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#setmenu(アイドルオペレーター メニュー)
* * *
「・・・と、いうことがあったのにゃ。」
翌日、お昼過ぎ。
ピークを過ぎて少し静かになった、市民病院の食堂。
ハニーは少し遅めの昼食をとりながら、同じ病院勤務の猫士仲間に昨日の顛末を話していた。
「へえ、だから蝶子さん、昨日スカートの下にジャージはいてたんだ。」
「ふぉうなんだにゃ(もぐもぐ)、あんまり自然だったから僕も注意するの忘れて、
うっかりふぉのまま謁見のしふぉとするふぉこだったにゃ(もぐもぐ)」
「はいはい兄様、お口に物入れたまましゃべらないの。」
この国の猫士は、人と同じ職務をこなす関係上、勤務の際には人型をとることがほとんどである。
この日も蜂蜜色の髪の美少年姿をとったハニーは、
同じく焦茶色の髪の美少女姿の双子の妹・マーブルにたしなめられ、
口いっぱいに詰め込んだオムライスをもぐもぐごくんと飲み込んだ。
「でも、難しいねー。オペレーターかー。」
眠たげな目の青年――いつもは猫型のにゃふにゃふが、うーん、と唸って上を向く。
手には、小さなヘラ。本当はもんじゃ焼き用の自前品なのだが、
さすがに病院の食堂に鉄板はないため、今日のメニューは厨房で焼いたお好み焼きであった。
「私たちも何度かやったけど、あれ結構大変ですよね。
誰でもいいってわけにいかないし、確かに、人を選ぶかも。」
目を細めて、スプーンにのせたドリアをふーふーしながら、マーブルが呟いた。
今は人型とは言え、やはり猫。猫舌である。
念入りに冷ました後、ぱくんとほおばる。が、まだ少し熱かったらしい。
猫耳と尻尾がふるるるっとしびれてふるえた。
「人を選ぶ、かー・・・。
オペレートに必要なのって、感覚と、あとなんだっけにゃ。」
「がいけ「外見ですわ!!」
外見よ、と答えようとしたマーブルの声にかぶせて、鈴のような声が飛び込んでくる。
露骨に嫌そうな顔をして振り向くマーブル。
視線の先には、ナース服姿の美少女。天ぷらそばを載せたお盆を持って、得意気に立っている。
「・・・愛佳さん。」
「愛佳、遅かったにゃー。」
にこっと天使のように微笑む美少女。遅れて登場したのは、猫士仲間の愛佳である。
普段はかわいい白猫である彼女も、今はかわいい黒髪の少女の姿をしている。
羽の生えたような足取りでテーブルまでやってくると、ハニーの隣に腰掛けた。
「ちょうど休憩に入ろうとした時に急患があって、少しバタバタしちゃって。」
「それはお疲れ様だったにゃー。」
「いいえ、ちっとも♪愛佳はみんなのナイチンゲールですもの!
でも、お待たせしちゃってすみませんでした。」
「別に待ってませんけど。」
「あらマーブルさん、私もあなたには待っててもらわなくて構わないわよ?」
「まあまあまあ。はい、お箸どうぞー。」
険悪になりそうな空気を察知して、にゃふにゃふがさっと割り箸を差し出す。
ありがとう、とにっこり笑って受け取る愛佳。器用にぱちんと割り箸を割って、いただきます、と手を合わせた。
この若くかわいらしい娘猫士は、裏表の激しい所はあるけれど、
明るくノリがよく、基本的には誰にでも親切な、いい娘さんである。
勤務先の病院でも、「みんなのナイチンゲール」を自称するだけあって
人当たりは非常によく、患者やスタッフからの人気も高い。
が、しかし。
王猫ハニーを慕って年がら年中追い掛け回している関係上、
ブラコンの気のある、と言うかブラコンなのは確定的に明らかな王猫の妹・マーブルとだけは
徹底的にそりが合わず、いつも一触即発のいがみ合いをしているのであった。
「ところで、何の話をしてらしたんですか?
次ターンの編成、オペレートで私たちに召集でも?」
かわいらしく小首をかしげて、ハニーの方を向きながらたずねる愛佳。
「違います。」
間髪いれずに、ハニーの向こう側、愛佳の反対隣に腰掛けたマーブルが、
ドリアをふーふーしたまま答える。
「マーブルさんには聞いてない。」
「あら奇遇ですね。私も愛佳さんにはお教えしたくありません。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
静かに散る火花。二人ともにっこりと笑顔なのがかえって怖い。
「まあまあまあまあ。
えっと、編成じゃなくて。ね、ハニー君。」
汗マークを飛ばしながら、にゃふにゃふが会話に割って入る。
いつもならもう1人、病院勤務仲間のじにあが一緒に仲裁に入ってうまくいなしてくれるのだが、あいにく彼女は休暇中であった。
小旅行を満喫中であろう同僚に思いをはせるにゃふにゃふ。
じにあちゃん、楠瀬さんと温泉楽しんでますか。久しぶりの二人水入らずの休暇、ゆっくり楽しんでほしいと、心から思ってる。でも、でも今だけ、今だけ早く帰ってきてほしいよらいとなう。
「そ、そうなんだにゃー。実は、かくかくしかじかで・・・」
にゃふにゃふのトスを受けて、ハニーがしどろもどろに昨日の顛末を話し出す。
ふむふむと耳を傾けながら、天ぷらそばをすする愛佳。
昼休憩が遅くなった分おなかも減っていたのだろう、
ショートカットの艶やかな黒髪の上で、白い猫耳が嬉しそうにぴこぴこ動いている。
彼女は本来白猫なので、普通なら黒ではなく白髪の美少女になるはずの所なのだが、
名付け親の娘と同じ名前をもらった彼女は、
「大切な娘さんと同じ名前をもらったのだから」と
人の姿を取る際はいつも、同じ名の娘に揃えた黒髪の姿で通していた。
「・・・なるほど。
オペレーターの職業立ち上げですか。」
「そうなんだにゃー。」
「誰でもいいってわけにいかないし、難しいねって話してたところだったんだ。」
空になったどんぶりを見つめながら、唇を尖らせて、ふーむ、と考え込む愛佳。
「優秀な方をひっこ抜いてくるのは難しい、と・・・。
となれば、一から育成するしかないけど、正直それは・・・」
「うん。コストがかかりすぎるにゃ。」
「色々とカッツカツですからねうちの国。」
「カッツカツだからにゃー。」
「カッツカツだもんねー。」
さすが、ターン1からこの国と共に歩んできた猫達。達観している。
この国がカッツカツでなかったことは、長い歴史の中でも数えるほどしかなく、
しかしそれゆえに、あるもので何とかしのごうとする思考がひげの先まで染み付いていた。
「うーん、時間的コスト・・・実戦のチャンス・・・実戦・・・
適正・・・感覚と外見・・・外見・・・
外見・・・?」
あっ、と小さくつぶやく愛佳。弾かれたように顔を上げる。
「思いつきました!すごいこと思いつきましたわハニー様!」
「マジか!やるにゃー愛佳!」
キャーと盛り上がる二人に、わずかに眉を上げるマーブル。にっこりと微笑む。
普段はおっとりマイペースな彼女なのだが、こと愛佳と対峙するに限っては、
いつもの癒し系の笑顔が、かえって妙な凄みをかもし出している。
「あらあら愛佳さん、すごいじゃないですか。
どんな素っ頓狂なアイディアを思いつかれたんですか?」
「教えてほしい?」
さらりと毒を混ぜた言葉に、フフン、と挑戦的に笑う愛佳。マーブルの目が細められる。
やりとりを見ながらハラハラするにゃふにゃふ。ああ今日も二人は絶好調だよじにあちゃん助けて。
「・・・でも、まあ。
まだただの思いつきだし。
実現したらすっごいけど、実際に可能かはかなり怪しいし、
ここで話すのはちょっと控えておくわ。まずは色々手回ししてみないとね。」
「・・・ふうん?珍しく謙虚ですね。」
「まあ実現したらほんとにすっごいけど。」
「そ、そんにゃにすごいアイディアにゃのか・・・!
き、聞きたいにゃ!教えてほしいにゃ!」
「うふふ、ハニー様にもナイショですわ♪
もしうまくいったら、たくさんほめて下さいましね♪」
「あらあら、まあー。とっても楽しみ。
頑張って下さいね愛佳さん。」
マーブルの激励はひどい棒読みである。
が、それ以上突っかかることはしなかった。愛佳もスルーである。
ハニーの目が期待でキラキラと輝いているので、水を差したくないのであった。
そこだけは息ぴったりなんだよなあ、と思うにゃふにゃふ。
年がら年中いがみ合ってばかりだけど、同じ猫を好いているもの同士、どこかで認めあっていて、芯から嫌いあっているわけではない。
「愛佳ちゃん、うまくいくといいねー。」
なかよしっていいよねー、と顔をほころばせながら声をかけるにゃふにゃふに、
愛佳は輝くような満面の笑みを返した。
「乞うご期待!ですわ!」
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* * *
「・・・と、いうことがあったのにゃ。」
翌日、お昼過ぎ。
ピークを過ぎて少し静かになった、市民病院の食堂。
ハニーは少し遅めの昼食をとりながら、同じ病院勤務の猫士仲間に昨日の顛末を話していた。
「へえ、だから蝶子さん、昨日スカートの下にジャージはいてたんだ。」
「ふぉうなんだにゃ(もぐもぐ)、あんまり自然だったから僕も注意するの忘れて、
うっかりふぉのまま謁見のしふぉとするふぉこだったにゃ(もぐもぐ)」
「はいはい兄様、お口に物入れたまましゃべらないの。」
この国の猫士は、人と同じ職務をこなす関係上、勤務の際には人型をとることがほとんどである。
この日も蜂蜜色の髪の美少年姿をとったハニーは、
同じく焦茶色の髪の美少女姿の双子の妹・マーブルにたしなめられ、
口いっぱいに詰め込んだオムライスをもぐもぐごくんと飲み込んだ。
「でも、難しいねー。オペレーターかー。」
眠たげな目の青年――いつもは猫型のにゃふにゃふが、うーん、と唸って上を向く。
手には、小さなヘラ。本当はもんじゃ焼き用の自前品なのだが、
さすがに病院の食堂に鉄板はないため、今日のメニューは厨房で焼いたお好み焼きであった。
「私たちも何度かやったけど、あれ結構大変ですよね。
誰でもいいってわけにいかないし、確かに、人を選ぶかも。」
目を細めて、スプーンにのせたドリアをふーふーしながら、マーブルが呟いた。
今は人型とは言え、やはり猫。猫舌である。
念入りに冷ました後、ぱくんとほおばる。が、まだ少し熱かったらしい。
猫耳と尻尾がふるるるっとしびれてふるえた。
「人を選ぶ、かー・・・。
オペレートに必要なのって、感覚と、あとなんだっけにゃ。」
「がいけ「外見ですわ!!」
外見よ、と答えようとしたマーブルの声にかぶせて、鈴のような声が飛び込んでくる。
露骨に嫌そうな顔をして振り向くマーブル。
視線の先には、ナース服姿の美少女。天ぷらそばを載せたお盆を持って、得意気に立っている。
「・・・愛佳さん。」
「愛佳、遅かったにゃー。」
にこっと天使のように微笑む美少女。遅れて登場したのは、猫士仲間の愛佳である。
普段はかわいい白猫である彼女も、今はかわいい黒髪の少女の姿をしている。
羽の生えたような足取りでテーブルまでやってくると、ハニーの隣に腰掛けた。
「ちょうど休憩に入ろうとした時に急患があって、少しバタバタしちゃって。」
「それはお疲れ様だったにゃー。」
「いいえ、ちっとも♪愛佳はみんなのナイチンゲールですもの!
でも、お待たせしちゃってすみませんでした。」
「別に待ってませんけど。」
「あらマーブルさん、私もあなたには待っててもらわなくて構わないわよ?」
「まあまあまあ。はい、お箸どうぞー。」
険悪になりそうな空気を察知して、にゃふにゃふがさっと割り箸を差し出す。
ありがとう、とにっこり笑って受け取る愛佳。器用にぱちんと割り箸を割って、いただきます、と手を合わせた。
この若くかわいらしい娘猫士は、裏表の激しい所はあるけれど、
明るくノリがよく、基本的には誰にでも親切な、いい娘さんである。
勤務先の病院でも、「みんなのナイチンゲール」を自称するだけあって
人当たりは非常によく、患者やスタッフからの人気も高い。
が、しかし。
王猫ハニーを慕って年がら年中追い掛け回している関係上、
ブラコンの気のある、と言うかブラコンなのは確定的に明らかな王猫の妹・マーブルとだけは
徹底的にそりが合わず、いつも一触即発のいがみ合いをしているのであった。
「ところで、何の話をしてらしたんですか?
次ターンの編成、オペレートで私たちに召集でも?」
かわいらしく小首をかしげて、ハニーの方を向きながらたずねる愛佳。
「違います。」
間髪いれずに、ハニーの向こう側、愛佳の反対隣に腰掛けたマーブルが、
ドリアをふーふーしたまま答える。
「マーブルさんには聞いてない。」
「あら奇遇ですね。私も愛佳さんにはお教えしたくありません。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
静かに散る火花。二人ともにっこりと笑顔なのがかえって怖い。
「まあまあまあまあ。
えっと、編成じゃなくて。ね、ハニー君。」
汗マークを飛ばしながら、にゃふにゃふが会話に割って入る。
いつもならもう1人、病院勤務仲間のじにあが一緒に仲裁に入ってうまくいなしてくれるのだが、あいにく彼女は休暇中であった。
小旅行を満喫中であろう同僚に思いをはせるにゃふにゃふ。
じにあちゃん、楠瀬さんと温泉楽しんでますか。久しぶりの二人水入らずの休暇、ゆっくり楽しんでほしいと、心から思ってる。でも、でも今だけ、今だけ早く帰ってきてほしいよらいとなう。
「そ、そうなんだにゃー。実は、かくかくしかじかで・・・」
にゃふにゃふのトスを受けて、ハニーがしどろもどろに昨日の顛末を話し出す。
ふむふむと耳を傾けながら、天ぷらそばをすする愛佳。
昼休憩が遅くなった分おなかも減っていたのだろう、
ショートカットの艶やかな黒髪の上で、白い猫耳が嬉しそうにぴこぴこ動いている。
彼女は本来白猫なので、普通なら黒ではなく白髪の美少女になるはずの所なのだが、
名付け親の娘と同じ名前をもらった彼女は、
「大切な娘さんと同じ名前をもらったのだから」と
人の姿を取る際はいつも、同じ名の娘に揃えた黒髪の姿で通していた。
「・・・なるほど。
オペレーターの職業立ち上げですか。」
「そうなんだにゃー。」
「誰でもいいってわけにいかないし、難しいねって話してたところだったんだ。」
空になったどんぶりを見つめながら、唇を尖らせて、ふーむ、と考え込む愛佳。
「優秀な方をひっこ抜いてくるのは難しい、と・・・。
となれば、一から育成するしかないけど、正直それは・・・」
「うん。コストがかかりすぎるにゃ。」
「色々とカッツカツですからねうちの国。」
「カッツカツだからにゃー。」
「カッツカツだもんねー。」
さすが、ターン1からこの国と共に歩んできた猫達。達観している。
この国がカッツカツでなかったことは、長い歴史の中でも数えるほどしかなく、
しかしそれゆえに、あるもので何とかしのごうとする思考がひげの先まで染み付いていた。
「うーん、時間的コスト・・・実戦のチャンス・・・実戦・・・
適正・・・感覚と外見・・・外見・・・
外見・・・?」
あっ、と小さくつぶやく愛佳。弾かれたように顔を上げる。
「思いつきました!すごいこと思いつきましたわハニー様!」
「マジか!やるにゃー愛佳!」
キャーと盛り上がる二人に、わずかに眉を上げるマーブル。にっこりと微笑む。
普段はおっとりマイペースな彼女なのだが、こと愛佳と対峙するに限っては、
いつもの癒し系の笑顔が、かえって妙な凄みをかもし出している。
「あらあら愛佳さん、すごいじゃないですか。
どんな素っ頓狂なアイディアを思いつかれたんですか?」
「教えてほしい?」
さらりと毒を混ぜた言葉に、フフン、と挑戦的に笑う愛佳。マーブルの目が細められる。
やりとりを見ながらハラハラするにゃふにゃふ。ああ今日も二人は絶好調だよじにあちゃん助けて。
「・・・でも、まあ。
まだただの思いつきだし。
実現したらすっごいけど、実際に可能かはかなり怪しいし、
ここで話すのはちょっと控えておくわ。まずは色々手回ししてみないとね。」
「・・・ふうん?珍しく謙虚ですね。」
「まあ実現したらほんとにすっごいけど。」
「そ、そんにゃにすごいアイディアにゃのか・・・!
き、聞きたいにゃ!教えてほしいにゃ!」
「うふふ、ハニー様にもナイショですわ♪
もしうまくいったら、たくさんほめて下さいましね♪」
「あらあら、まあー。とっても楽しみ。
頑張って下さいね愛佳さん。」
マーブルの激励はひどい棒読みである。
が、それ以上突っかかることはしなかった。愛佳もスルーである。
ハニーの目が期待でキラキラと輝いているので、水を差したくないのであった。
そこだけは息ぴったりなんだよなあ、と思うにゃふにゃふ。
年がら年中いがみ合ってばかりだけど、同じ猫を好いているもの同士、どこかで認めあっていて、芯から嫌いあっているわけではない。
「愛佳ちゃん、うまくいくといいねー。」
なかよしっていいよねー、と顔をほころばせながら声をかけるにゃふにゃふに、
愛佳は輝くような満面の笑みを返した。
「乞うご期待!ですわ!」
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