う店である老婆が細々と経営していた。  丁度この店の裏口が(古家具を組んだりガラスで飾ったりした)春雨の巣が隣接というか、くっ付いている。  つまり春雨はこの店の裏路地の中庭を間借りしている状態で、その代わりに老婆の身の回りの手伝いをしていた。  ついでに、店主との人形作りの師弟関係もあり、家族のようにもなっていた。  外の声が大きくなったり小さくなったり。  物を壊す音もする。泣き声も怒声も罵声もする。  フィクションノーツ達が、精一杯民衆をなだめる高らかな声も聴こえる。  玉子色したガラス窓をすかして、やわらかい光が指す赤茶色した店内で老婆と二人、  春雨はお茶を飲んでいた。 「いや・・・だわ。織物屋の坊やまで・・・大人と一緒に走ってる。」  坊やというが、実際は18歳くらいの男性である。彼女は自分と同い年の人でも「この子」と言う。  魂の年齢を見ているのだと本人は相手を茶化すが、たぶんに何も考えてはいないことは明白だったりする。 「大丈夫かしら。」  老婆がやや温くなったカップを両手で包みながら呟いた。 「大丈夫よ、タリアおばあちゃん・・・何かあっても・・・」 「必ず護るわ・・・」  春雨は15分ごとに街の状況を各フィクションノーツに送るようにしていた。  彼女だけが知っている塔に昇り、煙の場所を地図にチェックして王宮に逐一報告。  また、足の弱い老人や親のいない子供達の居場所の把握もしていたので  まずそこらをまわり安全を確認してまわった。  タリアの店を拠点とし、表通り、裏路地のルートを  あらかじめ作成されていた避難経路図と照らし合わせて  現状の通行状況から安全なルートをチェックし、  移動中のフィクションノーツやレンレンジャーに連絡をする。  猫士達数名にも協力してもらい、大通り以外の細かい場所でおかしなことがないか  連絡を受けて本部に中継もした。  ただし、春雨本人は女性であるので何かあると危険なので帰還するよう支持を受けたが  いつもの口調で断った。 「はい。自分は・・・異常ありません・・・装備もあります。大丈夫です。任務を続行します。」  任務といいつつも、特に命令は受けていない。  春雨は自分なりの正義の下す命令に正直に答えたつもりでいた。  発砲は厳禁だ!ときつくきつく言われたが、銀色の狼の意匠がある拳銃を手放す気にはならなかった。 「大丈夫なのね?」  タリアが、冬の湖色の目で静かに春雨を見つめている。 「大丈夫よ・・・だって・・・この拳銃、金平糖しかはいってないのよ」  春雨はにんまり笑うと、シリンダーを回して見せた。  虹色の金平糖がきらきらしながら転がり落ちた。 「本部・・・自分はいざとなればタリアさんを抱えて逃げます。このまま中継を続けます。」 「タリアおばあちゃん・・・」 「クリスマスには・・・角砂糖一個にも魔法が宿るのよ・・・」 「でも・・・私の飴玉には・・・いつも・・・魔法があるわ・・・」 「優しくなれる・・・おまじない・・・知ってる・・・もの・・・」  どこからか 国歌が聞こえてくる。 「優しさは弱さじゃないの どんな地獄でも 血みどろでも・・・笑っていられる・・・・」 「夜はあけることをを知ってる・・・人の・・・心に・・・光の柱のように・・・立つ・・・」 「フィクションノーツは・・・身体は死なないけれど・・・心は死ぬ時がある・・・  だか・・・ら・・・心に力が宿ることを知っている・・・」 「国の人々も・・・わかってくれるわ・・・」 「みんなの心に優しさが戻れば・・・・・・・・その為に私・・・」 「今、命のネジがとけても・・・気にならない・・・」 /*/ 「街へ出ます」  情報を聞いた楠瀬藍は、手近なメモ用紙にそう書くと、無言で姿を消した。 /*/  フードを深く被った男が、街中を彷徨う。  暴動に参加するでもなく、止めるわけでもなく。  男は、別の何かを見ながら歩いていた。  街角で泣き暮れる子供に声をかけ、手を引いて大学施設へ送り届ける。  その場の石壁に子供の名前と行き先を手にしたナイフで刻み、途中で迷子を届ける、との連絡もわすれない。  火の手が上がるのを見れば、警察やレンレンジャーに連絡し消火を願う。  急ぐからと名乗る前に電話を切る。  逃げ遅れた人がいると聞けば、火の中瓦礫の中を問わず飛び込み、助け出す。  感謝の言葉には 「都市大学が避難所になっている」  との言葉だけ残し、足早に立ち去る。  男の足は休むことなく、先へ、先へと急いでいた。 /*/  偽善だ。  俺のやっていることは偽善だ。  楠瀬はわかっていた。  国民たちの暴動は止められない。  なぜなら、自分たちフィクションノートの行動によって生活が左右されているのだ。  自分たちは国民の世話になっているのに、だ。  だから生活が悪いほうに傾けば、怒りは当然自分たちに向く。  そんな自分たちがいまさら助けの手を差し伸べたところで、簡単に受け入れられるものではない。  遅かった。  思ったよりも早くことが起きたため、後手に回ってしまった。  しかし、それを理由にはできない。  後手に回ったからといって、自分たちフィクションノートが何もしないわけにはいかない。  藩王は国内関係各所に回り頭を下げ続けている。  仲間はみなめいめいに自分にできることをはじめている。  特に城華一郎は、名前を出すという危険を冒してまで呼びかけを実行している。  攻撃の対象になりかねないのに、だ。  楠瀬自身も、手をこまねいているわけにはいかなかった。  自分には名前を出して矢面に立つ勇気はない。  ならば、この混乱の影でさらに被災者となっている国民を、いつも影から支えてくれている国民を、助けたかった。  当然、楠瀬一人で行うこの活動に限界はある。  楠瀬の目の前のひとは救えるが、見えないところのひとは、救いきれない。  でも、やるしかなかった。  レンジャー連邦のフィクションノートは、国民を愛している。  そんな彼らが、立ち上がっている。  ならば、きっと俺が見てないところは、誰かの目が届いているはず。  俺だけ、人任せになんてしない。  偽善といわれようと、楠瀬は自分の思うところを全うするため、都市を彷徨う。 /*/ 「大丈夫、藩王様は国民を見捨てないって放送で言ってた。大学が、避難場所だってさ」  デモや暴動が起こるその後ろで、不安そうに見つめる人々に楠瀬はそう伝えて回った。 「惣一郎さんも、俺たちを、みんなを心配してた。いつもお世話になっているあの人に、心配かけっぱなしは悪いよね」  寄り集まっている家族に、姿を見せられない霰矢惣一郎氏の思いを伝えて回る。  放送で流れている事実を、伝わらない地域に伝えていく。  ともすれば、フィクションノートとばれてもおかしくない行動だが、すでにその考えは楠瀬の頭には無かった。 「食糧配給、やってるそうです。大学がそのまま避難所になってるから、いくととりあえず落ち着けますよ」  道端で座り込んでいる老人に、声をかける。 「おお、あんた・・・どこかで見た人じゃ・・・」 「しーっ」  楠瀬は口元に人差し指をあて、にっこり笑う。 「続きは、大学に着いたらね」  楠瀬は老人をおんぶすると、足早に大学を目指す。  ふと、蝶子藩王が作った国歌が聞こえてくる 「おお、これは最近できた・・・」 「国家、みたいですね」 「うちの孫が蝶子様が大好きでなぁ。かく言うわしも、好きなんじゃが」 「俺も、ですよ。蝶子様もがんばってるって、放送で流れてました。俺も、がんばらないと、です」  歌が聞こえてきてから、街が少し落ち着いた空気になった気がした。 「嵐吹く 銀の砂舞うこの国で」 「空が落ちても前を向く」  楠瀬と老人は、聞こえてくる歌に合わせて口ずさむ。  心に描く誰かのために   右手に正義 左手に勇気 胸には愛を  我ら西方の遊撃者 明日を見るために沈む今日  立ち上がれ 命尽きてなお 心は愛と在るように  大学までは、あと少し。 /*/ 「しかしあんちゃん、音痴じゃのう♪」 「おじいさんは美声ですね・・・俺の負けです・・・」 /*/  女性陣は室内担当ということになっているということで遊佐呉は作業をしていた。  しかし目まぐるしく変わる情報を、長時間にわたり処理するには限界がある。  私は合間にお茶を配ったり貰ったりして一息ついている。  本当は一息つく暇なんてないし、お茶なんてすすってる状態ではない。  しかし無理にでも休憩はとらねばならない。  国民を安心させねばならぬ方が不安と焦燥を見せていれば説得力はないのだ。  もっとも、今の悪意の状態ならば何をしても文句を言われそうではあるが。  次々と更新される連邦のニュース。  緊迫した声が飛びかい、慌ただしい足音が響く。  何か疲れてきた…蝶子藩王作の歌でも歌おう。 「嵐吹く 銀の砂舞うこの国で 空が落ちても前を向く 心に描く誰かのために」  歌い始めは音程をハズしたが上手くのって歌えてきた。 「右手に正義 左手に勇気 胸には愛を」  小声で歌いながら仕事を再開したら心なしかはかどってる…気がする。 「我ら西方の遊撃者 明日を見るため沈む今日」  どこからか歌が聞こえる気がする…実は本格的にまいったのかもしれない。 「立ち上がれ 命尽きてなお 心は愛と在るように」  そういえば以前は苦しくなるとこうして歌を歌っていたよなあ……忘れてた。 /*/ ○双樹真のRP  黒い柱が幾つも立ち上げられていた。  切望は絶望に変わり、信頼は疑心へと変わっていく。  あの時と同じように。  あの時よりもなお昏く闇はこの国を喰らい尽くしていた。  それでもなお諦めず、忙しく走り回る仮想飛行士達を尻目に男は呆然と黒煙を見上げていた。  無知は罪。  無識は悪。  そして無力はその身を今までのように引き裂いた。  力無く、ただ呆然と空を見上げる。  天に穴は空いていないかと  切望し絶望し。  この期に及んでなお他を頼るのかとその心根をただ恥じた。  脳裏にあるは桜の海。  今となってはその前に立つ資格すらない彼の人の、かつての言葉が胸を貫く。 「「そなたは優しいのだな」」  永久に咲き誇る桜を見据え、何気ない一言をそう評した彼女。 「…違うんです」  呟く。  人を憂う事すら出来なかった俺が…優しくなぞあるわけが無い。  優しくなど無いからこそ、こうなるまで俺は何も出来なかった。  そして今でさえ何も出来ずに居る。  でも、それでも。  彼の人から学んだ大切な言葉。  どんな時もどんな場所でも支えてくれた言葉。 「…やらぬよりは…よい」  心の内の彼の人に合わせるように声を出す。 「やらぬよりは」  拳を握り締める。  少なくともまだ何もしていないから。  諦める事なんて知らない人を俺は知っているから。  踏み出そう。  どんなに罵られようとどんなに傷つけられようと。  自らの罪を認めよう。  自らの悪を受け入れよう。  どんなに些細でもどんなに微力でも。  やらぬよりはよい。  やらぬよりはよい。  この身に彼の人を語る資格は無いけれど。  ほんの刹那でも彼女の隣に立った物として、恥じぬ生き方をしてみせよう。  そして男は、空を見ることを止めた。  男に出来る何かを求めてその足を踏み出した。 } #openclose(show=#20080602){ f:PLAYER =城華一郎 /*/  華一郎は国庫の開放を始めていた。  一刻の猶予もない。焼き討ちが始まっている。  知識に特化され、文族として積み重ねた心を宿すアイドレスを身にまとい、怒号と悲鳴の飛び交う街へとスピーカーを使って声を通した。  最近の避難訓練でも使われていた、藩国の各所に設置されている緊急用のスピーカーだ。  ホープのアイドレスには、オペレーター能力とてあるのだ。 『皆さん、落ち着いてください!  物資は国庫より開放されます!  器物損壊や窃盗については我々政府が補填を致します。  この度の騒乱の元凶は我々フィクションノートの力足らずによるもの。  つまり、罪を負うべきは我々フィクションノートです!  貴方がたに罪を問うのは間違っている、しかし貴方がたの行動もまた間違ってる!  繰り返します、物資は国庫より開放いたします、  生きるために物を奪うのはやむなし、されど奪うために人を傷つけるのであれば、  アメショーやアイドレスの戦闘能力など使いやしない、  俺にだって個人的な蓄えぐらいある、まずは俺から奪っていってほしい!  共和国にいるのが不安なら、どうか奪い合わないでくれ、  帝國でも通用する通貨の一切合財を俺が足代に出して補う!!  誰かを傷つけて失うものは、かつてここに集おうとしたあなたたちの胸に、  あったはずの愛だ。  繰り返します、物資は国庫から開放されます、  落ち着いてその手を止めてください!』 }

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